東京を拠点に活動するDJ/ComposerのMars89が2019年12月にリリースした12インチEP『The Droogs』。同作品の発売を祝う、リリースパーティ「UNDERCOVER presents MARS89 "THE DROOGS" Release Party」が、2020年2月23日(日・祝前日)、渋谷 WWW Xの2フロアを使用しオールナイトで開催された。


『The Droogs』は、Mars89が〈UNDERCOVER〉の19/20 AWメンズコレクションのランウェイショーのために制作した音源をレコード用に再編集したもので、EP自体はUNDERCOVER RECORDSよりリリース。レーベルにとって約2年ぶりのリリースということもあり、リリースパーティには、UNDERCOVERのデザイナーJun TakahashiもDJとして出演し、会場を盛り上げた。

ゲストには、ダブステップのパイオニアでテクノへと接近した近年のブリストル・サウンドの核でもあるUKクラブ・ミュージックのオリジネーターの1人PINCH、LIL MOFO、前衛コラージュニスト脳BRAINのAVセット、解体新書のRomy Mats、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U、NOBUHIKO KITAMURA、最近では小林うてなとのコラボレーションも行うDIANA CHIAKI、PICNICS、B2Bが出演し、渋谷の深夜を沸かせた。その一夜の様子をレポートする。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


3連休の中日となる日曜日、スペイン坂を上がったところにあるWWWXの受付が23時にオープンすると、観客たちがゆっくりと会場入りを果たした。受付を通ってすぐの扉を潜ったメインフロアでは、目が慣れるまでは暗闇といってもいいような漆黒の中、Rommy matsがDJを行っていた。遅めのBPMで低音がヘヴィに効いたベースミュージックでねっとりとサウンドの渦を生み出していくスタイルに観客もゆっくりとウォームアップを果たしていく。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


メインフロアから一度出て、会場内の階段を上りサブステージに足を運ぶと、NOBUHIKO KITAMURA(HYSTERIC GLAMOUR)がヒップホップ楽曲を中心としたDJを行っていた。バーカウンターの横にDJセットが組まれていることもあり、観客たちが酒を酌み交わしながら談笑し体を揺らしてコミュニケーションをとっている。とても和やかな雰囲気だ。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


日を跨ぎ24日になると、サブステージにはUNDERCOVERのJun Takahashiが登場。観客の数もどんどん増え続け、DJセット前まで行くのにも人をかき分けていかねばならないくらいの賑わいに。
パンクロック調の楽曲やハウスなどとともに自然でフレンドリーな空間が生まれていた。続く¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$Uはテクノから「やさしさに包まれたなら」まで幅広く楽曲を流し、盛り上がりの緩急を生み出して一体感を創出していた。顔見知りの観客ばかりというわけでもなく、音楽を中心とした磁場が発生しているのがとても心地よかった。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


同時刻、メインフロアではLIL MOFOがプレイを行っていた。ボディにズシンと響くベース音が耳から突き上がって脳天を揺らし腹にズシンと来る。続く、前衛コラージュニスト脳BRAINのステージでは、ステージ後ろにあるスクリーンにコスモを感じさせるレトロな映画・テレビ映像をコラージュした映像が流れる。インダストリアルでスペーシーな音と映像をコラージュしたミクスチャーのようなサウンドに脳味噌がトリップしそうになった。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


2時10分になると、メインフロアではこの日の主役、MARS89が登場。観客の数も増え、MARS89を中心に扇状に人が集まっている。80分のロングセットということもあり、徐々に雰囲気を作っていくMARS89。高速で無機質なビートの反復にフロアではステップを踏んでダンスする観客も数多く見える。一転、Goldieの「Inner City Life」がかかるとフロアが歓声で沸く。


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


なによりこの日は、12インチEP『The Droogs』のリリースパーティである。同EP収録の心臓の鼓動のようなビートを鋭利な電子音が切り裂く「Horrorshow」、硬質なマシーン・ビートに悲鳴のようなSEが反復するインダストリアル・ナンバー「Ultraviolence」、不穏なビートが地下空間にダビーに響く「Strack」を織り交ぜ、80分に渡ってメインフロアをグルーヴの渦に巻き込み、深夜のゴールデンタイムを駆け抜けた。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Leftfieldの「Afro Left (Hodge & Peverelist Mix)」がかかり、メインフロアにはダブステップのパイオニアで、近年のブリストル・サウンドの核でもあるUKクラブ・ミュージックのオリジネーターの1人、PINCHが登場。外国人のオーディエンスも集まり歓声が起こる中、淡々と愚直にミニマル・テクノ~ダブステップ~アンビエントを基盤にしたダンスミュージックをプレイしていく。派手さとは違った言葉にすることがお手上げなくらいのオリジナリティ溢れるプレイは、鬼気迫るものを感じるくらいだ。フロアの観客たちもストイックにその場でステップを踏むものもいれば、一心不乱に踊っているもの、歓声をあげるものと様々。徐々に個人の中の欲望が刺激されていくような不思議な体験を味わった。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


メインフロアの2組がプレイしている頃、サブフロアではDIANA CHIAKI、PICNICS、B2B(Jun Takahashi×DIANA CHIAKI×PICNICS)が順番にフロアを沸かせていた。DIANA CHIAKIは彼女の存在感も含めて観客を踊らせ、PICNICSもリラックスしたフロアをよりアゲていった。そして、Jun TakahashiとDIANA CHIAKIとPICNICSによるB2Bは、交互に楽曲をかけあい、もはや観客との境がないくらい一体となって音楽の快楽を味わっていた。そして、そのまま終焉まで音楽が鳴り止むことはなかった。

ひたすらに音楽が鳴り続けた約6時間のリリースパーティ。
ダンスミュージックの快楽性と心地よさをサウンドをもって体現した、音楽かくあるべきというイベントだった。

Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Mars89が渋谷WWW Xをビートの渦で埋め尽くした80分間


Photo by  SOSH,Takuro Kawakami(THE GUEST HOUSE)

<イベント情報>

『UNDERCOVER presents MARS89 ”THE DROOGS” Release Party』
2020年2月23日(日・祝前日)東京・渋谷 WWW X
編集部おすすめ