日常は、いろんなエンターテインメントに溢れている。TV、映画、漫画。
もちろん音楽もそのひとつだ。数々の選択肢があるなかで心の底から「楽しかった」と思えるものに出会えたら、それは運命の出会いと言ってもいいのではないだろうか。

4月24日、東京ドームにて開催された「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」。西島隆弘がNissyとして歩んできた5年間の集大成は、そんな運命を感じさせる一夜だった。

開演5分前を切ると、東京ドームには「SUGER」が流れた。スクリーンにはMVの名シーンがいくつも映し出され、一足早く5年間を振り返る。「これから5年間の集大成が始まる」と予言しているようなオープニングに会場の熱気も急上昇。赤い照明が一瞬場内をまとうと、Nissy Entertainmentの世界へ東京ドームはワープした。

Nissyがレンタルショップで「Addicted」を借りるところから導入のVTRはスタート。どこへでも飛べる魔法のエレベーターにNissyが乗り込むと、いよいよエンターテインメントが幕を開けた。

オープニングを飾ったのは、Nissy最新曲である「Affinity」。大画面に映るクールな表情には敬愛の視線が注がれ、<今夜君を満足させたい>というリリックに黄色い悲鳴がこだました。
スクリーンが開きステージ中央のエレベーターが地面に到着すると、いよいよ本日の主役のお出ましである。大きな歓声が響くなかセンターのイスに腰をかけると、妖艶ににっこり。艶やかな歌声、色っぽい視線、人を惹きつける絶妙な間。初動なんて必要ないと言わんばかりに、1曲目からプロNissyの魅力が爆発していた。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)

続く「LOVE GUN」ではダンサーと息のあった踊りを披露。その身軽さは彼が腰痛を抱えつつ、ステップを踏んでいることを忘れてしまうほどである。アダルトな雰囲気で会場を誘惑したかと思えば、「まだ君は知らない MY PRETTIEST GIRL」では王子様モードに大変身。瞬時に自分のスイッチを入れ、曲の登場人物に七変化してしまう彼の強さはライブでこそより一層感じられると言えよう。それでいて、パフォーマンスにおいても一切の妥協は許さない。ピアノ伴奏と生歌のイントロでは美声を響かせ、オーディエンスをグッと惹きつける。ステージ上で人一倍動き周る姿はどの席からも楽しんでもらえるようにという思いに溢れ、<そんなことないもん>とレスポンスするファンの頭の中がNissyのことでいっぱいになってしまうことが容易に想像できた。

炎と噴水の演出が派手な「SUGER」を挟み、再びVTRへ。
一緒にバスに乗りながらご当地の美味しいものを「あーん」するという、ただのファンサービスに見えるシーンですら伏線を仕込むのがNissy Entertainment。「なんかこのシチュエーション懐かしいっすね。覚えてます? 俺は覚えてるけど」。そう告げ到着した先は横浜みなとみらい。「ワガママ」のMV思い出の地だ。「あーん」をして食べさせてあげるというシーンもMVになぞらえたもので、「ワガママ」へ繋ぐための導入だったのである。スクリーンには銀河が映し出され、リアルタイムなNissyと重なるとまるで宇宙の中で歌っているよう。ラスサビ前には見事なアカペラも披露し、切ないラブソングをエモーショナルに表現した。映像は雨の景色へと移り変わり、「愛tears」に繋がれる。ステージ・花道の噴水や空を舞う風船は、初監督作品Music Short Film「OK? ~君に贈る24時間~」のワンシーンを彷彿させる幻想的な演出だ。

ステージを後ろから前方まで一気に駆け抜け、VTRに再びダイブ。<満たすよ 君への言葉>に続き「おいで」と呼びかけると、それを合図に「Addicted」に突入した。
白シャツに黒スーツ、だらっとしたネクタイといった衣装はMVで本人が着用しているファッションで、作りこまれた世界への没入感をより強くする。5周年を飾る記念すべき1曲もメリハリのあるダンスで魅せつけ、会場をさらにトリコにしたのであった。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)

ここに挟まれたVTRは、エレベーターからNissyが抜け出せなくなってしまうというもの。エレベーターの管理人とのコミカルなやり取りに、会場は笑いに包まれた。そのまま次の曲にいくのかと思われたが、NHKの体操コーナーをフィーチャーしたダンスタイムへ導かれる。ダサいジャージを着用し奇抜なおじさんメイクをほどこしたNissyとダンサーたちがレクチャーしたのは、ライブでも人気のダンスチューン「DANCE DANCE DANCE」だ。「今からそっちに向かうわ」と告げると、昨年から定番化した干支コスチューム(2019年はイノシシ)でNissyとダンサーズがトロッコに乗り登場。「なに見てんのよ!」などと、にし子口調でふてくされたように話している時でさえ愛らしいのだからNissyとは本当に不思議な存在だ。着ぐるみを脱ぎ捨て、チアガールを呼び寄せると、いよいよ楽曲本編へ。<Oh Yeah>や<超ヤバイね>といった間のコールは特大サイズで会場に響き、ファンが常日頃から彼の音楽に親しんでいることを誇示していた。チアリーダーとの一糸乱れぬラインダンスは、圧巻の一言。全員が全員、声を聞かせて体を揺らして創り上げた熱狂空間が創り上げられたのだ。


即座に一体感を生み出すファンの大きな愛

「Playing With Fire」では、炎があがるなかでパフォーマンス。ダンサーやバンドメンバーの紹介を交え、自身もソロダンスを披露した。恒例となっているカバーコーナーでは、昨年のリベンジを果たすかのように中島みゆきさんの「糸」が選ばれた。センターのイスに腰かけ、言葉を紡ぐように丁寧に歌いあげる。その横顔はこれまでの5年間を思い出し、たくさんの人と共に掴んで今を”幸せ”と噛みしめているようだった。穏やかな雰囲気のまま「Dont let me go」も、しっとりと会場に響かせ前半戦を締めくくった。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)

Nissyへの質問コーナーを挟み導かれたのは、イントロのハイトーンで魅了する「Double Trouble」。豊かでパワフルな歌声は、ヴォーカリストとしての力量を遺憾なく発揮していた。フロアでタオルが宙を舞う「恋す肌」、ひとりひとりに目線を合わせて歌う

「Relax & Chill」と様々な表情を覗かせる。<ねえ まだ夢の続きはまた後にしよう>というイントロを歌い、「The Days」に繋がれる頃には会場の熱気は最高潮。セサミストリートやピーナッツなどユニバーサル・スタジオ・ジャパンの仲間もかけつけ、最後のひと押しと言わんばかりにさらに熱狂を過熱させた。ラストソングに選ばれたのは、みんなで歌って踊れるナンバーの「トリコ」だ。
スクリーンにはMVの<私がトリコになった5つの理由>になぞらえた<Nissyからの5つのメッセージ>が表示され、観客の涙腺を刺激する。楽しくて笑顔になれるけど、なんだか泣けてきてしまう。そんなハッピー空間を創りだし、最大級のNissyスマイルで本編を締めくくった。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)
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熱狂は冷めやらず、会場の隅のほうでひっそりと始まったアンコールはやがて大きな波に転じた。「Nissy」コールと同時にペンライトを掲げクラップを3回鳴らすシーンも息がぴったり。即座に一体感を生み出すファンの姿にも大きな愛を感じずにはいられなかった。

盛大なアンコールに呼び寄せられ、Nissyは気球に乗って再登場。「17th Kiss」や「ハプニング」などを交えた美味しいところどりのスペシャルメドレーを、空の上からパフォーマンスした。どんなところにいても楽しませるという心意気は、今回の5th Anniversaryでも健在だ。これでもかという距離まで接近し、四方八方に目線を送りつつ心をこめて手を振り返す。ファンの笑顔を見るために心を尽くすのがNissy Entertainmentの真髄だと、座長として体現して魅せた。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)

ラストを飾ったのは、<負けずに一途に>戦ってきた彼の歌と言っても過言ではない「My luv」。
スクリーンには5年間の写真が流れ、ファンとチームと共に作り上げてきた軌跡が描かれる。最後のサビでは会場中が盛大なシンガロングとなり、温かい空気のなか終幕を迎えた。記念撮影をし本当に終わりかと思われたが、舞台裏の映像を経てソロプロジェクト第一弾楽曲の「どうしようか?」でWアンコールへ。リアルタイムの映像と共に2013年、2016年、2018年の「どうしようか?」が映し出された画面は、一歩一歩確実に進んできた彼の歩みを感じさせる。「今日は本当に、ありがとうございました!」と挨拶をし、胸に手を当ててステージの奥に姿を消した。

MCでNissyは「今日、会えたことは奇跡だ」と語っていた。同じ時間を生きていること、同じ場所に集まること、同じものを好きになること。そして、Nissyというアーティストが5周年を迎えたこと。何ひとつ当たり前なことなどないのだ。さらなる軌跡を積み重ね飛躍していく彼から、今後も目が離せない。

5年間の集大成、心を尽くす「Nissy流エンタメ」の真髄を体感

「Nissy Entertainment ”5th Anniversary” BEST DOME TOUR」(Photo by 田中聖太郎、山内洋枝、青木早霞、立脇卓)
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