かつては「マドンナたったひとりのため」の、トゥパック・シャクールが亡くなる1年前にマドンナに宛てた手書きの謝罪の手紙がオークションに出品される。
いまから2年前、マドンナは裁判官に「私が著名人であるからといって、プライバシーを守る権利が損なわれてはならない」と訴え、手紙の販売を阻止しようとした。そして2019年6月、控訴裁判所はマドンナの差し止め命令を覆した。2パックの手紙は米現地時間7月17日から入札価格10万ドル(およそ1100万円)でオークションに出品される。米オークションハウスGotta Have Rock and Rollは、手紙のスキャンデータが何年も前からインターネットに出回っており、同オークションハウスのウェブサイトでも全文が閲覧できるにも関わらず、落札価格は20万ドルから30万ドル(およそ2200万円~33000万円)になるだろう、と見積もっている。
2パックが射殺される1年前の1995年6月15日にしたためられたノート3ページ分の手紙で、ラッパーはマドンナに「自分が思い描くような友人になれなかった」ことについて謝罪した。1990年代に2パックとマドンナは一瞬交際していたものの、公にはしていなかった。2015年にマドンナは、1994年にテレビ番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』への出演前にシャクールのせいで苛立っていたため、「ギャングスタみたいな振る舞いをした」と述べた。オンエア中、マドンナは「ファック」を13回連呼し、視聴者に衝撃を与えたのだ。それでも、ふたりは関係を秘密にしていた。手紙でシャクールは、マドンナが黒人男性と交際することでキャリアに箔がつくのに対し、白人女性と一緒にいる姿を人に見られる不快感を記した。「(白人女性と交際することで)人々が自分に抱くイメージを壊してしまう」と思ったのだ。
「あの時の言葉はひどく俺を傷つけた。だって、きみが俺以外のラッパーとつるんでるなんて知らなかったから」とシャクールは綴った。「傷つけられたことに対して復讐してやろう、自分を守ろう、と思う本能的な反応とエゴイズムのせいで、俺は後悔するようなことをたくさん言ってしまった。」それ以来、自分が「心と精神面において成長した」とも記している。
シャクールがこのような手紙をしたためた理由のひとつは、「俺に万が一のことがあった時」にマドンナに心のうちを知ってほしかったからだ。さらにシャクールは「人間は見かけほど尊敬に値する存在じゃない……俺が放った5発の銃弾がその証拠さ」と綴った。
マドンナが緊急差し止め命令を申し立てると、2017年7月に裁判官は手紙と21点の品物の発売を禁止した。その時点で手紙の価値は10万ドルに達していた。申し立ての際、マドンナは手紙と出品予定の品物が彼女の手元を離れていたことを知らなかった、と主張した。マドンナ関連アイテムのほとんどは、マドンナの元私設秘書であったダーリーン・ルッツ氏が寄付したものだった。2018年4月、裁判官はルッツ氏が手紙などの品物を所持していることはマドンナも周知のはずであり、それにも関わらずオークション開始まで禁止措置を一切とらなかったとして、オークションハウスに有利な判決を下した。その時の判決は、2019年6月4日にニューヨーク州最高裁判所の上訴部が支持している、というのがオークションハウスの主張である。
手紙はマドンナとシャクールの関係が破綻してから書かれたものだが、手紙をしたためた当時、シャクールは性的暴行罪で9カ月間服役しており、Gotta Have Rock and Rollはこの手紙を「別れの手紙」と称している。シャクールは1995年4月29日に長年の恋人キーシャ・モリスと結婚したものの(マドンナに手紙を書く2カ月前)、同年10月、釈放された1週間後に離婚した。
オークションの収益の一部は乳がんをサポートする米団体BreastCancer.orgに寄付される。