※本記事は米ローリングストーン誌にて2013年初出
映画の長い歴史の中では、数々のシーンに華麗なロックンロールが使われている。
以下に紹介するのは、映画に登場するロックの印象的なシーンのごく一部だ。大音量で鑑賞することをお勧めする。
30位
エルヴィス・プレスリー「カモン・エヴリバディ」
『ラスベガス万才』(1964年)
エルヴィスがキングと言われる理由がここにある。それは彼が多くの映画に出演し、ほとんどの作品がヒットしたからではない。また、田舎の体育館へ彼がふらりと入ってきてバンドに曲をリクエストするようなセンチメンタルなシーンがふんだんに盛り込まれているからでもない。(ちなみにエルヴィスの「カモン・エヴリバディ」は、エディ・コクランによる同名のロカビリー・ヒット曲とは関係がない。もちろんどちらも素晴らしい曲だが。
29位
ジーザス&メリー・チェイン「ジャスト・ライク・ハニー」
『ロスト・イン・トランスレーション』(2002年)
その女の子の話を聞こう。彼女は世界の半分を相手に戦っているのだから。曲はまるで、映画のラストシーンを演じるスカーレット・ヨハンソンの心の中で流れているかのように聴こえる。フルテンでフィードバックを効かせたギターサウンドに、強い欲望と苦悩に満ちた蜜が滴る蜂の巣のようだ。「ジャスト・ライク・ハニー」には、映画『ミーン・ストリート』や『ダーティ・ダンシング』にもフィーチャーされている楽曲「ビー・マイ・ベイビー」(フィル・スペクター作)のドラムパターンが使われている。監督のソフィア・コッポラは、作品のラストシーンを感動的に飾ろうとパンクのラヴソングを採用した。スカーレットの傷ついたロマンチシズムと、ジーザス&メリー・チェインの激しいギターが呼応しあっているようだ。実際にスカーレットは、コーチェラ2007で再結成したバンドのステージで、この曲にコーラスとして参加している。
28位
パブリック・エナミー「ファイト・ザ・パワー」
『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)
1989年、真夏のブルックリン。猛暑の街、人種暴動、銃を撃ちまくる警官、クラック、貧困、ピザ、ラジカセから大音量で流れるヒップホップ……スパイク・リーは映画のオープニング・クレジットに、ギャングの街の風景を選んだ。パブリック・エナミーの歌う「1989! A number! Another summer! Sound of the funky drummer!」の歌詞に合わせ、ロージー・ペレスが踊る。チャックD、フレイヴァー・フレイヴ、ボム・スクワッドは、自分たちの勝手知ったるやり方でショーに突入する。ロージーはスポーツブラにボクシンググローブという出で立ちで腰を振りながら、自分なりに必死で権力と戦っている。
27位
7イヤー・ビッチ「ザ・スクラッチ」
『マッド・ラブ』(1995年)
最も90年代らしいシーン。ドリュー・バリモア演じる精神を病んだシアトル出身のティーン(90年代の映画には必ずこの手の人物が登場した)が、パンク・ロックに救いを見出す。彼女はお気に入りのガールズバンドのコンサートへ出かけ、「I will have my cake! And I will eat it too! Just like you!」の歌詞に合わせて叫びながら頭を振り、目を閉じて狂喜の世界に入る。クリス・オドネルが現れたとしても、ロックンロールの至福の時を止めることはできない。落ち着け、ビーバス。ドリューには思う存分楽しむ時間が必要なのだ。
26位
ザ・ドアーズ「月光のドライヴ」
『断絶』(1971年)
1955年製のシボレーに乗ったジェームズ・テイラーとデニス・ウィルソン。
25位
モトリー・クルー「ホーム・スウィート・ホーム」
『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』(2010年)
現代の最高傑作のひとつと言える。ガレージでこっそりと空想の世界に浸る平凡な負け組を演じるロブ・コードリーが、ラジオから流れる「ホーム・スウィート・ホーム」に合わせて歌いながら、トミー・リーのドラムソロを真似て車のダッシュボードを叩くシーンが、おそらく最も有名だろう。彼は本物のメタルヘッド・スタイルで、自分の内面の葛藤に向き合っている。泥酔した彼は、すっかりモトリー・クルーのメンバーになり切っているのだ。
24位
ザ・ポーグス「オールド・メイン・ドラッグ」
『マイ・プライベート・アイダホ』(1991年)
ガス・ヴァン・サント監督によるポートランド三部作の最後を飾る、米国中部地域で暮らす若い男娼の退廃的な物語。主役のリヴァー・フェニックスが、アイダホの広々とした空の下に広がる小麦畑を眺めている。「僕は道を鑑定するプロさ。
23位
イギー・ポップ「ラスト・フォー・ライフ」
『トレインスポッティング』(1996年)
現実の世界でジャンキーは、この世で2番目に退屈な人種だ(彼らは「テレビドラマ『ガールズ』の世界がいかに非現実的かを訴える人々」というカテゴリーの人種が出現するまではナンバーワンの座を維持していた)。しかし「ラスト・フォー・ライフ」が流れる映画『トレインスポッティング』のオープニングの乱痴気騒ぎは、登場するスコットランドのドラッグ中毒者をも滑稽な人間に思わせる。ユアン・マクレガーと彼の悪友たちが通りを駆け抜け、警察官の追跡を躱し、まともな人生を選択している愚かな人々を笑い飛ばす。
22位
オーティス・レディング「トライ・ア・リトル・テンダネス」
『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(1986年)
フィルムに収められた史上最低のダンスが、完璧な青春映画の完璧なロックンロールのシーンを演出している。ジョン・ヒューズ制作の映画『プリティ・イン・ピンク』のサウンドトラックでは、ザ・スミス、エコー&ザ・バニーメン、オーケストラル・マヌーヴァーズ・イン・ザ・ダークなどのニューウェイヴの楽曲の方が注目されがちだ。しかし実際は、ジョン・クライヤー演じるダッキーがオーティス・レディングのソウルの名曲に乗せてモリー・リングウォルドに愛を歌うシーンこそが、最高の見せ場だ。ダックマンの間抜けな踊りは「クール」や「ファンキー」という表現からは程遠く、とても「人間」とは思えぬ動きだが、彼は口に出してモリーに告白できないため、彼が心の中に溜め込んだ彼女に対する感情を吐き出すためには、この曲が必要だったのだ。ドタバタ喜劇であると同時に、本物のロマンスでもある。正にロックンロールのコンボだ。
21位
ザ・ドアーズ「ジ・エンド」
『地獄の黙示録』(1989年)
ベトナム戦争をテーマにした映画にはクールな楽曲が付きもののようだが、それは全てフランシス・フォード・コッポラに倣ったものだ。ザ・ドアーズの「ジ・エンド」をサウンドトラックに採用してヒットしたのは、『地獄の黙示録』が初めてではない。マーティン・スコセッシ監督の『ドアをノックするのは誰?』(1968年)でも既に使用されていた。しかし『地獄の黙示録』では、戦争で冒されたマーティン・シーンの脳内に「ジ・エンド」が入り込み、亡きジム・モリソンの心の闇とオーバーラップする。同作品はモリソンの死後の人気を全く新たなレベルへと押し上げた。数年後ジム・モリソンは、「彼はホットでセクシーだが、もう死んでいる」という最高の見出しでローリングストーン誌の表紙を飾った。
20位
バウハウス「ベラ・ルゴシズ・デッド」
『ハンガー』(1983年)
吸血鬼を扱った映画は世の中に溢れている。しかし『ハンガー』ほどクールな吸血鬼映画は他にない。冒頭は深夜のニューヨークのゴス・クラブから始まる。バウハウスの「ベラ・ルゴシズ・デッド」に合わせて皆が踊りながら盛り上がっている。
19位
ザ・ローリング・ストーンズ「トップス」
『アドベンチャーランドへようこそ』(2009年)
ストーンズの楽曲は、「テル・ミー」(『ミーン・ストリート』)、「サティスファクション」(『地獄の黙示録』)、「アイ・アム・ウェイティング」(『天才マックスの世界』)など数多くのヒット映画を彩ってきた。そして「ギミー・シェルター」といえば、ストーンズ・ソングのロバート・デ・ニーロだ。どの映画監督も自分の作品に合うか合わないかにかかわらず使いたがる。なぜならストーンズの曲もデ・ニーロも作品に間違いなく大きなインパクトを与えるからだ。しかしアルバム『刺青の男』のB面から隠れた至宝を発掘した点は、並のイマジネーションではない。同映画に使用された他の楽曲と共に「トップス」は、ありふれた中西部の遊園地に漂う80年代のどこかの街外れの雰囲気を凝縮している。同曲は、ショッピングモールのクイーンであるリサP(マルガリータ・レヴィエヴァ)が華々しく登場したところを、地元のオタクたち(ジェシー・アイゼンバーグとマーティン・スター)が「あの完璧なケツの形を見ろよ」と驚きの表情で迎えるシーンで流れる。
18位
ニュー・オーダー「ドリーム・ネヴァー・エンド」
『カルロス』(2010年)
『グッドフェローズ』がマフィアの世界を描いたように、『カルロス』は70年代に実在したテロリストの犯罪帝国の浮き沈みを記録した大作だ。エドガー・ラミレス演じるカルロス・ザ・ジャッカルは、革命家を自称してロックスターのように振る舞い、有名人としての自身のイメージに執着した。『カルロス』のサウンドトラックには、ワイヤーやザ・フィーリーズなどのポストパンクのバンドが多く収録されている。ロンドンの銀行に悪びれもせず爆弾を投げ込んだ後にバスタブでくつろぐカルロス。ニュー・オーダーのクールなデス・ディスコのグルーヴは、大都市の疎外感を見事に醸し出している。
17位
ザ・ヤードバーズ「ストロール・オン」
『欲望』(1966年)
ミケランジェロ・アントニオーニの描くスウィンギン・ロンドンは、このシーンから始まる。主役を演じるデヴィッド・ヘミングスが立ち寄ったモッズ・クラブでは、ジミー・ペイジとジェフ・ベックの両ギタリストが在籍するザ・ヤードバーズが演奏している。ジャズを目当てにクラブへ集まった客は、ステージをまるでロボットのように無表情に眺めている。バンドが演奏する「ストロール・オン」はレッド・ツェッペリンの原型とも言えるハードな曲で、「トレイン・ケプト・ア・ローリン」を露骨に思い起こさせる。ガムを噛みながら演奏していたジェフ・ベックが調子の悪い機材に怒ってギターを叩きつけたのをきっかけに、観客たちの間で暴動が起きる。現代の疎外感に対する批判なのだろうか? ただ、ジミー・ペイジのマトンチョップのもみあげは明確に何かを主張している。
16位
アイザック・ヘイズ「黒いジャガーのテーマ」
『黒いジャガー』(1972年)
ワウワウを効かせたギターが印象的なファンク。リチャード・ラウンドトゥリー演じるシャフトが地下鉄の出口から姿を現し、70年代の雑多なタイムズスクエアを闊歩する。彼を轢きそうになってクラクションを鳴らす車に悪態をつきながらも、テーマソングに合わせて歩き続ける。アイザック・ヘイズは、この男が何者か(黒人の私立探偵)、また日々どう過ごしているか(女好きのセックス・マシーン)、さらにどんな評判か(何でもお構いなしの無法者)を歌っている。誰もが実現したいと思う内容を歌った曲だ。
15位
カントリー・ジョー・アンド・ザ・フィッシュ「セクション43」
『モンタレー・ポップ』(1967年)
ジミ・ヘンドリックス、オーティス・レディング、ジャニス・ジョプリンらカリスマスターたちによる記憶に残るパフォーマンスが詰まった作品。しかしカントリー・ジョー・アンド・ザ・フィッシュは、そんなスターの一員ではない。うっとりするようなサイケなギター・インストゥルメンタルが、1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルの最後の朝に流れる。ヒッピーの子どもたちも眠い目をこすりながら起き出して、カリフォルニアの明るい日差しの中で新たな一日を迎える。主役は観客で、バンドは基本的に脇役だ。爽やかな朝で、明るい未来が待っている。レッド・ツェッペリンの楽曲「カリフォルニア」でロバート・プラントが表現しようとした、太陽の子どもたちが目覚めようとしているユートピアの時代だったかもしれない。
14位
レッド・ツェッペリン「カシミール」
『初体験/リッジモント・ハイ』(1981年)
ステイシー(若き日のジェニファー・ジェイソン・リー)との初デートを前にしたラトナーに対し、ダモンがデートの際のエチケットに関する5つのポイントを伝授する。そして最後に最も重要なアドバイスを贈る。「いよいよという時が来たら、なるべくアルバム『レッド・ツェッペリンIV』のA面をかけること」。しかしラトナーはアルバム『IV』を用意できなかったため、仕方なく同じくツェッペリンのアルバム『フィジカル・グラフィティ』の「カシミール」をかけることとなった。ロバート・プラントの「僕は時空を超える旅人さ」という歌詞と、ハンドルを握るラトナーの表情が何とコミカルなミスマッチだったことか。そして結局、その晩の気まずい雰囲気に拍車をかけただけだった。しかしファンの間で長いこと議論されてきたように、「カシミール」の方が「限りなき戦い」よりもずっとデートに向いている。
13位
アリス・クーパー「スクールズ・アウト」
『バッド・チューニング』(1993年)
1976年夏のテキサスの小さな街での出来事を描いたリチャード・リンクレイター監督による青春映画。おそらくハイになった経験を持つおじさん世代も同意するだろうが、リンクレイターは70年代の雰囲気を忠実に描いている。水パイプの水で歯を磨くような時代だ。カーラジオから流れる「ライク・ウィ・ドゥ」(ピーター・フランプトン)にしろ、ビリヤード場でかかる「ハリケーン」(ボブ・ディラン)であれ、少年たちの周りには常に音楽がある。しかしやはり最高の見せ場は、授業の終わりを告げる鐘が鳴ると同時に、アリス・クーパーが高校生たちを狂乱に巻き込むシーンだ。学校はおしまい。完全に。
12位
キラー・プリースト「フロム・ゼン・ティル・ナウ」
『ゴースト・ドッグ』(1999年)
ジム・ジャームッシュ監督のカルト的な犯罪映画に、ウータン・クランのRZAが取り憑かれたようなヒップホップのサウンドスケープを加えている。フォレスト・ウィテカー演じる一匹狼のヒットマンは、武士道精神に従って生きている。主人公が盗んだレクサスで深夜の街を走る象徴的なシーンで、キラー・プリーストが流れる。彼は精神的に孤立した人間で、車の窓の外に映る景色は、まるでよその惑星のようだ。彼が運転する車の中は、宇宙で最も孤独な場所だった。
11位
エルトン・ジョン「可愛いダンサー(マキシンに捧ぐ)」
『あの頃ペニー・レインと』(2000年)
「可愛いダンサー」が何らかのドラマをもたらしている。この曲はテレビドラマ『かっとび放送局WKRP』の中で、ロシアの外交官がベイリーに恋するという特別なエピソードの愛のテーマとしても使われた。キャメロン・クロウ監督は、映画『あの頃ペニー・レインと』のハイライトにこの曲を持ってきた。映画は、ローリングストーン誌の若き記者として世に出た彼の自叙伝的な作品だ。バンドのツアーバスに乗り込んだ彼は言うまでもなくまだ子どもで、明らかに浮いている。バンドのメンバーはお互いに腹を立てていて、石のように押し黙ったままだった。そこへラジオからエルトン・ジョンの曲が流れる。主人公の少年にとって女神のようなグルーピーのペニー・レインがコーラスを取り、皆が機嫌よく歌い出す。ドラマーはスティックを持ってバスのシートを叩き、メンバーのチームワークも復活した。ペニーは主人公の少年に向かって「ここがあなたの家よ」と言う。彼もペニーの言う通りだと感じる。
10位
スパイナル・タップ「ストーンヘンジ」
『スパイナル・タップ』(1984年)
ステージ上で踊るストーンヘンジの小さな妖精たち。スパイナル・タップのケルト系メタルバンドの物語は何度観ても、食べているポップコーンを吐き出すほど面白い。彼らの音楽はディテールに至るまでよく作り込まれているからなおさらだ。どういう訳かスパイナル・タップはまだロックの殿堂入りしていないが、時間の問題だ。誰も彼らの正体を知らないか、どんな活動をしてきたかも知られていないかもしれない。しかしレガシーは語り継がれる。
9位
ドノヴァン「幻のアトランティス」
『グッドフェローズ』(1990年)
同じ監督の作品は重複させないようにしているが、マーティン・スコセッシだけは例外だ。このランキングもスコセッシ作品だけで埋められるだろう。しかもトップ30は『グッドフェローズ』の楽曲のみで構成できる。スコセッシは、皆が聴いたことのない曲を持ち込んで驚かせたり、聴き慣れた曲に新たなドラマを吹き込むのが得意だ。『グッドフェローズ』で使われた「キッスでダウン」(クリスタルズ)、「いとしのレイラ」(デレク・アンド・ザ・ドミノス)、「ジャンプ・イントゥ・ザ・ファイア」(ハリー・ニルソン)などがその最たる例と言えるが、中でも「幻のアトランティス」は特に意外な選曲だろう。バーでの喧嘩からロバート・デ・ニーロとジョー・ペシが敵対するギャングを激しく足蹴にし、ついには殺してしまう(殺害されたギャングは余計な口をきくべきでなかった)。その時ジュークボックスでかかっているのが、ドノヴァン(女優アイオン・スカイの父親!)の歌うフォークの優しいメロディだ。「幻のアトランティス」はそれまでにない奇妙な悪意を象徴する。デ・ニーロやペシですら、ドノヴァンの幻想的な曲に迷い込んでいるように見える。
8位
チャック・ベリー「ユー・ネヴァー・キャン・テル」
『パルプ・フィクション』(1994年)
映画音楽のミックステープを作らせたら、クエンティン・タランティーノの右に出る者はいない。『ジャッキー・ブラウン』で流れるザ・デルフォニックスの曲や、『キル・ビル』のサンタ・エスメラルダなどに見られるように、彼は常に音楽をどのようにアクションに絡めようかと新たな方法を模索している。彼は第二次世界大戦を舞台にした作品に、デヴィッド・ボウイの曲を使ったりする。拷問シーンで流れる「スタック・イン・ザ・ミドル・ウィズ・ユー」が有名な映画『レザボア・ドッグス』は、タランティーノの出世作となった。しかし『パルプ・フィクション』のセンチメンタルなダンスシーンの方が勝っているだろう。たださっき食べたランチを吐き出さずに観ることができる、という理由だが。ヒットマンがボスの妻とステージに上がり、チャック・ベリーの曲に合わせてツイストを踊る。後に血なまぐさい結果になりかねないセクシーダンスだ。当初ジョン・トラヴォルタは踊るのを拒むが、ユマ・サーマンに乗せられて殺し屋からダンサーへと転身する。
7位
クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「ルッキン・アウト・マイ・バック・ドア」
『ビッグ・リボウスキ』(1999年)
デュードはいつまでも変わらない! 盗まれた車とクリーデンスのテープを取り返した彼は、いつも通りの自分に戻らねばならない。だから彼は自宅へ向かう車の中でマリファナを吸い、ビールを飲み、車のルーフを叩いて盛り上がる。このシーンを観ながら曲に合わせてエアギターをプレイしない人間はいないだろう。
6位
フェイセズ「ウー・ラ・ラ」
『天才マックスの世界』(1998年)
ネタバレ注意:映画『天才マックスの世界』のラストシーンに関する記述があるため、同作品をまだ鑑賞していない方は読み飛ばすことをお勧めする。マックス・フィッシャーが作った新しい舞台劇を披露した後のパーティーで、参加者は皆ダンスフロアにいる。クロス先生はマックスの眼鏡を外し、彼の目を覗き込む。彼女はそこに死んだ夫の面影を見る。そして、映画史上最も不幸な2人のキャラクターもダンスフロアへと向かう。DJが、1973年の懐かしのパブ・ロックのレコードをかける。今は亡き素晴らしきロニー・レーンのフェイセズ時代の作品だ。マックスとクロス先生のダンスと共に、クレジットロールが流れる。最高のエンディングだ。
5位
アンドリュー・ゴールド「ロンリー・ボーイ」
『ブギーナイツ』(1998年)
信じられないほど最も悲しい映画のシーン。ポール・トーマス・アンダーソン監督は70年代のソフト・ロックを、米国全体とまでは言わないものの、作品に登場する全員へ向けた悲痛なレクイエムに仕立て上げた。ロサンゼルスにあるバート・レイノルズ演じるポルノ映画監督の邸宅で開かれている、70年代のドラッグにまみれたプールパーティー。ジュリアン・ムーア、マーク・ウォールバーグ、ドン・チードルらポルノ俳優役や、ナイトクラブのオーナー役のルイス・ガスマンらが勢揃いしている。キッチンで電話が鳴る。電話の主は誰かを探しているらしいが、目当ての人物はパーティー会場にいない。パーティーの参加者は皆、完全に破滅している。そして関わるもの全ての心を残酷に引き裂こうとしている。何と孤独で寂しいのだろう。
4位
クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」
『ウェインズ・ワールド』(1992年)
郊外に住む負け組の仲間たちが、1台の車に乗ってイリノイ州の街外れを走る。恋人もいない、将来も暗い、行くあてもない、いつもの土曜の夜だった。誰かが「ボヘミアン・ラプソディ」のカセットテープを取り出す。すると突然彼らは負け組から、ロックのコーラスグループへと変貌する。たとえ彼ら自身だけがそう思っていたのだとしても、その時の彼らは世界一クールだった。音楽が日常生活にどれだけ役に立つものかを、こんなに楽しく示してくれた映画はない。このシーンは、ウェイアンズ兄弟の映画『最凶女装計画』などあらゆる作品で模倣された。しかしオリジナルに勝るものはない。ウェイン、ガースと仲間たちは、ガリレオとマグニフィコのコーラスを高らかに歌い上げる。
3位
ピーター・ガブリエル「イン・ユア・アイズ」
『セイ・エニシング』(1989年)
キャメロン・クロウ監督でなければこんなシーンは描けないだろう。ジョン・キューザックがアイオン・スカイの家の前でラジカセを掲げ、2人の思い出の曲である「イン・ユア・アイズ」を大音量で流す。同時に彼は、彼女に自分の想いを伝えたいと願っている。クロウ監督は、現代版ロミオとジュリエットのバルコニーのシーンを作り上げた(さらにピーター・ガブリエルのようなプログ・ロッカーをプロムのネタにすること自体もとても変わった試みだ)。実際の撮影時、キューザックの持つラジカセからはフィッシュボーンの曲が流れていたようだが、楽曲が何だろうが大して関係ない。シーンの重要な点は、もしも自分がキューザックの立場だったら、ラジカセからどの曲を流すかを考えさせることだ。
2位
ザ・ビートルズ「ア・ハード・デイズ・ナイト」
『ハード・デイズ・ナイト』(1964年)
ビートルマニアの原点。ジョン、ポール、ジョージ、リンゴがファンに追いかけられて全速力で逃げている。誰もがリヴァーブのかかった最初のギターコードを聴いただけで、心を奪われる。ビートルズのメンバーは、服を剥ぎ取ろうと金切り声を上げながら狂ったように追いかけてくる女の子たちから逃げようとしているのだろうが、特にジョンは笑いが止まらない。彼らは楽しんでいるのだ(逆にこんな状況を楽しめない人などいるだろうか?)。女の子たちも追いかけるのに夢中で、ロックンロールのスリルに心を奪われたハンターと化している。ビートルズが、楽しむということのコンセプトにどのような革命を起こしたかを象徴するシーンだ。しかしこの時の彼らは、まだスタートしたばかりだった。
1位
ザ・ロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」
『ミーン・ストリート』(1973年)
全てはここから始まり、あらゆるものが詰まっている。マーティン・スコセッシ監督は、リトルイタリーを舞台にした悲劇的犯罪映画のオープニングシーンで、ロックンロールにストーリーを語らせるという全く新しい手法を編み出した。深夜、三流ギャング役のハーヴェイ・カイテルの頭の中では「ビー・マイ・ベイビー」が流れ続けていた。フィル・スペクターの作ったティーンのロマンスを歌った楽曲だ。曲に乗って彼の記憶、夢と恐怖、カトリック教徒的罪悪感、ニューヨークの生活などの映像が流れる。彼の世界が3分間の曲に集約されている。しかし見る側は、それが全てではないことを知っている。同様の手法はあらゆる映画で採り入れられ、映画『ダーティ・ダンシング』では同じく「ビー・マイ・ベイビー」を使っている。しかし誰もスコセッシには敵わない。『ミーン・ストリート』ほど音楽と映像を上手く使った作品にはお目にかかっていない。
From Rolling Stone US.
「最高のロックをフィーチャーした、映画史に残る名シーン30選」ランキング一覧
1. The Ronettes – ”Be My Baby” (Mean Streets)
2. The Beatles – ”A Hard Days Night” (A Hard Days Night)
3. Peter Gabriel – ”In Your Eyes” (Say Anything…)
4. Queen – ”Bohemian Rhapsody” (Waynes World)
5. Andrew Gold – ”Lonely Boy” (Boogie Nights)
6. The Faces – ”Ooh La La” (Rushmore)
7. CCR – ”Lookin Out My Back Door” (The Big Lebowski)
8. Chuck Berry – ”You Never Can Tell” (Pulp Fiction)
9. Donovan – ”Atlantis” (Goodfellas)
10. Spinal Tap – ”Stonehenge” (This is Spinal Tap)
11. Elton John – ”Tiny Dancer” (Almost Famous)
12. Killah Priest – ”From Then Till Now” (Ghost Dog: Way of the Samurai)
13. Alice Cooper – ”Schools Out” (Dazed and Confused)
14. Led Zeppelin – ”Kashmir” (Fast Times at Ridgemont High)
15. Country Joe and the Fish – ”Section 43” (Monterey Pop)
16. Isaac Hayes – ”Theme from Shaft” (Shaft)
17. Yardbirds – ”Stroll On” (Blow-Up)
18. New Order – ”Dreams Never End” (Carlos)
19. Rolling Stones – ”Tops” (Adventureland)
20. Bauhaus – ”Bela Lugosis Dead” (The Hunger)
21. The Doors – ”The End” (Apocalypse Now)
22. Otis Redding – ”Try a Little Tenderness” (Pretty in Pink)
23. Iggy Pop – ”Lust for Life” (Trainspotting)
24. The Pogues – ”The Old Main Drag” – (My Own Private Idaho)
25. Motley Crue – ”Home Sweet Home” (Hot Tub Time Machine)
26. The Doors – ”Moonlight Drive” (Two Lane Blacktop)
27. 7 Year Bitch – ”The Scratch” (Mad Love)
28. Public Enemy – ”Fight the Power” (Do The Right Thing)
29. Jesus & Mary Chain – ”Just Like Honey (Lost in Translation)
30. Elvis Presley – ”Cmon Everybody” (Viva Las Vegas)