2008年のユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで起きた火災で失われた音源のなかには自分のものもあるのか? と問い合わせてくるアーティストに対して透明性を守るよう、UMGのルシアン・グレンジCEOが従業員に指示した、と米ロサンゼルス・タイムズ紙が報じた。
ロサンゼルス・タイムズ紙が入手したUMGの従業員向けの内部メモにおいて、グレンジ氏はこのように記した。「ひとつだけはっきりさせよう。私たちは、UMGの所属アーティストに対して誠実でなければならない。私たちは、彼らの質問に答えなければならないのだ。私を筆頭に、この会社のシニア・マネジメントにも徹底させる。」
さらに、グレンジ氏は音源の状況についてアーティストから問い合わせがあった際の正式な手続きを簡潔に説明した。問い合わせてきたアーティストにはUMGのレコーディング・スタジオ&アーカイブ・マネジメントのシニア・バイス・プレジデント(SVP)が対応するべきである、とグレンジ氏は述べ、「できる限り迅速にアーティストからの問い合わせに対応し、質問に答えられるよう」はやくもSVPを筆頭とするチームを結成した、と補足した。
ニューヨーク・タイムズ・マガジンが最近発表した記事によると、およそ50万曲分の音源が火事によって焼失していた。そのなかには、たったひとつしかないマスターテープや未発表音源も含まれていたのだ。被害報告によれば、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド、エタ・ジェームス、チャック・ベリー、エルトン・ジョン、ニルヴァーナ、ザ・ルーツ、ジャネット・ジャクソンなどの幅広いアーティストの音源が焼失した。
火災は2008年に大々的に報道されたものの、UMGは被害を軽視した。当時のある広報担当にいたっては「ある意味では、何も失われていません」と宣言したほどだ。
グレンジ氏のメモの続きには、被害はそれほど甚大ではないにせよ、音源が消失することは胸が痛む、という内容の記載があった。「10年以上前に起きた事故であり、様々な主張とそれに伴う憶測の多くが正確ではない、とチームが迅速に報告を上げてくれたことでいくらかほっとしている。だが、ひとつだけはっきりさせよう。たとえひとつだけでも、アーカイブが失われるのは悲しいことだ」とグレンジ氏は記した。
さらに、グレンジ氏は伝説のアーティストたちの未発表音源や存在さえ知られていない音源という宝の山が失われたことについても言及した。「火災でマスターは失われたものの、リリース済みの音源はすべて永遠に生き続けるが、これほどたくさんのアーカイブを失うのは痛ましいことだ。これによって様々な憶測が飛び交い、UMG所属のアーティストやソングライターに正確な情報が伝わらない状況は許しがたい。」
グレンジ氏のメモに関するニュースは、この数週にわたってハワード・キング氏とエド・マックファーソン氏という2人の弁護士が数多くのアーティストの代理でUMGに対して訴訟を起こした後に報じられた。両弁護士は、グレンジ氏に共同で文書をしたため、火事で消失した全音源の「完全な目録」の提出を要請した。「この不幸な出来事に見舞われた可能性のあるすべてのアーティストが、ユニバーサルが保管するマスター音源の現状の真実を知るべきです」とキング氏は述べた。