『DOME TOUR 2019 +PLUS』は、AAA(トリプルエー)の活動において語るべきツアーになったと言って過言ではないだろう。活動15周年を迎える2020年に向けて、今のバイタリティーを余すことなくなく魅せつけた9公演。
セットリストやパフォーマンスには、彼らのモードが強く反映されていた。

大きくわけて、今回のツアーの軸はふたつだ。1つ目は、各々がソロ公演を完逐した後で初となるツアーであること(ファンミーティングは除く)。2つ目は、エンタメを開放する存在がAAAとファンであるという『PLUS+』のテーマ。この2点に着目して、12月7日に行われた東京公演2日目の様子をお届けしたい。

照明が落ちると、お約束のオープニングムービーからライブはスタート。エンタメを開放するデジタルトレジャーを追い求め、サイバー世界にダイブするところから物語は展開されていく。「Sorry, I…」が始まると、現実世界から潜ってきたかのごとくゴンドラに乗ったメンバーが登場。電子音バキバキなサウンドが、仮想世界をより強く印象付ける。間髪空けず、流れるように「DEJAVU」へ。少しだけ早まったテンポは、現実からさらに遠いところへオーディエンスを誘う。楽曲や世界観に惹きこむ瞬発力が高くなったように感じたのは、決して間違いではないだろう。
各々の歌やダンス、個性が以前のツアーと比較して格段に磨かれている。メンバーのひとりではなくソロアーティストとしてステージに立った経験が、グループとしてのAAAをさらに強くしたことを幕開けから早々に誇示されていた。「SHOW TIME」では個々のカラーを残したうえで息のあったダンスを披露、「MUSIC!!!」では5人の動きに合わせて虹色に輝くサイリウムが波を生んだ。

メンバーに関するQ&AのVTRを挟み、センターステージに出現。美しいユニゾンで真摯な言葉を届けたのは「Charge&Go!」だ。<ぼくらはまた次を目指していく>というリリックは、”AAAは止まらなく進んでいく”という決意を歌っているよう。地図に刻んだ印をひとつずつたどりながら、最高のエンタメを追求してきた彼らの軌跡を感じさせた。柔軟なニュアンスで「恋音と雨空」を歌いこなし、ひとりひとりに話しかけるように「Lil Infinity」を紡ぐ。しっとりした雰囲気を一変させたのは、冬ソングの定番である「Winter lander」だ。ハッピーチューンの登場に、メンバーも自然と笑顔がこぼれる。巻き起こるウェーブやクラップが会場の熱をさらにあげる様は、ファンも”エンタメを開放する”存在として大切なピースだという事実を誇示していた。

ソロ・デュエットパートを封切ったのは、日高の「唇からロマンチカ」だ。
2012年リリースの『Another side of #AAABEST』に収録されたセルフカバーを、披露することになったのは本人が1番驚いているかもしれないが、このタイミングだからこそ魅せれた1曲といっても過言ではない。ピアノの弾き語りにグルーヴィーなフレージング、早口ラップに軽快なステップとSKY-HIで培った魅力がギュッと濃縮されていた。末吉と與は、「First Name」をパフォーマンス。照明や映像、歌とダンスを組み合わせて作り上げられるステージングは、まるで総合芸術だ。ライブ回数を重ねている楽曲なだけあり、長尺のダンスパートもシンクロ率が高く会場中が息を飲む。西島と宇野は、グレーのトップス×デニムのカップルコーデで登場し、仲良さそうに「drama」を歌い上げる。ふたりが「Beauty and the Beast」で「歌ってみた」をしたことは記憶に新しいが、ライブでもさすがのコンビネーション。それぞれがボーカリストとしてパワーアップしたことにより、エモーショナルな歌声が鮮明に情景を描き出した。

2019年の「a-nation」とAAA FAN MEETING 2019『FAN FUN FAN』の映像を挟み、オルゴールの音色が「笑顔のループ」を導いた。ダンスをしない分、歌を丁寧に届けようとするメンバーの姿が印象的で、言葉ひとつひとつが一直線に胸を刺す。”ここから笑顔を広げていこう”という彼らの覚悟を強く感じさせた。ハートダンスが会場に広がる「LOVER」、ダンスパートに心奪われる「SHOUT&SHAKE」と熱いナンバーが続く。
<Wow wow…>とシンガロンが巻き起こったのは、「No Way Back」だ。歌、ダンス、表情で魅せる5人に引っ張られ、オーディエンスの熱気もラストスパートがかかっていく。

AAAがファンと切り開いたエンタメの新境地

Courtesy of avex

現実は逃避するものではなく、夢によって輝かせていくもの

後半戦を「NEXT STAGE」で封切ると、勢い止まぬまま「BAD LOVE」へ。赤と青を基調とした照明は、愛と哀を描いたMVを彷彿させる。5人の歌声が重なるサビはパワフルで、音圧と共にすさまじいエネルギーを放っていた。サイバー空間から抜け出す映像を背に奏でられたのは、電子音が冴えわたる「PARTY IT UP」だ。末吉が「お前ら聞かせろ!」と煽ると、会場からは「Oooh Oh Oooh」のレスポンス。最高潮の熱気が包みこみ、いたるところからクラップが沸きサイリウムは自由に揺れた。日高の<夢より夢のあるリアル>という歌詞が真っすぐ飛んできたのは、AAAのライブがそういう場であることに他ならないだろう。現実は逃避するものではなく、夢によって輝かせていくものだと。不安やマイナスを燃やすことによって、明日を照らしていくことができるのだとメンバーの歌声が力強く物語っていた。

AAAがファンと切り開いたエンタメの新境地

Courtesy of avex

ファンの心を一段と強く揺さぶったのは、ラストソングとなった「WAY OF GLORY」だ。
”まだ道の途中だから信じて”と訴えるような歌詞は、幾度となく変化や困難を超えてきたAAAだからこそ、より強い意味を持って響く。この5人が進む道を信じていこうと思わせるパワーが1曲の中に、ギュッと濃縮されている。感動的な空気のなか、本編は幕を下ろした。

有志のファンに導かれサイリウムのウェーブが東京ドームを彩ると、それに呼び寄せられたかのように再びメンバーがステージへ。みんなで踊れるハッピーチューンの「LIFE」に繋がれた。ソフトボイスで「さよならの前に」を聴かせると、MCを経てライブお決まりのメドレーへ突入。1曲目になったのは、デビュー年にリリースされた「DRAGON FIRE」だ。圧倒的に成長した彼らのパフォーマンスは、積み重ねてきた15年という月日を感じさせて胸にグッとくるものがある。その後は、「I4U」「ハリケーン・リリ・ボストン・マリ」とふり幅の広い楽曲が名を連ねた。「GAME OVER?」により、東京ドームは最高潮へ再到達。サービス精神旺盛なメンバーのパフォーマンスに、絶え間なく歓声が沸いた。大トリの「Yell」では、高く突き上げた拳が会場を埋め尽くした。
與は<大切なみんなのこと 照らせる明かりになれるかな>と歌詞をいじり、楽曲の持つ力をさらに底上げ。プラスな気持ちで満ちた大団円で終幕となった。

AAAがファンと切り開いたエンタメの新境地

Courtesy of avex

義務教育ですら9年なのだから、AAAが迎えようとしている15周年が、いかに容易なものじゃないかは想像がつくだろう。諦めない強さを持ち、痛みや涙を超えてきたからこそ、最強のソロパフォーマーが集ったAAAというグループに成し得た。そして、そこにたどりついたのは、ファンという支え(PULS+)があったからなのだと本公演は示唆しているようだった。動画や生配信など、デジタルで楽しめるエンターテイメントが増えてきた現代。エアコンやコタツの温かさに身を委ねるのは悪くはないだろう。しかし、アナログな世界には現場でしか味わえない熱がある。AAAが熱源のひとつとして、さらなるエンターテイメントを魅せてくれるのが楽しみでならない。
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