グウィネスは長い年月をかけ、法外な値段のふざけた商品や、直接害は及ぼさないものの医学的には怪しいセラピー治療を勧めるなどして、10億ドル相当のブランドを築き上げ、同時にインターネット市民を激怒させてきた。オーガズムの増強と膀胱コントロールの改善を謳った(婦人科医がいうには細菌感染を引き起こすであろう)「ヴァギナエッグ」で虚偽の宣伝をしたとして、14万5000ドルの罰金の支払いを命じられたほどだ。
同社は2018年に事実確認の専任者を雇い、今回の新番組『グウィネス・パルトローのグープ・ラボ』では冷凍療法から治療目的での幻覚剤使用まで数々の健康法に光をあて、驚くほど大量の研究やら専門家やらを引用している。中には正しいと思われるものもあるが、バーニングマンのドレッドロックの白人青年のように、博士号を取得したようには見えない者もいる。その上、この番組は「娯楽と情報提供」を目的としたもので、医学的アドバイスを提供するものではありませんという但し書きは、科学的に怪しい主張を提供してもGoopには倫理的責任はありませんよ、と言っているかのようだ。
ただ、番組の主張の一部は、とんでもない危険を引き起こす可能性もある。今回我々は番組をチェックして、なかでもとくに常識外れな健康法の事実確認を行なってみた。
その1:マジックマッシュルームは鬱や不安症の治療に役立つ。
初回エピソードはGoopのスタッフがジャマイカへ赴き、幻覚作用をもたらすマッシュルームを摂取して、様々なトラウマを癒すというもの(ただし、スタッフの1人も認めているが、彼女は「本当の自分」らしさを感じたくて挑戦した)。マッシュルームを煎じたお茶を飲み、バカ正直なミレニアル世代の同僚と床に突っ伏してさめざめと泣く、というのは決して楽しそうとは言えないが、治療目的で幻覚剤を服用することは精神疾患の現場でも徐々に注目を集めている。実際のところ食品医薬局(FDA)も、PTSDの患者向けにメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)を併用した心理療法の臨床治験を先月全米10カ所で承認したばかりだ。番組でもパルトローと共同エグゼクティヴプロデューサーのエリーズ・ロウネンが、カナダの幻覚剤学際研究学会(MAPS)のエグゼクティヴディレクター、ビル・ヘイデン氏にインタビューしている。
たとえ治療目的であっても、違法薬品の研究には法的な障壁がある上、幻覚剤を併用した治療がメインストリームで受け入れられない一番のハードルは、幻覚剤全般をニューエイジのエセ科学とみなす風潮だろう。事実、Goopのスタッフがジャマイカでシャーマンやお香とブッとんでるシーンは、そうした風潮を払拭させてはくれない。さらに、MASPで訓練を受けた心理療法士ウィル・シウ氏が、幻覚剤を併用した治療が関心を集めているのは抗うつ剤の「ひどい副作用」のせいだ、と言うパートは眉唾物で、誤解を招きかねない(「抗うつ剤」と一口に言っても、副作用は人によってさまざま。それにMDMAのような幻覚剤は高血圧や体温上昇、吐き気、失神などを引き起こすケースもあり、MDMAに悪い副作用が全くないと示唆するとんでもない間違い)。だが全体的には、幻覚剤を併用した治療の研究が、初期段階とはいえ一部の人々に幅広い恩恵をもたらすことがある、という事実については『グウィネス・パルトローのグープ・ラボ』は正しいといえる。
霊媒師の言うことはウソかホントか?
その2:ヴァンパイア・フェイシャルで若々しく。
2015年に世間をにぎわせたニュースに精通している人であれば、おそらくヴァンパイア・フェイシャル、つまり多血小板血漿(PRP)の顔面注射の記事をクリックしたことがあるだろう。2015年の美容健康ブームの大半がそうであるように、ヴァンパイア・フェイシャルも火付け役はキム・カーダシアン・ウェストだった。彼女はリアリティ番組『Kim and Kourtney Take Miami(原題)』で施術を受け、ちょっとしたブームを起こした。
Goopのエディターは、自分たちのお気に召さないSEO向きの健康ブームにお目にかかったことがないのだろう。とあるエピソードではパルトローが施術を受け、息を弾ませてその効能を高らかに述べた。「私の子供のパパが『5歳は若く見えるよ!』ですって!」(読者諸君、彼女の見た目は施術前と全く同じだ)。いくつものスパが施術を行っているが、実際にPRP療法の効果を裏付ける証拠はないし、益よりもむしろ害を及ぼす場合もあることも分かっている。ニューメキシコ州の保健局は2018年、施術を受けた2人の顧客がHIV検査で陽性反応が出たのを受け、アルバカーキのスパを閉鎖した。だから諸君、大枚をはたいて自分の血を顔に塗りたくらずに済む理由が欲しいなら、これで十分だろう。
その3:遺伝的に「直感の冴えた」人々は、死者と交流するパワーを備えている。
とあるエピソードで、ローラ・リン・ジャクソンと名乗る霊媒師が登場する。ジャクソン氏は愛想が良く、陽気で、うさんくさいまっすぐな金髪をしている。透明な「スクリーン」、いわば死人専用のFaceTimeもどきを通じて死者と接触することができる、と本人は主張している。
番組内では”サイレント”リーディングなる詐欺師の手法を実演してそそくさと公正さを示したが、実はサイキックが相手のボディランゲージから、答えのヒントを探っているだけだ。一応、懐疑的なスタッフも登場する。彼女のリーディングはさほど盛り上がらなかったのだが、そこへ背後から泣きじゃくったプロデューサーが現れ、ジャクソンはうっかり間違えて自分をリーディングしたのだと告げ、うやむやのまま終わった。だがベイシェル博士を出演させたことで、このエピソードは(アホ丸出しとは言わないまでも)浅はかなサイキック実演ショーから、まっとうな研究分野として掘り下げた回に昇華した。もちろん、実際はそうではない。
まず手始めにウィンドブリッジ研究センターだが、これはベイシェル博士と彼女の夫が運営する、寄付金頼みの非営利研究センターだ。たしかに彼女は博士号を取得しているが、アリゾナ大学の薬理学部と毒物学部で取得したもの。仮にこれが、例えばアンフェタミンの排出物に関する回だったら、Goopが拠りどころとする正当な専門家としてはうってつけだっただろう。だが、死後の世界が本当にあるのかという問題に関しては、決して専門家とはいえない(神や大学生のヤクの売人以外に適任者がいるとも思えないが)。胸がムカムカしたのは、死後の世界と交信すれば、愛する人を失って打ちひしがれている人も効果的に悲しみを乗り越えることができる、という説をベイシェル博士がぶちまけ、パルトローとロウネンが少しも反論しなかったときだ。
エネルギーフィールドを操作することでトラウマと身体的痛みが緩和?
その4:エネルギーヒーリングでトラウマ克服。
『グウィネス・パルトローのグープ・ラボ』が取り上げたヒーリング施術の中でも、とくにイカれていたのがエネルギーヒーリングだ。ボディーワーカー(兼指圧師)のジョン・アマラル氏が、『キャッツ』に出てくる長老猫のごとくGoopスタッフの身体の上に手を振りかざすと、スタッフらが身体を曲げ、オーガズムに達したかのように身悶えする。アマラル氏とGoopのお気に入り、機能性医学が専門のアポストロス・レッコス博士も説明しているように、エネルギーヒーリングは、身体から4~6フィート付近にあるエネルギーフィールドを操作することでトラウマと身体的痛みが緩和される、という原理に基づいている。その証拠として、アマラル氏は二重スリット実験を行い、波動と粒子という光の二重性を示す物理の原則を引きあいに出している(これはたしかにその通りだが、ヒーリング効果とはまったくもって何の関係もない)。
番組中、何人ものGoopメンバーがアマラル氏の施術台から跳ね起き、うっとりした表情でトラウマが癒えたと告白。パルトロー本人も施術を受け、娘のアップルを出産したときの緊急帝王切開の傷がいえたと宣言した。「身体にメスを入れるとき、自分では気づいていなくても、エネルギー相は乱れてしまっているんです」と、慰めるように言うアマラル氏。母親の1/3が帝王切開を経験しているという事実に反して、帝王切開は元来トラウマ的な経験、あるいは恥の根源だという考えを支持した。
番組を見ていると、たしかにアマラル氏は……Goopスタッフに何かしら施したのは確かなようだ。それが良いものか悪いものかは定かでないが。エネルギーヒーリングセッションによる恍惚の身悶えは決してプラシーボ効果ではない、と証明することできない。
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