OnlyFansは、クリエイターが会員登録したフォロワーに向けて、有料で画像やムービーを配信することができるSNSだ。だがずいぶん前から、アダルトコンテンツのクリエイターや性的な表現をしたい人に向けたプラットフォームとしてアメリカでは有名だ。


あまり知られていないが、親会社はロンドンに拠点を置くFenix International Limited(ニューヨーク・タイムズ紙の特集によれば、役員の1人レオ・ラドヴィンスキー氏は風俗チャットサイトMyFreeCamsの創始者でもある)。OnlyFansではクリエイターの取り分は売上の80%、OnlyFansは約20%を受け取る。

3月のとある日曜日。アダルトコンテンツ・クリエイターのAllie Awesomeは朝起きてOnlyFansのダイレクトメールをチェックしたが、アカウントにログインできないことに気が付いた。Awesomeは去年から利用しはじめ、今では収入の約1/4を占めているという。ログインできなくなるや、「何かあるな、と思いました」と彼女は言う。

Awesomeがカスタマーサポートにメールを送ったところ、顧客が料金支払い後、クレジット会社に詐欺被害を届けたため、無効となったと言われた。「何かおかしいと思ったので、何度もメールを送り続けました」と彼女は言う。「向こうからは、永久に無効になってしまったので手の打ちようがない、顧客には払い戻し処理を行なう、と言われました」 。払戻金は彼女の口座から直接引き落とされる手筈になっていた(もっとも顧客の話では、最終的には払い戻しは行なわれなかった)。

途方にくれたAwesomeは、アダルトパフォーマー組合のアラナ・エヴァンス会長にメールを送り、さらに事の次第をツイートした。数日後、彼女はアカウント復帰のメッセージを受け取った。
それによると、システム上の「不具合」があった、という。だがそれまでに彼女のもとには、やはりOnlyFansのアカウントにログインできないという他のアダルトパフォーマーから同様のメッセージが数十件も寄せられていた。

「OnlyFansはセックスワーカーにはもってこいのSNSです。ユーザー獲得という意味では、自分でWEBサイトを立ち上げて、決済業者を探し、サイトの管理を全部こなしてコンテンツを制作するよりもずっと便利ですからね」と言うのは、風俗マーケティングの指導者アンバリー・ロスフィールド氏だ。「今どき使ってない子(アダルトモデル)を探すほうが大変です」

コロナウイルス大流行の影響で、コンテンツ共有プラットフォームでもあるOnlyFansの人気は一気に膨れ上がった。ここ数週間で登録クリエイター数は75%増、1日あたり17万人のペースで新規ユーザーを獲得している。あのビヨンセもミーガン・ジー・スタリオンの「Savage」のリミックスで大々的に取り上げ、キャロライン・キャロウェイといったインフルエンサーらも、コンテンツを自分たちのファンに直接販売して収益化を図ろうと同プラットフォームに群がっている。

【画像】トップレスで宅配サービス 外出制限中の米オレゴン州(配達中の写真)

20人以上のアダルトモデルたちがアカウントを閉鎖され、資金を回収できずにいる

一般人の流入は、多くのセックスワーカーにとって悩みの種になった。長らく同プラットフォームを収入源としていた彼女たちは、マーケットの飽和状態を懸念している。「もはや、ここの人気クリエイターはセックスワーカーではなく、セレブやYouTuberなんです」と、モデル兼SM女王のMrs.Hell(仮名)は言う。「大問題ですよ……まっとうな世界の人々は、ここでラクにお金を稼げると思っていますが、(ここで生計を立てる私たちに)影響を与えかねません」

【画像】オンライン上で活動するセックスワーカーの悩み(写真)

さらに悪いことに、一部のユーザーはOnlyFansの利用規約に違反していないにもかかわらずアカウントを削除され、プラットフォームから追い出されたと感じている。そうした苦情は「最高潮に達しつつある」とロスフィールド氏。
彼女の話によると、20人以上のアダルトモデルたちがアカウントを閉鎖され、資金を回収できずにいると訴えているそうだ。ローリングストーン誌が入手したOnlyFansからクリエイターに宛てたメールには、「一般的に、詐欺行為やそれと疑わしき行為があった場合にアカウントが削除されます」という定型文が書かれていたが、具体的にどの行為を指すかは書かれていなかった。メールはユーザーのアカウントがシステムから削除されたと伝えたのち、「遺憾ながら、今回のプロセスは自動化されているため、撤回することはできません」と締めくくられていた。

実際にクリエイターがOnlyFansの利用規約に違反したため、プラットフォームを追われた例もある。例えば、OnlyFansではエスコート目的での利用を厳格に禁じている。エヴァンス氏いわく、アカウントを閉鎖されたクリエイターのうち数名はこのガイドラインに違反していることが判明した。

「現状ではSESTA/FOSTA法により、パフォーマーがエスコート目的でアカウントを利用して金銭を受け取った場合、OnlyFansのオーナーは重い罪に問われます」とエヴァンス氏。だがそうしたケースは、この1年でアカウントを削除され、彼女のもとに相談に来た推定100人以上のうちのごくわずかにすぎない。「他のパフォーマーが(アカウントを閉鎖されたと)不満を訴えても、まともに取り合ってもらえないのが問題です」

これらを踏まえ、ローリングストーン誌ではOnlyFansのユーザーガイドライン違反を理由にアカウントを無効化、または削除された10名足らずのセックスワーカーに話を聞いた。そのうちの1人Railey Boo(仮名)は、アカウントから残額がなくなっていることに気づき、何か変だと感じた。ログインできなくなった後、詐欺行為の疑いがあるためアカウントを削除しました、というメッセージが届いた。「悪いことは一度もしていません……Snapchatのこととか、出会い系をやってるとか、そういう禁止されていることは一切口にしていません」と、彼女はローリングストーン誌に語った。
彼女はOnlyFansにアカウント削除の理由を問い詰めたが、同プラットフォームからの返答はなかったそうだ。結局彼女はアカウントにあった1200ドルを失い、いまだ回収できずにいる。

OnlyFans側の声明

別のセックスワーカーNoelle Flayer(仮名)も、最近200ドルの入金処理を待っている最中にアカウントから締め出されたそうだ。「アカウントにアクセスできなくなるという事前の警告もなければ、削除に値するようなルール違反をしたという指摘もありませんでした」。ITサポートに連絡したところ、詳しく調査しますとの自動メッセージが届いた。だがそれからは何の音沙汰もない。「私はストリッパーなので、この時期はOnlyFansの収入に頼るしかないんです」と彼女は言う。「セックスワーカーのためのプラットフォームとして知名度をあげたSNSから収入をかすめ取られた、というのがとくに頭に来ます」(OnlyFanは後日メールで、Flayerのアカウントが復帰したと通知した)

SM女王のKatharina Amara(仮名)も、3月にアカウントが停止されたというメッセージを受け取ったそうだ。「あざ、血、スカトロ、フィストファック等」の描写など、過激なコンテンツを禁止するガイドラインに違反した、というのが理由だった。問題とされた動画には、彼女が全裸の下僕に電気マッサージを当てる姿が映っていたが、前述のようなコンテンツは一切含まれていなかった。アカウントは5月に再開したが、購読者はすべて失われてしまった。「またゼロからやり直さなくちゃいけませんでした」と彼女は言う。


OnlyFansからセックスワーカーが相次いで削除されている問題は、資産家のSM女王Mistress Mia(仮名)が拡散したツイートのおかげもあり、ソーシャルメディアでも話題になった。彼女が言うには、セックスワーカーのアカウント無効化を最初に知ったのはFacebookだった。「私がとくに気になったのは、よりによってパンデミックのさなかに彼女たちのお金が奪われていることです」と彼女は言う。「この最悪の時期、収入を奪われれば大ピンチになるかもしれないんですよ」。彼女の話を聞いていると、どうやら収入を失うことよりも、OnlyFansのアカウント削除でパフォーマーのブランドに傷がつくことのほうが重大なようだ。「何年も努力して築き上げてきたコンテンツが、完全に削除されるんですからね。バックアップを取っている人はそう多くありません」と彼女は言う。

OnlyFans側も声明を発表し、「しかるべき理由なくしてアカウントを無効化することは決してありません。多くの場合、弊社の規約に違反したクリエイターは、調査や対策を検討する間アカウントが制限または停止されます。たとえば深刻な詐欺行為の場合、アカウントは無効化されます」と述べた。また、性的コンテンツを擁護する姿勢を改めて強調した。「間違いなく、OnlyFansはもっともインクルーシブなソーシャルプラットフォームのひとつです。
コンテンツ制作に対する弊社の前衛的なポリシーは、アダルトコンテンツ・クリエイターが分け隔てなく活躍できる場を与えています。それは今後も変わりありません」。とはいえセックスワーカーの中には、OnlyFansがずいぶん前からインフルエンサーに向けたメインストリーム寄りの姿勢を打ち出していると考える者もいる。サイトのユーザーベースの大半はアダルトコンテンツのクリエイターが占めているというのにだ。「広告に挙がってくるのは、シェフとかヨガインストラクターばかり」とAwesome。「ポルノスターとかは絶対あがってきません」

セックスワーカーたちが懸念していること

懸念の根本には、セックスワーカーがソーシャルメディアプラットフォームから駆逐されるのでは、という不安がある。こうした不安には根拠がある。これまでにも前例として、性的コンテンツを歓迎していたプラットフォームが、突然背を向けたことがあった。例えば、お色気系や性的コンテンツの温床だったTumblrは、利用規約にこうしたコンテンツの禁止を明言するようになった。Patreonをはじめとするクラウドファンディングプラットフォームも、決済業者からの圧力でアダルトコンテンツ・クリエイターの締め出しにかかった。

そして今、セックスワーカーたちはOnlyFansも同じ道を歩むのではと懸念している。SESTA/FOSTAのような法令――アダルトコンテンツ・プラットフォームに厳しい制約を課す法律――のせいで、「法的視点からみれば、OnlyFansもセックスワーカーのいないプラットフォームを目指すほうがラクでしょう」と、Mistress Miaは説明する。
ファンへのコンテンツ直接販売を希望するセックスワーカーには別の選択肢もあるが、現在OnlyFansが誇るユーザー数や知名度に適うところはほとんどない。

いまだ無効化や削除の憂き目に遭っていないクリエイターも、この数カ月で失望を味わわされたと言う。昨冬にOnlyFansのコンテンツが漏洩したことで、一部のセックスワーカーはプラットフォームの安全性に疑問を抱くようになった。一方、昨今の新規登録者の増加をうけ、ベテランのユーザーにとって大きな収入源だった紹介ボーナス制度が廃止されたことに怒る者もいる。「紹介制度こそ、OnlyFansの認知が広まった唯一の理由です。それがなかったらOnlyFansじゃない」と、アダルトコンテンツ・クリエイターのArron Lowe(仮名)はオンラインマガジンMotherboardに語った。

一方Awesomeはというと、OnlyFansとの一件は苦い経験ではないと言う。事実、今もこのSNSの大ファンだと語る。「アカウントがなくなると思ったときは焦りました。これまでに得た収入を失うからじゃなく、うんと稼げる可能性があるからです。OnlyFansでは本当にたくさん稼げるんですよ」と言って、実際に6桁近い売り上げを上げた友人がいるとも言った。「私の意見では、これほどいいプラットフォームは他にありません」

アダルトモデルたちがサイトを追われたのは、カスタマーサービスがプラットフォームの急成長についていけなかったのが原因であり、必ずしも会社側に悪意があったわけではない、とエヴァンス氏は考えている。「同社は(新規クリエイターの流入への)対処能力を強化する必要があります」。だが風俗業界には、成長を続けるOnlyFansが、プラットフォームの知名度アップに貢献したクリエイターにいつか背を向けるかもしれない、という懸念の声が上がっている。

「メインストリームのセレブが群がるようになったこと、プラットフォームへの監視の目が厳しくなったこと、他のプラットフォームの前例などを踏まえれば」、OnlyFansが結果的にアダルトコンテンツを全面禁止しても驚かないだろう、とロスフィールド氏は言う。すでに数人のアダルトパフォーマーのために、他のプラットフォームへの乗り換えを手伝ったそうだ。「OnlyFansはあまりにも急激に、大きく成長しすぎました」

【画像】隔離中の変態たちに残された唯一の選択肢、バーチャル乱行パーティとは?(写真)
編集部おすすめ