ルーカスフィルム社のキャスリーン・ケネディが、最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』や、シリーズを進化させる上での課題、ジョージ・ルーカスからの批評、そしてこれからのシリーズ展開について、ローリングストーン誌にたっぷりと語ってくれた。

ルーカスフィルム社のキャスリーン・ケネディ社長は、ハリウッド随一の女性実力者といっていいだろう。
超大作とは決して無縁ではなく、1982年の『E.T.』以来ずっとスティーヴン・スピルバーグ監督作品のプロデューサーを務めている。この関係はスピルバーグがジョージ・ルーカスと組んだ『インディ・ジョーンズ』シリーズにまで及び、2012年にルーカスがディズニーと売却交渉を行った際には、ルーカス本人から後継者に抜擢された。以来ケネディ氏はスター・ウォーズの世界の守護神として、これまでの経験を総動員し、商業的にはいまひとつだった2018年の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』でもそうだったように、たとえ製作途中でも、必要とあらばクリエイティヴチームの総入れ替えも厭わなかった。今年10月、『ゲーム・オブ・スローンズ』のデイヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスがスター・ウォーズの新三部作を制作するという一年越しの契約から離脱した2週間前、ケネディ氏はローリングストーン誌との電話取材に応じ、12月20日全世界公開予定のエピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』について語ってくれた。『最後のジェダイ』のライアン・ジョンソン監督とマーベルシリーズのケヴィン・ファイギ監督が後任に名乗りを上げているが、今作以降シリーズがスクリーン上でどう展開するかはまだ白紙の状態だ。

ー『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレヴォロウ監督が監督・脚本の候補に挙がっていましたが、結局はJ・J・エイブラムスを呼び戻す形になりましたね。三部作最終章の監督選びはとりわけ難題だったのではありませんか?

このシリーズでは毎回頭を悩まされますね。原作がないんですから。コミックものではないですし、800ページにおよぶ小説もありません。我々と一緒になって、次の方向性を考えてくれる熱心なストーリーテラーしか頼りになるものがないのです。製作プロセスは他の映画の場合と同じですよ。まずは、求められる感性を備えていると思う監督に話を持ちかけるところから始めます。
大事なのは、候補をかなり絞り込むこと――この手の作品に合った感性と、これだけの大仕事をこなせる経験と能力の持ち主だけ。ですから、候補者選びはできるだけ慎重に行うようにしています。それに通常の映画製作の行程に慣れている人だと、「ああ、しまった、こいつは想像以上に大変だ」とハタと気づく、なんてことも時々ありますからね。これは映画製作の常識ですが、自分の選択や決断が必ずしも最初から思い通りに進むということはありません。大勢の人々とたくさんの意見を交えながら、徐々に進化していくものなんです。そうやって、最終的な作品にしあげていく。私の場合は幸運でしたね、一緒に仕事をしてきた人たちはみな最後までとことんやりぬく素晴らしい人たちでしたから。J・Jもその一人です。彼はスター・ウォーズの大ファンで、顔を突き合わせて話をしたときからずっと情熱を注いでくれました。そしてプロジェクトに関われば関わるほど、どんどん夢中になって言ったんです。もし今日彼に頼めば、もしかしたら、また三部作をやってもいいと考えてくれるかもしれませんね――でも先ほども言ったように、これは壮大なプロジェクトですから。3~4年は余裕を見ないと無理でしょうね。
物理的に不可能です。

ー今作では彼と共同脚本家のクリス・テリオ氏が突破口を開いてみせましたが、どんな印象を受けましたか?

クリスはものすごく思慮深く、頭の切れる人です。J・Jの推薦だったんですが、すぐにわかりました。やはり、いつもと同じようなプロセスで延々と話し合いを重ね、山のようなアートワークを作りました。幸いなことに、J・Jは『フォースの覚醒』に関わる前から、そして製作中もスター・ウォーズにかなり精通していました――いわば、スター・ウォーズを隅から隅まで知り尽くす、といった感じです。単に映画を知っているだけじゃなく、何年もジョージと一緒に仕事したことのある人たちに話を聞いて、ジョージが作り上げた神話をきっちり理解するんです。我々も常に言っていることですが、ジョージはどのストーリーにも意味があって、伝えたいメッセージがあり、心から感動させる何かがある、ということを大事にしています。ですので、かなりの時間を割いて話し合い、満足のいくようなストーリーの骨組みを模索します。原作があるわけではない作品を扱うときには、先ほども言ったように、はっきりした視点を持ち、キャラクターやストーリーで自分らしさを出せる監督が求められます。それが物語の原動力なんです。J・Jがいい例だと思いますよ。彼は自分のエネルギーや情熱が映画製作と結びつかないと、何もできないタイプです。
一緒にいると面白いですよ。こちらが話を切り出そうとすると、あの調子で熱っぽく、エネルギッシュに返してくる。本当に面白い人です。おかげでいつも助かっています。本当によく笑わせてもらいましたね。

ーエピソード9のストーリーに関して、「これだ」と感じるまではどんな感じでしたか?

そうですね、「これだ」という瞬間に行きつくことはないと思いますよ。絶えず進化していますから。つまり、我々は今この瞬間も、細かいところを修正しているんです。このシリーズの製作では、ストーリーテリングの旅に終わりはありません。ですが、これまでの8作品の内容は把握しています。あの回はどんな内容だったか、というのはわかっているわけです。ですから、今作ではこれまでの流れを全て盛り込んで、そのうえで納得のいく結末を模索してきました。
最終的に上手くいったと思いますよ。その地点に到達したかどうかは、直感に頼るしかありません。フィードバックが欲しい時には、私が家族や友人と呼ぶ仲間たちに集まってもらって、実際に見てもらって、ちゃんとつじつまが合っているか、狙い通りの内容になっているかを確認します。今はちょうどその段階です。

ーライアン・ジョンソン監督は『エピソード8/最後のジェダイ』でかなり大胆な決断をしました。三部作の2作目として序破急の「破」にあたることを考えれば、ファンに挑戦状をたたきつけて、期待を裏切るように仕向けたのはある程度意図的だったのでしょうか?

まったくその通りです。我々はつねに、スター・ウォーズの方向性や時代性について話し合っています。明らかに、同じような映画をただ繰り返すことはしたくありません。あなたのおっしゃる通りです。つまり、私もライアンの仕事ぶりに大満足です。本当に素晴らしい映画でした。彼は過去に例を見ない映画製作者だと思います。
思い切った決断をしてくれて、本当にうれしかった。結構みなさん忘れがちなんですよ。とくに三部作を作るときは、1作目でまず状況を紹介して、2作目でドラマが起きて、3作目で完結します。ですからあの2作目も同じです。『帝国の逆襲』が三部作の中でもっともダークで劇的だったようにね。『インディ・ジョーンズ』もそうですよ! 『レイダース/失われたアーク』の次の『魔宮の伝説』はダークだったので、かなり賛否両論を巻き起こしました。物語の展開に関して皆さん驚いたようですけど、でも正直なところ、それが狙いなんです!

これほど熱心なファンの方々が、こんなに関心を寄せてくださるなんて嬉しいですね。我々がファンを無視している、と感じることもあるでしょうが、でもちゃんと耳を傾けているんですよ。私自身、世間がここまで関心を寄せてくれるなんてすごいなと思いました。私をはじめ全員が、いかに関心が高いかを実感させられました。我々は全員これを肝に銘じなくてはいけません。(我々と同じように)、ファンの人々もこの物語の守り神だということ、ある種のパートナーだと考えています。


今作の後にどんな映画が出てくるにせよ、仮にスカイウォーカーの物語とまったく関係がないものだとしたら、それは間違いなくシリーズ史上最大のチャレンジですね。今のところ、どの作品も第1作と何らかの形でつながっていますから。その点はどうお考えですか?
それこそチャレンジですね。まさに今、我々もその真っ最中なので、この先どうなるかについては私にもさっぱり検討すらつきません。あなたのおっしゃる通りですよ。今後の作品がどんなものになるのか、どうやって新しい方向に向かわせるのか。その点についてはもっと時間をかけて、もっと話し合いを重ねて、慎重に検討してきたいところです。そのうえで最終的な決断を出したいですね。

ーということは、本当にまだ次は決まっていないんですね?

決まっていません。様々な選択肢を検討して、どんなふうに展開するか、いろいろ模索しているところです。ご想像にお任せしますよ。過去に戻るのか? それとも未来の話なのか? こうした問題も解決されつつあります。同じ銀河系が舞台なのか? それとも別の銀家系か? 宇宙には果てがありませんからね(笑) 良いふうにも、悪い風にも取れますね。可能性は無限大です。その分、自由でワクワクしますが、かなりのプレッシャーや不安ものしかかってきますから。

ーマーヴェルのケヴィン・フェイギが加わった経緯を教えてください。

ケヴィンも昔からスター・ウォーズの大ファンで、本人もはっきり公言していました。『スパイダーマン』シリーズの2作品をやってみて、自分はマーヴェルの仕事もやりつつ、他のこともやれるんじゃないかと思ったんでしょうね。彼のほうから我々にアプローチしてきて、スタジオ側に「僕が加わって、スター・ウォーズの1作品をやらせてもらえる可能性はありますか?」と言ってきたんです。私もいい考えだと思いました。それで具体的にどんなことができるか、タイミングはいつがいいか、という話し合いを始めたところです。でも、本当にまだ始まったばかりですね。

ー今の仕事を、こんなに長く続けることになるとは思っていましたか?

一応言っておくと、この仕事を心から楽しんでいるんです。信じられないぐらいワクワクさせてもらいました。ジョージから直々に頼まれたということだけでも、大きな責任を感じましたしね。これから自分がシリーズを任されたんだるという思いでした。いざ新作を作るとなれば、彼と同じくらい情熱を持ったチームを集めなくてはなりません。この先どうなるのか、どのぐらい続けていくのか? 私にもまだ分かりません。様子をみているところです。ついに壮大なサーガを完結させて、素晴らしい映画を作るところまでもって来れて、本当に大満足です。観客の皆さんにもご満足いただけると思いますよ。なので、今は目の前のことだけに集中しています。先のことは、これからですね。

ーボブ・アイガーの最新著書のおかげで、ジョージ・ルーカスが『フォースの覚醒』に不満を抱いていたことが少し分かりました。その点はどう思いますか?

個人的に、ジョージと私は『レイダース/失われたアーク』の製作前に出会った時以来の仲なんです。長いですね、35年以上もの付き合いです。これからもジョージとは大大大親友でいるつもりです。自分とは切っても切り離せないものを作る場合、他人に任せたり、思っていたのとは違う方向へ進むのをただ見守るのが辛くなることはよくあります。だから最初は、ジョージにとっても辛かったと思いますよ――あんなに辛いとは彼も予想していなかったんじゃないでしょうか。J・Jはあれだけ熱心に、スター・ウォーズやジョージを神のように崇めていました。と同時に彼は自分らしさも出していかなくてはならなかった。彼自身の作品にしなくてはならなかったんです。映画製作に関わる監督はみな、自分らしさを見せなくてはならない。ストーリー展開の中に、自分らしさを出していかなくてはいけないんです。それが新たな視点となる。ジョージが反応したのもそこじゃないかと思います。

彼はJ・Jの判断すべてに納得していなかったかもしれない。それはライアンに対しても同じでしょうね。でも彼は、映画製作のことはちゃんとわかっています。それは私が保証します。それにILM社(ルーカスフィルムの視覚効果部門を担当するIndustrial Light & Migic社のこと)の仕事ぶりも認めています。まあ、彼が立ち上げた会社ですしね。いつもいつも私に言うんですよ、あそこまでやるとは思わなかった、とか、人の心に訴えるにはどうすればいいか、とか。この間もいきなりやってきて、『ザ・マンダロリアン』の製作状況を確認していきました――(監督の)デイヴ・フィローニとは長い付き合いなんですよ。(シリーズの製作者)ジョン(・ファヴロー)とも長い付き合いです。撮影セットで製作状況を見た彼はまるで子供のようでした。彼がまた夢中になっているのがわかりました。だから後悔する気持ちも少しはあると思いますよ。自分はもう前線で監督するわけではないけれど、いまも関わっているわけですから。じわじわと感じているでしょうね。つねにジョージの気持ちがわかるわけではありませんが、彼は自分が作り上げたものをそれはそれは誇りに思っています。2020年になろうとしている今も、大勢の人が楽しんでいるなんて、本当に驚くべきことですよ。

ージョージの気が向いて、1度だけ監督するとか、そういう可能性はあったりするでしょうか?

どうでしょうね。でも、そうなったら素晴らしいと思います。もし彼がまたやりたいという気になったらね。でも、どうでしょう。彼はいまミュージアムのほうに一生懸命ですから(ロサンゼルスの美術館George Lucas Museum of Narrative Artのこと)。これまた壮大なプロジェクトで、きっと素晴らしいものになりますよ。映画製作がテーマのミュージアムなので、引き続きストーリーテリングに没頭しています。それと、小さなお嬢ちゃんにも(6歳の娘、エヴェレストちゃん)。なので、彼は今ものすごくイキイキしていますよ。
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