本記事では、DAY1に「東京・渋谷の夜を遊び続ける」というテーマで開催されたトークセッションをレポートする。
MC MAMUSHI:「女性から見た、わたしたちのナイトカルチャーと未来」について話していければと思います。女性の話なのに、僕からしゃべり始めて恐縮ですがMC MAMUSHIと申します。よろしくお願いします! そして、主役のお2人を簡単に僕の方からプロフィールを紹介しますね。桂葵は、1992年生まれのアスリートです。バスケットボールプレーヤーとして学生時代、日本代表としても活動して、アジア2位、世界7位を獲りまして、インカレでは優勝してMVPも獲得しています。そこから大体の人はプロに行くんですけれど、桂葵はプロに行かずに就職して総合商社に入社します。それから、2020年東京五輪で3人制のバスケットボールが正式種目に決まったんですけれど、それを機に3年のブランクを挟み復帰しまして3x3日本代表候補に選出されて、今も活躍しているという彼女です。
桂葵(以下、桂):良いところばっかり紹介していただいて(笑)。ありがとうございます。よろしくお願います!
MC MAMUSHI:そしてLicaxxxさんです。僕から言うのも野暮なんですけれど、一応紹介しますね。
Licaxxx:仰々しい感じですけれど(笑)。よろしくお願います。
MC MAMUSHI:最初は渋谷の街の印象っていうところからイントロとして入っていければと思います。
Licaxxx:「あー渋谷ね、チャラい人多いよね」みたいな印象がごく一般的なイメージかと思うんですけれども。私としては、一番遊びにいっているクラブが集結していて。一口にクラブと言っても、色々な種類がありまして、みんなが知っている曲が流れていていわゆる大学デビューした方がいくような箱もあれば、みんなが全然知らないような音楽を好んでやっているようなところもあって、本当に様々な種類のクラブがひしめき合っていて、私としては渋谷は完全に遊ぶ場所です。レコードショップも多いので、世界中からレコードが集まってきている街でもありますよね。
MC MAMUSHI:普段もLicaxxxさんは渋谷にいることが多いの?
Licaxxx:多いですね。私の場合は、街に繰り出すってなるとレコ屋にいくかクラブに行くかがほとんどになってしまうので、ほぼ渋谷にいますね(笑)。
MC MAMUSHI:仕事でも渋谷にいるからね。最近はレコードもよく買われていると。
Licaxxx:そうなんですよ。始めたての時はCDJがクラブの標準になっていった時代だったので、データをCDに焼いて持っていっていたんですけれど、ここ5年は、レコードでしか出ていない音源が欲しいっていう欲がだんだんと激しくなっていってですね(笑)。
Licaxxxと桂葵から見た渋谷の印象
MC MAMUSHI:元々、東京出身なんだっけ?
Licaxxx:そうですね。東京の東村山市と言うところから出てきて、高校生の時はCDを買いに来る時だけ渋谷のHMVとかタワレコを目指して出てきていました。ダンスミュージックレコードに行ってビビって帰るみたいな(笑)。

Licaxxx(Courtesy of WHITE NIGHT WEEK )
MC MAMUSHI:その当時の渋谷と今の渋谷って印象は変わってるものなんでしょうか?
Licaxxx:東京といっても住んでいた東村山市は、渋谷まで電車で1時間くらいかかるところで。都会に出てきてる意識もありましたし、ギャルか外国人がいるみたいなざっくりのイメージがありますね。そこからはアイコンとして女子高生のギャルは減りましたけど、基本的には変わってないかな。
MC MAMUSHI:桂葵は渋谷に関してはどんなイメージを持ってる?
桂:Licaxxxさんが基本渋谷にいるっておっしゃったじゃないですか。実は私も、渋谷にいるんですよ。

桂葵(Courtesy of WHITE NIGHT WEEK )
MC MAMUSHI:2005年にNIKEがリノベーションしたストリートバスケコートが代々木公園にできまして。日本にはそんなにストリートコートがないので、あのコンディションでキープされているのはかなりレアなコートです。
桂:学生時代からかなりバスケに寄った生活をしていたんですけれど、渋谷は結構来る街でした。
MC MAMUSHI:桂葵は自分で言うのもあれだから言うけど学生時代からエリートプレーヤーだったわけじゃない。学生バスケのトップを決める場所にずっといて。プロの誘いもあったと思うんだけど、なんで行かなかったの?
桂:ありました。渋谷の話でいうと、私はやっぱりバスケの渋谷しか知らなかった。同じ街にこういう渋谷の楽しみ方をしてる人がいるわけじゃないですか。
MC MAMUSHI:でもまた戻ってきたわけですよね?
桂:皆さん戻ってきたっていう表現をされるんですけど、私にとってストリートバスケは全く違う世界でしたよ。MAMUSHIさんも知らなかったですもん。
MC MAMUSHI:別に俺が呼び込んだわけじゃないからね(笑)! でも、今はがっつり働きながらバスケもしていると。
桂:深夜に代々木公園で練習する生活は、自分で言いますけどエリートバスケの環境では考えられなかった世界です。体育館に冷暖房ついてないだけで文句を言うような環境でやっていたので、外でバスケをすること自体私にとっては全部アドベンチャーです。全然違う世界ですね。
Licaxxxと桂葵にとっての「ナイトカルチャー」とは?
MC MAMUSHI:Licaxxxさんもバスケをやってたんですよね?
Licaxxx:中高バスケ部で。さっきも「WHITE NIGHT WEEK」の一環のイベントの「WHITE NIGHT PLAYGROUND」に誘われて。
MC MAMUSHI:今回のテーマには、ナイトカルチャーって入っているから夜の過ごし方について訊いて行きたいんだけど、桂葵は普段どう言うサイクルで生活してるの?
桂:仕事は、総合商社で働いているので、そっちの文脈で言うとナイトカルチャーはザギンで会食みたいなそういう世界なんですけど、ここ1年半くらいはそういう夜と代々木公園でストリートバスケに励む夜と。ギャップが大きい生活ですね。平日5日のうち、バスケ週3、1日は仕事関係、他の1日は自分の時間。意外とそういう時も渋谷に来たりするんですよ。それは奥渋とかアップリンクとかに行ってます。
Licaxxx:渋谷の親善大使にした方がいいんじゃないですか(笑)? 全方位でオススメしてくれていますよ!

Courtesy of WHITE NIGHT WEEK
MC MAMUSHI:Licaxxxさん的には、渋谷の夜は?
Licaxxx:私の場合は大体、夜の12時くらいから始まるんですよ。特に金曜土曜は海外からいろんなアーティストが来ていて、どこから行こうっていう状態なんですよ。だから金曜土曜は自分が出るでないにかかわらずとりあえず行きます。最近は東間屋だったり、DJ BarっていうBarの機能がありつつ音がしっかりしていてDJも入っているっていうお店が一気に増えて。平日も行っちゃいますね。
MC MAMUSHI:ちなみに桂葵はクラブに行ったりしたことあるの?
桂:私はそれこそLicaxxxさんが大学デビューっていってたようなクラブに男子に付いて行ったことはあるんですけど、それがあまり好きじゃなくて。そこで苦手意識があったんですけど、今日の話を聞いてたら行ってみたいなと思いました。そういう楽しみ方を全然知らなかったんだなと思って。
MC MAMUSHI:Licaxxxさんは普段どんなクラブに行くの?
Licaxxx:自分が出ている箱で具体名を挙げると、道玄坂のContactとかSound Museum Vision。DJ Barだったら東間屋、最近できた翠月とかが多いですね。あとは昔から小箱としてやってたOATHとか、KOARAとか。
桂:KOARA行ったことあります。友達が働いていて。
Licaxxx:良いところ行ってますね! あとは渋谷区で言うと表参道のVENTとか。
MC MAMUSHI:そういうところは、どういうコミュニティーと一緒に回ることが多いの?
Licaxxx:この前のセッションに出ていたRomy Matsとか、Kotsuとかはアポイントなしで現場で会うような仲間ですね。みんなやっぱり現場でできた友達が多いですかね。最初はみんなやっぱり一緒に行く友達がいないとかそういうところから始まると思うんですけど、私は好きな音楽を聴きに行った所から始めたので。今でも1人で回ったりもしますし。行ったら誰かしらいるだろうと。DJやってる人が基本多いですけど、DJやってないけど音楽が好きなミュージシャン、モデルさん、芸能の方とかも多いですね。意外とDJだと私の世代の人って就活の時点で辞めちゃってあんまりいなくて。でもその一個下の世代は働きながらDJやってたりする。バランスとってやってる人が多くて感心しちゃいますよね。
MC MAMUSHI:桂葵は夜動く時はどんなメンツで動くの?
桂:さっきの銀座の会食から代々木公園の振り幅が大きいように、付き合う人の振り幅も大きいです。バスケの仲間もいるし、かきあげ女子もいるし(笑)。
Licaxxx:平日は何時くらいまでバスケをやるんですか?
桂:公園のバスケは仕事終わりに19時とか20時とかに集まって、終電ギリギリまでやっちゃうみたいな。だから、走ります(笑)。
夜遊びのイメージを改善するために
MC MAMUSHI:今回は女性から見たっていうテーマだけど、こうなったら女の子もっと楽しめるのにみたいなのはある?
Licaxxx:やっぱり日本て夜遊びのイメージが本当によくないんですよ。特に親世代はクラブは危ないみたいな。そんなこと言ったら、電車も駅も危ねーよって思いません? そこに関しては変わらない刷り込みが強くて。そこから改善するのは時間がかかりますよね。
MC MAMUSHI:最近はナイトタイムエコノミーっていう言葉もよく聞くけどね。
Licaxxx:本当はみんなに気軽に、って言ったら雑だけど。私は年下の女の子が来るようなきっかけになったら良いなと常に思っています。不満とか権利を叫ぶ前にまずは自分が前に出ていることが大事かなと。海外だとDJってサッカー選手みたいになりたいランキングに乗るような職業なんですよ。スーパースターなんですけどね。
MC MAMUSHI:音楽フェスに出たり、マスメディアに出たりするのもそこの思いにつながっているの?
Licaxxx:そうですね。DJなので、自分がかけてる曲は好きなアーティストの曲。それを単純に聴いてもらう機会を増やしていきたいなと。クラブは夜で、ラジオなら昼に。媒体関係なく私を知ってもらいたいというよりは、機会を増やしていきたいですね。
MC MAMUSHI:そういう意味でいうと、「夜の良さって何ですか?」って聞かれたらどう答える? 寝た方が良いっていう人も多いと思うんだけど。
Licaxxx:こればっかりは体験してもらわないとわからない部分はあるんだけど、1つ言えるのは夜の方が音楽に集中できるんですよ。この前ツアーのファイナル恵比寿のLIQUIDROOMで、OPEN TO LASTっていう0時から5時まで最初から最後まで1人でやって。でもこれ昼公演ではできないなと。そこは全然違います。夜は来ちゃったら始発まで帰れないじゃないですか。ある種閉じ込められる空間が音楽に没頭できるし、私がいるような空間はみんなが知っているような曲がかかるわけでもないので。夜帯の無心で踊っちゃうような長時間の体験をしてみないとハウス・テクノは特にその良さが分からないですよね。昼だと、他にいろんなこと考えちゃうので。あとちょっと人が制限されているのも良いんですよ。ちょっとした特別感とか背伸びした感じもあって。
MC MAMUSHI:桂葵的には、夜ストリートコートで1人でプレイする女子なんてほとんどいないと思うんだけど、夜の良さってあったりする?
桂:仕事終わりにできるのももちろんあるし。代々木公園の話でいうと、予約する必要がないところで私にとっては不思議な空間で、不特定多数のコミュニティーがあるんですよね。なんとなくそこにカルチャーがあって。
MC MAMUSHI:曜日によってとか時間によってくる人、人種が違ったりとかね。公園だからね。
桂:その出会いは面白いし、夜に行くと、これは私の解釈なんですけど、ガチでやってる人には夜の時間は挑んでも良いと思っていて(笑)。日中は顔が見えるからなのか、空気を読んでしまうというか。夜は関係なく男子がやってるピックアップに混ぜてもらったり。それが暗闇の中で何となく呼応するのが面白いんです。
「バスケをしたいっていう女の子が、時間も場所も制約なく集まれれば良いなと」
MC MAMUSHI:ストリートはお互い立場も関係ないもんね。これからは性別の壁もなくなっていくのかもしれない。
桂:バックグラウンドも名前も聞かないんですよ。そこで私がインカレMVPだなんて言った事もないし、言う必要もないし。そこではその日の私のコンディションを見てくれていて。それは人間らしいと言うか、シンプルに嬉しいです。
MC MAMUSHI:部活だと同じ年代の人としかやらないもんね。そういう意味では、色々な人がいるのはクラブと似ているのかもね。ということで、ここからはエンディングに向けて、未来の話もしていければと思うんだけど、もっとこうなったら良いんじゃないみたいなのはある?
Licaxxx:私は、完全にお客さんとしてクラブに行く側の女子としてみると、治安の話はクラブも駅も関係ないと思っているので、その認識をもっと変えていければと思います。出る側としては、日本は特に女性のDJの数が圧倒的に少ないので、夢を与えるというか、来るきっかけから出るきっかけになれたらと思いますね。そこは共通してとにかく数を増やしていきたいです。
MC MAMUSHI:クラブの印象も悪い所をなくしていったりしないと行けないのかな。ナンパとかも嫌なのかな?
Licaxxx:ナンパされたい人もいるじゃないですか? だから、そこは自己責任で(笑)。だって駅に居たってナンパされるじゃないですか。それは男性側の意識だったり、でもそれをうわまっていくような魅力を伸ばすというのもあるので。
桂:私は、先週にニューヨークに遊びに行って、このテーマを強く感じたんですけど。SNSを見て”このコミュニティかっこいいな”と思う女子バスケの人たちに会いに行ったんですよ。ニューヨークってバスケの聖地なんですけど、女の子が自由にバスケができるコートって意外と限られていて。ストリートバスケってどうしてもメンズのカルチャーっていうのが強くて、身体能力的にも差があるし。でも女子にもただ楽しく日常の中でバスケをしたい人はいるはずで、そんな女子を束ねたPR会社に勤めているALEXっていうかっこいい女の人がいて、彼女が「hoop york city」っていうコミュニティーを作っていて、その女子たちがそれこそ仕事帰りに集まってニューヨークのど真ん中でただ楽しくバスケをして、みんなで飲みにいく。それこそクラブに近いようなところに行ったり。
バスケで集まって、バスケ以外のところまで行くみたいな。これを日本でできたら良いなと思いましたね。バスケをしたいっていう女の子が上手さ関係なく、時間も場所も制約なく集まれれば良いなと。しかもバスケはあくまでもコミュニケーションツールとしてあって、なおかつそこにみんなで作れるもの、過ごせる時間があればなと。自分も東京のALEXになりたいなと思いました。女子ってどうしても部活の文化が強くてそのレールの上でやってるから、もっとフラットにできれば良いですよね。
Edited by StoryWriter