現地時間火曜日(2019年6月25日)、エティカ名義でYouTubeで活躍していたゲーマーのダニエル・デスモンド・アモファが、ニューヨークのイースト川で死体となって発見されたとニューヨーク市警が発表した。彼は29歳だった。
任天堂を愛するストリーマーとして大人気だったアモファが行方不明になったのは先週のことだった。姿を消す直前、彼は自殺願望を語る動画をYouTubeに投稿していた。「Im Sorry(ごめんなさい)」というタイトルのこの動画は、YouTubeのサービス規定に違反しているとして投稿後すぐに削除された(他のユーザーによって再びYouTubeにアップロードされたが、現在もアモファのチャンネルでは視聴できない)。火曜日に彼の所持品がマンハッタン橋の近くで発見され、その後、彼の遺体がマンハッタンのイースト川から引き揚げられた。アモファの死因は自殺による溺死と当局が判断したとニューヨーク・ポスト紙は伝えている。
アモファは長い間、自身の精神面での葛藤を繰り返し口にしており、特にここ数ヶ月間の彼の言動の異様さは急速に増していた。2018年10月には、アモファがYouTubeのガイドラインに反するポルノを投稿したため、チャンネルが削除された。その直後にアモファーはRedditに「じゃあ、今度は僕が死ぬ番だ。
今年4月には、ニューヨーク市警との硬直状態をInstagramでライブ配信した。これは、アモファが意味不明の一連のツイートを投稿したあとで、市警がブルックリンにある彼のアパートに生活福利チェック(訳注:これは警察が市民の依頼によって音沙汰のなくなった家族や友人の消息・様子を調べること)にやってきたものだった。彼が銃を持って構えている写真が1枚あり、アモファはこの銃を最近ロングアイランドで購入したと言っていた。この悶着のすぐあとに彼は病院へ搬送されたと、ゲームサイトKotakuにニューヨーク市警の担当者が当時語っていた。
アモファの死は、ゲームコミュニティにおけるメンタルヘルス問題の論議を刺激した。アモファの死を受けて、アモファのsubreddit(訳注:Redditのコミュニティ)で自分のメンタルヘルス問題を共有する人があとを絶たない。
自殺の予知や予防が可能な信頼性の高い方法は皆無だが、ここ数ヶ月間のアモファの言動には自殺に結びつく兆候がいくつも見られると、エイプリル・フォアマン博士が言う。同博士は精神分析医で、自殺防止のエキスパートであり、米国自殺学会の役員を務めている。
「彼の行動がエスカレートしていたのは明らかです。人を遠ざけると言ってみたり、調節不全と思しきエピソードをいくつか公開していました」と、フォアマン博士が説明する。ここで博士が使う「調節不全(ディスレギュレーション)」という専門用語は、感情を上手く調節できない症状を指し、その結果として感情が爆発したり、不安定な言動になったりすると言う。そして、「彼の兆候はすべて重篤な精神疾患を示すもので、この重大さに気づいた人もいましたが、人によってはこういった奇矯な言動を面白いと感じて称賛していました。その果てにどうなかったかを知った今、本当に心が張り裂ける思いです」と続けた。
彼の死を知った37万人のファンは、昨年10月に削除されたアモファのオリジナルYouTubeチャンネルを元の状態に戻すことをYouTubeに嘆願するChange.orgのキャンペーンに署名した。この嘆願書には「私たちYouTubeコミュニティとジョイコン・ボーイズ(アモファが自分のファンの総称としてつけた名前)は、アモファのレガシーを記録保存するために彼のYouTubeチャンネルの復元を要求する。
フォアマン博士は、アモファのファンや彼と仲の良かったYouTuberにも、自分のメンタルヘルス問題に対処するための有効なリソースや手立てを持っていない人が多くいることを懸念している。アモファのファンベースをフォアマン博士は「彼らの多くは若い男性です」と言う。そして、「彼らは年を経るごとに自殺が非常に重要な公衆衛生問題化している世代です」と続けた(事実、米国国立精神保健研究所によると男性の死因第一位は自殺だ)。
フォアマン博士は、コミュニティ内でメンタルヘルス問題の議論が活発になるのは良いこととしながらも、アモファの死後数時間で交わされたコミュニティでの議論を確認したところ、メンタルヘルスに関する「知識や情報が圧倒的に足りない」と言う。そこで、博士はTwitchやYouTubeなどのプラットフォームに対して、一人だけで何時間も作業を行う環境にいるコンテンツ・クリエイターに向けて、メンタルヘルス問題を解決するリソース一覧を公開することを奨励する。
「それこそインフルエンザが流行したときに、人々にワクチンを打ちましょう、手を洗いましょうというアドバイスを公開するのと同じで、健康に役立つ常識的なアドバイスを、配信プラットフォームがエティカのコミュニティで公表すれば良いと思います」と、フォアマン博士が説明した。
また、ユーチューバーのダニエル・”キームスター”・キームのような人気コンテンツ・クリエーターなどは、アモファの最後の動画を彼のYouTubeチャンネルに再アップロードするようYouTubeに催促するキャンペーンを始めている。「あれはあの男の最後の言葉だ。それを削除するなんてあり得ない!」とキームがツイートした。
善意によるものであっても、そういうキャンペーンが実際は間違った方向へ導かれていると、フォアマン博士は指摘する。
「自殺や死に向かう短い間、そういう人たちの意識は異常な状態です。アモファも生き延びていたら、自殺に失敗した多くの人たちと同じように、彼も後から自分の精神状態が異常だったこと、まともな考え方が出来ていなかったこと、自分は病気だったことに気づいたはずです。彼の謝罪動画で話していたのは本来の彼ではなかったということです」と、フォアマン博士がローリングストーン誌に述べた。
こういった最後のメッセージや「最後の言葉」というものは、誰かの自殺に接したコミュニティの人々を危険に晒す可能性がある。フォアマン博士は「彼の死に意味を見出そうとする気持ちは理解できます。しかし彼の死を違う見方で見るようにして、他の人々を危険に晒さない努力をしてほしいものです」とファンに向けてアドバイスした。