Amazonのゲーム配信サービスのTwitchは、クリエイターがストリーミング配信の際に使用許諾を得た楽曲を使用することを可能にしたものの、使用できる楽曲は限定されている。

米Amazonが所有するストリーミングプラットフォームのTwitchは、録音された音楽の著作権の使用許諾を得ているのか? と質問されたとき、同社のジェフ・ベゾスCEOがわからない、と答えたのを覚えているだろうか?

ようやくTwitchの音楽にライセンスが付いた——だが、使用許諾を得た相手は大手レコード会社ではない。
Twitchは大手レコード会社ではなく、インディーズアーティストに加え、一握りのインディーズレーベルと仕事をしている複数のグローバル・ディストリビューターとライセンス契約を締結したのだ。こうしたディストリビューターのレパートリーには、百万曲を超えるインディーズズアーティストの楽曲が含まれており、今後Twitchユーザーは使用許諾を得たフルライセンス付きの楽曲をストリーミングの際に使用できるようになる。

米現地時間9月30日、Twitchは「Soundtrack by Twitch」というクリエイターのための新ツールの開発に去年から取り組んでいると発表した。同ツールは、数多くのレーベルやディストリビューターとのパートナーシップを通じ、ライブストリーミングで使用できるライセンス付きの楽曲を提供する。

「Soundtrack by Twitch」の立ち上げに際しては、UnitedMasters、DistroKid、CDBaby、Anjunabeats、SoundCloud、EMPIRE、Future Classic、Nuclear Blastなどの30以上のレーベルをはじめとする音楽会社の百万曲を超える楽曲が使用可能となる予定だ。これらはすべて独立した事業であり、ご覧のとおり、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージック・グループ、ワーナー・ミュージック・グループの大手3社は関与していない。

さらに「Soundtrack by Twitch」は、Beggars Group、コバルト・ミュージック・グループのAWAL、Secretly Groupといった大手インディーズズレーベルを擁する独立系レーベルエージェンシーのMerlinの使用許諾は得ていないようだ。

9月30日にローンチされたベータ版「Soundtrack by Twitch」(今後数週にわたってTwitchの全ユーザーを対象にサービスを拡大予定)には、ジャンルに特化した「Station」やキュレーション済みの楽曲を定期的にアップデートする「Playlist」といった機能が搭載される。どちらもTwitchのミュージック・キューレーション担当と「選ばれたストリーマーと業界パートナー」が手がけている。Twitch曰く、社内キューレーション・チームが新しい「Playlist」を定期的に追加される。

「Soundtrack by Twitch」には、Above & Beyond、mxmtoon、Porter Robinson、RAC、SwuMなどの数多くのアーティストが参加する予定だ。Twitchユーザー以外のミュージシャン、レーベル、音楽出版社もヘルプページから楽曲を同ツールにアップロードする方法をチェックできる。


Twitchによれば、「Soundtrack by Twitch」の音楽は独立したオーディオチャンネルに分割されるため、アーカイブでVODがミュートされたり、Twitchチャンネル(またはコンテンツのアップロード先)で権利侵害の警告を受けたりする不安を感じることなく、配信中に音楽を再生することができる。

ここでTwitchが言う「警告」とは、著作権侵害に関するアラートのことである。伝えられたところによれば、数名の著名なTwitchユーザーは投稿動画や自身のチャンネルで無許諾音楽を使用したため、今年のはじめにこうしたアラートを受け取っていた。

それを受けてTwitchは、「著作権侵害の再犯者」のアカウントを削除(あるいはアクセス不能に)すると警告し、「2017~2019年の楽曲をBGMに使っている動画に対するデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の削除要請が急増したため、著作権侵害を繰り返すユーザー対策に取り組んでいる」と主張した。

この原因は、Twitchがセーフハーバー協定(訳注:2000年にEUと米国とで合意された、米欧間の越境データ移転に関する2者間協定)で保護されるためには、レーベルのような著作権所有者、あるいはアメリカレコード協会(RIAA)のような著作権所有者を代表する団体がDMCA経由で出した削除要請にTwitchは法律上従わなければならないからだ。それによってYouTube同様、Twitchはユーザー生成コンテンツ(UGC)を侵害した責任を負わずに済む。当然ながら、楽曲を使用許諾が得られない限り、Twitchはこうした削除要請に従いつづけなければならない。「Soundtrack by Twitch」のローンチは、音楽業界における同プラットフォームの高まる重要性を強調している。4月にTwitchは同社のプロダクトおよび音楽エンジニアリング部門の責任者としてトレイシー・チャン氏を引き抜いたことを発表した。チャン氏は、Spotifyのプロダクト・マネジメント部門のディレクターを務めた人物だ。

その翌月、独・無料音楽ファイル共有サービスのSoundCloud(「Soundtrack by Twitch」の立ち上げパートナーのひとつ)は、アーティスト、プロデューサー、業界の専門家を起用した、一連のオリジナル・ライブ・プログラムを開始した。

9月初頭、Amazon MusicはTwitchとパートナーシップを結び、IOSとAndroidのAmazon Musicアプリにライブストリーミング機能を導入した。


「私たちは、あなたの創作プロセスにおいていかに音楽が重要であるかをわかっています。それに加え、常に進化している複雑な音楽のエコシステムを理解し、対応する不満の声も私たちの耳に届いています」とTwitchは「Soundtrack by Twitch」の発表とともに9月30日に公式ブログに投稿した。「『Soundtrack by Twitch』は、ライセンス付きの厳選された楽曲ライブラリへのアクセスを可能にし、音源は分割された状態で、お使いのストリーミングソフトウェアに統合されます。そうすることで、あなたが魅力的なコンテンツを作成し、クリエイターとして成長するあいだもあなたのチャンネルは安全なままです。フレッシュなインディーズアーティストの楽曲を集めた『Soundtrack by Twitch』の豊富なライブラリは、すべて全世界対応のライセンス付きのため、安心してライブストリーミング中の視聴がお楽しみいただけます」。

UnitedMastersの創設者・CEOのスティーヴ・スタウト氏は「今回のTwitchのローンチは、世界中のインディーズアーティストにとって革新的だ」とコメントした。

EMPIREの創設者・CEOのガジ・シャミ氏は、次のように言い添えた。「現在のカルチャーの推進力はゲームと音楽だ。盛り上がりを見せるこのコミュニティを支えるうえで、『Soundtrack by Twitch』は必要不可欠な次のステップとなるだろう」。

さらにDistroKidの創設者・CEOのフィリップ・カプラン氏も次のように述べた。「Twitchは、音楽業界においてますます支配的な存在へと成長しており、百万を超えるDistroKidのアーティスト全員が『Soundtrack by Twitch』の恩恵を受けられるだろう」。英レーベルのAnjunabeatsは、次のように語った。
「私たちの厳選されたカタログ音源を『Soundtrack by Twitch』に提供することができ、ワクワクしている。ゲームとダンスミュージックは深いところで交差しており、音楽ファンがTwitchのクリエイターを通じて私たちのカタログ音源を発見すると考えただけで胸が高鳴る」。

SoundCloudのリポスト部門の責任者を務めるジェフ・ポンチック氏も次のように言い添えた。「私たちは、SoundCloudの仲間のようなプラットフォームとしてTwitchをとらえている。私たちは、一人ひとりのクリエイターがオンラインでオーディエンスを集め、生計を立てるためのサポートをすることに強いやりがいを感じる」。

「クリエイターのエンパワーメントという共通の目標に取り組むにあたり、同じようなビジョンを持つプラットフォームとパートナーシップを結んだことに興奮している」。

DJのドン・ディアブロは次のように語った。「人生最高の瞬間は、人と人を結びつけると思っている。こうした最高の瞬間には、最高の楽曲がふさわしい。僕の楽曲を『Soundtrack by Twitch』に提供することでTwitchコミュニティに貢献し、人々の新しい記憶の起爆剤となれる機会に感謝すると同時にワクワクしてるよ」。

独ディストリビューターのDig Dis! は次のように述べた。「『Soundtrack by Twitch』のおかげでユーザーはライブストリーミング用の最高の楽曲を見つけられるだけでなく、アーティストや音楽が発掘・認知される素晴らしい場所を提供してくれるだろう」。


シンガーソングライターのmxmtoonは次のように語る。「『Soundtrack by Twitch』に参加できて本当に嬉しかった。だって、ファンのみんなは私と一緒に音楽を聴くのが大好きだっていうことを知っているから。それに、ほかのクリエイターが私の楽曲にアクセスできるって考えただけでワクワクする」。

本記事は、音楽業界のニュースや分析を発信するMusic Business Worldwide誌に当初掲載されたものである。

From Rolling Stone US
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