RPG系バンドをコンセプトに活動している4人組バンド、魔法少女になり隊が10月14日に配信するデジタルシングル『NEW ME』を機に大きな変貌を遂げたーー彼らはボーカル・火寺バジルの声帯ポリープの治療に伴い、今年1月に活動休止を発表。9カ月の沈黙を破り、RPG系バンドを脱ぎ捨て、これからはラウドロックバンドを掲げて活動をしていくという。
ー魔法少女になり隊は、今年1月から火寺バジルさんの声帯ポリープ手術のため活動を休止されてましたけど、今は完治されたんですか?
火寺バジル(Vo.以下、火寺):めちゃめちゃキレイにポリープが取れました(笑)。もうバッチリです! 元はと言えば、去年の夏頃から喉の調子が悪くなって。ボイトレの先生に相談したところ「調子の悪い期間が長いし、歌を聴いてても引っ掛かりを感じるから一度病院へいってほしい」と言われて。それがきっかけで調べにいったら、ポリープが見つかりました。
ーその頃って3rdミニアルバム『POPCONE』をリリースしたタイミングだと思うんですけど、レコーディング中は大丈夫だったんですか。
火寺:その時はすでにポリープがあるのが分かっていたので、めちゃめちゃケアをしながらレコーディングを頑張ってましたね。その後、去年の冬にライブ納めをして、そこから治療に専念しました。完治してもコロナでライブができなくなっていたから、今回リリースする「NEW ME」で久々に歌いましたね。
ーそして活動復帰とともに大きな決断をされたんですよね。
火寺:そうです。
ー魔女に呪いをかけられて今まで喋ることができなかったバジルさんが話せるようになった。
gari(VJ/Vo.):まず曲を作る前に「呪いを解こう」という考えからスタートしてて。今までの魅せ方的にもRPGだったり魔女の呪いだったり、そこが本当の意味で呪い呪いしちゃってた。
火寺:自分たちのルールに縛られている感じですよね。
gari:そうそう。コロナ禍でバジルさんも考えるところがあったし、「やっぱり呪いを解くところから始めよう」という決断になりました。
ーさらに今作は、初めてプロデューサー迎えて楽曲制作を行いました。新井弘毅さんはTHE KEBABSのギタリストとして活動する一方、DISH//や足立佳奈さん、藍井エイルさんなど、数々のアーティストの楽曲提供やプロデュースをされている方ですね。
新井弘毅(Pro.以下、新井):ご紹介ありがとうございます(笑)。僕がプロデュースをすることになりまして、まずはメンバーに今後どういう活動をしたいのか聞いたんですよね。そしたらバジルさんが「まずは喋りたい」と。他のメンバーも当初はRPG系バンドの設定をしっかり守っていたけど、最近はなあなあになってます、みたいなことを言っていたんですね。
ーサウンド面では、どんなことを意識されましたか。
新井:流行っている音楽を積極的に取り入れようと思ったんです。メンバーに言ったのが「今の音楽に耳が慣れているリスナーを相手にしなきゃいけないので、そのために傾向と対策を考えなければいけない」と。なので流行を迎合するのではなく、今のリスナーにどうすれば魔法少女になり隊の良さを知ってもらえるか、という思考回路で作りました。
ー今、ヒットしている音楽はどういう傾向にあり、皆さんがどのような対策をしたのか、もっと具体的にお聞きすると?
新井:ザックリいうと、今は1曲の中でメロディや構成の展開がめまぐるしく、音楽的な情報量が多い。サブスクで音楽を聴く人が増えている中、その方が長く1曲に居座ってもらえるんですよね。イントロの短い曲が増えているのも、すぐに次の曲にスキップされないためには理にかなっている。通常だったら1番があって2番がある、そういうのって今のサブスク主流の世の中からすると退屈に感じられてしまうので、最後まで飽きずに聴いてもらえるような構成を心がけました。
ー演奏面ではどんなことを意識されましたか。
ウイ・ビトン(Gt.以下ウイ):悪い言い方をすると、今まで僕は丁寧に弾いていたんですよ。
明治(Gt.):私は何かを意識をするというよりかは、ウイさんが作ってくれたものに対してコピーするだけなので。いつも練習あるのみって感じですね。ただ、思うのは年々ギターのレベルが上がっているんですよね。ソロみたいなのが用意されていたりとか、このバンドは楽曲の演奏技術がどんどん難しくなっていくなって。
ウイ:今回はめっちゃ速いよね。
明治:そうですね。だから弾いてて楽しい感じではありましたね。
ーだからなのか、より楽器の音が前に出てる印象があって。
ウイ:今までは僕がベースも弾いたり、ドラムは打ち込みを入れたりしていたんですけど、初めての試みとしてサポートメンバーの方を迎えてベースやドラムを演奏していただいたんですよ。僕には出来ない技術をふんだんに入れてもらったので、それがアグレシッブさに繋がっているんじゃないかなって。
ーボーカル陣のお二人がレコーディングで意識されたことは何でしょう。
gari:サビでは裏の箇所を歌ったんですけど、そのアイデアにしてもメンバーだけでは出てこなかった。新井さんが「やってみようよ」と提案してくれて、録ってみたら思わず笑っちゃうくらい「こんな面白い感じになるの!?」みたいな。メロディがハッピーだったりとか、幼稚っぽさもあったりとか、そういう楽しい部分があって。ツインボーカルになることで、その良さが倍増している感じがして良かったです。
火寺:私はいつもオートチューンをかけて歌っているのを、今回はかけないで歌いました。それはめちゃめちゃ大きな変化でしたね。ファンの方がどんな反応をするのか楽しみですね。
gari:あいつら変わっちまったなってね。振り返ると僕ら約6年間バンドをやってきて、最初はノリで「これ楽しそうだからやっちゃおうよ」と色んな設定をつけたり楽曲のアプローチも決めていったんですね。自分らが楽しければお客さんも楽しいだろ、みたいな考えがあったんですけど、我々も年齢を重ねてきて、今こそバンドもメンバー各々も変わらなければいけないと思うようになったよね。
火寺:そうですね。今までの活動でネックだったのが、私が喋れなかったこと。ラジオやテレビに出演しても筆談だったんですよ。なので、今後は何かしらの配信だったりとか、ライブのMCもどんどん喋っていきたいなと思ってます。
ーやっぱり自分の口で喋れないことに心苦しさはあったんですか。
火寺:活動を始めたばかりの頃は、そのルールを純粋に楽しんでましたね。だけど途中からボーカルだからこそ、ちゃんと自分の思いを言葉にしたい欲求が出てきたし、直接気持ちを伝えられないことが苦しさに変わっていきました。ポリープが出来たことが自分の中では大きな出来事だったし、それに加えて自粛期間で時間があったから、魔法少女になり隊とは何かを考えたりとか、火寺バジルという存在が今後どうなっていったら良いんだろう、みたいなことを色々と考えるようになって。ポリープやコロナの一件が、自分やバンドを変える後押しになりましたね。
ーせっかくなので、新井さんからみたメンバー一人ひとりの印象も聞けたらと。
新井:なるほど。ウイくんからお話しすると、真面目な人柄も好きですし、流行の音楽を追ったりしないことに好感を持ってて。
ウイ:ありがとうございます。頑張ろう(笑)。
新井:明治さんに関してはあまり喋らないんですけど、不意に発する言葉が芯を食っているので、もっと喋れば良いのになと思ってて(笑)。
ー芯を食っているというのは、どんな場面で感じました?
新井:みんなでバンドの方向性について話していたら、一時は「ここまでコンセプトを変えるなら、いっそ名前を変えた方が良いんじゃないか」みたいな議論になったことがあって。その時に一番しっかり喋っていたのが明治さんだったんですよ。「別に、バンド名変えなくても良いでしょ」と、そういう芯の強さがある印象でした。
ーギタープレイについてはどうでしょう?
新井:この間、弾いている様を直に見れたんですけど、意外と弾けるんだなって(笑)。メタルリフって、女の子であんまり弾かないんですよね。ギタリストとしてマッチョだなと思いました。
ウイ:確かに、見たことないかも。
新井:メタルバンドをやっている人ならいると思うんですけど、魔法少女になり隊の音楽はそうじゃない。それなのにちゃんと弾けるんだなと思って。これまで取り組んできた明治さんの努力が見えました。
ーバジルさんはいかがですか。
新井:バジルさんは歌詞の打ち合わせやっていると、話しながら泣くんですよね。自分の思いを口にすると泣いちゃうのは、すごくフロントマンっぽいなって。
ー歌詞の打ち合わせで泣いたっていうのは「NEW ME」の話をしてて?
新井:そうです。僕が作詞をする際に、本人の気持ちが入らなければいけないので、その辺を聞きたくて「どういう気持ちなの? それを歌詞にしようよ」と言ってたんですけど、自分のコンプレックスとか嫌いな部分を話し出すと謎にすぐ泣くっていう。
火寺:泣き虫なんですよね、本当に。自分の考えていることを言葉で人に伝えようと思うと、悲しいわけではないし、それが辛いわけでもないんですけど涙が出ちゃうんですよね。
ーそういう感情的なところは好感を持てますよ。
新井:そうなんですよね。本人は自分にすごく自信がないので、そこを世の中に受け入れられる方に変換していけばより多くの人に共感されると思うんですけど、現状はただめんどくさい人になっているので(笑)。
火寺:ハハハハ、すいません(笑)。
新井:めんどくさいだけの人になってしまっているのを「めんどくさいけど共感できる」というところまで昇華できれば、すごく魅力的なフロントマンになるんじゃないかなって。
ーちょっと脱線しますけど、音楽のお仕事を通して一番泣いたことって何ですか。
火寺:直近の話ですけど、スタッフさんと喧嘩みたいになっちゃったんですよ。4時間泣き続けました。意志の疎通がうまくいかなくて、思っていることを伝えるのに一生懸命になりすぎて涙が出ちゃった。(目を潤ませて)今、思い出しても泣いちゃいそうになる。
ー本当に泣いてるじゃないですか。
火寺:そうなんですよね。こういう感じでみんなに迷惑をかけているんです。言葉にならない感情がバーっと溢れた時に、涙もブワーって流れきちゃう感じで。心と体が連動しているから難しいんですけど。それがライブでうまく表現できるように、これからの課題かなと思ってます。
ーボーカリストとしては、どのように見えてますか?
新井:曲を作るにあたって、彼女の声がどのような曲で活きるのかを知りたくて早い段階で仮歌を録らせていただいたんですよ。その時にオートチューンをかけたまま録りたいと言ったので、内心は「それじゃあ声が分からないかもな」と思いつつも、一旦は要望通りにやってみました。「次は生の声で聴いてみたい」と言ったら、本人はすごくコンプレックスを持っている風だったんですけど、僕的には可愛さが出る印象だったんですよね。語弊がある言い方かもしれないですけど、バジルさんの歌声はアイドル要素がある。それもある種のカリスマ性だと思うんですよね。超絶的にうまい歌が歌えることだけが全てではないので、このバンドにとってのアイコン的なイメージで言うと魅力的でキュートな声をしているなと思ってます。
ーgariさんの印象はいかがですか?
新井:仮歌で初めてgariくんのシャウトを聴いた時に、それがめちゃめちゃカッコよくて尊敬したんですよ。キャラクター的には我が道を行くタイプなので、放っておいても大丈夫だなと思うくらい安心感がある。変なところへ行きそうになったら自分で気づいて軌道修正できるタイプなので、gariくんはgariくんで本当にカッコいいフロントマンだなと思いました。「NEW ME」のサビではオクターブ下を歌ってますけど、そこは面白いんですよ。とてもキャッチーでいい声を持っているなって。
ーシャウトに関して元々シャウトが向いている体格なのか、それともテクニックで磨いてきたのかどちらでしょう?
gari:身体がすごいヒョロヒョロで、がたいもそんなに大きくないから、僕はテクニカルでしかないですね。シャウトについては独学で学んだんですけど、YouTubeで「HOW TO SCREAM」みたいなワードで調べたら外人がシャウトしている動画や声楽の動画を見つけて。そういうのを見ながら自分で挑戦したら、身体が大きくなくてもできるんだなと気づけたんですよね。
火寺:特殊だよね。
gari:そうそう。スクリームの種類によってアプローチが違うんですよね。ライブでも喉が痛くならないことを意識してて歌ってて、むしろ痛くなる方法は違うんだなって。だからいくら歌っても全く痛くならないです。
ーありがとうございます。今後、バンドとして何か決まっている予定はありますか?
火寺:年内は今のところ何も決まってなくて、どういう活動になっていくのか探り探りですね。
gari:そうだね。とにかく今は『NEW ME』をリリースして、みんながどんな反応をするのかが1番の楽しみです。
<リリース情報>
魔法少女になり隊
デジタルシングル『NEW ME』
配信日:2020年10月14日(水)
彼らに一体、何が起こったのか? 今回はメンバー4人と、『NEW ME』のプロデュースを務めた新井弘毅を招いて、楽曲に込めた思いと今の心境について話を聞いた。
ー魔法少女になり隊は、今年1月から火寺バジルさんの声帯ポリープ手術のため活動を休止されてましたけど、今は完治されたんですか?
火寺バジル(Vo.以下、火寺):めちゃめちゃキレイにポリープが取れました(笑)。もうバッチリです! 元はと言えば、去年の夏頃から喉の調子が悪くなって。ボイトレの先生に相談したところ「調子の悪い期間が長いし、歌を聴いてても引っ掛かりを感じるから一度病院へいってほしい」と言われて。それがきっかけで調べにいったら、ポリープが見つかりました。
ーその頃って3rdミニアルバム『POPCONE』をリリースしたタイミングだと思うんですけど、レコーディング中は大丈夫だったんですか。
火寺:その時はすでにポリープがあるのが分かっていたので、めちゃめちゃケアをしながらレコーディングを頑張ってましたね。その後、去年の冬にライブ納めをして、そこから治療に専念しました。完治してもコロナでライブができなくなっていたから、今回リリースする「NEW ME」で久々に歌いましたね。
ーそして活動復帰とともに大きな決断をされたんですよね。
火寺:そうです。
ー魔女に呪いをかけられて今まで喋ることができなかったバジルさんが話せるようになった。
それに伴って「RPG系バンド」から「ラウドロックバンド」に路線変更して。
gari(VJ/Vo.):まず曲を作る前に「呪いを解こう」という考えからスタートしてて。今までの魅せ方的にもRPGだったり魔女の呪いだったり、そこが本当の意味で呪い呪いしちゃってた。
火寺:自分たちのルールに縛られている感じですよね。
gari:そうそう。コロナ禍でバジルさんも考えるところがあったし、「やっぱり呪いを解くところから始めよう」という決断になりました。
ーさらに今作は、初めてプロデューサー迎えて楽曲制作を行いました。新井弘毅さんはTHE KEBABSのギタリストとして活動する一方、DISH//や足立佳奈さん、藍井エイルさんなど、数々のアーティストの楽曲提供やプロデュースをされている方ですね。
新井弘毅(Pro.以下、新井):ご紹介ありがとうございます(笑)。僕がプロデュースをすることになりまして、まずはメンバーに今後どういう活動をしたいのか聞いたんですよね。そしたらバジルさんが「まずは喋りたい」と。他のメンバーも当初はRPG系バンドの設定をしっかり守っていたけど、最近はなあなあになってます、みたいなことを言っていたんですね。
そこで、これからどこを目指していけばバンドにとって明るい未来が待っているのかを考えました。その結果、自分たちの設定に縛られていることについて、残すべきところと残さなくてもいいところを整理した方が良いなと思ったので、その辺を確認していきました。
ーサウンド面では、どんなことを意識されましたか。
新井:流行っている音楽を積極的に取り入れようと思ったんです。メンバーに言ったのが「今の音楽に耳が慣れているリスナーを相手にしなきゃいけないので、そのために傾向と対策を考えなければいけない」と。なので流行を迎合するのではなく、今のリスナーにどうすれば魔法少女になり隊の良さを知ってもらえるか、という思考回路で作りました。
ー今、ヒットしている音楽はどういう傾向にあり、皆さんがどのような対策をしたのか、もっと具体的にお聞きすると?
新井:ザックリいうと、今は1曲の中でメロディや構成の展開がめまぐるしく、音楽的な情報量が多い。サブスクで音楽を聴く人が増えている中、その方が長く1曲に居座ってもらえるんですよね。イントロの短い曲が増えているのも、すぐに次の曲にスキップされないためには理にかなっている。通常だったら1番があって2番がある、そういうのって今のサブスク主流の世の中からすると退屈に感じられてしまうので、最後まで飽きずに聴いてもらえるような構成を心がけました。
ー演奏面ではどんなことを意識されましたか。
ウイ・ビトン(Gt.以下ウイ):悪い言い方をすると、今まで僕は丁寧に弾いていたんですよ。
だから抑揚を出すためにアクセントを意識して弾きました。……かつてないくらいにギターを弾きましたね。
明治(Gt.):私は何かを意識をするというよりかは、ウイさんが作ってくれたものに対してコピーするだけなので。いつも練習あるのみって感じですね。ただ、思うのは年々ギターのレベルが上がっているんですよね。ソロみたいなのが用意されていたりとか、このバンドは楽曲の演奏技術がどんどん難しくなっていくなって。
ウイ:今回はめっちゃ速いよね。
明治:そうですね。だから弾いてて楽しい感じではありましたね。
ーだからなのか、より楽器の音が前に出てる印象があって。
ウイ:今までは僕がベースも弾いたり、ドラムは打ち込みを入れたりしていたんですけど、初めての試みとしてサポートメンバーの方を迎えてベースやドラムを演奏していただいたんですよ。僕には出来ない技術をふんだんに入れてもらったので、それがアグレシッブさに繋がっているんじゃないかなって。
今までで一番テクニカルで派手になってますね。
ーボーカル陣のお二人がレコーディングで意識されたことは何でしょう。
gari:サビでは裏の箇所を歌ったんですけど、そのアイデアにしてもメンバーだけでは出てこなかった。新井さんが「やってみようよ」と提案してくれて、録ってみたら思わず笑っちゃうくらい「こんな面白い感じになるの!?」みたいな。メロディがハッピーだったりとか、幼稚っぽさもあったりとか、そういう楽しい部分があって。ツインボーカルになることで、その良さが倍増している感じがして良かったです。
火寺:私はいつもオートチューンをかけて歌っているのを、今回はかけないで歌いました。それはめちゃめちゃ大きな変化でしたね。ファンの方がどんな反応をするのか楽しみですね。
gari:あいつら変わっちまったなってね。振り返ると僕ら約6年間バンドをやってきて、最初はノリで「これ楽しそうだからやっちゃおうよ」と色んな設定をつけたり楽曲のアプローチも決めていったんですね。自分らが楽しければお客さんも楽しいだろ、みたいな考えがあったんですけど、我々も年齢を重ねてきて、今こそバンドもメンバー各々も変わらなければいけないと思うようになったよね。
火寺:そうですね。今までの活動でネックだったのが、私が喋れなかったこと。ラジオやテレビに出演しても筆談だったんですよ。なので、今後は何かしらの配信だったりとか、ライブのMCもどんどん喋っていきたいなと思ってます。
ーやっぱり自分の口で喋れないことに心苦しさはあったんですか。
火寺:活動を始めたばかりの頃は、そのルールを純粋に楽しんでましたね。だけど途中からボーカルだからこそ、ちゃんと自分の思いを言葉にしたい欲求が出てきたし、直接気持ちを伝えられないことが苦しさに変わっていきました。ポリープが出来たことが自分の中では大きな出来事だったし、それに加えて自粛期間で時間があったから、魔法少女になり隊とは何かを考えたりとか、火寺バジルという存在が今後どうなっていったら良いんだろう、みたいなことを色々と考えるようになって。ポリープやコロナの一件が、自分やバンドを変える後押しになりましたね。
ーせっかくなので、新井さんからみたメンバー一人ひとりの印象も聞けたらと。
新井:なるほど。ウイくんからお話しすると、真面目な人柄も好きですし、流行の音楽を追ったりしないことに好感を持ってて。
僕は気になってチェックする方だから、好きな音楽しか聴かないっていう姿勢は音楽人として憧れるので羨ましいなと思ってます。あとプレイヤーとしても上手なんですよね。ただ、これまでは抑揚のない演奏をずっとやってきているので、さらっと鳴っているプレイじゃなくて、ちゃんと人が見えるプレイ。それが次に目指す道かなと思います。基本的にギターが上手だし、あとは音楽へのパッションの込め方を身につけたら最強のギタリストになるんじゃないかなと思ってます。
ウイ:ありがとうございます。頑張ろう(笑)。
新井:明治さんに関してはあまり喋らないんですけど、不意に発する言葉が芯を食っているので、もっと喋れば良いのになと思ってて(笑)。
ー芯を食っているというのは、どんな場面で感じました?
新井:みんなでバンドの方向性について話していたら、一時は「ここまでコンセプトを変えるなら、いっそ名前を変えた方が良いんじゃないか」みたいな議論になったことがあって。その時に一番しっかり喋っていたのが明治さんだったんですよ。「別に、バンド名変えなくても良いでしょ」と、そういう芯の強さがある印象でした。
ーギタープレイについてはどうでしょう?
新井:この間、弾いている様を直に見れたんですけど、意外と弾けるんだなって(笑)。メタルリフって、女の子であんまり弾かないんですよね。ギタリストとしてマッチョだなと思いました。
ウイ:確かに、見たことないかも。
新井:メタルバンドをやっている人ならいると思うんですけど、魔法少女になり隊の音楽はそうじゃない。それなのにちゃんと弾けるんだなと思って。これまで取り組んできた明治さんの努力が見えました。
ーバジルさんはいかがですか。
新井:バジルさんは歌詞の打ち合わせやっていると、話しながら泣くんですよね。自分の思いを口にすると泣いちゃうのは、すごくフロントマンっぽいなって。
ー歌詞の打ち合わせで泣いたっていうのは「NEW ME」の話をしてて?
新井:そうです。僕が作詞をする際に、本人の気持ちが入らなければいけないので、その辺を聞きたくて「どういう気持ちなの? それを歌詞にしようよ」と言ってたんですけど、自分のコンプレックスとか嫌いな部分を話し出すと謎にすぐ泣くっていう。
火寺:泣き虫なんですよね、本当に。自分の考えていることを言葉で人に伝えようと思うと、悲しいわけではないし、それが辛いわけでもないんですけど涙が出ちゃうんですよね。
ーそういう感情的なところは好感を持てますよ。
新井:そうなんですよね。本人は自分にすごく自信がないので、そこを世の中に受け入れられる方に変換していけばより多くの人に共感されると思うんですけど、現状はただめんどくさい人になっているので(笑)。
火寺:ハハハハ、すいません(笑)。
新井:めんどくさいだけの人になってしまっているのを「めんどくさいけど共感できる」というところまで昇華できれば、すごく魅力的なフロントマンになるんじゃないかなって。
ーちょっと脱線しますけど、音楽のお仕事を通して一番泣いたことって何ですか。
火寺:直近の話ですけど、スタッフさんと喧嘩みたいになっちゃったんですよ。4時間泣き続けました。意志の疎通がうまくいかなくて、思っていることを伝えるのに一生懸命になりすぎて涙が出ちゃった。(目を潤ませて)今、思い出しても泣いちゃいそうになる。
ー本当に泣いてるじゃないですか。
火寺:そうなんですよね。こういう感じでみんなに迷惑をかけているんです。言葉にならない感情がバーっと溢れた時に、涙もブワーって流れきちゃう感じで。心と体が連動しているから難しいんですけど。それがライブでうまく表現できるように、これからの課題かなと思ってます。
ーボーカリストとしては、どのように見えてますか?
新井:曲を作るにあたって、彼女の声がどのような曲で活きるのかを知りたくて早い段階で仮歌を録らせていただいたんですよ。その時にオートチューンをかけたまま録りたいと言ったので、内心は「それじゃあ声が分からないかもな」と思いつつも、一旦は要望通りにやってみました。「次は生の声で聴いてみたい」と言ったら、本人はすごくコンプレックスを持っている風だったんですけど、僕的には可愛さが出る印象だったんですよね。語弊がある言い方かもしれないですけど、バジルさんの歌声はアイドル要素がある。それもある種のカリスマ性だと思うんですよね。超絶的にうまい歌が歌えることだけが全てではないので、このバンドにとってのアイコン的なイメージで言うと魅力的でキュートな声をしているなと思ってます。
ーgariさんの印象はいかがですか?
新井:仮歌で初めてgariくんのシャウトを聴いた時に、それがめちゃめちゃカッコよくて尊敬したんですよ。キャラクター的には我が道を行くタイプなので、放っておいても大丈夫だなと思うくらい安心感がある。変なところへ行きそうになったら自分で気づいて軌道修正できるタイプなので、gariくんはgariくんで本当にカッコいいフロントマンだなと思いました。「NEW ME」のサビではオクターブ下を歌ってますけど、そこは面白いんですよ。とてもキャッチーでいい声を持っているなって。
ーシャウトに関して元々シャウトが向いている体格なのか、それともテクニックで磨いてきたのかどちらでしょう?
gari:身体がすごいヒョロヒョロで、がたいもそんなに大きくないから、僕はテクニカルでしかないですね。シャウトについては独学で学んだんですけど、YouTubeで「HOW TO SCREAM」みたいなワードで調べたら外人がシャウトしている動画や声楽の動画を見つけて。そういうのを見ながら自分で挑戦したら、身体が大きくなくてもできるんだなと気づけたんですよね。
火寺:特殊だよね。
gari:そうそう。スクリームの種類によってアプローチが違うんですよね。ライブでも喉が痛くならないことを意識してて歌ってて、むしろ痛くなる方法は違うんだなって。だからいくら歌っても全く痛くならないです。
ーありがとうございます。今後、バンドとして何か決まっている予定はありますか?
火寺:年内は今のところ何も決まってなくて、どういう活動になっていくのか探り探りですね。
gari:そうだね。とにかく今は『NEW ME』をリリースして、みんながどんな反応をするのかが1番の楽しみです。
<リリース情報>
魔法少女になり隊
デジタルシングル『NEW ME』
配信日:2020年10月14日(水)
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