メディアの報道を信じるなら、スマホの使いすぎは姿勢の乱れや精力減退、精子数の減少にまでつながる。そして今、テクノロジー依存に新たな危険がまたひとつ。
オーストラリアの研究者らによる一連の研究レポートによると、スマホ依存が度を超すと、なんと後頭部~うなじのあたりから角が生える場合があるというのだ。

米ワシントンポスト紙の20日の朝刊記事によると、オーストラリアのクイーンズランド州サンシャインコースト大学の研究者らが発表した研究レポートによれば、脊椎から首への重心移動が原因で、18~25歳の若者のうなじに靭帯付着部増殖体、つまり小さな突起上の骨が形成される場合があるという。

こうした突起物の形成はしばしば前屈姿勢に起因するため、デヴィッド・シャハール氏とマーク・セイヤーズ氏は2016年の論文で「幼少期からの頻繁な携帯機器の使用」が原因ではないかと推測した。

シャハール氏とセイヤーズ氏はこのような趣旨の論文をいくつも発表している。もっとも最近のものは2018年だから、決して目新しい研究結果ではない。だが最近BBCがテクノロジーの発達による人体の筋骨格構造の変化を特集したことで、2人の論文に再び注目が集まっている。当然ながら、2人のおかげでソーシャルメディア上でも活発な議論が起こり、大勢の人々が(おそらくスマホで)論文によってスマホの使い過ぎが怖くなったとツイートした。「世界の終末予想でも、角が生えた子供なんて考えもしませんでしたが、今後はありですね」「スマホを部屋の奥に放り投げた」というツイートもあった。

だが、研究結果を疑ってかかるべき理由も少なくない。ひとつに、原始人類学のジョン・ホークス氏によれば、研究には重大な誤りがいくつかあるという。博士はMediumの投稿で、論文には結果をまとめた表がないと指摘。また男女別の有病率に関して、相反する2組のデータが掲載されていると述べた(論文の文章には、外後頭隆起(EEOP)の発生率は男性のほうが高いとしているが、図表のほうは、男女とも同じように発生率が高いことを示していた)。
「論文の数値はつじつまが合わないのです」とホークス氏はローリングストーン誌に語った。「数値が変化している可能性も全くないとはいえませんが、根拠となる理由が提示されていません」 さらにホークス氏が言うには、これまでの研究では突起物の直接的な原因は定かではないものの、とくに手を頻繁に使う重労働者の間で高い有病率が確認されたという――この場合の重労働とは、単にスマホを覗き込むよりも首の筋肉に負担のかかる仕事だとみられる。

論文の著書が、スマホの使用といわゆる「角」との関連性を証明していない点も指摘しておくべきだろう。彼らは2016年の論文の考察セクションで、関連性を示唆しているに過ぎないのだ。そういわれてみれば確かにワシントンポスト紙の記事は、テクノロジーが若者の健康に及ぼす悪影響を騒ぎ立てる類のものだった。この手のジャンルには、過度なスマホ使用による「スマホ姿勢」「性欲減退」の危険をやたらと煽る記事も含まれる。テクノロジー絡みのさまざまな脅威はクリック数を稼げるかもしれないが、裏付けがとれていないものがほとんどで、テクノロジー自体が健康被害を引き起こしているというよりは、むしろ人間のテクノロジーとの複雑な関係が原因なのだ。

とはいえ、ニューヨークを拠点に活動するカイロプラクター、スティーヴン・ショーシェイニー博士によると、いわゆる「スマホの角」は確かに問題ではあると言う。「現役のカイロプラクターとして言わせていただければ、大流行しています。レントゲンでもよく見ますよ」。博士の推測では、彼の患者の「40~50%が」このような角を持っているとみられる。博士いわく、とくに若者は成人よりも骨が軟らかいので、角の形成がよく見られるという。
「10歳ぐらいの子供たちにこうした角が見られます」と博士。「とくに最近は増えていますね」 ショーシェイニー博士はスマホの過剰使用が元凶とまでは言わないものの、結果的に保護者に対して、子供の携帯利用時間を1日1~2時間に制限するよう勧めている。

自分の頭にいわゆる角が生えているかどうか知りたければ、調べるのは簡単だとショーシェイニー博士は言う。後頭部の付け根あたりに手を伸ばし、突起物があるかどうか触ってみればいい。だが実をいえば、仮に角があったとしても、VICEのITページMotherboardのキャロリン・ホスキンス記者も指摘しているように世界には頭の後ろの角よりも驚くべき出来事は山のようにある。姿勢が悪いことを気にするのであれば、2~3分スマホから離れてみるのもいいだろう。
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