動画のキャプションには「(OnlyFansで)4カ月足らずで15万ドル(約1590万円)を稼いで、家族にそれを知られたくないとき」。この後のTikTok動画で彼女は「給与明細」を披露する。コンテンツクリエイターがファンと直接やり取りして、限定コンテンツを販売できるサイトOnlyFansでの収入データだ。
サヴァンナ以外にも大勢のOnlyFansクリエイターが似たようなTikTok動画を作って、自分たちの稼ぎをひけらかしている。これ見よがしの自慢として、またネット荒らしや中傷屋を黙らせる手段として。「TikTokはOnlyFansの情報を流して、他の女の子たちからアドバイスをもらうぴったりのプラットフォームだわ」と言うのは24歳の統計学者リジー。OnlyFansでの彼女の稼ぎは3カ月で3万1000ドル(約330万円)だ。OnlyFansの収入を載せたTikTok動画は300万人が閲覧し、彼女のページでも一番の人気を誇る。
セックスワーカーたちはずいぶん前からOnlyFansを活用して、自分たちのコンテンツ(ヌードから足フェチ画像、動画までなんでもあり)をユーザーに直接販売してきた。だがCOVID-19のパンデミック発生に伴い、新たに失業者となったアメリカ人が収入源としてプラットフォームに押し寄せ、新規会員の登録数は爆発的に急増した。OnlyFansの紹介ボーナス制度の恩恵にあずかったクリエイターも多い。この制度では1人紹介するごとに、紹介されたユーザーの収入の5%が付与される(5%の特典は、以前は半永久に付与されていた。
以来OnlyFansは一種のトレンドとなり、大勢の人々がアカウント開設を検討している。ビヨンセはミーガン・ジー・スタリオンのリミックスでOnlyFansの名前を口にし、ベラ・ソーンやカーディ・Bといったメインストリームのセレブリティたちもプラットフォームに参入した(もっとも後者の場合、『プッシーも乳首もお尻も見せないわよ』と念を押している)。
単なる「ヌード画像」ではないコンテンツ
新たなファンを獲得したものの、OnlyFansにまつわる汚名はいまだ晴れない。ひとつには、OnlyFansはNSFW(職場での閲覧注意)コンテンツに限定しているという間違った考えのせいだ。ヌード画像は「楽に稼げる」という、これまた間違った考えもある。サヴァンナはTikTokに47万5000人以上のフォロワーを抱えているが、彼女はこれをタブーを打破するチャンスだととらえ、コンテンツクリエイターとしての自分の仕事が「まっとうな職業」であると主張している。
@weights_n_freedomIt be like that tho my OF is @cakes_n_freedom ##accountant ##boss ##makeitrain♬ original sound - rockysroad
「偏見を打ち破っているという手ごたえはたしかに感じるわ」と本人。OnlyFansのアカウントを開設したと明かしたときは大勢の人からあばずれ扱いされたが、「お金が懐に入ってくると、みんな途端に考えを改めるのよ。『まさか自分がやるなんて考えたこともなかったけれど、彼女にできるなら自分もできるんじゃないか』って。そういうコメントは何千ともらったわね」(OnlyFansの取り分は全収入の20%。
アリゾナ州の28歳の専業主婦ジョビー・レックスも、この春OnlyFansでアカウントを開設した際に同じ教会に通う仲間から厳しい批判を受け、ほうぼうで偏見に直面した。「私のやっていることに関して、多くの人がいろいろ意見してきたわ」と彼女は言う。「彼らを黙らせるには(稼ぎを見せるのが)いい方法だと思ったの」
@jobylexx##of ##gind ##fyp ##foryourpage ##4u ##hustle♬ Rags2Riches (feat. ATR Son Son) - Rod Wave
19歳のエイヴァは今年始め、全面的に自宅待機令が敷かれた直後にOnlyFansを始めた。これまでに約3万5000ドル(約370万円)稼いだという。彼女がOnlyFansの収入自慢のTikTok動画(BGMはディズニージュニアの『ちいさなプリンセス ソフィア』の主題歌)を作ろうと思ったのは、似たようなOnlyFansの女性クリエイターの動画に、男性ユーザーがデュエットしているのを見たのがきっかけだった。「彼は仕事を辞めたい、女は楽でいいよな、とバカにしてたわ。完全に彼女をけなしてたの」と彼女は言う。「それでちょっと頭にきて、私も動画を作ってやろうじゃないって思ったの」。彼女の場合、売春の偏見をなくす以外に、お世辞にも利他的とは言えない別の動機もあった。「稼ぎをあげるのにも役に立つんじゃないかなって」
@avaamorr##greenscreen stick w me if u wanna learn the ropes♬ a foreigner overnight LMFAOO - nappyheadd
新参者に声をかけ売り上げをピンハネする者も
紹介ボーナス制度によって、OnlyFansのエージェントやマネージャー、また「師匠」といった零細産業が生まれた。楽に稼げるといって新参者を業界に引き入れ、収入の一部をピンハネするのだ。「そういうTikTok動画でだましている人たち(の一部)は――相当数いると断言できますよ――楽に稼げると思わせて、モデルたちに新規登録させています」と言うのは、アダルトマーケティングの指導者兼コンサルタントのアンバリー・ロスフィールド氏だ。
だが実際のところ、そうした一部クリエイターがOnlyFans新規ユーザーの紹介料ねらいだとしても、大概はそう儲からない。TikTokでOnlyFansの稼ぎを自慢したクリエイターたちも、実際に新規登録者の紹介料として得た額はさほど多くない。例えばエイヴァの場合、紹介料で得たのは約300ドル。彼女が紹介した新規会員は、まだお金を稼げるところにまで至っていないからだ。サヴァンナの場合、紹介制度は「倫理」に反するという理由から、ほとんど紹介はしていない。ただたまに相談を受けたモデルに紹介をしてやることがあり、約500ドルの紹介料を得ている。TikTok動画がOnlyFansは楽に稼げるという間違った印象を与えているのではないか、と尋ねたところ、フォロワーを増やすのがどれだけ大変かをきっちり伝えるようにしている、と彼女は応えた。本人いわく、時には1日17時間も売り込みに時間をかけることもあるという。
それでも、彼女のようなTikTok動画が新規参入者を惹きつける大きな要因になっているのは明らかだ。もっとも彼女の目的は勧誘ではなく、自分の経験が誰にでも当てはまるわけではないと釘を刺しつつ、プラットフォームでの稼ぎ方を「教授」することだ。セックスワーカーとして稼いだ収入を見せびらかすことで、偏見がなくなるならなお良し。「よく言われるのよ、『私は救急医療士として人の命を救っています。なのに裸の写真でお金儲けをする人がいるなんて、フェアと言えますか?』って」とサヴァンナは言う。「そういう時、私はこう言うの。『そうね……救急医療士をして、かつ裸の写真も売ればいいんじゃない?』って」
from Rolling Stone US