PassCodeが9月25日、ニューシングル『ATLAS』をリリースした。新たな挑戦が詰まったメジャー2ndアルバム『CLARITY』を今年4月に発表し、その表現の幅を一気に広げた彼女たちだが、今回の『ATLAS』はその進化をさらに一段高いところへと導くことになるはずだ。


ピコリーモなどラウドロックの要素を導入したメジャー1stアルバム『ZENITH』を経て、昨年5月のシングル『Ray』ではそこから一歩外へと踏み出し始めたPassCode。彼女たちはここから先、どこを目指すのだろう。今回のインタビューではメンバーの南菜生、大上陽奈子に昨年からの音楽性の進化と、それによる彼女たちのグループに対する意識の変化、そして新作に込めた思いや「その先」について思う存分語ってもらった。

音楽面での変化について

─改めてこの1年強における音楽面での変化を、皆さんはどのように受け止めていますか?

南菜生(以下、南):メジャー1stアルバムの『ZENITH』(2017年8月発売)はそれまでPassCodeがやってきたこと、これからやっていきたいことをそのまま全部詰め込んだアルバムだったんですけど、初めてPassCodeを聴いたという人からは「全部同じ曲に聴こえる」と言われてしまったことがあって。ただ、PassCodeの曲を作っているプロデューサーの平地(孝次)さんは「このアルバムを出したら、新しいことに挑戦できると思っている。だからこそ、こういうアルバムを作ったんだよ」と言っていて、なるほどなとも思ったんです。それで次に出したのが『Ray』だったんですね。『Ray』を出したからこそ、次も『Tonight / Taking you out』(2018年9月発売)という二面性を持った両A面シングルを出すことができたし、そこからアルバム『CLARITY』へとつなげることができた。すべては『ZENITH』を出したからこそ挑戦できたことで、あそこでPassCodeのやりたいことは提示していたので、その後は幅を広げていただけなのかな、とも思っています。だから、別にまったく新しいことにシフトしたわけじゃなくて、やることの幅が広がっただけで、今回のシングル『ATLAS』も全部そこからつながっているんです。

─『ZENITH』という作品に対して自信があったからこそ、その後の音楽性の多彩さにも自然と対応することができたと。

大上陽奈子(以下、大上):うん、そうですね。


南:あれだけできたからこそ、別にブレていないというのはわかってもらえるという安心感もあったので。

─そういう自分たちが自信を持っていることに対して、周りからの評価も聞こえてくると思いますが、『CLARITY』の反響はどのように捉えましたか?

大上:例えば「4」や「horoscope」みたいな曲は『ZENITH』の頃にはなかった曲調なので、ライブでその曲が始まると今までにない雰囲気にガラッと変えられるようになったんです。お客さんからもその2曲が好きと言ってもらえることが多かったし。それって、今まで『ZENITH』で作ってきた地盤がしっかりしていたからこそ、そういう新しいタイプの曲を間に挟んでも大丈夫なんだ、楽しんでもらえるんだということが、ツアーを通してわかりました。

─今挙がった「4」や「horoscope」はそれまでのPassCodeからしたら異色作ではあるものの、『CLARITY』というアルバムのキモでもあると思うんです。言い方を変えれば、それまでPassCodeにラウドで取っ付きにくいというイメージを持っていた人にもアピールする武器になるんじゃないかと。

南:(頷きながら)PassCodeの曲自体はどれもメロディアスでキャッチーなんですけど、メロディの裏で鳴っているサウンドの重さから取っ付きにくいという認識を持っている方もいると思うんです。でも、サウンド的に聴きやすいほうに振り切った曲があると「これいいな。じゃあほかの曲も聴いてみよう」って間口を広げるきっかけにもなるし、たくさんの人に聴いてもらえる入口につながるんじゃないかなと思いますね。

─と同時に、楽曲の幅が広がれば、そのぶん表現力も求められますよね。

大上:「4」や「horoscope」みたいな曲が『ZENITH』をリリースした頃に存在していたら、果たして自分たちはちゃんと表現できていたのかな?と最近思うことがあって。きっと『ZENITH』ツアーでそういう曲をやっていたら、お客さんに伝わりきらなかったんじゃないか、「別にPassCodeにはこれを求めていない」と思われていたんじゃないかな。
でも、『ZENITH』のあとに「Ray」や「Taking you out」を発表したからこそ、今の自分たちが表現できているんじゃないかと思いますね。

表現にエモーショナルさが強まった理由

─実は「Ray」以降、皆さんの歌やパフォーマンス、表現からダイレクトに伝わるエモーショナルさ……人の温もりみたいなものがより強まっている気がするんです。

南:そのあたかさや温もりというのは、最近の曲のほうが出ているのかなと思っていて。『CLARITY』って聴くだけでちょっとあたかかくなるような、ハッピーな詞やメロディが多かったんですね。『ZENITH』の頃はわりと……まあ自分たちが楽曲に引っ張られるというのもあるんですけど、結構ダークな感じというか重たい気持ちに持っていかれる曲が多くて。そこが聴いている方からしたらカッコいいというのはもちろんあると思うんですけど、やってやるぞとか闘志を燃やすような『ZENITH』の曲にはそれが合っていたんです。でも、『CLARITY』を制作しているとき、平地さんに心境の変化があったのかなと思って。「今回は結構明るい曲が多いですね?」と尋ねたら、「明るい曲もいいなと思えるようになったから、そういう曲が多くなった」と言っていたんです。自分たちも心境の変化があったけど、平地さんの中でも「Ray」みたいな曲を出したことによって心境の変化が訪れた。その相乗効果で、人の温もりとか優しさとかが含まれた曲をPassCodeとしてやっても違和感がなくなってきたのかなと思いますね。

─「horoscope」では、南さんは作詞にも初挑戦していますよね。

南:作詞はずっとやってみたかったんですよ。
今までは人の言葉を借りて表現している感覚があって、そこにどれだけ自分を寄せていけるかやっていたんですけど、自分が詞を書くことによって自分から出た言葉をまっすぐ歌えるんじゃないかって。メンバーにとってもPassCodeをやっている人間が書いている言葉なので、自分に近い表現があったり腑に落ちる歌詞があったりして、ほかの曲とは若干表現の仕方が変わってくるんじゃないかと思いましたし。

大上:私、「horoscope」の仮歌をもらったときに、聴いてめちゃめちゃ感動して、初めて仮歌で泣いたんです(笑)。そのときは南が作詞したってまだ知らなくて、あとから「『horoscope』、めっちゃいい曲じゃない?」って言ったら「それ、私が作詞したの」と返されて(笑)。だから共感しやすかったのかな。実際、ライブで歌っても感情が乗りやすいですしね。

─なるほど。では、ダンスという表現についてはどうですか? 曲の幅が広がったことは、ダンスにも影響を及ぼしているんでしょうか?

南:メジャー1stシングル『MISS UNLIMITED』(2016年10月発売)から、ELEVENPLAYのKOHMEN先生に振り付けを全曲やってもらっているんですけど、そこから私たちのダンスに対する概念が変わったんです。それこそミュージカルというか、目で見て歌詞を捉えることに近い感覚に変わったというか、一つひとつの動きにより意味が込められるようになったんじゃないかな。それによってステージの見え方が変わったなと思うし、曲が増えていくごとに見せ方の種類も増えたんですよ。曲ごとに違うものが見せられるというのは、ダンスがあるグループとしての強みだと思うし、KOHMEN先生がつける振り付けって見ていても面白いので、歌詞に沿った曲だったり、メロディにピタッとはまった曲だったりすると本当に気持ちよくて。曲が増えるごとにその武器が増えている気がします。


大上:本当に幅が広がりましたね。さっきも話した「4」や「horoscope」は具体的に言うと、「4」だとすごくセクシーな振り付けで、「horoscope」はちょっと演技っぽく、1人ひとり違う動きをしているし。

南:「horoscope」は目でも曲の世界観を楽しめるというか。〈天井の夜空がぐるぐると回って〉という歌詞では天井を指さして、天井に本当にプラネタリウムが見えているような景色が広がってきたり。さらに、天井に照明を当てることで実際にそういう景色を表現したり、五感すべてを使って感じてもらおうとチーム一丸となって楽曲の世界をステージで表現しているというのは、最近の傾向としてあるかもしれません。

今のPassCodeに必要なのは「ATLAS」みたいな曲

─そうやってPassCodeが進化を続けるこのタイミングに、どんな新曲が届けられるのだろう?と楽しみにしていたんですが、ニューシングル『ATLAS』は個性的な3曲が揃った、『CLARITY』の先を見せてくれる作品になりましたね。

南:そうですね。以前だったら一つひとつをこなすことに精一杯で、その先に何か大きいものが見えたらいいなっていうフワッとした感覚でやっていたんですけど、今はZeppツアーもやって、『CLARITY』というアルバムを出したことによって、視野がより広く、鮮明になったというか。そうやって見えてきた次の場所を目指すにはどういうことをやるべきなのか?と考えたときに、今のPassCodeに必要なのは「ATLAS」みたいな曲なんだと気づいたんです。だから、今回はメンバーともスタッフさんとも「次に出す曲をどういう曲にしたい?」という話を、本当に細かく話して作りました。

─具体的にはどういう曲をイメージしましたか?

南:今はまだPassCodeのことをを知らない人たちでも聴きやすい曲というか。PassCodeがやっているような音楽ってリスナーの人口がまだ少ないジャンルだとは思うんですけど、そのジャンルをこだわって聴いている人じゃなくても楽しめて、「PassCodeってどんなグループだろう?」と興味が湧くような曲にしたいなと、作る前から話していました。


─「ATLAS」は〈応えのない未来〉というフレーズから始まってドキッとさせられたんですけど、最終的にはとてもポジティヴな歌詞ですよね。

南:タイトルの「ATLAS」には「地図」という意味があって、PassCodeを新しい場所へと導いてくれる地図になってくれるような曲になったらいいな、なってくれよという願いを込めて「ATLAS」というタイトルを付けたんです。この曲には〈叫んで 叫んで 叫んで〉と繰り返されるフレーズや〈証明してくまで〉という歌詞があるんですけど、それって私がライブ中によく話している言葉をピックアップしてくれたものなんですよ。PassCodeが今まで言ってきたこと、やってきたことを歌詞にしてくださっていて、それって自分たちの言葉でしかないという。以前は「この曲の歌詞はこうだから」と解釈して、咀嚼していろんなことを考えて、「じゃあこういうふうに表現してみよう」とか「こういうふうに歌うほうがいいのかな」とか考えていたんですけど、「ATLAS」は既視感じゃないですけど、自分たちが言ってきたことなので違和感がなくて、すんなり馴染んで歌いやすかったです。

大上:南がライブ中に言っている言葉そのままなので、レコーディングから歌いやすかったし。〈叫んで 叫んで 叫んで〉ってフレーズも本当にPassCodeを象徴している言葉なので、ライブでも心の底から歌えるんじゃないかと思ってます。

─新たな可能性を広げたアルバムのあとに、改めて初心を思い返して先に進むみたいなところもあるんでしょうか。

南:うん、そうですね。ちゃんと地に足がついている感じがあるというか、進んでいく先をちゃんと目指している感のある曲だなと思っています。いつも新しい作品を作るときは「この曲をライブでやると、どうなるんだろう?」っていうワクワク感もあるんですけど、「ここから成長していくんだろう?」というフワフワした感覚で出すことが多くて。でも、この曲は元から地に足がついていて、ちゃんと歩いていけば新しい場所にたどり着けるんだろうなっていう確信が、出す前からあるんですよ。


大上:新しいことをしているんですけど、背伸びしてない感が自分たちの中にすごくあって。

南:PassCodeってもともと反骨精神だったり、悔しい気持ちや負の感情をバネにして戦っていく曲が多かったんですけど、「Ray」を出したあたりからファンの方から「勇気をもらいました」「元気をもらいました」と言ってもらえることが増えて。自分たちにとってもそういう曲なんですよね、「Ray」とか『CLARITY』に入っている「Its you」とか。そうやって日常に寄り添った曲を表現できるようになったのは本当にうれしいですし、「ATLAS」もそういう1曲になっているんじゃないかと思います。

─それが最初に言った、人の温もり感が強まっているところにも通ずるんじゃないでしょうか。

大上:そうだったらうれしいなあ。

南:人間っぽいですよね、特に今回は。昔のほうがアンドロイドというか機械っぽいというか。

大上:確かに。

南:今のほうが感情を持って人と向き合ってライブをしている、音楽を作っているというか。自分たちが感じていることに近いのかもれしれないです。

─そういった意味でも、いい曲ができましたね。カップリングの2曲もすごく個性的ですし。

南:「Futures near by」が一番「今までのPassCode」的というか、今までやってきたPassCodeを最新にするとこうなりますという感じ。「GOLDEN FIRE」も新しいことをやっていますよね。でも、表題とカップリング両方でPassCodeっぽい曲を出さないところが私たちらしいというか。

─シングルの場合、2、3曲で自分たちをいかにわかりやすく見せるかが重要になりますが、今回は3曲3様なのに、どれを聴いてもPassCodeらしさがしっかり出ている。そこもこれまでに得た自信の表れなのかなと。

大上:そう言ってもらえるとうれしいですね。

日本語と英語の歌詞のバランスについて

─歌詞にしても「GOLDEN FIRE」はオール英詞ですし、「Futures near by」は日本語詞と英詞が半々で入り混じっているし。

南:以前ほど英詞に対して壁はなくなったかな。前は英詞が来ただけで構えていたんですけど、今は自分たちの曲を表現する上で「これは英詞のほうがいい」と思ったらそうするべきだし、わりとすんなり受け取れるようになってきたので、全然抵抗はなくなりました。

大上:逆に強みだなと思えるようになっていて。ここは絶対に英語のほうがカッコいいと思いながら歌えるようになりました。

─「Futures near by」を聴いていると、ずっと英詞で歌っているようにも聞こえるんですよね。

大上:わかります(笑)。

南:平地さん独特の感覚で、日本語をあんまり日本語っぽく聞こえさせたくないというのがあって。日本語を意識しすぎて歌うとペタッとしてしまうので、あんまり日本語っぽく聞こえないような歌い方やメロディの付け方を意識していて、歌詞を見ながらじゃないとわからなくなりますよね(笑)。でも、メンバーで言うと「Futures near by」は高嶋(楓)と大上がほとんど英語で、私は日本語しか歌ってないんですよ。だから、英語で歌っている感覚があまりなくて。私からすると日本語の曲なんですよ(笑)。

大上:平地さんって子音にこだわりが強くて。子音が強いと曲全体の雰囲気に疾走感や強さが生まれたりすると思うんです。平地さんはデモで仮歌を歌ってくれるんですけど、まだ歌詞が付く前なので”平地語”で歌っているんですよ(笑)。英語でも日本語でもなく、平地さんならではのデタラメな言葉なんですけど、それが本当に子音ばかりで母音がほとんどなくて。特にサ行が多かったりすると、それを作詞家の方も踏まえてくれて「S」から始まる言葉にしてくれたり、そういうことを大切にしてくれるんです。

南:だから作詞家の方が一番大変だと思いますよ。平地さんのあのやり方、どうにかならんのかって思いますから(笑)。でも、そのニュアンスやノリが出ないんでしょうね。それは自分で作詞したときに感じました。

大上:こだわりが強いね、平地さん(笑)。

─だからこそ聴いたときの気持ち良さは格別なわけで、海外の方も言語を気にせずに響きを楽しんでもらえると。

大上:そうですね。日本語の曲でも聴きやすいと思いますし。

─それにしても、今回も本当もすごい作品に仕上がりましたね。キャッチーさもヘヴィさも備わったこのシングルが、PassCodeをこの先どこに導いてくれるのか楽しみです。

南:そうですね。今回の『ATLAS』はなんとなくみんなの中にビジョンがありましたけど、次がどうなっていくんだろう?と……まったく同じことをもう一回することはPassCodeとしては絶対にないので、自分たちとしてもどういうところに向かっていくべきなのか、どういうものを出すべきなのかというのがまだ確定していないので、この『ATLAS』がどこまで連れていってくれるかで次が変わってくると思うと、すごくワクワクします。

大上:毎回そうなんですけど、特に今回は勝負のシングルですね。

曲に引っ張られて人間としての内面も成長していけた

─このシングルを携えて全国ツアー『CLARITY Plus Tour19-20』が始まります。新曲をライブで聴けるという楽しみはひとつあると思いますが、このツアーでお客さんに何を見せていきたいですか?

南:自分の中で最近、ライブのやり方が変わったというか。以前は自分たちのこと、自分のことを話す場と考えることが多かったんですけど、今はもっと観てくれる人が戻ってきたいと思えるようなライブを作りたいなと思っていて。どれだけ辛いことがあっても「こういう日があるから幸せに思えるし頑張れるよね」っていうところに最後は持っていきたいと思って、最近はライブをやっています。以前だったらマイナスの気持ちのまま終わることも多くて、もっと頑張りたいのに、もっとやりたいのに、それが不完全燃焼じゃないですけど、ある意味負の感情のまま終わることが多かったんですよね。でも、最近はそういう負の感情も抱きしめて、もっと明日も頑張りたいよねって、前を向いたライブをできるようになったというか。先のことを見て、「こういう日が次も作れるならば、またその日まで頑張ろうよ」みたいなモチベーションでライブをすることが増えたんですよ。だから、ただ「PassCodeのライブ、楽しかったな」って終わっちゃうグループにしたくないし、直近でライブを観られる機会があったとしたら「先月観たからいいや」じゃなくて、「また観たい!」と思ってもらえるようなライブをしたいなと。もちろん広げていく意味で『ATLAS』を出したんですけど、それだけじゃなくて、PassCodeがもともと好きな人が「やっぱり戻りたい場所はPassCodeのライブだよね」と思ってもらえるようなツアーにしたいし、新しく観た人には「PassCode、いいな。また観たいな」と思ってもらえるようなグループにしたいなと思っています。

大上:(笑顔で拍手をする)

南:最近こういうことが多いんですよ(笑)。高嶋がいるときも、私が話すと大上と2人で拍手して褒めてくれるし。恥ずかしいですね(笑)。

大上:思っていることは一緒なんですけど、自分の中ではまとまりきれてないんですよ。それをまとめてきれいに代弁してくれるから(笑)。

南:でも、照れ臭いじゃないですか、同じグループのメンバーから拍手されるのは(笑)。

─気持ちをまとめて自分の中でわかりやすく伝えられるようになったことは、グループの活動に影響していると思いますか?

南:さっき『ZENITH』のときは曲に引っ張られるという話をしましたけど、『ZENITH』ツアーのときは本当にギラギラというか、負の感情のほうに振り切れていることが多かったんですね。もちろん、カッコいいグループとして見られたいのであれば、ああいう曲でああいうライブをすることが正しいのかもしれないですけど、「Ray」とか出していく間にあたたかみのあるグループになれてきたのかな、曲に引っ張られて人間としての内面も成長していけたのかなと思っていて。今までは私たちのことを知ってもらうことが難しいなと思っていて、それがフラストレーションとして溜まっていたんです。「なんで知ってもらえないんだろう? どういて好きになってもらえないんだろう? もっといけるはずなのになんで?」っていう感情をライブにぶつけることも多かったんですよ。でもそうじゃなくて、ライブに来てくれる人たちと最高の1日を作りたいという感情のほうが大きくなってきて。グループをやっている以上、いつかは終わりがやってくるじゃないですか。だから、こうやって続けているときぐらい明るいものを見せたいというか、この一瞬は絶対に楽しかったものとして残したくて。今あるものを大切に考えられるようになってきたことで、PassCode自体を大切にできるようになったし、それによってライブの雰囲気や作りや流れも変わってきたのかなと思いますね。

大上:ライブ映像を見返しても思うもんな。『ZENITH』ツアーのDVDを観ると本当にギラギラしてますし、どこか尖っているというかトゲトゲしくて。カッコいい部分もあるし、そこが好きという方ももちろんいらっしゃると思うんですけど、ずっとそれでいくにはしんどいと思うんですよね、観てる側もやる側も。だから、今みたいな形に変化してきたことは、私はすごくよかったなって思うんです。

南:シンプルに歳を重ねたから、というのもあると思うんですよね。反抗期を脱したみたいな(笑)。

大上:よかった、脱出して(笑)。でも、グループだったらその反抗期に解散しちゃうことも多いと思うんですけど、そこを脱出することができたことで本当に大きな壁を乗り越えることができたなって思いますね。

南:真正面からぶつかって痛い目も見たし、そこで避けずにちゃんと乗り越えたことで人としてもグループとしてもひとつ成長できたからこそ、新しいものを作ることができて、お客さんにも寄り添えて自分たちにも寄り添えて、というふうに成長できたのは本当にあの経験があったから。今となっては「おいしいものを食べられるし、ツアーはいいよね」みたいな感じなんですけどね(笑)。あのときはそんなことを言ってられる余裕もなかったので。

大上:『ZENITH』ツアー中は1本ライブが終わったら「ああ、また来週ツアーか」みたいに思っていたんですけど、今考えると本当に勿体なくて。ツアーってすごくいい経験なのに、そう考えていたことに対してずっと悔しさがあったんですけど、今はそうじゃなくなったのがうれしいです。前がそんな状態だったからこそ、今はいい状態でツアーを回れることが本当に幸せなことなんだなって、改めてわかるようになりましたから。

─年齢に話もありましたが、大人になっていろんな見方ができるようになったのも大きいんでしょうね。

南:以前よりも俯瞰でグループのことを見れるようになりましたしね。自分たちがやっていることなんですけど、「こうしたほうがグループにとって最善なのかな」とか「自分はこうしたいけど、もしかしたらこう見えているほうがいいんじゃないか」とか、もっと視野が広がったというか。今はPassCodeのことを全員で育てている感じ。4人だけじゃなくてチーム全員でPassCodeをどう持っていくかという話をずっとしていますね。

─『ATLAS』というシングルはまさにそういう作品になっていますしね。

南:そうですね。こういう取材でよく「最近いい感じですね?」とか「最近調子いいって聞きますよ?」とか言ってもらうことが多いんですけど、自分たちとしてはスピード感がまだまだ遅いなという感覚があって。まだまだ知ってもらえていないっていう思いが強いので、今は種を蒔く時期じゃないですけど、『ATLAS』という種を埋めて、それが成長したときにもっと大きいところで花開いていけるような曲になっていくんじゃないかと信じて、今は一生懸命土を掘って種を埋めているところです(笑)。

今のPassCodeにとって必要なものとは?

─そういう時期の今、PassCodeが得たいもの、必要なものはなんですか?

南:技術ですね。今まではグループの熱量やフロアの熱さでカバーしてきたけど、もっと規模の大きい場所を目指すとなると間違いなく技術は必要になってくると思っていて。大きいキャパでやるとなると自分たちが小さく見えるわけで、だとすると歌を届けるための技術が必要になるし、遠くから観たときにも伝わるようなダンスの実力も付けないといけない。あとは、ステージの立ち方についても「どういう雰囲気で見せたいのか」とか「どう見られたいのか」ということも、最近細かく話していて。ひとりになった瞬間にまだ確立しきれていない自分たちの存在感が露呈するし、4人それぞれの見え方をもっと強くしていけたら存在感のあるグループにになれるんじゃないかなと思っています。

大上:私も一緒です。一人ひとりの存在が……っておんなじやな(笑)。

南:(笑)。オーラじゃないですけど、ステージに立っているだけで「この人ってアーティストだな」って思う人っているじゃないですか。私たち4人はまだそこまでにはなれていないと思うので、ステージに立ったときに別に歌ってなくても踊ってなくても「あ、PassCodeだ」と思わせられるような存在感を身に付けたくて。でも、それって単にステージの立ち方だけじゃなくて、自分がどういう意識で立っているか、どういう人間性なのかとか、もっと深いところにあるものだと思うんです。コアな部分をもっと鍛えて、目指しているものを明確にしたいねと、最近はメンバーとも話しています。

大上:バンドだとヴォーカルの人がフロントマンとしてオーラが強いという印象があるんですけど、PassCodeの場合4人全員がそのオーラを持つことができたら最強だなと思うんです。それができるようになったらもっと上に行けるだろうし、ステージもより大きなものになるはずだと最近考えています。

南:そういうところを目指すためにクオリティや技術面を上げつつ、人間としての部分ももっと上げていかないと、そういうふうにはなれないんだろうなと思うので、どんどん経験を積みつついろいろ成長していけたらと思います。

Edited by DA

<INFORMATION>

『ATLAS』
PassCode
ユニバーサル ミュージックジャパン
発売中

初回盤
PassCodeの変化を促す「感情」の重み


通常盤
PassCodeの変化を促す「感情」の重み


https://passcode-official.com/atlas/
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