2017年12月、人気絶頂の最中、山村隆太(Vo)の歌唱時機能性発声障害により活動休止を発表したflumpool。
―8月15日の単独の初の配信ライブお疲れ様でした。
ありがとうございます。
―仕事柄たくさん配信ライブを観てますが、むちゃくちゃよかったです。
本当ですか? 皆に言ってるんじゃないですか(笑)。
―ライブの合間に流れた故郷を訪れるVTRがライブのテーマをしっかり補完していて、flumpoolが今回のライブで伝えたいことが伝わってきました。
確かにそうかもしれないですね。今回の配信ライブはドキュメンタリーと生ライブ半分半分でいこうと決めたんです。だからライブも大阪からやりたいと思いましたし、地元のロケVTRも使ったんです。
―企画はいつ・どんな風に?
5月か6月だったかなぁ……。『flumpool 10th Tour「Real」』のツアーが延期になるかもという発表前くらいですかね。企画はメンバーからです。今回は復帰1発目のツアーだと思ってニューアルバム『Rael』を作っていたというのもデカかったし、活動休止というものを背負った真のアルバムだと思っているので、これまでの曲とはちょっと違ったりしたんです。そういう意味でも、バンドの復活ができてよかったね、という喜びを持って各地をまわろうと思っていたツアーだったんですけど、次は世の中が活動休止みたいになってしまったので。
―flumpoolは呪われてるんじゃないかと思いますよね(笑)。
本当にね(笑)。『Real』ってアルバムを出して、リアルじゃなくなっちゃうみたいな。でもこれは自分たちの、このアルバムの、作られた音楽の宿命のような気がしたので、今こそ、直接触れ合うことのできない今の世の中だからこそ、リアルな、生きている実感を見逃さずにいたいなと思うし、そういう気持ちも世の中に届けたいと思ったんです」
マイナス40点の部分に目を当てる
―配信ライブを「半Real」という名前にしたのは?
いろんな意味があるんです。一番は『Real』っていうアルバムはお客さんの前、ライブで完成だってことをずっと思っていたので、無観客だし「半Real」だなぁと。
―それにしても、大阪フェスティバルホールという大バコで無観客というのは採算的にもリスキーですが、箱のチョイスは他に考えず?
フェスティバルホール一択でしたね。大阪からやりたいというのが強かったですし、本来、flumpoolは8月15日にフェスティバルホールでライブをやっているはずだったんです。

Courtesy of flumpool
―withコロナの時代のリアルですね。
まさにその通りですね。それと、そもそもなんですが、今生きているということをカタチにしておくじゃないですけど、誰だって完璧でありたいなという気持ちで、でもそうではなく何かが足りない自分が常にいて、100点の毎日じゃなくて、60点くらいの毎日がずっと続いているんですよ。で、マイナス40点の部分に目を当てて、それを伸び代と思ったり、明日はプラス1点何を足していけるかということを大事にしていくことを歌ったのが、『Real』というアルバムなんです。今の自分たちが、この状況を作品として残しておかないと、言葉として、誰かに伝えておかないと、流れていってしまうものだ思ったから、この不完全なライブというものをしっかりやっておくべきなのかなと思いました。
―不完全なライブを完全なカタチで残してくれたことが、未来から見たら意味のあることだと思っています。
そうであって欲しいですね。
―さて、実際オーディエンスがいないステージに立った瞬間というのはどんなでしたか。
ファンのありがたみを痛感です。バンド4人でリハーサルスタジオみたいに演奏していて、それである程度成立するかなと高を括っていたところがあるんですけど、無理でした。目の前に人がいなくて、音楽をぶつける相手が何を感じてくれているのかがわからないと、自分自身に跳ね返ってこないというか。鏡みたいなもので、自分の表情、感情も湧いてこないんです。

Courtesy of flumpool

Courtesy of flumpool

Courtesy of flumpool

Courtesy of flumpool
―投げても球が返ってこないキャッチボールをしている感じ?
そうです。極端に言えば、すごく怒ってるとか、つまらなそうにしている人がいる方がまだいいんです。自分たちを投影できるから。そこでキャッチボールが成り立つ方が、断然ライブだなと思います。お客さんがいないと、生きている感覚がないというか、観ている人も、そう感じた人が多いと思います。そういう違和感を残せたのは、今後につながっていくのではないかなと思っています。
配信ライブならではのドキュメンタリー感
―落語家・立川談春師匠が「高座はドキュメンタリーだ」と言っていましたが、2曲目終わりの山村さんのMCがどこかぎこちなくて、観ていてもどこか居心地が悪くて、そこを含めてこの配信ライブはドキュメンタリーだなぁと。
まさにそうです。
―それがある意味コロナ禍のぎこちない、不慣れな日常につながっていく感じがしました。完璧を求める必要がなくて、この状況で楽しんでいいんだと。最後の曲「HELP」の時のたくさんの”ありがとう”というコメントにつながった気がします。
そうかもしれないですね。音楽がつないでくれるのって、うれしいとか楽しいとかもあるけど、寂しいという想いをつないでくれるのが音楽だと思うので。それが「HELP」という曲だと思うし、このライブ自体のテーマにもなりました。
―5曲目の「ちいさな日々」からの数曲は客席にステージが移動しましたね。しかもメンバーごとに小さなステージが用意されていましたが、それぞれが離れているという不思議な演出でした。
無観客配信ライブで客席に降りてっていうのはよくあるパターンだったので、一回やってみたいという気持ちと、でもそこで、メンバー同士の距離を置きたかったんです。

Courtesy of flumpool
―あの演出は今の僕らの社会を可視化してくれていましたよね。
無意識下にある不安をバンドって教えてくれるんです。みんな一人だけど一人じゃないよって、シンガーソングライターの方が言うより、バンドが言う方がいいなと思うのは、バンドの儚さ、いつまで一緒にやれるかわからないーーそういう儚さをもって活動しているからだと思うんです。寂しさを共有すること。それを強さに変えること。バンドだから胸を張って言えることなのかなと。
―バンドでよかったという想いに帰れたと?
ええ。むしろ一人なら途中でやめてました。「すいません」って(笑)。
大阪の街にあった「小さな世界」
―(笑)。
今、ライブハウスでライブできないとか、学校に行けないとか、いろんな人がリアルを奪われているというなかで、自分たちにそういう世界があったよな、それって小さいことだったけどとても幸せなことなんだって、伝えたかったんです。VTRの中で路上ライブやっていたこととか、解散しそうになったこととかを流しましたが、僕らもそういう小さな世界で生きていたけど、そこに幸せってめちゃくちゃつまっていたよねって言いたかったんです。今の世の中は、人と会わないとか、家にいるとか、小さくなった世界を生きています。でも、大きい世界だから幸せがたくさんあるということではなくて、ああいう大阪の小さな街で過ごしていた自分たちだけど、今考えると幸せっていっぱいあったなって。
―その極めつけが、昔、メンバーで溜まっていた地元のファミレスに行って、昔みたいに300円のほうれん草のソテーを食べるシーンでした。
300円でいいんです。何万円もする料理より。300円あれば幸せだったなって気持ちがいつの間にかなくなっているんでね(笑)。
―せめてロケの時はもっといいものを注文してください(笑)。
確かにロケの時もほうれん草のソテーしか注文しなったなぁ。昔と変わってないですね。でも、そこを観て欲しい気持ちもあったんです。あれが僕らのすべてだった時代があったので。
―最後の「HELP」の時にみんなのコメントがステージに映る演出があり”ありがとう”というコメントをたくさん見かけました。
みんな日頃から耐えているんだろうなと思いました。自分本位じゃない人がファンには多いのかなぁ……だからきっと今の状況は大変ですよね。”ありがとう”って聞くと、そんなこと言わなくても大丈夫だよ、って気持ちも生まれてくる。ここでありがとうって言えてしまう人はしんどいと思うんです。

Courtesy of flumpool
―でも、言えたことですっきりした人も多いかもしれないですよね。
そうだといいですけどね。お盆なのに実家にも帰れない、遠くに遊びに行けない。”ありがとう”という言葉の背景には、そんな夏に感じていた不甲斐なさや悔しさもあったと思うし、僕たちのライブを機にまた希望の光が当たっていくといいなと思っています。
「FM802 Live pool ON LINE!!」は対バンライブ
―そして、「FM802 Live pool ON LINE!!」が8月25日に開催されますね!
FM802さんと僕たちが主催する対バンライブを配信します。3月に予定していたんですけど延期になってしまって。今回は中止にするかなと思ったんですけど、でもやりたかったんです。さすがに出演バンドは数が減るかなと思ったら、みんないいですよと言ってくれました。
―お客さんは?
無観客で配信です。
―ワンマンで無観客よりは、ワイワイできますね。
そうですね。なのでむちゃくちゃ楽しみです。昔、ライブハウスでお客さんが3人とか、メンバーより少ないことも結構あったので、こういう時頼りになるのは他のバンドだったりするんです。ライブハウスあるあるなんですが、客席に対バンの人しかいないとか結構あったから(笑)。今回はフェスというより対バンのライブです。対バンライブってバンド同士で刺激しあえる場でもあったので、僕らもライブの原点に返ってやれる機会だと思っています。
―KEYTALK、Novelbright、緑黄色社会と若手の凄い面子が揃いますが、どんな基準でブッキングを?
今勢いがあるバンドで!ということでお願いしたんです。僕らも中堅になっているので、”若い勢いのあるバンドと対バンして、こなれてしまったflumpoolの状況を変えてくれ!”っていうドMな感じでFM802さんにお願いしたら、凄いバンドが集まったので、ちょっと焦ってます(笑)。
―対バンだけではなく、flumpoolのステージにも他バンドからセッションでの参加があるんですよね?
最後にセッションをします。KEYTALK、Novelbright、緑黄色社会からぞれぞれ出てもらって、1曲だけセッションをする予定です。
―更に、転換中にも大阪人らしい企画があるんですよね?
Novelbrightのヴォーカルの竹中(雄大)くんと僕とで弾き語りします。竹中くんは20代ではナンバーワンと思っているヴォーカリストなので楽しみです。あと。うちのギターの(阪井)一生が、KEYTALKのギターの(小野)武正くんと二人で何かやるんですけど……。漫才でもやるんじゃないですか(笑)。
―(笑)一生さんのピンでのコーナー『復活!FM SAKAI』もあるみたいですが?
それ、よくわかんないです(笑)。FM SAKAIっていうのは、中学生の時、一生の家で俺と一生でレコードラジカセに録音してたんです、遊びで。それが「FM SAKAI」なんですが、それをファンクラブで再現したことがあるんですが…今回もやるみたいです。お笑い系に巻き込もうとする先輩は大阪にいっぱいいるんですけど……。とにかく出演バンドに迷惑をかけないようにします(笑)。
―そういうのも含めて、この夏はお祭りなかったんで、お祭り感が楽しみです。
夏のみずみずしさ、切ない感じ、夏の高揚感は出したいと思っています。KEYTALKはワクワクさせてくれるし、緑黄色社会は透き通る声がいいし、Novelbrightは勢いを一番持っていると思うので、夏らしいイベントにしたいですね。
―flumpoolには横綱相撲をとってもらわないとですね。
ええ。なのに小細工ばっかり考えていて(笑)。
―15日のワンマンとはセットリストも違う?
違います。これは勝ちに行くセットリストです。
―えげつなく代表曲をやると?
はい。大人気ないと言われても(笑)。大人のパワーをいっぱい使って(笑)。いいバンドばっかりなんで、負けられないなと。
―最後にあらためて25日の『FM802 Live pool ON LINE!!」意気込みを!
今年は僕らも夏の思い出がなくて。ただ2020年に夏がなかったわけではないので、夏がなかったことにしたくないんです。こんな夏でも、切ない想いも、悔しい想いもあり、そういう想いを共有するっていう意味でライブは大事だし、この4バンドで音楽として前を向ける力も届けたいです。夏らしいことを味わってない方もたくさんいると思うので、そういう方たちの夏の思い出になってくれたらと。
―そしてその後は、延期になった全国ツアーがいよいよスタートするんですよね?
やろうと思っています。中止も多いけど、僕らはどうにか食らいついてやっていこうかと思っています。対策は万全にやりつつ、基準を守りつつ、今こそ音楽は必要だろうとこの間の無観客をやって思ったので、ここはちょっと自分たちの信念として、ツアーをやっていきます。やるべきではないっていろんな反応もあると思いますが、自分らの信念を信じてやっていきたいんです。やりたいんですよ、僕らにも音楽が必要だから。
<INFORMATION>
無観客ライブ配信
「FM802 Live pool ON LINE!!」

2020年8月25日(火)
時間:17:30開場 18:30開演
出演:KEYTALK/Novelbright/flumpool/緑黄色社会
MC:大抜卓人/加藤真樹子(FM802 DJ)
詳細:https://funky802.com/pages/pickup_detail/6113
flumpool 10th Tour「Real」スペシャルサイト
https://www.flumpool.jp/sp/fptour2020/