いよいよ来月公開のシリーズ最終章となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。脚本兼監督を務めるJ.J.エイブラムスが、米ローリングストーン誌のインタビューで、終わりを迎えるサーガへの挑戦、ファンからの批判、ジョージ・ルーカスへの敬意について大いに語ってくれた。


僕は、今から100年後に子供たちがこの9本の映画を見ているのをよく想像するんだーー。

映画監督のJ.J. エイブラムスは『スター・ウォーズ』の新作について話してくれている中、その製作作業を進めていくためにインタビューが中断され続けている。彼は、自分の製作会社バッド・ロボットのサンタモニカに構えるウィリー・ウォンカにふさわしい本社の2階にある自分のオフィスにいる。そのアシスタントはメモを渡すためにドアを開けっ放し、エイブラムスのiPhoneには、映画の視覚効果スーパーバイザーからのメッセージが段々と緊急性を要しているかのように届く通知音が鳴り響く。彼は、ジョン・ウィリアムズが12月20日公開の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のスコアを通しでオーケストラ指揮をしていたソニースタジオから戻ったばかりだ。 ちょうど先週、エイブラムスはバッド・ロボット社にあるグリーン・スクリーンの部屋で、再撮影をしていた。インタビュー当時は10月中旬。公開まで71日だ。

ルーカス・フィルムの社長キャスリーン・ケネディが脚本を却下したと伝えられるまでは、エピソード8は『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレヴォロウが脚本と監督をやることになっていた。そして、ルーカス・フィルムはお互いに別れる道を選んだとしている。それにより、2015年の『フォースの覚醒』を監督したエイブラムスには、共同脚本家のクリス・テリオと一緒に戻ってゼロから始めるチャンスが巡ってきた。だからこそ、今は切迫した状態が続いている。


「監督って、教師になるよりもはるかに簡単なんじゃないかな」とエイブラムスは言う。「でも、今回はかなり特別な難題があるんだ。特に演出をしているとき、シーンに人間ではない人がいる場合だ。もう生きていない人が出てくるシーンの場合もある」。エピソード8での試練は、現代世界で最も愛されている物語の1つに満足のいく結末を作り出すことに加えて、キャリー・フィッシャーの2016年に起きた突然の悲劇的な死に向き合うことだった。 ルーク・スカイウォーカーやハン・ソロとは異なり、レイアのキャラクターはまだサーガの中で生きている。ジレンマに陥ったエイブラムスは『フォースの覚醒』の未使用映像を使うことで難題を解決した。

エイブラムスは、ディズニーのライバルであるワーナーメディアと大規模なプロダクション契約を結んだばかりだ。これにより、スーパーマンバットマン、その他のDCコミックスの英雄たちを自分の手に入れることができた。1階には風変わりな装飾がされている中にスーパーマンの相当な数のオモチャが置かれている。「まだそういった話し合いはしていないんだ」とエイブラムスは語るが、その言葉にはあまり説得力がない。

―『フォースの覚醒』の時と同じように、今回も望み通りのスケジュールではなく、タイトですね。
それがどれほど大変なものになるのか気づいていましたか?

気づいていたかどうかなんて全くわからない。今回は前回以上にものすごく野心的だからね。

―どうしてですか?

これは終わりであって、始まりではないんだ。1つの3部作だけでなく、3つの3部作の終わりでもあるんだ。規模の面では、かなり大きな映画になった。物語的に言うと、どこを見ても、今まで以上にたくさんのことが起きている。視覚効果でも、動き回るものが増えている。この映画は僕がこれまで関わった中で一番難しいものだね。格段に大変だった。キャシー(キャスリーン・ケネディ)が僕に電話をしてきた時から凄まじい勢いだった。目的や理由、やり方を考えるのは大変なことだけど、「わかったぞ」と思いたくはないね。だって、そうしたらヘマをしてしまうからだ。


―なぜ、今回がスカイウォーカー・サーガの終わりになってしまうのでしょうか?

エピソード7の時にはすでに、そうなることは感じていた。そう言うことが話し合われたかどうかは覚えていないけれど、これが最後の3部作になるとは感じていたね。スカイウォーカーの物語の結末にはふさわしいように感じていた。次にどんなものが来るのか誰にもわからない。これまでの登場人物の誰かが関わる作品があるのかな? 僕は『スター・ウォーズ』関連の他の作品には全く関わっていないので、何も言えることはない。誰なら知っているのかな。とりあえず、今回は終わりのように感じたんだ。

―『最後のジェダイ』でのライアン・ジョンソンのアプローチには、無礼ながらも面白いところがあり、あなたが作り上げたものをいくつか覆してしまいました。たとえば、スノークは重要な悪役に見えましたが、その彼を殺してしまいました。

彼が書いた脚本の初稿を読んだときには、僕は笑ってしまったよ。だって、それが彼の解釈であり、彼の考えでもあるからね。彼が作業中に編集済みのシーンを僕は観客として見させてもらった。
彼がフィルムメーカーとして取った選択を僕は大いに尊重するね。僕だったら、かなり違った選択を取っていたよ。同じように、もし彼がエピソード7を作っていたら、別の選択をしていただろうね。

―彼がしたことで、1番驚いたことは何ですか?

1番驚いたことはルークがどれほどダークだったかってことだ。「ちょっと、そんなこと予想もしてなかった」って思った。そこが『最後のジェダイ』が紛れもなく成功したことなんだ。常に期待を覆している。あの映画の中で起きたことって、みんなの中では起きないと思っていたかもしれないから、かなり楽しいんだ。

―こういった物語の流れを予想していない方に変えてしまう様々な出来事は、あなたが物語に与えた方向性に対し、どのような影響を与えたのでしょうか?

『フォースの覚醒』の共同脚本家ラリー・カスダンとは、可能性としてのストーリーの向かう先についてよく理解はしていたんだ。それに、ライアンの脚本を読んだ時に僕が感じたのは、あの映画で起きるあらゆることに関して、僕の思っていた必然的なストーリーの展開を排除するようなものは何もなかったということなんだ。

―今回の映画の共同脚本家クリス・テリオとの作業はどのようなものでしたか?

クリスは本当に素晴らしい人間だよ。彼の物事に対するアプローチ方法は学者的なものなんだ。
取り組んでいるものがなんであろうと、非常に見事なやり方でそれを研究する。読みかけの本なんかをたくさん抱えていることがよくある。この拡張された世界観についてとても精通している人と仕事をするのは魅力的だったよ。僕は本を読んだり、アニメを見たり、小説を読んだりしたけど、クリスの知識量はパブロ・ヒダルゴのものに近かった。パブロはルーカス・フィルムにいる人で、『スター・ウォーズ』に関する情報の金庫室のような人なんだ。

ただ、その作業は実際には、みんなが思っているように、物語を通して会話し、感情的になるものを見つけ、できる限り直感に頼るものだ。脚本執筆を進めていく中で、映画を良くするために批評や批判に耳を傾ける。アイデアをより良くすることを恐れない。大抵、僕らはあるシーンについて十分に議論したあとに別れると、お互いに別のシーンを書き、その書いたものを共有する。すると、何か思いつくことがある。また、彼は脚本の執筆だけでなく、撮影の間、さらには仕上げの段階でさえも、素晴らしい。映画をよくしようとしてくれるし、僕らがうまくやろうと取り組んでいるけれど結局は無理なことを取り除いてくれるし、「それはカットしよう」と悟ってくれるんだ。
今、彼はここにいるよ。下の階にね。

―『スター・ウォーズ』はニクソンの退陣やベトナム戦争の終結から数年後に公開され、ルーカスの同世代の仲間が作った悲観的な映画とはかなり対照的なものでした。今回の新しい3部作もやはり現代の混沌とした時代に公開しています。

確かに政治的には類似点が見られるけど、映画の鑑賞という視点で言えば、全く異なる状況だと思う。でも、真実や希望に満ちたものを同時に伝える作品にとって、今は悪い時期なのかどうかはわからないね。

―最初の作品に見られた喜びと変わらない雰囲気で終わる必要があるのでしょうか?

ちなみに、みんなは旅をする価値のようなもの、ハッピーエンドや悲しい結末に関係なく満足感を得られるようなものがあってほしいと思っているはずなんだ。課題は、一貫性を持たせる方法を見つけ、今までの内容を尊重すると同時に、予想外のことをすることだった。それは作品に必要不可欠なものであり、また今日という現代に関連するようなものでなければならなかった。そして、例えば、綱渡りをしている時に、「踊りたい」と思うもの、そこに楽しみを感じたいと思えるものであってほしい。まるでカミソリの鋭い刃の上にいるようなものだね。

―以前、今では有名になりましたTED TALKでスピーチをされましたが、そこで、おじいさんから頂いた謎の箱をいまだに開けていないという話に基づいて、ストーリーをミステリー・ボックスとして語りました。それは、自分の手元にあるカードを全て見せなくてはならないエンディングを持つ映画とどのようにマッチするのでしょうか?

その話が原動力ということでは、まったくないんだ。「ミステリー・ボックス作戦を今回のストーリーでどうやって使うべきか」と積極的に考えているわけではないんだ。僕が言いたかったことは、いいストーリーというのは、何が起きているか、どうしてそうなるのか、どんな心情なのか、といったことを知りたいと思わせるものだということ。それから、僕がTED TALKで何を話せばいいのか考えていたところに、「君が持っているあの箱のことを話してみれば」と言ってくれたのが、友人であり、優秀なプロデューサーのブライアン・パークなんだ。

―それで、いろんなことが物語の中でかなり誇張されたのですか?

実は、僕はそのことを全く考えたことはない。だから、誰かがそのことを話題にしたら必ず、僕は「ああ、そう、そのことね」と言ったりしている。素晴らしいストーリーには疑問が湧くことはないと今でも思っているわけでないよ。でも、エンディングは、その名が示す通り、結論的になるべきなんだ。僕は、今から100年後に子供たちがこの9本の映画を見ているのをよく想像するんだ。だからこそ、必然性と一貫性の感覚が必要なんだよね。繰り返すけど、もし観客が楽しんでいない場合、少なくとも楽しもうとしていない場合、絶望的だ。だから、映画には、クレイジーかもしれないものもあると思う。その中には、僕のお気に入りもある。そして、それ次第で、人々に受け入れられるかどうか決まるんだ。

―レイには大きなファン層がありますが、そのキャラクターの背景にある元のアイデアは何でしたか?

アイデアは、ある若い女性の物語を伝えることだったんだ。その女性は本質的にパワフルで、本質的に道徳的で、本質的に優しいけれども、それだけではなく、世界の中で自分の居場所に苦しみ、あらゆる方法を使って自力で生きていかなくてはならないキャラクターなんだ。『スター・ウォーズ』の世界観で楽しめる仕事のチャンスを得た時と同じくらいエキサイティングなことは、私が”知りたい”という不思議な衝動に駆られたこの若い女性の存在なんだ。キャスリーン・ケネディとの最初の会議でさえも、物語の中心に女性を置くというアイディアは浮かんだ。「若いヒーローの物語はこれまでに見てきた」という考えは避けられない。でも、レイのような女性の目を通して物語を見たことはなかったので、それは僕にとって1番エキサイティングなことだったね。

―『フォースの覚醒』に対する批判の1つには、最初の3部作の要素に忠実になぞっているということがありますが、それがある意味では狙いのようなことだったでしょうか?

その批判をしっかりと受け入れるよ。重複しすぎていると思った人には、「君の話をしっかりと聞き、その評価を尊重する」と言いたい。でも、狙いは物語を進めて、ルーク・スカイウォーカーの存在は神話だと思っている若い女性から始めることだった。さらに、歴史が繰り返されるだけの物語ではなく、僕らの知っている過去の映画を歴史として内包した物語を語ることなんだ。だから、僕らの映画のキャラクターは、今でも善と悪が対立している場所に住んでいて、過去に起きたことの陰に怯えながら暮らしているし、父や先人たちの罪にいまだに立ち向かっているんだ。これは郷愁を誘う内容ではない。僕には、次のような言い方できると思った。「僕らが知っているスターウォーズに戻ろう。そうすれば、新たな話を語ることができる」と。

―昔からのファンの批判には、新しい3部作はオリジナルのヒーローをめぐる話では全くなかったというのがありますが、ルークやレイア、ハンの物語をもっと膨らましたかった思いはあなたの中にありましたか?

確かに彼らの物語にできたかもしれない。でも、彼らの役目は新しいストーリーをサポートすることのように思ったんだ。『スター・ウォーズ』ファンの素晴らしいところは、彼らが非常に気を配っているところだよ。そして、非常にシニカルな人やネガティブすぎる人たちでさえ、作品で描かれたことをほとんど受け入れてくれるんだ。たとえそれが議論のネタになっていてもね。僕から言えることは、今回の3部作の主人公たちがかつて登場したキャラクターと自然に通じ合っているようだったということだ。

―ボブ・アイガーは本の中で、ディズニーにとってルーカス・フィルムの買収が成功かどうかはあなたの作品にかかっていたことから、『フォースの覚醒』は、40億ドルの映画だとあなたに言ったところ、そのことであなたは面白がっていなかった、と書いています。

面白がっていたよ。でも、僕もそう思ったよ。彼やディズニーが投資したことは小さな賭けではないことはわかっていたからね。彼はこのビジネスが成功する証拠が少なくともいくつか欲しくて、この作品に注目していた。僕は彼の賭けにこれ以上感謝できなかった。だから、僕は、誰かのために働く時には必ず、その人のためにいい結果を残したいとだけ思うようになった。それに、それを見るときは、自分のお金で作ったものと思って考え事をする。だから、この作品に気軽に取り組むことは絶対にしなかったし、「40億ドル以上を払って、あの作品を生み出した会社を手に入れた」と思うことも絶対になかった。

―また、ジョージ・ルーカスが『フォースの覚醒』には不満があるということも本の中で明かしています。その当時、それについてどう思いましたか? また今は、それについてどう思いますか?

ジョージには感謝の気持ちだけしかない。彼にとっては複雑なことなんじゃないかな。自分が作り出したもの、自分にとっては赤子同然だったものを誰かに売ると決めることは、小切手に署名して笑顔を見せること以上に複雑な思いだったはずだね。でも、彼はものすごく親切で、とても寛大だった。

彼がやって来て、この新しい映画に取りかかるために最初の会議を開いた際、僕らはいろんなアイデアやストーリーを話し、ジョージからは大切なことを聞いた。それからは、ストーリーの基本的なことを忠実に守るようにすること以外は何もしなかった。そうする努力は難しくはない。繰り返しになるけど、彼は本当に親切なんだ。だから僕は感謝するのみだよ。『フォースの覚醒』が彼にとって今までで最高な映画であることを望んでいるか? その通りだ。僕は彼を優遇したかっただけなんだ。ジョージに深い敬意を抱いているだけなんだ。今もなお、彼が作り出したものに畏敬の念を抱きながら、心から映画に取り組んでいるということを言っておきたい。

―巷で言われていることは、レイのキャラクターはジェダイにあっても異常なほどに才能があるように見えて、ルーク・スカイウォーカーよりも速く物事を学んでいるということです。

そうだね、不気味だよね?(笑)もっともだ。それは偶然ではない。

―『フォースの覚醒』には、1つの星系全体で数十億の人間が殺されてしまう場面がありますが、そのシーンは感情的には全く突き刺さりません。

もともと、その星系が破壊される時に、共和国の惑星にいる登場人物がいたんだ。ただ、話がちょっとズレているように感じた。だから、編集をやり直している際に、もともとあったレイアのシーンをごっそりと省くことになったんだ。

―それが今回の映画で必要になることがわかったということですか?

その通り。不思議なことに、誰かが5ブロック先で殺された場合、その悲劇的なニュースに人は反応する。千人が爆弾で殺された場合、千人であろうと、一万人であろうと、百万人や五十億人であろうと、その人数の多さにほとんど人の頭は働かなくなってしまうんだ。感情的に反応するのは本当に難しい。だから、君の言う通りだ。そういった人たちの死をもっと時間を使って悲しめたらよかったと思う。でも、不思議なことに、話題にする人が増えるほど、人は何かを吸収して感じることが難しくなるんだ。

―面白いことに、ルーカスは『スター・ウォーズ』の1作目で消えていってしまう惑星オルデランのシーンを撮りたがっていましたが、予算上の理由から撮影することはありませんでした。

え、本当に? 彼にはそれは必要なかったよ。それに、当然なことだけど、あの映画は完璧だと言っておきたい。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
12月20日(金)日米同時公開
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