Wayfairがキャビネットを輸送コンテナ代わりにして、ひそかに児童人身売買を行っているという陰謀論がこのサブレディットで盛り上がったという。この陰謀論の「証拠」とされているのが、一部のキャビネットの価格が1万2699ドル99セント~1万4999ドル99セントもすること、そしてYaritza、Alivya、Samiyahといった商品名がつけられていること。陰謀論を支持する人々は、これら商品名は被害者の子どもの名前だと推測している。
のちに「Wayfairゲート」と呼ばれるようになったこの説は、陰謀論者の間に瞬く間に広まった。左派の政府関係者がワシントンDCのピザ店でひそかに児童売春組織を運営していたという2016年の陰謀論、ピザゲートとよく似ていたこともあり、支持者の多くはQアノンのサポーターだった。
クレムゾン大学でソーシャルメディアの偽情報を研究するダレン・リンヴィル准教授によると、メンションされた回数はのべ180万回。24時間では60万回もメンションされたという。
So its 3A and Im down the #Wayfair sex trafficking rabbit hole. Something doesnt sit right. pic.twitter.com/7TJEfu6k2Y— Darrian (@darrianperdue) July 10, 2020
「プラットフォームを個別に切り離して考えることはできません。ソーシャルメディアはどれもつながっているんです」とリンヴィル准教授はローリングストーン誌に語った。「今回はTwitterに端を発し、Redditで火がついた後、あっという間に他のプラットフォームにも拡散しました。短時間で広がった理由は、1:みんな家で退屈しているから 2:一部の人々は非常に愚弄だからです」
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当然ながら、児童売春の噂のネタにされたことを好ましく思わなかったWayfairは、すぐに「こうした疑惑は事実無根です」いう声明を発表した。
この陰謀論はすでに何度も、間違いであることが証明されている。Wayfairの広報担当者はロイター通信の取材に対し、「ファーストネームや地名、よく使われる単語」などを使ってアルゴリズムで商品名を決めていると語った。事実確認サイトSnopesによると、アリヴィア・ナヴァロちゃんなど商品名の元ネタと言われている子どもたちの大半が、実際は行方不明ではなかったことが判明した(ナヴァロちゃんは3歳の自閉症の子どもで、2013年、不運にも散歩中に沼に落ちて死亡した)。児童売春組織の被害者とみられていた1人、サミヤ・ムーミンさんは、Facebook Liveを発信して自ら噂を否定した。
陰謀論はプラットフォームを横断して拡散していく
だがこうした動きも、Wayfairのネタを投稿し続ける筋金入りの偏執的なネットユーザーを満足させるには至らず、噂はTwitterからInstagramへ、さらに以前から陰謀論をあおる拡散コンテンツの温床として非難を受けているTikTokへと急速に広まった。同プラットフォームは大量の動画を削除しているものの、Media Mattersによれば、同アプリには現時点までに「#wayfairconspiracy」というハッシュタグが250万回以上、#wayfairgateは83万600回以上も閲覧されている。
中にはどういうわけか、故エプスタイン被告の調達係をしていたと言われるギレーヌ・マックスウェル被告が陰謀に一枚絡んでいると主張するものもある。Wayfairの運営部長と一緒に写真に写っているのが動かぬ証拠だというのだ(実際に写っているのはWayfairの運営部長ではない)。
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6万1000回閲覧された動画では、若い女性が「この事件に注目するべき」というキャプション付きで陰謀論を要約している。この女性は動画の中で「みんな、何かが変よ」と言っている。
4月に誤情報を通報する機能をアプリに搭載したにもかかわらず(記事掲載時点でコメント取材依頼に対する返答はない)、TikTokが誤情報の温床となっているという疑惑は今回が初めてではない。以前ローリングストーン誌が報じたように、TikTokにはCOVID-19パンデミック関連の多種多様な陰謀論がはびこってる。「この手のオンラインコンテンツやスピード感が、感覚に訴える陰謀論に手を貸していることに対し、多方面から懸念の声が上がっています」。メディア研究を専門とするモナシュ大学のマーク・アンドレジェヴィク教授は、以前ローリングストーン誌にこう語った。「陰謀論は、じっくり考えて検証するようなタイプのものではない。筋が通りませんからね。純粋に感情に訴えるものなんです。つまり、素早くヒットして拡散できるプラットフォームに流れていくんです」