1月21日、世界経済フォーラム(WEF)の演説で気候変動問題活動家を「終末の預言者」呼ばわりしてバッシングを浴びせたトランプ米大統領に対し、グレタ・トゥーンベリは、各国政府や企業のリーダーたちは気候変動問題解決への有効な対策を取っていないと再び手厳しい批判を返した。「私たちの家には今なお火がついています」という彼女の主張は、前年に同会議で行った自身の演説を思い起こさせる。
「あなた方の怠慢のせいで、刻々と火に油が注がれているのです」

しかしダボス(スイス)で気候変動問題を訴える若きリーダーは、タイム誌のパーソン・オブ・ザ ・イヤーに選ばれた彼女だけではない。トゥーンベリがプエルトリコのSalvador Gómez-ColónやカナダのAutumn Peltierら活動家との討論会に臨んでいる頃、世界各国から集まった別の若い活動家グループが、1970年からWEFを開催してきたスイスの高級リゾート地を見渡すアルプスの尾根でキャンプを張っていた。

ティーンエイジャーから20代前半の彼らは、極氷冠の急速な融解が世界中に与える影響と温室効果ガス排出量削減の必要性を訴える団体アークティック・ベースキャンプを代表し、ダボスでのキャンプに参加している。「超えてしまったらもう後戻りできない転換点が来るまで、わずか10年しか残されていない」とストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム教授は、ベースキャンプで開いた記者会見で語った。「10年以内に転換点がやってくる可能性は決して低くない。やっかいなことにむしろ高い。影響は限りなく大きく、タイムリミットは刻々と迫っている」

残念ながら世界経済は、山裾のスキーリゾートに集まった企業の利益優先で動いている。トゥーンベリによる演説から数時間後、5人の若き気候変動問題活動家はアークティック・ベースキャンプ主催の非公開会議に参加し、企業の利害の一部を持続可能な経済モデルに組み込む方法について話し合った。ローリングストーン誌は会議を終えた彼らと、キャンプのテント内で気候変動危機について話し合った。彼らの世代は、将来的に気候変動問題に対処する必要に迫られるだろう。

ーあなた方は今回、世界各地からはるばるダボスまでやってきました。今年の世界経済フォーラムの会期中に、特にやっておきたいことはありますか?

Vanessa Nakate(23、ウガンダ):アークティック・ベースキャンプに参加することは私にとって、デモンストレーションのひとつです。
気候変動問題の限界を超えてしまっている現状を訴え、各国政府のリーダーに行動を強く促したいと思います。つまり彼ら自身が一歩踏み出し、より良い将来のための行動を起こすべきなのです。

Kaime Silvestre(23、ブラジル):私はブラジルから参加しています。アマゾン流域に住んでいますが、北極圏で起きていることは、私たちを含む世界中の人たちに影響しています。私は今回、世界のリーダーたちに北極圏を守るよう強く訴えたいと思います。

Brix Whiteman(15、英国):このようなキャンプに参加できて、とても感激しています。声を上げる機会がほとんどないと思い込んでいるティーンエイジャーも多いですが、実際は違います。ティーンエイジャーに発言権がないとは思いません。私たちにも抗議する方法はたくさんあるのです。私たちが身をもって証明できたと思います。でもとにかく、このような活動に参加できて嬉しいです。私たちは世界的な問題に直面しています。
私の住む街でも、かつてないほど大規模な洪水が起きています。私も被害者のひとりなのです。だから、何か影響を与えられる活動に参加できて本当に嬉しいです。

Eva Jones(18、米国):気候変動危機を克服するためには、科学的解決策が絶対に必要だと考えます。テクノロジーの進化が、私たちを混乱に陥れました。だから私たちは自然に基づく解決策を採用しながら科学を上手く利用して、世界のリーダーたちに変化と行動を促す方法を探るべきだと思います。ここへ来て24時間が経ちますが、変化と行動こそが最も大きな課題だと思いました。気候変動問題に対して楽観視している専門家たちが本当に多いのです。

Wenying Zhu(25、中国):科学は気候変動問題のとても良い解決策をもたらすと思います。でも同時に、テクノロジーによる解決策を政策や方針や日々の生活に採り入れることも重要です。今回は世界のリーダーたちへ、影響力を発揮するように訴えたいです。彼らには、再生可能エネルギーやテクノロジーの使用を促進する政策を考えてもらいたいのです。


グレタが共感を得られた理由とは?

ーダボスでは、気候変動を巡る偽善行為についても多くの議論が行われてきました。例えば、プライベートジェットでやって来た金持ちが持続可能性について語っても説得力がない、といったことです。あなた方は今まさにビジネスリーダーたちと、より持続可能な解決策をどのように採り入れていくかについて非公開で話し合ったところです。彼らが問題を真剣に捉えていると感じましたか?

Kaime Silvestre:私には、彼らが将来や地球のことを思い遣っているふりをしているように思えました。実際はお金と地位のことだけを考えているのです。力のある人たちの態度に私は混乱し、悲しくなりました。彼らは変化を起こす力を持っているのです。それも大きな変化です。でも彼らは行動を起こそうとしていません。

Vanessa Nakate:彼らの言うことは言葉遊びやリップサービスだと思います。私たちはもううんざりです。ただフラストレーションが溜まります。
彼らは口では約束するものの、行動を起こそうとしないのです。

Eva Jones:どうでしょう。私は今回非公開で話し合われた内容に、前向きさを感じました。広範囲に渡る具体的な話し合いで、彼らも「わかった。だけど我々はどうやって実現したらいいんだろう?」と積極的でした。その質問こそが、多くの企業の人々が抱いている懸案なのだと思います。今回の会議では、私たちが何をすべきか、そしてどうすれば実践できるかについて集中して具体的に話し合えました。人数を限定した非公開の会合では、ざっくばらんに話ができると思います。

ーエリートによる「言葉遊び」は、グレタも今日の演説で指摘していました。彼女が気候変動問題の活動で果たした役割は大きいです。特にあなた方のような若い世代に問題意識を持たせました。彼女がこのように多くの人々から共感を得られたのはなぜだと思いますか?

Kaime Silvestre:第一に彼女がヨーロッパ出身の白人で、より注目を集めやすい存在だからです。
一方で南半球の発展途上国出身の活動家は、日々の生活の中で気候変動の被害を実体験しています。メディアはグレタだけでなく、もっと彼らに耳を傾けるべきだと思います。

Brix Whiteman:グレタは気候変動問題の活動に大きく貢献していると思います。世界で活動する気候変動問題の活動家たちには、リーダーシップが必要でした。そこへグレタが現れ、リーダー的存在になりました。これこそ私たちが必要としていたことです。彼女が何か特別な人間だとは思いません。彼女が普通だからこそいいのです。私たちは現実離れしたエリート気取りのリーダーではなく、ごく普通の人を求めていたのです。グレタは他の活動家と同じ普通の人です。

Eva Jones:私の考えは少し違います。彼女の決意は並外れていると思います。
彼女はタイム誌のパーソン・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。でも彼女は無意味なインタビューのやり取りを嫌っています。「あなたの友人たちはどう思っているのでしょうか?」と聞かれれば彼女は「いいえ。私の友だちについて話す気はありません。気候変動危機について話したいのです」という感じです。彼女に対して批判的な記者や政治家や誰に対しても、「違います、違います、違います、違います」と彼女は真っ向から反論します。私にはとても普通でないように見えるのです。自分を見失ってしまう活動家も多いと思います。なぜなら…

Brix Whiteman:注目されているから。

Eva Jones:そう、彼女はとても注目を集めています。彼女はメディアに出る以前に、どれだけ活動経験があったでしょうか。彼女は明らかに目立ちたがり屋です。でもあれが彼女のメッセージを伝える手段なのです。彼女なりの決意なのでしょう。

Brix Whiteman:彼女は表現が上手ではありませんが、そこがいいのです。彼女はメッセージの伝え方が上手くありません。メディア向けのオブラートに包んだ言い方もしません。彼女はありのままを伝えています。それがとっても効果的なのです。

「メディアの伝えるニュースは偏りすぎている」

ー現在気候変動の被害を受けている地域にもっとメディアの関心を向ける必要があるということですが、どのようにしたらメディアはもっと効果的に気候変動危機を伝えられるでしょうか?

Vanessa Nakate:メディアの伝えるニュースは偏りすぎていると思います。例えばアフリカの多くの国々では、昨年10月から毎日のように豪雨による洪水被害を受けています。私たちアフリカ出身の活動家は、避難を余儀なくされ家族を失った多くの住民への支援を呼びかけています。けれどもメディアはほとんど注目してくれませんでした。他の災害を伝えることは全く構わないのですが、カリフォルニアの火災については連日報道されていました。オーストラリアの火災のニュースも毎日流され、多くの支援が集まりました。アフリカの国々にも同じように苦しむ人々がいるのに、私はとても悲しい気持ちになります。アフリカの人々はカリフォルニアやオーストラリアの人々ほど裕福とは言えず、でも大きな被害を受けているのです。不思議なことにメディアは全く関心を寄せません。アフリカにおける大災害についてはほんの少し触れるだけで、欧米の災害のニュースを毎日流しています。とてもイライラします。

Kaime Silvestre:ブラジルでは、先住民の大量虐殺が問題になっています。でもメディアは社会問題として取り上げません。アマゾン流域の8カ国にはとても多くの先住民が暮らしていますが、特にボルソナロが大統領を務めている今、彼らは全く守られていません。

Eva Jones:ニュースの伝え方に問題があるのだと思います。今は何事も、ネット上で注目を集めるかどうかが判断基準になっています。大多数の人々に怒りを感じさせるようなインパクトのある見出しを付けることが重要なのです。従って残念ながら特定の国々は話題から取り残され、伝えるべき災害のニュースが流れません。悲惨な映像を毎日見せられ続けているために、人々も感覚が麻痺しています。だから人々は、積極的に問題に関与して声を上げるのをためらっているのだと思います。目にするものから痛みを感じたくないのです。メディアは問題の解決策にもっと注目すべきだと思います。私たちが今回参加したような会合のように、もっと突っ込んだ内容を記事に取り上げて欲しいのです。事象だけをただ流しても問題解決には繋がりません。24時間毎日垂れ流されているニュースに皆うんざりしているのだと思います。

ー同世代の若い人たちの気候変動危機に対する関心の高さや、変化を起こそうとする彼らの積極性について、どう感じていますか? 友人たちは一緒にデモに参加したりするのでしょうか。それとも無関心や無力さを感じますか?

Wenying Zhu:依然としてニッチな市場だと言えるでしょう。最も重要な問題は、気候変動問題をどうやって主流に持っていくかだと思います。気候変動は、世界中の誰にも関わる可能性のあるリスクのひとつです。関心を持つべき問題であることを人々に理解してもらうことが、最も重要だと思います。

Eva Jones:私は今、多くの人々が関心を持っていると思います。人々がありとあらゆる方法で問題に取り組んでいると感じます。小さな行動の変化ですが、政治にあまり関心のなさそうな友だちも、「ねえ、ペーパータオルを使うのをやめたよ」と言っています。人々が積極的に関与しようとしないのは、悪いニュースばかりが流れ続けているからだと思います。特に私の住むオレゴン東部では、森林火災や氷河の融解やサーモンの数は身近な問題です。10分間もニュース記事をスクロールし続けていると、それぞれの問題解決のためにどんな施策や商業的な解決策が考えられているかなどの詳細まで読んでいられません。「もうたくさん。もっと楽しいニュースが読みたい」と思ってしまいます。気候変動に関するニュースはネガティブなものが多く、積極的に何かしようと思う有用な情報が得られないのです。

Brix Whiteman:私は15歳ですが、気候変動問題の対策が非常に不十分で、何か行動を起こそうという積極性も低いと思いました。誰もが「あまり気にしない」という感じです。みんな深刻に受け止めていません。私たちは目を覚まし、行動を起こす必要があると思います。今は誰かが行動を起こすと、「なぜそんなことをしているのだ?」と見られます。深刻な問題だと捉えられていません。

Vanessa Nakate:私たちが直面している大きな問題は情報と、そして政府や警察に対する恐怖です。私の国では、抗議デモを行うことは違法です。私たちには言論の自由がなく、多くの国民の意思決定に影響を及ぼしています。積極的に行動したいと思う国民は多いと思いますが、逮捕されたり催涙ガスを浴びたりするのが怖いのです。

もうひとつの理由は、国民の多くに気候変動危機についての情報が伝わっていないことです。私は自分で調べて気候変動に関する事実を知りました。でも自発的に知ろうという人はほとんどいません。何らかの方法で情報を伝える必要があります。ただ、人々のメディアに対する注目度は高いことに気づきました。だから気候変動に関するニュースを流せば、影響は大きいと思います。解決策をもっとニュースとして流すという意見には賛成ですが、基本的な情報が不足している地域もあるのです。まずはメディアが積極的に、人々が直面している災害に関するニュースを取り上げ、気候変動に関する人々の理解度を上げていく必要があると思います。

Eva Jones:突き詰めるとメディアもビジネスで、利益を追求するのがビジネスです。データを開示して気候変動の理解度を上げるのは、該当する地域の教育システムや政府の責任だと思います。欧米の新聞社に、そのような地域にまで情報を届けさせるのは難しいし、現在のビジネスの仕組みを考えると実現性は低いと思います。

Kaime Silvestre:私はいつも、自分の友だちを中心に若い人たちを活動に誘うようにしています。変化を起こせるのは、私たち若い世代だと信じています。一人一人が少しずつでも地球に貢献すれば、大きな改革を実現できると思います。香港が良い例です。変化を強く求める若い人たちが街へ繰り出しています。世界全体で同じことができれば、世界はより良くなるでしょう。いつか実現することを願っています。

活動を続ける「モチベーション」は?

ー気候変動危機への取り組みは、極めて重要で困難を極める闘いです。そして、温室効果ガスの達成すべき排出量削減の対策の多くも手詰まりになってきたように思います。危機を克服するために他に何ができるでしょうか? 活動の足を引っ張るあらゆる圧力を受けながらも楽観的でいるためには、どうしたらよいでしょう?

Kaime Silvestre:今や多くの人がデモに参加していて、ソーシャルメディア上でも気候変動や地球に関わる活動が活発になっています。私は楽観視しています。

Vanessa Nakate:私たちには夢があります。夢があるからこそ私たちは将来に対してポジティブでいられるのです。夢や希望を実現するためには、自分たちの将来のために闘わねばなりません。これこそ私が闘い続ける最大のモチベーションなのです。

Brix Whiteman:近い将来に危険な災害をもたらすとしても、私は気候変動に関してずっと楽観的です。活動に新たな動きが見られるからです。そうです、最近活動に加わったグレタです。そしてもちろん、4年目を迎えるアークティック・ベースキャンプの活動もさらに大きく広がり、気候変動に対するメディアからの注目度も高まりつつあります。私たちの活動が進化すると共にさらに多くの人々が活動に加わり、大きな変化を起こせるでしょう。

Eva Jones:目を閉じて、何もかも上手くいくと願うだけです。私たちは酷い状況に陥りましたが、きっと克服できます。私たちにはテクノロジーも資金もあり、問題も認識しています。全てが良い方向へ進めば、どんなに大きな変化も起こせることでしょう。自分は既に目標を達成したという態度でいると、脳もそれに合わせて動き出します。例えば新しい単語を覚えると、ある時突然その単語は至る所にあることに気づくでしょう。そのような思考方法を取れば、不意に「目標へ行き着くためには別の道もある」と思い浮かぶのです。とにかく将来の私たちを待っているワクワク感を見つけるまで、活動を持続する必要があるでしょう。

Wenying Zhu:正直に言うと、私は全く楽観的になれません。Vanessaも言ったように、みんな口では色々言いますが、ほとんど行動が伴っていないのです。私は国連で、持続可能な投資データと土地利用のリサーチ部門にいます。多くの企業、銀行、機関投資家が公約を掲げています。例えば2020年までに、それはもう今年なのですが、森林破壊ゼロを達成するとか、100%持続可能なポートフォリオを目指すなどという目標を口にするものの、どれも実現できそうにありません。目標に近づいたと報告されるのはほんのひと握りで、つまりほとんどの約束は達成できないのです。持続可能な金融商品への投資状況にも注目していますが、ポートフォリオ全体のわずか10%か5%で、多くの資金が依然として化石燃料部門へと流れているのです。

Eva Jones:でも15年前にはおそらく、5%も10%もなくゼロだったでしょう。

Wenying Zhu:少なくとも今私たちはどれだけ失い、どんな状況にあるかを把握できます。さらに将来私たちがどれだけできるかもわかるでしょう。あならの言う通り、私たちは既に一歩進んでいるのです。かつては何も把握できませんでした。気候変動についての知識もなく、私たちの行動がどれほど悪影響を与えていたかもわかりませんでした。だから今は進歩していると言えるのです。でも将来へ向けてすべきことは山積みです。
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