「アノンの民よ、ニッキーと彼女の家族の無事を祈りたまえ」暗号メッセージアプリTelegramで人気のQアノン・スレッドには、こんなキャプションつきでミナージュを擁護するミームが最近投稿された。ミームには大きな翼の天使の画像と、「神の御心に従う1人は、そうでない100万人よりも強い」という言葉が添えられている。別の投稿では、ミナージュのSNSの投稿に残されている「パンくず」(breadcrumbs)――それらしき「ヒント」を指す陰謀論者の隠語――を解読している。「ニッキーは昨晩Twitterで、『キューティ・ブロンド』のように全身ピンクでホワイトハウスに乗りこんで白黒つける、と発言した」と、とあるユーザーは投稿している。「興味深いと思ったのは、『キューティ・ブロンド』の主人公の名前がエル・ウッドだということ。ということは……L.ウッド。もしかしてリン・ウッドのこと?」これは数々の極右陰謀論を吹聴しまくった、トランプ前大統領の元弁護士のことを指している。
ミナージュは先ごろ、ワクチン接種を義務付けるメット・ガラには出席しない、と2200万人以上のフォロワーに向けてツイートし、話題を集めた。コロナウイルスのワクチンについては十分調べ上げていないから、というのが彼女の理由だ。また、いとこの友人がワクチンを接種したあと勃起不全になり、睾丸が腫れたというまったくのデタラメを主張した(トリニダード・トバゴの保険大臣はこの主張に公然と反論し、「こうした虚偽の主張を確かめるのに、我々は昨日あまりにも時間を無駄にしてしまった」と発言した)。
今回の騒動によって「新たなファン」を獲得
危険な誤情報を広めているとして強い風当たりを受けているにもかかわらず、ミナージュは公衆衛生と安全に対する攻撃の手を緩めていない。
公衆衛生危機のさなか、巨大な影響力を利用してワクチンの安全性と効能を軽んじるのはいかがなものか、と批判が殺到しているものの、今回の騒動がきっかけで彼女は新たなファンを獲得した。騒ぎに便乗する極右派や、他人の言うことを鵜呑みにしがちなベビーブーマー世代、額にサングラスをのせてトラックを運転し、錯乱した動画ブログを投稿するひげ面の連中だ。陰謀論信奉者の間で人気のとあるフォーラムにはミナージュに関する投稿が17件あがっているが、その大半は、リベラルなハリウッドのエリート層から目覚めた者があらわれた輝かしい例だ、と彼女を称賛している。「愛国者たちよ、見識を広めろ。多くの場合、彼女の考えには興味がないとは思うが、彼女のInstagramの投稿や発言を見てみろ。彼女こそ覚醒の発端だ」と、とあるユーザーはほのめかしている。「彼女は『目を覚ませ』『何か大きなことが起こりつつある』というようなことを言っている。
だが極右陰謀論コミュニティ全体が、ただちに諸手を挙げてミナージュ擁護に回ったわけではない。「彼女が覚醒したのは嬉しいが、これまでの悪魔的なメッセージをすべて撤回するのを待たなくては……悪魔を崇めるのは間違っているし、彼女は悪魔に侵されていないことをまだ証明していない」と、懐疑的なユーザーは投稿している。1995年に第1級強姦未遂で有罪判決を受けたミナージュの夫ケネス・ペティが、性犯罪者登録を怠ったとして最近有罪を認めたことを指摘する投稿もある。ミナージュ本人は公然と夫を弁護しているが、こうした態度はハリウッドに巣食うレイプ魔や人身売買者から社会を守ることを固く決意するQアノン支持者の胸に響くとは言えない。とはいえ、新たなファンを獲得したミナージュには心からの祝福を送ろう。彼女の広報担当者は今ごろ次の戦いに備え、水分補給をしてしっかり休養を取っていることだろう。
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