人気アプリTikTokは、汚い言葉が歌詞に使用されている一部楽曲を人知れず除外していた。数週間にわたる不可解な”内部エラー”を発端に物議が醸し出されていた矢先、TikTok側は「事故だった」と、これらの楽曲を復元した。
TikTokは、15カ月以下という短期間で音楽業界を乗っ取ってしまった。このプラットフォームは、巨大かつ現在進行形で増加中のユーザー層と、新曲の発見&プッシュを繰り返し行なってくれる自慢のアルゴリズムの組み合わせで成り立っており、はやくも世界最大の動画配信サービスYouTubeと肩を並べるまでになった。メジャーな音楽レーベルは、ブレイクするための勢いを求めてシングル単位でTikTokと手を組んでは、楽曲に携わったアーティストに数百万ドル規模のレコード契約というご褒美を与えているのが現状だ。
そのなかで、2019年8月末にTikTokが突如として歌詞に不適切な表現がある楽曲を制限しはじめたのは、音楽レーベルにとっては意外なことだった。ローリングストーン誌が独自入手したレーベルの内部情報と、匿名を条件に語ってくれた複数のレーベルの従業員ならびにマネージメント関係者によると、不適切な表現がある楽曲に対していくつかの障害が設けられたそうだ。対象となった楽曲はTikTokで正しくアップロードされず、なかには過去の楽曲までもが除外されたケースもあったそうだ。さらに、TikTokユーザーが歌詞に不適切な表現がある楽曲を使った動画を新規で作れない、という事態も発生していた。
「どうやら、TikTokはののしり言葉や汚い言葉の使用を減らそうとしているようです」とTikTokでいくつものキャンペーンを成功させ、ラッパーbbno$のマネージメントも担当しているアントニオ・チャベス氏は語った。
この状況に危機感を募らせた音楽レーベルは、直ちに懸念をTikTokに表明しては、拒否された楽曲の”クリーン”バージョンを提供することでビジネスへの打撃を最小限に止めようと懸命の努力をした。10月半ばには、除外された不適切な表現がある楽曲はすべて復元されている。
TikTokの広報担当者は、不適切な表現がある楽曲の取り扱いに一時的にてこずったことをコメントで認めた。「内部エラーにより、歌詞に不適切な表現がある楽曲をうかつにもグローバルレベルで制限してしまいました」と広報担当者は述べた。
TikTokをめぐる今回のエピソードは、独裁者のように次のヒット曲を決められる巨大テクノロジー企業にいかに音楽レーベルが頼っているかを物語っている。それに、今回のTikTokのミスは、ビジネスの観点からすれば不可解だ——TikTokをサクッと閲覧しただけでも、いかに下品な言葉遣いがTikTokでウケているかは一目瞭然だ。子供たちはBigKlitの「Liar」に合わせてシャウトするのが大好きだし(「くたばれ! この腰抜けビッチ!」)、ことあればblackbearの「Hot Girl Bummer」を歌っているし(「おまえら全員ファック/おまえのダチは俺を嫌ってるけど、俺だってアイツらが大嫌いだ」)、Ugly Godの「One, Two」に大喜びで応じている(「1、2、このビッチ、何様のつもりだ? 3、4、おいビッチ、このアバズレをどうにかしてくれ」)。
TikTokの”内部エラー”は、同アプリを所有している中国企業Bytedanceのコンテンツ制限方法に対し、米国と英国が懸念を募らせていた最中に発生したものだ。10月初頭、マルコ・ルビオ米上院議員は財務長官が議長を務める対米外国投資委員会(CFIUS)宛に文書をしたため、Bytedanceが中国政府を支持しない動画の検閲を行なっているという疑惑を調査するよう促した。「自由社会ならびに世界において情報を検閲しようという中国政府の悪質な取り組みは受け入れがたいものであると同時に、米国と同盟国に対して深刻かつ長期的な課題でもある」とルビオ上院議員は記した。
アプリから汚い言葉遣いを取り除きたい、という短命かつ(TikTokいはく)意図的ではない努力は、2018年のSpotifyの取り組みを思い出させてくれる。2018年5月、Spotifyは「ヘイトコンテンツと悪意ある行動を取り締まるポリシー」を新たに導入。結果として、性的ならびに身体的暴行が噂されたR・ケリーやXXXテンタシオンらアーティストの楽曲がSpotifyのプレイリストから除外されたのだ。
だが、音楽業界が声を大にして異議を唱えると、同社は慌ててこのポリシーを撤回した。「奴らは音楽を検閲してるのか?」とケンドリック・ラマーの所属レーベルとしてお馴染みのトップ・ドッグ・エンターテインメントの”パンチ”ことテレンス・ヘンダーソン社長は当時このように述べた。「これは危険だ」とヘンダーソン社長は付言した。数週間以内にSpotifyは「アーティストの行動をめぐるポリシーの導入を控える」と発表。のちに同社のダニエル・エクCEOは、「出だしがマズかった」ことと「もっと上手くやるべきだった」と弁明した。
Spotifyの取り組みが意図的であったのに対し、TikTokは不適切な表現があるコンテンツを制限したのは、あくまでエラーであると主張しているが、それは民間企業から不満が噴出しなかったからにすぎない。おまけに米国の音楽レーベルには、連邦通信委員会(FCC)が定める放送禁止用語を使わない楽曲のクリーンバージョンをラジオ用として提出することが義務づけられている。それなのにレーベルの関係者は、blackbearの「Hot Girl Bummer」などの不適切な表現がある一部の楽曲は、TikTokの制限から巧妙に逃れられたと述べる(それに対し、blackbearの代表者はノーコメント)。さらに、レーベルの従業員は重要な楽曲が復元されるよう、TikTokとの連絡係が熱心に対応してくれたことも語った。
だが、今回のTikTokによる差し止めの気まぐれさを目の当たりにしたレーベルの従業員たちは、無力さと苛立ちを感じている。TikTokの動画でクリーンなオーディオバージョンが15秒だけ使用されても、楽曲のどこかにののしり言葉が使われているだけで楽曲がまるごと除外される可能性がある、とレーベルの情報提供者は語る。さらに、ののしり言葉の制限はヒップホップ楽曲に多大なる影響を与え、米国でもっとも人気のあるジャンルからTikTokは距離を取ろうとしているのではないか、と懸念されたほどだ。
先日、レーベル関係者のふたりは、TikTokがエラーによって除外してしまった不適切な表現がある楽曲をすべて復元した、という通知を受け取った。それなのに、10月17日になっても一部のレーベル従業員やマネージャーは制限が解除されたことを知らず、クリーンバージョンをTikTokに送り続けていたそうだ。
復元されたとはいえ、TikTokのヘビーユーザーのあるマネージャーは、TikTokを今後使用するうえで注意が必要だと語る。「私の作業のほとんどは細分化されているので、こうした状況は避けられます。楽曲、または動画がTikTokの意に反するものではないことをしっかり確認していますから。TikTokを利用する皆さんにも同じことをお勧めしますね」。
TikTokは、15カ月以下という短期間で音楽業界を乗っ取ってしまった。このプラットフォームは、巨大かつ現在進行形で増加中のユーザー層と、新曲の発見&プッシュを繰り返し行なってくれる自慢のアルゴリズムの組み合わせで成り立っており、はやくも世界最大の動画配信サービスYouTubeと肩を並べるまでになった。メジャーな音楽レーベルは、ブレイクするための勢いを求めてシングル単位でTikTokと手を組んでは、楽曲に携わったアーティストに数百万ドル規模のレコード契約というご褒美を与えているのが現状だ。
そのなかで、2019年8月末にTikTokが突如として歌詞に不適切な表現がある楽曲を制限しはじめたのは、音楽レーベルにとっては意外なことだった。ローリングストーン誌が独自入手したレーベルの内部情報と、匿名を条件に語ってくれた複数のレーベルの従業員ならびにマネージメント関係者によると、不適切な表現がある楽曲に対していくつかの障害が設けられたそうだ。対象となった楽曲はTikTokで正しくアップロードされず、なかには過去の楽曲までもが除外されたケースもあったそうだ。さらに、TikTokユーザーが歌詞に不適切な表現がある楽曲を使った動画を新規で作れない、という事態も発生していた。
「どうやら、TikTokはののしり言葉や汚い言葉の使用を減らそうとしているようです」とTikTokでいくつものキャンペーンを成功させ、ラッパーbbno$のマネージメントも担当しているアントニオ・チャベス氏は語った。
この状況に危機感を募らせた音楽レーベルは、直ちに懸念をTikTokに表明しては、拒否された楽曲の”クリーン”バージョンを提供することでビジネスへの打撃を最小限に止めようと懸命の努力をした。10月半ばには、除外された不適切な表現がある楽曲はすべて復元されている。
TikTokの広報担当者は、不適切な表現がある楽曲の取り扱いに一時的にてこずったことをコメントで認めた。「内部エラーにより、歌詞に不適切な表現がある楽曲をうかつにもグローバルレベルで制限してしまいました」と広報担当者は述べた。
「我々は直ちにエラーに気づき、システムの復元に取り組みました。我々が講じた措置は早々に効果を発揮しましたが、ようやくレーベル関係者の皆様に除外された楽曲の完全復元についてご報告できたのは、先週のことです。我々は誇らしい気持ちとともに音楽コミュニティをサポートしていますし、この度のエラー解決に取り組むあいだも我々を忍耐強くサポートしてくださったレーベルならびにアーティストの皆様に感謝しています」。
TikTokをめぐる今回のエピソードは、独裁者のように次のヒット曲を決められる巨大テクノロジー企業にいかに音楽レーベルが頼っているかを物語っている。それに、今回のTikTokのミスは、ビジネスの観点からすれば不可解だ——TikTokをサクッと閲覧しただけでも、いかに下品な言葉遣いがTikTokでウケているかは一目瞭然だ。子供たちはBigKlitの「Liar」に合わせてシャウトするのが大好きだし(「くたばれ! この腰抜けビッチ!」)、ことあればblackbearの「Hot Girl Bummer」を歌っているし(「おまえら全員ファック/おまえのダチは俺を嫌ってるけど、俺だってアイツらが大嫌いだ」)、Ugly Godの「One, Two」に大喜びで応じている(「1、2、このビッチ、何様のつもりだ? 3、4、おいビッチ、このアバズレをどうにかしてくれ」)。
TikTokの”内部エラー”は、同アプリを所有している中国企業Bytedanceのコンテンツ制限方法に対し、米国と英国が懸念を募らせていた最中に発生したものだ。10月初頭、マルコ・ルビオ米上院議員は財務長官が議長を務める対米外国投資委員会(CFIUS)宛に文書をしたため、Bytedanceが中国政府を支持しない動画の検閲を行なっているという疑惑を調査するよう促した。「自由社会ならびに世界において情報を検閲しようという中国政府の悪質な取り組みは受け入れがたいものであると同時に、米国と同盟国に対して深刻かつ長期的な課題でもある」とルビオ上院議員は記した。
アプリから汚い言葉遣いを取り除きたい、という短命かつ(TikTokいはく)意図的ではない努力は、2018年のSpotifyの取り組みを思い出させてくれる。2018年5月、Spotifyは「ヘイトコンテンツと悪意ある行動を取り締まるポリシー」を新たに導入。結果として、性的ならびに身体的暴行が噂されたR・ケリーやXXXテンタシオンらアーティストの楽曲がSpotifyのプレイリストから除外されたのだ。
だが、音楽業界が声を大にして異議を唱えると、同社は慌ててこのポリシーを撤回した。「奴らは音楽を検閲してるのか?」とケンドリック・ラマーの所属レーベルとしてお馴染みのトップ・ドッグ・エンターテインメントの”パンチ”ことテレンス・ヘンダーソン社長は当時このように述べた。「これは危険だ」とヘンダーソン社長は付言した。数週間以内にSpotifyは「アーティストの行動をめぐるポリシーの導入を控える」と発表。のちに同社のダニエル・エクCEOは、「出だしがマズかった」ことと「もっと上手くやるべきだった」と弁明した。
Spotifyの取り組みが意図的であったのに対し、TikTokは不適切な表現があるコンテンツを制限したのは、あくまでエラーであると主張しているが、それは民間企業から不満が噴出しなかったからにすぎない。おまけに米国の音楽レーベルには、連邦通信委員会(FCC)が定める放送禁止用語を使わない楽曲のクリーンバージョンをラジオ用として提出することが義務づけられている。それなのにレーベルの関係者は、blackbearの「Hot Girl Bummer」などの不適切な表現がある一部の楽曲は、TikTokの制限から巧妙に逃れられたと述べる(それに対し、blackbearの代表者はノーコメント)。さらに、レーベルの従業員は重要な楽曲が復元されるよう、TikTokとの連絡係が熱心に対応してくれたことも語った。
だが、今回のTikTokによる差し止めの気まぐれさを目の当たりにしたレーベルの従業員たちは、無力さと苛立ちを感じている。TikTokの動画でクリーンなオーディオバージョンが15秒だけ使用されても、楽曲のどこかにののしり言葉が使われているだけで楽曲がまるごと除外される可能性がある、とレーベルの情報提供者は語る。さらに、ののしり言葉の制限はヒップホップ楽曲に多大なる影響を与え、米国でもっとも人気のあるジャンルからTikTokは距離を取ろうとしているのではないか、と懸念されたほどだ。
「我々ができることは、あまりないのです」とある従業員は残念な気持ちをあらわにした。
先日、レーベル関係者のふたりは、TikTokがエラーによって除外してしまった不適切な表現がある楽曲をすべて復元した、という通知を受け取った。それなのに、10月17日になっても一部のレーベル従業員やマネージャーは制限が解除されたことを知らず、クリーンバージョンをTikTokに送り続けていたそうだ。
復元されたとはいえ、TikTokのヘビーユーザーのあるマネージャーは、TikTokを今後使用するうえで注意が必要だと語る。「私の作業のほとんどは細分化されているので、こうした状況は避けられます。楽曲、または動画がTikTokの意に反するものではないことをしっかり確認していますから。TikTokを利用する皆さんにも同じことをお勧めしますね」。
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