これはメキシコとの国境沿いに押し寄せる移民の波と、政府の収容施設不足への対応策として決定された。来月からおよそ1400人の移民の子供たちがフォート・シルに移送される。先週も、1600人の児童移民用にテキサス州カリーゾスプリングスの複合住宅を臨時施設とすることが発表された。
親の同伴なしで国境にやってきた児童移民は、5月だけで1万1000人。国土安全保障省の発表によれば、今年に入ってから4月末までに前年比57%増となる4万900人の子供を拘留していたという。6月上旬の時点で、政府の収容施設にいる児童移民は1万3000人強。親の同伴のない子供たちは、アメリカ在住の親戚など、引き取り先が見つかるまで連邦政府の管理下に置かれている。
強制収容所への児童移民の移送はトランプ政権だけではなく、オバマ政権時代にも児童移民の収容にフォート・シルが使われ、2014年に7万7000の児童が4カ月間収容された。だがオバマ大統領の退任以降、事態は急激に悪化しており、子供たちがとばっちりを受けている。「どうにもならない緊急事態です。これ以上言いようがありません。システムは崩壊しています」と、税関国境警備局のジョン・サンダース局長代行は報道陣に語った。
トランプ政権が児童移民に手を焼いているのは、収容問題だけではない。政府は先週「教育サービス、法務サービス、娯楽」といった児童移民向けの活動を「縮小、または停止」すると発表。前例のない数の児童移民が収容されているため、費用がかかりすぎるというのだ。保健福祉局はケアとシェルターの拡充費用として30億ドル相当を議会に要求している。その一方で保健福祉局のマーク・ウェエバー広報担当者は、こうしたサービスの提供は「人命と安全保護に直接かかわるものではない」と説明した。
資金面以外にも問題は山積みだ。先月末、保護者の同伴なしでやってきた2500人近い未成年が、収容所に移送されるまで72時間以上も国境警備隊に拘束されたが、当局ではこれを連邦法違反としつつも、理由に関しては意見が一致していないようだ。国土安全保障省のケビン・マカリーナン長官代理は報道陣に対し、規定よりも長い時間子供たちを拘束したのは、収容施設のベッドの数が足りなかったためと釈明した。保健福祉局のウェバー報道官はこれに反発。「シェルターにベッドの空きはあります。国土安全保障省による移送手続きの際には、UAC(保護者のいない児童移民)を受け入れる準備はできています」と報道陣に述べた。
グアテマラからやってきた16歳の少年カルロス・ヘルナンデス・ヴァスケス君は先月、国境警備隊の収容施設で6日間過ごした後、死亡した。
こうした国境での不手際が報道されることは、次第に日常化しつつある。今月初めにNBC ニュースが報じたところでは、昨年7月に引き離された移民の家族の再会が頓挫した際、5~12歳の児童移民37人がワゴン車で一夜を過ごさねばならなかった。彼らの大半はテキサス州の熱波にさらされながら、24時間近く車内で過ごしたという。
トランプ政権による児童移民の不当な扱い以外にも、この数週間恐ろしい後日譚が報道されている。CBSニュースは先月末、政府の保護下にあったエルサルバドル出身の10歳の少女が昨年9月に死亡していたことを報じた。トランプ政権下で亡くなった子供の移民はこれで6人となった。もっとも最近の例はヴァスケス君だが、彼は規定の2倍近い期間を国境警備隊の保護下で過ごした結果、インフルエンザに似た症状を患った。
彼の死が報道される数時間前、マカリーナン長官代理は議会から、国境警備隊の保護下にある子供たちは全員医師の診断を受けているかと質問された。彼の答えはただ一言「いいえ」というものだった。