パノラマパナマタウンが2020年8月16日、配信ライブPPT Online live「On the Road」を開催した。

パノラマパナマタウンがライブを行なうのは、2020年1月19日に行なわれた恵比寿・LIQUIDROOMでの公演以来、約半年ぶり。
その間、Gt/Voの岩渕想太の声帯ポリープ手術や、元メンバーのDr.田村夢希の脱退、新型コロナウイルスの流行によって東京・日比谷野外音楽堂で開催予定だった新体制初ライブも中止になり、彼らと音楽を取り巻く状況は大きく変化してきた。

そんな中でも、彼らは歩みを止めなかった。オフィシャルYouTubeチャンネルで、視聴者の意見も取り入れながらデモ音源を作る『PPT Online Studio』を5月から3ヶ月間にわたり放送。自身初となるオンラインライブ配信『PPT Online Live 「On the Road」』の開催も同番組で発表された。ライブ会場は、彼らのメジャーデビューが発表された新宿LOFT。新体制での初ライブがどのようになるのか、番組内で生まれた新曲がどのように披露されるのか、そんな注目の中でライブが行われた。

21時を過ぎた頃、待機画面が切り替わり会場の様子が映し出された。パノラマパナマタウンの3人にサポートドラマーのオオミハヤトを加えた4人が、新宿LOFTの客席で互いを向き合う円形での布陣でサウンドチェックを済まし、Gt / Vo岩渕の「やろかい」の一言から「SHINKAICHI」でライブがスタート。イントロから浪越のギターの伸び伸びとしたチョーキングもあり、リラックスした雰囲気だ。この曲は、彼らのインディーズ時代1sミニアルバムのタイトル曲。新体制の彼らの幕開けを飾るにふさわしい曲になっている。間奏ではフロントマンの3人がマイクスタンドを超えて、円の中心で見せつけ合うように楽器をかき鳴らす。
ギターに徹する浪越、飄々としながら少々やんちゃに歌う岩渕、頭と全身を大きく振ってビートを感じるタノの姿が約半年ぶりに帰ってきた。

パノラマパナマタウン、新体制の一歩目を完成させた半年ぶりの熱狂


1曲目で勘を取り戻すと、イントロから攻撃的でハジけたテンポの「Top of the Head」で勢いを加速させていく。客入りであれば会場は躍り狂う場面でなっていたであろうことが容易に想像できる、筆者もパソコンの前で身体を揺らしてしまった。激情的なギターソロと、それに続くペースダウンしたテンポで当日のライブへの想いを込めたラップのギャップもクールだった。さらに続けて「フカンショウ」を披露。ポリープの声帯手術を経て、伸びと艶がある岩渕の声による語感の良い言葉が並ぶボーカル、そしてリズム隊の絡み合いが勢いを生んで気持ちいい。赤を基調とした照明の中で、四つ打ちのノリに合わせてパノラマパナマタウン流のダンスフロアーが作り上げられていった。

ショートMCでは「今の俺たちを見てもらえたら嬉しいなと思っております」と話すと、新曲「カモンフューチャー」を披露。元々、今年4月5日に日比谷野外大音楽堂で開催される予定だった主催イベント「パナフェス2020 TOKYO」に向けて用意されていた、「どんな未来でも俺らはやるぞ」という想いが込められた楽曲だ。ガレージロック調の曲で「食べたいな牛カルビ」と歌いたいことを自由に歌っているパノパナらしさも面白い。先の見えない時世の最中でも、「思いのまま尖っていけ」、「俺たちの未来だぜ」と、新たな幕開けへの強い意志を歌う姿は、画面の向こうの配信者を勇気付けるものであった。

パノラマパナマタウン、新体制の一歩目を完成させた半年ぶりの熱狂

岩渕想太

また、このブロックでは、『PPT Online Studio』で制作された楽曲も披露。
「Dogs」では、身体が自然と動いてしまう16ビートのリズム隊の上に、自由に展開されていくギターリフ、ギタリスト冥利に尽きていると言わんばかりに楽しそうに弾く浪越の表情が印象的だった。「Rodeo」は、ギターとベースで暴れる馬のような疾走感のあるリフを図太く表現してパワーのある楽曲。サビの声を張った岩渕のボーカルの高音には、ポリープの影響が微塵も感じられず、伸び伸びと余裕を持って歌い上げている姿が感じ取られる。サングラスを掛けて前のめり、且つ無骨で硬派なサウンドを奏でるタノのベースが印象的だった。勢いのある流れの後に、ゆったりとしたビートの上でギターを置いた岩渕が会場を移動しながらラップを披露する自己紹介ソング「パノラマパナマタウンのテーマ」、アップテンポな「ロールプレイング」と緩急のある流れも楽しい。

「思うようにいかない毎日、こんなこともできないのかみたいな中々足かせの多い毎日ですけど、あんなときがあったなって懐かしくなる日が絶対来るなと思ってます。あのとき恥ずかしかったなとか、あの時青かったなとか、あのときあんなミスしたなとか、ずっと青いのがいい」。

岩渕はそう語って、『PPT Online Studio』で制作された、パッと開けるように爽やかな楽曲「SO YOUNG」を披露した。半年以上も閉塞感の漂い続けるこの日々の中で、「デタラメも信じ抜いてみりゃそれが答えだろう」と青臭いことを突き抜けるように歌う楽曲を聴く機会も自然と減っていたかもしれない。こんな時代だからこそ、以前は自然と持つことができていた前向きな気持ちを与えてくれるエネルギーを持った1曲になった。

パノラマパナマタウン、新体制の一歩目を完成させた半年ぶりの熱狂

浪越康平

「ライブも俺ら6ヶ月半ぶりなんですよ。これまで、どうやってやっていたのか分からなくなる次元を遙かに通り越してしまうくらい時間が経ったんです。
やっぱりライブって楽しいなって思います。おもろい。不要不急とか言われて、夜の町とか色々な線が引かれますけど、俺はこれ以上線を引いて欲しくないし、色々な人がいる街だし、色々な人が必要だし、俺はやっぱ音楽が必要だと思うし、これが日常だと思うし、(音楽が)急だと、必要だと思う。こんな日常が帰ってきて欲しいと思います」

MCで岩渕がそう語った後に、日常の中にあった風景を歌う「エイリアン」、「俺ism」。今となっては失われた日常を歌ったせいか、これまでよりも少しノスタルジーにも聴こえてしまうが、全力で演奏する。「俺ism」の間奏では、2本のギターの掛け合いを全身で全力で感じて楽しむメンバーの姿に思わず胸を熱くさせられた。ライブ終盤の中でも彼らの熱量は止まる所を知らず、「MOMO」では浪越もシャツを脱ぎ、岩渕は小気味よいテンポ感で今の想いを込めて歌詞を変えたラップを披露していく。”生きてるかい!”と画面向こうのオーディエンスに問いかけて始まる「めちゃめちゃ生きている」では、タノが所狭しと頭を振り乱して暴れ回る。

パノラマパナマタウン、新体制の一歩目を完成させた半年ぶりの熱狂

タノアキヒコ

「この期間の中で昔の映像を遡ることがあったんですけど、変な道のりを歩んできたバンドだなと思っていて。全然まっすぐじゃないし。見通しの良い道じゃないけど、俺らが間違いなく歩いてきた道だと思っています。夢希(元ドラマー)見とうやが? 辞めたマネージャーも観とうやが? 色々なことがありましたけど、これが新たな一歩目だと思ってます。
まだまだ続いていくし、まだまだ道の途中だと思ってます。オンラインだけど、これが一歩目ということで、これからもパノラマパナマタウンをよろしくお願いします」

そう所信表明すると、4月に日比谷野外大音楽堂公演で披露する予定だった新曲「On the Road」を演奏。強い眼差しで真っ直ぐに前を見て”心が震えるような景色を見に行こう”、”未来を見に行こう”と歌い上げ、大団円の中でライブは幕を下ろした。

パノラマパナマタウン、新体制の一歩目を完成させた半年ぶりの熱狂


ライブ開始直後は、久しぶりの感触を確認しながらメンバーが互いの演奏を慎重に意識しているようにも感じられたが、ライブが進むにつれて、無観客ライブにも関わらずファンの熱狂する歓声が聴こえてくる場面が何度もあった。目には見えない客を確実に見据え、それらも引っくるめて熱が上がっていく様子が画面越しに伝わってきたのだ。新型コロナウイルスの影響で社会の閉塞感は際限なく進んでいる。パノラマパナマタウンのライブの熱気は、そんな時世を突き破りうる希望の風を吹かせるものだった。

『PPT Online Studio』という試みから、彼らの新たな一歩は始まっていた。そして、今回の配信ライブ中にどんどん上がっていく彼らの熱気によって、新体制パノラマパナマタウンの形がより明確になっていく様も目に見えた。間違いなく最高のスタートになったであろう。そして、このライブも足跡になり、彼らは2歩目、3歩目を踏み出していく。その歩みの中で、大観衆の前で際限なくエネルギーが増していく彼らの熱い姿を観てみたい。
彼らのエネルギーをもっと浴びたい。そう感じるライブだった。

<ライブ情報>

パノラマパナマタウン
PPT Online Live「On the Road」

=セットリスト=
1. SHINKACHI
2. Top pf the Head
3. フカンショウ
4. カモンフューチャー
5. いい趣味してるね
6. 俺はどういつも誰かに手綱引かれてる~~
7. ラプチャー
8. ロデオ(PPT)
9. パノラマパナマタウンのテーマ
10. ロールプレイング
11. サリンジャー(So young)
12. エイリアン
13. 俺ism
14. MOMO
15. めちゃめちゃ生きてる
16. On the Road

パノラマパナマタウンOfficial HP:http://www.panoramapanamatown.com
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