日本人ファッションデザイナーとしてカルチャーを牽引するNIGO®が、約18年ぶりに音楽アルバムを制作した。プロジェクトに着手した当時の彼は、できるだけ幅広く贅沢な作品にしたいと考えていた。「僕自身がヒップホップカルチャーからどのような影響を受けて何を経験してきたかを、集大成にして表現したかったのです」とNIGO®は語る。
NIGO®自身とファレル・ウィリアムスが共同でエグゼクティブ・プロデューサーを務めた本作は、2022年3月に、ラップ界の重鎮スティーブン・ヴィクターのレーベルからリリースされた。このアルバムは、NIGO®がヒップホップの世界で獲得した賞賛の真の証となるコラボレーション作品といえる。同時に、本年度の最も楽しみなラップアルバムの一枚に仕上がっている。
リル・ウージー・ヴァート、エイサップ・ロッキー、タイラー・ザ・クリエイター、プッシャ・Tらが参加した『I Know NIGO』からは、ラップの世界で一時代を過ごしてきたNIGO®のユニークかつ多岐にわたるスタイルのセンスが感じられる。『I Know NIGO』を聴いていると、まるで昨年活躍した豪華アーティストが次々と登場するコンピレーションアルバムのような錯覚に陥る。さらにNIGO®がストリーミングだけでなく、CDの形でも作品をリリースした理由がよく理解できる。
「僕が仕事としてずっと続けてきたのは、フィジカルのモノを作ってコレクションにすることです。だから音楽作品をリリースする時も、僕にとっては実体のあるバージョンが必須なんです」とNIGO®は言う。
NIGO®がラップの世界に足を踏み入れたのは、ヒップホップというジャンルの音楽と様式美を改革しようというアーティストが正に台頭してきた時期だった。2000年代初頭のヒップホップの一時期を、「Bape時代」と呼んでも過言ではないかもしれない。時代を象徴するクリプスのアルバム『Hell Hath No Fury』からファレルやN.E.R.D.の一連のヒット作まで、当時は多くのラッパーがNIGO®の立ち上げたストリートウェア・ブランドとコラボしていた。NIGO®のブランドを代表するフルジップのパーカーは、最先端を行くラッパーの必須アイテムだった。今回のアルバムには当時のNIGO®の友人らが集結し、自分たちがどれだけ時代の先を走っていたかを見せつけた。「Punch Bowl」では再結成したクリプスが、当時と変わらぬ攻撃的なサウンドを聴かせている。ノー・マリスによる珍しいヴァースもあり、プッシャ・Tはオバマ大統領との交友関係をさりげなく披露している。
アルバムという形式で出すことの意義
レーベルのA&Rで、ポップ・スモークを発掘したことでも知られるスティーブン・ヴィクターとNIGO®との交流は、自身のレーベルであるヴィクター・ヴィクター・ワールドワイドのロゴデザイン制作をNIGO®に依頼したのがきっかけで始まった。「彼と一緒に仕事ができるのは、本当に光栄だった」とヴィクターは振り返る。
ロンドンを拠点に活動するプロデューサーのアクセルは、英国とニューヨークのドリル・シーンの橋渡し役として名前を挙げられることも多い。彼は、リル・ウージー・ヴァートをフィーチャーした、アルバム中の最もエキサイティングな楽曲「Heavy」をプロデュースしている。「Heavy」は、NIGO®のクリエイティブな才能を完璧に抽出した作品だといえる。時には、人と人とを引き合わせることで成功につながることもある。「正にこんな感じだった」とヴィクターは続ける。「”NIGO®がこの人間に興味を持った”とか、”NIGO®はこのアーティストの音楽を気に入っている”と耳にしたら、俺たちはどうにかしてNIGO®と彼らとをコラボさせる方法を見つけるのさ」。
陽気でノリの良いオープニング曲「Lost and Found Freestyle 2019」では、エイサップ・ロッキーとタイラー・ザ・クリエイターという現代の2人のラッパーが、2000年代初期のヒップホップを踏襲しているように聴こえる。弾んだドラムに乗せたラップは、クリプスやN.E.R.D.のファンには馴染み深いスタイルだろう。さらにバックに流れるリル・ジョンによるサンプリングは、まるで過去からの囁きのようだ。
「長年インスピレーションをお互いに与えながらリスペクトし合ってきた友人たちに加え、新たな仲間もできました。彼らは僕に大きな影響を与えてくれると同時に、堅苦しいプラン通りのやり方ではなく、より自然な形でコラボレーションしてくれました」とNIGO®は言う。「全員がお互いにリスペクトしながらコラボする姿は、一生忘れないでしょう。僕にとっては全員が大切な友人です」

あらゆる意味で『I Know NIGO』は、2022年のラップ音楽の論理に逆行した作品だといえる。ストリーミングがリスナーの集中力を奪い、音楽を聴き流すのに慣れてしまった時代において、ヴィクターとNIGO®は、2000年代初期のユニークでニッチなラップ・ブームと同じような感覚を、新たなジェネレーションに期待している。「NIGO®と類似した人種もたくさんいると思う。彼らは、自分が興味を持ったり影響を受けたりしたものの歴史を深く掘り下げる。それこそがオーディエンスだ」とヴィクターは言う。「少なくとも、俺たちが今訴えかけようとしているのは、そういうタイプのオーディエンスさ」
ヴィクターは、アルバムという形式で出すことに意義があると感じている。楽曲がシングルの形でリリースされるのに慣れてしまった時代に、フルアルバムが作り出す世界観は、他と一線を画す可能性がある。「音楽に対する現代的な接し方が身に付いている子どもたちには、(アルバムという)一連の作品群を用意して、放り込んでやるのがいいのさ」と彼は説明する。
NIGO®にとって今回のプロジェクトは、正にオールスターによるコラボレーションだった。
From Rolling Stone US.

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