ウィリアム・バー米司法長官は米連邦刑務所局に対し、2019年12月から2020年1月の期間をかけて死刑執行を命じた。また、今回より薬物注射による新手順にて刑が執行される。


ウィリアム・バー米司法長官は米連邦刑務所局に対し、今後半年間にかけて5人の死刑囚の刑の執行するよう指示した。連邦政府が死刑を執行するのは16年ぶりである。米司法省は、現地時間7月25日(木)にバー氏の指示内容を公表した。

「両政党政権のもと、米司法省は今回の5人をはじめとするもっとも凶悪な犯罪者に対して死刑を求刑してきました。彼らのひとりひとりは対等者たる陪審員によって完全かつ公平に裁かれ、死刑判決を下されています」とバー氏は語った。「私たちには、犠牲者とその家族のため、我が国の司法制度が言い渡した刑を執行する義務があります。」

2015年、米国での死刑件数は1991年ぶりに最低件数を記録した。理由は州レベルでの死刑判決の減少と、裁判で死刑を求刑された被告人が適切な法的援助を得られるようになったことにある。今回命じられた死刑は、2019年12月から2020年1月にかけて執行される予定だ。12月9日に最初に死刑に処されるのはダニエル・ルイス・リー死刑囚である。リーは3人家族の殺害と、アーリヤン・ピープルズ・リパブリックという白人至上主義国家の樹立を掲げ、政府転覆を企てたことで死刑を言い渡された。

63歳の祖母と9歳の孫を殺害したとして有罪判決を受けたレズモンド・ミッチェル死刑囚、16歳の少女の強姦殺人で有罪判決を受けたウェズリー・イラ・パーキー死刑囚、2歳半の娘を殺害したとして有罪判決を受けたアルフレッド・ブルジョワ死刑囚、母と娘2人を含む5人を殺害したとして有罪判決を受けたダスティン・リー・ホンケン死刑囚の死刑執行日も確定した。

司法省は死刑執行にあたり、これまで連邦および州レベルの死刑執行で使用されてきた3種類の薬物を混ぜたものではなく、1種類の薬物(ペントバルピタールという、てんかんと不眠症治療に使用される強力な鎮静剤)を使用することを明らかにした。
ペントバルピタールを含む3種類の薬物の製造元およびサプライヤーは、死刑執行にこうした薬物が使用されることに対し、抗議した経緯がある。

近年、死刑を求める声は徐々に減少している。ニュースサイトGALLUPによると、2018年に死刑に賛成する人が56%なのに対し、反対派は41%である。賛成派80%、反対派19%と死刑賛成派がもっとも多かった1995年を見ると、賛成派は下降傾向にある。この数年間、死刑を言い渡された受刑者の免罪が増えた結果、死刑賛成者も減少しているのだ。米NPOの死刑情報センターによると、1973年以来、166人の元死刑囚が免罪になっている。

連邦政府によって死刑に処せられた最後の人物は、米陸軍兵士のルイス・ジョーンズ・ジュニア死刑囚であり、別の兵士の強姦および殺人の罪で2003年に死刑に処せられた。ジョーンズ・ジュニア死刑囚は、ジョージ・W・ブッシュ政権下で死刑に処せられた3人のひとりである。ブッシュ政権以前、連邦政府は1963年から死刑を行なっていなかったのだ(テキサス州知事としてブッシュ氏は154件の死刑を執行し、米国史上もっとも多くの死刑を執行した知事という記録を打ち立てた。ブッシュ氏の記録は、後任を務めたリック・ペリー氏によって破られた。ペリー氏は現在、米エネルギー省長官である)。

民主党の大統領候補者のほとんどは死刑反対派である。
元副大統領のジョー・バイデン氏は、かつては死刑を支持していたものの、死刑賛成派の態度は和らぎつつあると指摘しているし、モンタナ州知事のスティーブ・ブロック氏も状況に応じた死刑は支持する、と述べている。

死刑情報センターによると、米国には連邦レベルの死刑囚が62人いる。そのなかにはボストン・マラソンの爆破事件で有罪判決を受けたジョハル・ツァルナエフ死刑囚、サウスカロライナ州チャールストンの銃乱射事件で有罪判決を受けたディラン・ルーフ死刑囚なども含まれる。62人の死刑囚のうち9人は、死刑が廃止された州の受刑者である。
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