彼女はTikTokで勢力を拡大中の「Bimboムーブメント」のリーダー的存在でもある。
【動画】金髪ツインテール+胸の谷間を強調したセクシーな衣装でBimbo美学を語る
チュラペッカさんの表現を借りれば「女の子、ゲイ、男女どちらにも属さない人々」が、こぞって己のフェミニティの表現にいそしんでいる。
20世紀初頭、知的レベルが劣った人々を表現する言葉として誕生したBimboは、ある意味ではほとんど変わっていない(男性に特化したHimboやMimboという言葉が出てくるのは1980年代になってから)。鳥がさえずるような優しい声で話し(ドラァグクイーンがアリアナ・グランデの物真似をするイメージ)、谷間ブラとポニーテール、目尻を跳ね上げたばっちりアイメイクを好む。丈の短いドレスにロングコートを着て、Juicy Coutureの上下スウェットとおそろいの金のフープイヤリングをつけ(ファッション界では2000年代初期からリバイバルヒットし、洋服リサイクルサイトDepopでも特に人気のアイテムだ)、Viktor & Rolfの香水「フラワーボム」をまとう(予算が限られている場合はVictorias Secretのボディスプレーで代用)。お手本となる女性像はカーディ・Bや『キューティ・バニー』でアナ・ファリスが演じた役柄、ポルノ女優から拡散動画で話題を呼んだCock Destroyers、そしてオツムの弱い金髪娘の元祖パリス・ヒルトンなどだ。
ここ数年、Bimboはミームという形で再びブームになっている。理由のひとつはBimbo化現象、つまりパッとしないごく普通の見た目の女性(または男性)を外科手術で印象的かつ華やかな人気者に変身させるという、ニッチなフェチ現象が話題を呼んでいるせいでもある。Instagramで「Bimboムーブメントの祖」を自認するデンマークのモデル兼セックスワーカー、アリシア・アミラさんをはじめとするインフルエンサーは、こうした美学に傾倒してかなりの数のフォロワー数を集めている。だがBimboはZ世代のTikTokクリエイターの間で憧れの的へと進化し、政治的アイコンとしての地位を獲得している。
Z世代のBimboは反資本主義?
おそらくとくに驚愕なのは、Z世代のBimboが反資本主義だという点だ(まさしく、チュラペッカさんも自身のTikTokに#ihatecapitalism(資本主義なんて大嫌い)というハッシュタグを多用している)。もちろんこの場合、皮肉の香りがプンプンする。Bimbo美学はいろいろな意味で消費文明の価値観の上に成り立っているからだ。TikTokでは@fauxrichで通っているセリーナさんも言うように、「フェミニズムを極めるにはお金がうんとかかるの。メイク代だってそう。化粧下地でしょ、アイラーナーでしょ、つけまつげでしょ。それにヘアメイク、ネイル、お洋服。豊胸、ボトックス、美容手術と、何千ドルもかかるのよ」
だが、Bimbo化現象はSephoraで40ドルの化粧下地を買えるどうかより、むしろ心のありかただと大半のBimboたちは言う。「Bimbo美学が消費文明に根付いていて、お金やモノがすべてだとしても、自分たちはそれとは真逆の方向にもっていこうとしている」と言うのは、プリンストン大学で宇宙機械工学を学ぶ19歳のグリフィン・マックスウェル・ブルックスさん。「現代のBimbo美学は、どちらかというと精神的なもの。
動画でBimboという単語を使ったことで、当初ブルックスさんの元には批判の声もいくつか寄せられた。中には、本人が典型的な女性像をネタにして女性をバカにしている、と考える者もいた。自称ノンバイナリー、男女どちらの性にも属さないと自認しているブルックスさんは、そんなつもりはなかったという。彼(彼女)にとってBimbo化とは、性別やセクシュアリティにまつわる従来の考え方を覆す手段なのだ。「ゲイのコミュニティにも、実はホモ嫌いだという人は相当いる」と本人。「当時、こうした超フェミニンな美学を取り入れた際に苦労したことのひとつは、こういう格好をして一部のゲイの男性に好かれなくなってもいいんだ、と認めることだった」。自分にとってのBimbo化は「男性が惹かれるものに迎合して行動するのではなく、自分の好きな恰好をすること。最初は男性の視線を釘付けにするためだったとしても、自分たちはそうじゃない」
Bimboという言葉に抵抗を示す人も多い
「私は、性の抑圧や既成概念化や『男女こうあるべき』に対抗する手段だと思っているわ」ロンドンで活動するTikTokクリエイター、@bibokateことケイト・ミューアさんはこう語る。
こうしたことはどれも、聞き馴染みがあるかもしれない。Bimboの価値決定には、いろいろな意味でアリエル・レヴィ氏の2005年の著書『Female Chauvinist Pigs: Women and the Rise of Raunch Culture』の内容が反映されている。プレイボーイ誌や『ガールズ・ゴーン・ワイルド』の男社会の価値観を内に秘めた女性たちは、しまいには自分から進んで自分をモノ扱いするようになってしまった。実際そうした女性たちには――とくに女性の地位向上の象徴として、さまざまな形の犠牲を何度も何度も経験してきた30代以上のフェミニスト世代には――Bimboという言葉に抵抗を示す人も大勢いる。
だが予測不能な出来事が延々と続いた2020年、学生ローンや天井破りの失業率にさいなまれている大半のZ世代にとって、Bimbo化はおそらくもっとも健全なストレス発散の一種なのかもしれない。「無知なわけじゃない。ここまで高いレベルの悟りに到達するために、自意識を解放しているんだ」とブルックスさんも言う。「世の中で大変なことばかり起きているのはちゃんとわかってる。でも、かわいい恰好で歩き回る生活をしたいからこそ、そういうのには背を向けているんだ」。彼女たちが美しいからといって妬んではならない――自分が美しくないのはなぜか、自問してみるべきだ。
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from Rolling Stone US
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