1970~80年代に米カリフォルニア州の6つの郡で起きた13件の殺人と13件の誘拐関連容疑の罪に問われていたゴールデン・ステート・キラーこと元警官のジョセフ・ディアンジェロ被告(74歳)が、現地時間21日、11件で仮釈放なしの終身刑を言い渡された。

「被告には情状酌量の余地はありません」。
マイケル・ボウマン判事はこう述べた。今回の判決は最大許容の極刑。この他に1件の終身刑と禁固8年が言い渡された。量刑判決の1週間前には、被害者および亡くなった被害者の遺族の心痛な陳述が行われた。

「皆さんのお気持ちは、1人残らず伺いました」と、判決を前にディアンジェロ被告はこう言った。「私が傷つけた皆さんには心からお詫びいたします。以上です、判事」

量刑判決はサクラメント州立大学で行われ、新型コロナウイルス感染症予防対策に従い、傍聴席は間隔を空けて設置された。ディアンジェロ被告も他の出廷者同様、マスクを着用した姿で判決に臨んだ。入廷の際には全員が検温を受けた。

ディアンジェロ被告6月、死刑判決を逃れるべく全ての犯行で有罪を認めた。

【動画】判決の様子、フェイスガードをつけた被告が有罪答弁

また、すでに時効が成立しているため不起訴となった数十件のレイプの犯行も認めた。ディアンジェロ被告は70~80年代にかけて、カリフォルニア州6つの郡で犯行に及んだ。
量刑判決に先駆け、6郡の地方検事がみな陳述を行った。

「40年以上も長い間、正義が果たされるのを待ち望んでいました」。コントラコスタ郡のダイアナ・ベクトン地方検事は陳述の中でこう述べた。「ようやくこの日を迎えることができました」。彼女はそう言った後、この一週間、被告から受けた「トラウマ」や「傷」を自ら志願して法廷で語った被害者の勇気をあらためて強調した。また90年代から逮捕に至るまで連続殺人犯・ゴールデンステート・キラーの足取りを追い続けたポール・ホールズ元刑事を称えた。ベンチュラ郡のグレゴリー・D・トッテン地方検事とトゥーレアリ郡のティム・ワード地方検事も被害者の勇気に言及した一方、サンタバーバラ郡のジョイス・ダドリー地方検事は無くなった被害者の遺族と友人に対し、被害者の死にざまではなく生前の姿を記憶にとどめてほしい、と訴えた。

オレンジ郡のトッド・スピッツァー地方検事は壇上に上がると、重々しいメッセージを発信した。彼は傍聴者にこう語った。「彼は皆さんの生活を壊しておきながら、自分はのうのうと逃げおおせ、誕生日にケーキのろうそくを吹き消し、孫娘を抱いていたのんです……ですが彼もきっと頭のどこかで、追手が迫っていると知っていたはずです」。検事はディアンジェロ被告を「悪魔」と呼び、「あなたは1人1人を傷つけた。私もです。
この人物、このケダモノには、死刑という極刑がふさわしいと、私は本気で信じています」

「兄の犯行は軍人だった父親から虐待を受けたことが原因」

サクラメント郡のアン・マリー・シューベルト検事検事は、ディアンジェロ被告の連続犯罪が始まってからの長い年月を振り返った――そして、被告が街を恐怖で支配した時期を知るサクラメント市民が、今も同じように恐れおののいていると述べた。彼女は陳述の最後にディアンジェロ被告を直視し、あなたが刑務所内で優遇されようとしても――自分がか弱い老人だと更生局を騙そうとしても、自分も含め関係者全員がこれを阻止する、と述べた。被告が最近老齢ぶりを誇示していたことに対して猛反発があがっていたことから、彼女の発言は拍手で迎えられた。

法廷ではディアンジェロ被告の家族の陳述書も読み上げられた。「私の彼に対する愛情がこの先も変わらないことを兄に知っていてほしい、という思いからこうして書面を書いています」。ディアンジェロ被告の妹は陳述書の中でこう述べ、兄の犯行は軍人だった父親から虐待を受けたことが原因だと述べた。妹は被害者に対して悔恨の意も表明した。そのあとディアンジェロ被告の姪の陳述書へと続き、姪は自分の父親に虐待の傾向があるとわかって以来、被告が父親代わりだったと陳述した。「叔父がそばにいてくれたことに感謝しています。叔父がいなかったら、私は今頃この世にいませんでした」。別の姪は「個人的には、叔父さんの中には私の知らない別の人格があるような気がしてなりません」と述べた。姪の名前は公表されなかった。


前の週には被害者の陳述が行われ、ディアンジェロ被告の元妻シャロン・ハドルさんの陳述書も読み上げられた。「これまでと同じようには生きられません」と、元妻は陳述書の中で述べた(CNNより)。「彼が何百人もの罪のない人々を襲い、彼らの生活をひどく傷つけ、彼が殺めた13人の罪のない人々の家族や友人が40年以上もつらい思いをしてきたという事実を突きつけられながら、日々過ごしています」

被害者の娘は法廷でこう述べた。「怪物は実在しました。ブギーマンが私の家に押し入ったんです」。15歳の時にディアンジェロにレイプされた被害者もこう述べた。「このトラウマともこれでようやくさよならできます……彼は恐ろしい男です。私たちはもう、彼を恐れる必要はありません」(ワシントンポスト紙より)

ディアンジェロは2018年4月、系譜研究用に構築されたデータベースを活用して判明したDNAの証拠がもとで逮捕された。ゴールデンステート・キラーはイーストエリアの強姦魔、元祖ナイト・ストーカー、バイセイリアの荒らし屋と同一犯とみられ、1974年から1986年にかけて少なくとも12件の殺人と50件のレイプ、100件の強盗を働いたと見られていた。元警察官のディアンジェロ被告は1979年、犬除け剤とハンマーを盗んだとして解雇された――多くの犯行を匂わせる証拠だ。

ディアンジェロ被告の量刑判決は、彼と被害者を題材にしたHBOのドキュメンタリー『Ill Be Gone in the Dark(原題)』の初回放送の直後に行われた。全6話シリーズは、今は亡き犯罪作家ミシェル・マクナマラさんの2018年の同名著書がもとになっている。
マクナマラさんは「ゴールデンステート・キラー」の命名者で、長年にわたり彼の足取りを追い続けたが、2016年に著書の完成を待たずに他界――殺人者の身元を突き止めるには至らなかった。友人や遺族によって完成した著書は2018年に出版。その数カ月後にディアンジェロ被告が逮捕された。
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