「タイムトラベルはまだ発明されていない。
2014年の夏を例に挙げれば、『X-MEN:フューチャー&パスト』でヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンは50年前にさかのぼり、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ではトム・クルーズがタイムループにはまり、同じ戦争を何度も何度も繰り返すことになる。さあ、次元転移装置を起動させ、史上最高のタイムトラベル・ムービー20本をチェックしよう。
※この記事は2014年5月、ローリングストーンUS版に掲載された記事を翻訳したもの。
20位『ドニー・ダーゴ』(2001年)
「タイムトラベルを信じる?」 この作品で一皮むけたジェイク・ギレンホールが演じるのは、精神を病んだティーンエイジャー。彼はウサギの衣装を着た男から、世界の終わりについての警告を訊かされるようになる。リチャード・ケリー監督のカルトムービーは、パラレルワールドと郊外の街に渦巻く謎を描いた難解な作品だ。
19位『イルマーレ』(2006年)
この恋愛映画は、タイムトラベルのなかでもとくに奇妙なギミックが功を奏した。キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックは、貸し別荘の郵便受けを通じて手紙をやり取りしている――ただし彼女が手紙を受け取るのは、彼が手紙を書いたきっかり2年後(タイムトラベルものには、よくよく考えると理不尽なものが多いが、この作品は普通に考えても筋が通らない)。リーヴスとブルックのコンビは魅力たっぷり。ただ、この2人をバスに乗せ(時速50マイル以下でも以上でも構わないが)、ルネサンス時代辺りへタイムスリップさせるチャンスを逃してしまった感はある。
18位『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004年)
ハリー・ポッター・シリーズ最高傑作は、たまたま最高のタイムトラベルを扱った作品だった。こんな偶然があるだろうか? たくさん授業が取れるように1日の時間を延ばしたいと思ったハーマイオニーは、特別に逆転時計の使用を許可される。だが映画のクライマックスで、ハーマイオニーとハリーは時間を数時間さかのぼり、シリウス・ブラックとヒッポグリフを救うという使命を負う――そしてFinal Cut Proで新たな素材を継ぎ合わせる凄腕編集者のごとく、過去の出来事を塗り替えるのだ。
17位『オースティン・パワーズ:デラックス』(1999年)
マイク・マイヤーズによるジェームズ・ボンドのパロディ第2作。グルーヴィーなスパイ、オースティン・パワーズはDr. イーヴィルを追って自らのルーツ、すなわちスウィング全盛期の60年代へ遡らねばならなくなる。タイムパラドックスを心配するパワーズは(文字通り)明後日のほうを向いているので、誰も本気で取り合わない。
16位『ウィザード』(1988年)
1348年、黒死病を逃れようとイギリスの村人たちがトンネルを掘る。オズの世界に迷い込んだドロシーのように映像はモノクロからカラーへ一転、トンネルを出ると20世紀のニュージーランドだった(14世紀の村人が600年先の未来にタイムスリップする方法を見つける、という考えに賛同しかねるなら……我々だって、今もまだタイムマシンを発明していないではないか)。シュルレアリズムと信仰心が満載の作品は、現代の世界がどれほど奇妙であるかをまざまざと描き出すことに成功した。
15位『ペギー・スーの結婚』(1986年)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の焼き直しだと軽んじる人もいるが(どちらも主人公が旅するのはドゥワップの時代)、フランシス・フォード・コッポラ監督のこの作品は、物悲しくも、思慮にとんだなかなかの秀作だ。気が付けば1960年、高校3年生の時代にタイムスリップしていたキャスリン・ターナーは、10代の自分が下した決断が大人になってからの自分にどう影響していたのか知ろうとする――レノンとマッカートニーが作曲する前に「シー・ラヴス・ユー」をヒットできるかも、と期待に胸を膨らませながら。
14位『ビルとテッドの大冒険』(1989年)
『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』から『ミスター・ピーボディ&シャーマン』まで、過去の時代へさかのぼるドタバタタイムトラベルは数多くあるが、どれひとつとして、アレックス・ウィンターとキアヌ・リーヴスの抱腹絶倒の演技に敵うものはない。南カリフォルニアの2人の少年が、歴史の授業で落第せず、かつ自分たちのバンド「ワイルド・スタリオンズ」を存続させて未来のユートピアの礎を築くべく、西洋文明の著名人を訪ねて回らなくてはならなくなる、という設定だ。もっとも印象深いシーンは、リーヴス演じるテッドがソクラテスを前にカンサスを引用して薫陶を垂れる場面。「すべては風の中さ、デュード」
13位『彼女はパートタイムトラベラー』(2012年)
マーク・デュプラス演じるスーパーの店員がタイムマシンを発明し、一緒に時間旅行してくれる同伴者を新聞広告で募集する。オーブリー・プラザ演じる雑誌社のインターンは、広告の取材を兼ねて志願する。果たして誰の胸に予想もしない絆が芽生えるのか? このインディーズ映画は、「人生を前よりもっと良い形でやり直す」というタイムトラベルの永遠の夢を突き詰めた作品だ。
12位『ギャラクシー・クエスト』(1999年)
陳腐な宇宙TVドラマのキャスト(ティム・アレン、シガニー・ウィーヴァー、アラン・リックマン)が、本物の宇宙大冒険に巻き込まれる『ギャラクシー・クエスト』は、タイムトラベル・ムービーというよりも、『スタートレック』パロディの傑作として記憶に残っているかもしれない。だが映画で重要な役割を果たすテクノロジーのひとつ、オメガ13は実はタイムマシンなのだ。ただし、あまり自由は利かず、たった13秒しか過去に戻ることができない。おそらく史上最短のタイムトラベルかもしれないが、世界を変えるには十分なことがのちに判明する。
11位『猿の惑星』(1968年)
史上もっとも有名なヒネリのきいた筋書の45年前の映画に「ネタバレ注意」の警告が必要な方は、自らタイムマシンを作って、映画が公開される前の時代に戻ったほうがよかろう(グレイズ・スポーツ年鑑を持参するのをお忘れなく)。それ以外はみな、自由の女神のシーンのすばらしさをご存じだろう。あの場面こそ、チャールトン・ヘストン主演のSF名作が実はタイムトラベル・ムービーであることをはっきり示している。チャールトン・ヘストン演じる宇宙飛行士は、銀河のはるか彼方を旅する代わりに、200年先の未来の地球に降り立ったのだ(本シリーズのタイムトラベルの要素は、続編でより色濃く描かれる。1971年の『新・猿の惑星』では、3匹の猿が未来から1973年にやってきて、大統領諮問委員会の前で証言する羽目になる)。
10位『バンデットQ』(1981年)
これでもかと趣向を凝らしたテリー・ギリアムの痛快タイムトラベルの主人公は、少年と6人の小人たち。宇宙地図を前に、片っ端からなんでもかんでもお宝を頂戴している。
9位『スタートレックIV 故郷への長い道』(1986年)
TVシリーズ、長編映画ともに、『スタートレック』シリーズはあらゆる角度からタイムトラベルを扱ったストーリーを数多く排出した。あまりにも多いので、ついに『ディープ・スペース・ナイン』では問題を正す時間調査局を登場させねばならなかったほどだ。この作品は、宇宙艦隊の時間旅行の中でも上位に入る。カーク船長とエンタープライズ号の乗組員は、ザトウクジラを未来へ連れ帰るために1980年代のサンフランシスコへ向かい、そこで20世紀の洗礼を浴びる。パンクロックにコンピューターキーボード、お会計はお釣りのないように。
8位『ラン・ローラ・ラン』(1998年)
フランカ・ポテンテ演じる真っ赤な髪のローラに、恋人から電話がかかってくる。10万マルクが入ったカバンを失くしてしまい、20分以内に見つけるか、弁償するかしなければ、組織のボスに殺されてしまうというのだ。そこでローラはベルリンの街を疾走する。
7位『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』(2010年)
おそらく史上もっとも笑えるタイムトラベル・ムービー。ジョン・キューザック、ロブ・コードリー、クレイグ・ロビンソン、クラーク・デュークが、スキー旅行中に1980年代にタイムスリップ。髪を逆立て、服はネオンカラー、そしてポイズンが一番人気の時代を再体験する(映画では触れられていないが、キューザックが今よりずっと人気だった時代でもある)。見どころは、時間の流れに響かぬようにとバスタブでロビンソンがセックスするシーン。妻を裏切った罪悪感で彼は涙を流すが、1986年当時、妻はまだ9歳だった。
6位『LOOPER/ルーパー』(2012年)
「タイムトラベルものには目がないんだ」と、ライアン・ジョンソン監督はローリングストーン誌に語った。「僕ぐらいオタクになると、話の流れを紙に書き出すのが楽しくて仕方ないんだ」 だが監督は、プロの殺し屋が30年前にさかのぼって標的を片付けるというストーリーを、代数の宿題のような難解ものにはしなかった。代わりに『LOOPER/ルーパー』では、ブルース・ウィリス演じる年老いたヒットマンがジョセフ・ゴードン=レヴィット演じる若かりし自分と対峙する。作品にちりばめられたSF的な趣向とスリルの中でもとくに秀逸なのが、ダイナーで2人の主人公が対面する場面。若者は未来の自分をにらみつけ、決してああはなるまいと誓うのだ。
5位『プライマー』(2004年)
綿密に練られた、上級者レベルのタイムトラベル・ムービー。複雑でヒネリの利いた展開や専門用語が満載で、何人もの自分が互いに騙しあいを繰り広げる。同時に心躍るような魅力的な作品でもあり、一度見終わったらもう一度見直して、つじつまが合うかどうか確かめたくなる(実際ちゃんと合っている)。7000ドルという驚きの低予算で作られたシェーン・カルース監督のデビュー作は、ITスタートアップ企業を扱った傑作でもある。機能するタイムマシンを作ったエンジニアの仲間たちは、倫理的な結果はそっちのけで金儲けに走る。
4位『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年)
爆笑、スリル、そして信じがたいほどオイディプス的。マイケル・J・フォックス演じるマーティ・マクフライは1955年へタイムスリップし、偶然にも両親の出会いを妨げてしまう。代わりに母親は彼にネツを上げてしまうのだ。幸いフォックスは、オイディプスのように目玉を抜かれずに済んだ――その代わり彼は、両親が恋に落ちて自分がちゃんと生まれてくるよう奮闘する。最高の小ネタをひとつ。1955年、マクフライは木に衝突してなぎ倒してしまうが、1985年に戻ってみると、ショッピングモールの名前がツインパインズ・モール(二本松モール)からローンパイン・モール(一本松モール)に変わっている。
●マイケル・J・フォックスが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を語った、1985年の秘蔵インタビュー
3位『ターミネーター2』(1991年)
元祖『ターミネーター』(1984年)は素晴らしい前振りをしてくれた。アーノルド・シュワルツェネッガー演じる未来の殺人サイボーグ(いかにも彼らしい)が、のちに人類反乱軍のリーダーを生むことになるウェイトレスのリンダ・ハミルトンを殺しにやってくる。だがそれから7年後、ジェームズ・キャメロン監督は続編でさらに上を目指した――ド派手な爆破シーンやCGIてんこ盛りで視覚的に圧倒するだけでなく、この先の未来を知った人類は自由意志を失うか、という哲学的なパラドックスに挑戦した。
2位『ラ・ジュテ』(1962年)
28分の傑作がモノクロのスチール写真のモンタージュとフランス語のナレーションで語るのは、終末戦争を回避すべく未来からやってきた男の物語。美しい女性が男の最期を看取る、という幼いころの記憶が彼の頭に焼き付いて離れない――結果的に、彼はタイムトラベルの真綿にがんじがらめになる。この短編映画があまりにも完璧なので、ハリウッドも黙ってはいなかった。巨額の製作費をつぎ込んで長編映画としてリメイクしたのが、テリー・ギリアム監督、ブルース・ウィルスとブラッド・ピット出演の1995年の映画『12モンキーズ』だ。
1位『恋はデジャ・ブ』(1993年)
必ずしもタイムトラベルは、プロットの重要な要素として何百年も時を旅しなくてはならないわけではない。数時間のこともあれば、わずか数秒のこともある。登場人物はタイムループにとらわれることもあれば、パラレルワールドを生み出すこともあるし、自分の祖父を殺しさえもする。すべては監督が決めた設定次第だ。この記事の掲載時点では、タイムトラベルはまだフィクションの領域を出ていない。ビル・マレー主演のコメディで描かれるタイムトラベルは1日限定だが、この映画が長く愛される理由もそこにある。人生をやり直すチャンスを与えられたら、次はもっと上手くやろう、というコンセプトだ。この幻想の裏に流れるのは、人生は今すぐやり直せるという教訓。2月3日のグラウンドホッグ・デー以降も、現在形でやり直せるのだ。
●ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のアカデミー受賞・ノミネート作品15選