11月7日に「渋谷音楽祭2020 presents”CUT IN”」がLINE CUBE SHIBUYAで開催され、同時に生配信される。

このイベントに出演するのは、cero、Tempalay、D.A.N.の3組。
ともに3ピースでありながら、メンバーそれぞれがソロ活動も行うプロデューサー気質を持っていて、サポートメンバーを入れた形でのライブを行っていることが共通点であり、現代のバンド像を体現する3組によるショーケース的なライブとも言えそうだ。ceroの高城晶平、Tempalayの小原綾斗、D.A.N.の櫻木大悟の3人に、徐々に有観客でのライブが再開されつつある現状に対する印象と、イベント当日に向けた想いを聞いた。

―制限はありながらも、徐々に有観客でのライブが再開される中、D.A.N.とTempalayは10月にワンマンを開催しています。久々のライブの感想を教えてください。

櫻木:でっかい音を出すのは単純に興奮しました。それに尽きます。めっちゃ気持ちよかったです。お客さんも僕と一緒で、でっかい音で聴くのはひさびさだっただろうから、ちょっとぎこちないというか、「どうしたらいいんだろう?」みたいな感じはありましたけど、でもこんなに早くライブができるのって、日本くらいなんじゃないですか? それはめちゃめちゃ素晴らしいことだなって。手洗いうがいとか、ちゃんとルールを守れるからできることだと思うんで、みなさんのおかげだなと思います。

―綾斗くんはどうですか?

小原:疲れましたね。1日2公演やったんですけど……疲れました。すごい歌ってたんやなあと……疲れましたね。


―何回言うねん(笑)。以前までのライブと雰囲気の違いは感じましたか?

小原:うーん……来る人は結局、振り切ってるというか、四の五の言わない人たちなので、僕らもいつも通り、あんまり変わらなかったというか、重いことは言わなかったです。

―ceroはまだ有観客のワンマンは開催していませんが、直近だと9月に山中湖で開催されたドライブインライブに出演していますね。どんな雰囲気でしたか?

高城:独特な雰囲気でした。ライブやってる目の前に車がずらっと並んで……中古車販売みたいな状況を前にライブをする感じで(笑)。ただ、車から出ていいルールで、車の前のスペースがその人たちのテリトリーだから、一応お客さんの顔が見えて、僕は逆にいいなって思ったのが、車が周りにあることで、みんなステージに集中し過ぎないんですよね。ある意味、意識が散漫になるっていうか、車があるという環境が「がっつりライブを観て元を取るぞ」みたいな意識に変容をもたらしている。要するに、気の置けない空間みたいな感じになってて、結構アリだなって。

―なるほど。面白いですね。

高城:もともとガンガン観られるの苦手で、ワイワイ人の移動がある中でやるのがいいなって思ってるので。逆に見ていてツライのが、お客さんをモノで囲んだりして、お客さんの移動を制限してるライブあるじゃないですか? あれは良くないなって思う。
尊厳を奪っているようだし、音楽を楽しむ姿勢だとは僕は思えない。

小原:あれで楽しい人もいるということですよね。僕は日本のライブとかお客さんに対してもともと違和感があるので、「っぽいなあ」っていうか。僕があれやるのは恥ずかしい。

高城:フラフープに閉じ込められた瞬間に観られる側になる気がするというか、逆転してるよね。あれはなかなか倒錯した光景だと俺は思ってしまうけど……まあ、人それぞれだからね。

「規制はあれど、発信していかないと」(小原)

―お客さんとして誰かのライブに遊びに行ったりはしましたか?

高城・小原:行ってないです。

櫻木:自分はちっちゃなクラブに行ってます。渋谷の東間屋とか、下北沢のSPREADとかで若い人たちがちょこちょこやり始めてて、そこらへんチェックしてると、エネルギーが復活してきてる感じがあって、そこはすごいポジティブだなって。基本的に、コロナはぼんやりと付き合っていくものだと思うんで、大事なのはエネルギーかなって。コロナにかかった人がめっちゃ筋トレ動画上げてたりとか、あのスタンスでいいと思うんですよ。今の状況を軽視してるわけではないけど、エネルギーは大事だなって。


高城:今大悟くんが言ったみたいに、やんわり付き合っていく状況がしばらく続くだろうから、ライブに関しても、どっちつかずな状況がもうしばらく続くんだろうなって覚悟は何となくあります。お客さんが満杯っていう光景は、もうしばらく見れないだろうし、社会全体が少しトラウマになってるっていうか、人が密になってる状況を見ることに対して、みんな強迫観念みたいなのが生まれちゃってるだろうし。だから、さっきのドライブインライブみたいなのとか、イス席とか、そういうのがしばらくスタンダードな形になっていくんでしょうね。

櫻木:僕は来年の7月くらいにはもうちょっといい感じに開けてるんじゃないかなって期待してて。野外ならまだいいんじゃないですかね……わかんないですけど。

小原:いろんな時代がありますので……いい意味で順応しながら、新しいものを模索していくというか、いろいろ言うてもしょうがないんで、面白いことしたいです。だから、このイベントはすごくありがたいっすね。規制はあれど、発信していかないと。我慢比べなんで、辛抱たまらんなると思うから、こっちから攻撃してやろうというイベントですね。

―過去にこの3バンドが共演したことってあるんですか?

高城:初めてな気がする。D.A.N.とceroは一緒にやったことがあるし、小原くんも「Traffic」に弾き語りで出てもらったりしたけど、3ついっぺんは初めてかな。

小原:D.A.N.とは前にBEAMSの企画で台湾でいちゃこきましたけど、ceroはこれまで一回も一緒にやってないですね。
フェスで同じ日になったこともないかもしれない。

高城:今度のライブって、二胡の吉田くん(NRQの吉田悠樹。Tempalayの「大東京万博」に参加)入ってるの?

小原:いや、さすがに一曲で呼ぶのは忍びないので。

高城:そっか(笑)。吉田くん高校の先輩だから、よくぞ吉田くんを使ってくれたっていうか、俺すごい嬉しくて。

小原:奥田(泰次/エンジニア。ceroとTempalayの両バンドに関わっている)さんに紹介してもらって……いや違う、小西(遼/象眠舎、CRCK/LCKSなど。同じくceroとTempalayの両バンドに関わっている)だったかもしれない。

―人脈では共通する部分も多いけど、対バンは初めてなんですね。綾斗くんからすると、ceroとD.A.N.と対バンすることの意味をどのように感じていますか?

小原:珍しく僕が好きなアーティストと言いますか……。

―珍しく(笑)。

小原:これはガチで。
ホントにやっと……この2バンドと同等に見てもらえるのかと。D.A.N.はフジのルーキー(2015年)で一緒だったんですけど、当時からえげつなくて……愛想も悪かったし。ceroもかなり背中が遠かったですけど、少なくとも今回の会場においては同等に見てもらえるので、逆にかましたいなという。だから、光栄です。ホントに。

―大悟くんからするとどうでしょう? ceroとTempalayと共演する意味というか。

櫻木:えー、最高じゃないですか?(笑)。めっちゃ楽しみです。普通に僕がお客さんだったら遊びに行きたいっていうか、こういう3マンは今までなかったわけですから。月並みなことしか言えないですけど。

3バンドの共通点

―高城くんはどうですか? TempalayとD.A.N.との共演について。

高城:この3バンドの中で言うと、ceroはわりかし年が上なので、若い方たちが相手してくれるのはありがたいなって思ってるんですけど(笑)。


―両バンドに対してシンパシーを感じるか、それとも新しい世代だと感じるか、どちらが近いですか?

高城:どっちかっていうと、世代感は感じますね。っていうのは、何となくの印象ですけど、いわゆるバンドすごろく的な、ライブハウスがちょっとずつ大きくなっていくみたいな、オーソドックスな成長の形があるじゃないですか? ceroはがっつりそういう世代っていうか、「ライブハウスで頑張ろう」みたいな感じで、ノルマを払って、ヒーヒー言いながら、ちょっとずつちょっとずつ認知されていく、みたいなのを辿ってきたんですけど、お二方の世代になると、そういうバンドすごろく的なものじゃなくて、もっとネットとかで形作られて行った印象で……実際どうなんですか?

櫻木:めちゃめちゃやってました。ノルマとか払ってました。

高城:マジ? じゃあ、変わんないのか。

櫻木:最初の頃は、ライブ終わった後バーカンで店長に「うーん」みたいな、「何なんだろう?」と思いながら、やってましたよ。

高城:あれホント何なんだろうね(笑)。Tempalayもそう?

小原:完全にすごろくですね。今もその真っ最中ですけど。

高城:そうなんだ。じゃあ、同じか。

小原:僕、音楽でご飯食べれるまで10年かかってますからね。僕らよりさらにもう一個後の世代かもしれないです。ライブハウスでライブせずに認知度を上げていくのは。逆に言えば、僕らはそうじゃない最後の世代かもしれない。

高城:ギリギリ共通してるのか。一気にシンパシーが湧きました(笑)。

―逆に、大悟くんや綾斗くんがceroやceroの世代から受け取ったものがあるとしたら、それはどんなものだと言えますか?

櫻木:D.A.N.はceroからめちゃめちゃ影響受けてて、尊敬してる部分は、同じ3人で、プロデューサー的な感覚でやってること。そこは僕らもそうなりたいっていうか、真似してるところだと思うんで。

高城:そっか。Tempalayも3人だ。

小原:サポート入れてますけどね。

高城:うちもめちゃくちゃサポート入れてるから(笑)。

―3ピースだけどそれぞれがプロデューサー的な立ち位置で、サポートを含めた形で活動をしているというのは、3バンドの共通点ですよね。

高城:そこは結構新しいっていうか、2010年代だったらそういうバンドがいっぺんに3バンド集まることってあんまりなかった気がする。こういう形態がもうスタンダードになってるっていうことなんですかね。

―綾斗くんはどうですか? ceroや、ceroの世代に対して。

小原:基本的には、音楽を押し上げていきたいと思っていて……ただceroに関しては、前回のアルバム(『POLY LIFE MULTI SOUL』)が僕の中でかなり喰らいまくったというか……「じゃないと意味ないよな」っていう、それを示してくれたというか、ケツ叩かれたような気がしました。

高城:ありがとうございます。小原くんはVIDEOTAPEMUSICが好きだって言ってくれたり、さっきも言ったNRQの吉田くんを起用してたり、個人的にすごく嬉しいんですよね。ビデオくんも吉田くんも高校から付き合いがあって、すごい才能のある人たちだから、その人たちがTempalayとかの世代の人と交流を持ってるのを見ると、すごく嬉しくて、ありがてえなあと思ってます、ホントに。

3人が考える渋谷を象徴する音楽スポットは?

―「CUT IN」は渋谷音楽祭2020のメインイベントということで、ライブハウス、クラブ、レコードショップなど、それぞれの思う渋谷の音楽スポットを挙げてもらえますか?

櫻木:みんな思い浮かぶと思うんですけど、WWWですね。

小原:俺もそれだ。

櫻木:プラットフォームになってるっていうか、一番イケてると思います。

―いろんなアーティストが集まって、繋がる場所になってると。もちろん、今の時代はSNSも大きいけど、やっぱりリアルな場所があることは大きくて、サポートを含めた活動の基盤にもなってると言えそうですよね。

櫻木:完全にそうですね。僕らで言うと、小林うてなと知り合ったのもあそこだし。音楽体験も含めて、いろんな出会いがあって、最高のヴェニューだと思います。

―久々のワンマンがWWWXだったのも、「ライブをやるならあそこでやりたい」という想いがあったわけですか?

櫻木:もともとWWWXでやる公演が延期になってたっていうことではあるんですけど、ひさびさにやれたのは感慨深かったです。

―では、高城くんはどうでしょうか?

高城:今パッと思い浮かんだのは、またライブハウスになっちゃうんだけど、7th FLOOR。阿佐ヶ谷のRojiで働いてるミヤジくんっていう面白い子がずっと7thでブッキングをやってて、彼はホントに自分が好きなブッキングをひたすらやってるんですよね。でも、それが逆にいいっていうか、さっき言ったような僕らの世代の人たちと、若い子たちを天然で取り合せてやってる感じがいいなって。

―WWWとはまた違う形で、繋がり/繋げる場所になってるというか。

高城:あとあそこは7階にあって、窓があるから、風通しも良くて、これからの時代にはいい環境のライブハウスなんじゃないかと思ったり。

―確かにそうですね。綾斗くんは、WWWを先に言われちゃいましたが、他に思い浮かぶ場所はありますか?

櫻木:渋谷でお勧めの居酒屋は?

小原:…………ないです。

櫻木:渋谷行ったことある?(笑)

小原:渋谷ってあれでしょ? 109でしょ? 僕地元が高知の田舎で、高校の修学旅行が東京だったんですけど、学ラン恥ずかしいからコインロッカーに入れて、109行ったら……。

高城:行ったんだ(笑)。

小原:ジャージやったんですけど、「お兄さんスポーティーだね」って言われて、すげえ丈の短いPコート買わされて、帰って見たら背中にぶっといチェーンついてました。それが渋谷の音楽スポットです。

―なんだそれ(笑)。

櫻木:でも、あそこが一番すごいかもね。BGMかかりまくってて。

高城:サウンドクラッシュ状態だからね(笑)。

「3組並んでみたときに、きっと見えるものがあるんだろうなと思う」(高城)

―じゃあ、この3組の選ぶ渋谷の音楽スポットはWWW、7th FLOOR、109ってことで(笑)。では最後に改めて、当日に向けて一言いただけますか? タイムテーブル順に高城くん、綾斗くん、大悟くんの順番でお願いします。

高城:このライブはわりとポッと決まったっていうか、でも経験上、案外こういうライブが後年印象に残ったりするんですよね。しかも、さっき話したみたいに、みんな3人で、それぞれプロデューサー気質みたいな感じで、外部のサポートを呼ぶってところから音楽が始まってるっていう形態が、わりと今の新しいバンドのスタンダードになりつつある、そのひとつのショーケースというか。3つ並んでみたときに、きっと見えるものがあるんだろうなと思いつつ、すごく楽しみにしてます。

小原:こういう対バンみたいなのって、最近3バンドともなかったと思うんですけど、大体リハーサルが勝負じゃないですか? だから、リハーサルに命を賭けようと思います。で、ピリピリした感じで、「お、やるやん」みたいになって、最後打ち上げで仲良くなるっていうのをひさしぶりにやりたいですね。

―バンドの状態、モードとしてはどんな感じですか?

小原:僕らリアルに半年くらい集まりもしてなくて、ホンマにやっと最近制作やライブ活動が始まったので、バンド組み立てみたいな感じなんですよ。なので、今いい感じですよ、かなり。

櫻木:最近の自分たちの気分は、結構SF系なんで、そういう感じを注入できたらうれしいなって(笑)。まあ、来てくれたお客さんが、「明日頑張ろう」ってなるといいなって、それだけです。

―そう言われると、SF系な3バンドでもありますよね。すごい空間になりそう。

小原:めっちゃ「渋谷」って言ってますけどね(笑)。

<開催概要>

「第15回 渋谷音楽祭 2020 presents ”CUT IN”」

公演日:2020年11月7日(土)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
時間:開場/開演/終演:16:30/17:30/20:15 ※変更可能性あり
早割視聴券代:2500円(税込)10月26日(月)18:00~11月4日(水)23:59
視聴券代:3000円(税込)11月5日(木)00:00~11月12日(木)21:00
視聴可能期間:2020年11月7日(土)17:30~ライブ終了時間
アーカイブ期間:2020年11月8日(日)18:00~11月12日(木)23:59
出演:cero / D.A.N. / Tempalay

Streaming+早割受付【~11月4日23時59分】
URL:https://eplus.jp/shibuyamusicscramble-cut-in-st/
※ご購入の際に関しては、専用URLでの詳細をご確認の上ご購入いただきますようお願い申し上げます。

オフィシャルHP:http://tsutaya.jp/cut_in/
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