甲田まひるが語る、「CHERRY PIE」で見つけたソングライティングの真髄

2023年02月09日(木)18:00

シンガー・ソングライターの甲田まひるが、4th Digital Single「CHERRY PIE」をリリースした。テレビ東京系ドラマ24「今夜すきやきだよ」の番組オープニングテーマとして書き下ろされた同曲。

甲田が好きなK-POPやヒップホップのマナーをちりばめつつ、うっすらと哀愁漂うところがポイントだ。

【動画を見る】「CHERRY PIE」ミュージックビデオ

作詞に関しても「一つのテーマを広げていく作業が、だんだんできるようになってきた」と語るように、サウンドのクオリティのみならす「歌」から広がるイメージも多彩になってきた印象。成長著しい甲田に2023年、初インタビューを実施した。

—1年前のデビュー当初はまだ「ジャズ・ピアニストでファッション系インフルエンサー」というイメージだったのですが、作品を重ねるごとに「アーティスト」になってきたなと感じます。2023年を迎えた今、どんな心境ですか？

甲田：あらためて1年と言われると、確かにそれぐらい経ったなって感じです。去年は割と続けてリリースができて、そのなかでいろいろ吸収できたこととか、前作の『Snowdome』でも新しいプロデューサーさんと一緒に曲を作れたので、音楽的にはすごく充実してました。

—「CHERRY PIE」では、デジタルEP三部作をつくってきた成果がちゃんとフィードバックされているように思いました。

甲田：計算してたわけじゃないんですけど、「CHERRY PIE」は完成した時に、やりたいことが前作からちゃんと繋がってるなと思いました。いい具合にポップス感があってメッセージ性も強いので、すごくしっくり来ていますね。ドラマ「今夜すきやきだよ」は原作がマンガなので、曲をつくるにあたって作品を読み込んで、内容を寄せてる部分も多くあります。食べ物をテーマに、恋愛でもなく、友達でもない、みたいな特別な関係性を描ければいいなと思って書きました。

—メロディも作品からインスピレーションを受けたんですか？

甲田：メロディはピアノでガッと作ったんですよ。

ピアノっぽい細かい動きが面白いなと思って。メロディが詰め込まれてるようなちょっと難易度が高い曲って、若い子は聴き慣れてたりするじゃないですか。そういう意味でも旬だなと思って、どう刺さるか楽しみなところなんですけど、歌詞だけじゃなく、サビに行く時の盛り上がりとか、セリフが入るところは、ドラマを意識して考えましたね。

—ピアノからつくっていく作業は初めてですか？

甲田：「夢うらら」のAメロとかはピアノで作りましたね。でもこの曲はかなりピアノで作ってます。もともと私はデモの時のサウンドが好きなので、アレンジを仕上げる時も、常にデモからできるだけ離れないようにしてます。ピアノで作ったものが、その時一番良かった最初のアイデアだと思うので。

—まずはピアノで核の部分をつくると。

甲田：そうですね。やっぱり早いので、最初はピアノから触り始めることが多いです。

—サビの”咲いた花びらが舞うたびに～”からの一連の流れは、ピアノ伴奏の奥行きがあって、響きもいいなと思いました。だから今、ピアノからこの曲が生まれたと聞いてすごく納得しました。

甲田：王道の、ピアノとストリングスが鳴ってるサウンドですね。

—歌詞が”咲いた花びらが舞うたびに／私の心も揺れ動く”なのに、曲のタイトルが「CHERRY PIE」っていうギャップも面白いなと思って。普通ならもうちょっとエモめな曲名になりそうなのに。

甲田：しかもドラマは”すき焼き”ですからね（笑）この曲は最初から「CHERRY PIE」というタイトルでした。サビの歌詞も、最初からほぼこれでした。「CHERRY PIE」なのに、なぜかこのサビで、自分でもその辺の思考回路がどうなってるかはわからないですけど……（笑）。でも”オーブンから焦げた香り”は、作品を読み込むなかで思いつきました。最初は好きなことを追いかける2人にフォーカスして、ほほが赤くなるみたいなイメージで”チェリー”だったんです。そこから2人の、友情を超えた関係をどう書こうかなと思って、”（料理を）作るのが失敗したとしても、それでもいいよって食べてくれる人がいる”って方向に持っていくようにしました。

歌唱とラップのバランス

—歌唱パートだけでなく、ラップのパートもありますね。甲田さんのボーカル表現にラップは欠かせないですね。

甲田：いつもラップの方が書くのが早いんです。

歌唱パートだと、具体的な固有名詞を出しづらいじゃないですか。だからサビは割と、特定できない感じのぼやっとした歌詞にして、ラップで細かく言うようなバランス感が好きです。前作の「Snowdome」でも、ラップでは”かまくら”とか言ってるんですけど、その感じが楽しいなって思います。ラップって基本フリースタイルじゃないですか。その時に自然に出てきた言葉が一番ハマったりして、そのまま残すことも多いです。”Cherry picking”はさくらんぼ狩りのことで、女でも狩りに行く、家で待ってるだけじゃないぞみたいなイメージで書きました。スラングだと”いいとこ取り”って意味もあるんです。後悔のないライフにするために、自分に都合いいものだけを選んでこうってことでもあるなと思って。そういうメッセージを、ラップでぎゅっと書いた感じですね。

—歌唱とラップのバランスに関してはどうですか？

甲田：デビュー曲の「California」の時から、その作り方がある程度ピンと来てたんですよ。グループでラップ担当の人が出てくるイメージで、それを自分一人でやっちゃえばいいなと思って。だから今となっては、（ラップが）無いとしっくりこないとこまで来てる。

それでずっと続いてきたので。

—曲をリリースする度に、歌唱とラップの行き来が、よりよりナチュラルになってきているように感じます。

甲田：確かに回数を重ねるごとに、スムーズにラップに入って歌に戻るのはうまくなってきたかもしれない。しれっと、ラップが無かったことのように歌が始まるみたいな（笑）。

—前作からSUNNYさん（SUNNY BOY）と一緒に曲を作ってますが、J-POPの世界でも活躍している人たちの意見が、甲田さんの曲の奥行きを広げてくれているのかもなぁと思いました。

甲田：それはあると思いますね。歌い方とか歌への意識とか、細かいところもその都度言っていただけるので。

—ポップスのフィールドでシンガー・ソングライターとしてやりつつ、けっこうゴリっとしたラップをやっていることも面白いですよね。前作の「SECM（Sausage Egg & Cheese Muffin）」ではyung xanseiとコラボしましたし。

甲田：はい。私のチームに90年代くらいのヒップホップがドンピシャな世代の人が多かったりするので、だからこそ分かってくれることもあると思うんですよ。今も制作をしているんですけど、「それ、曲？」みたいなセクションを持っていって聴かせたりしても、いいんじゃないって反応をもらえるし、そういう環境はすごくありがたいと思っています。

—メジャーでもこうして攻めの姿勢でできる環境は最高ですよね。

甲田：本当にありがたいです。

—yung xanseiとのコラボレーションはどんな感じだったんですか？

甲田：実はまだ一回しかお会いしてないんです。友達とキッド・カディのライブに行ったら、yung xanseiさんが会場にいらっしゃったのでご挨拶しました。普段はアトランタに住んでるんですけど、偶然来日していて。もともとJP THE WAVYさんとか、その周りの方の楽曲もやってるから、もちろん（yung xanseiの）音楽は聴いていて。で、その時にどんな音楽やってるんですかと聞いてくれて、ヒップホップが好きでポップス書いてるんですって話したら、じゃあチェックしますねって言ってくれたんですよ。私はその頃「SECM (Sausage Egg & Cheese Muffin)」になる前のデモがあって、ご一緒できたらまさに理想のサウンドになると思って数日後にダメ元でデモを送ってお願いしてみたら、やってくいただけることになったんです。そこからはリモートでやり取りして、受け取ったビートに私がラップを入れて完成させました。

ースピード感がありますね。

甲田：ほんとに仕事が早くて納期前に仕上げてくださって。サクサクって感じでした。

—甲田さんがキッド・カディのライブに行ってなければ実現しなかった曲ですよね。そのフットワークの軽さも今っぽいです。

甲田：ほんとに。そんなことあるんだと思いました。楽曲のビジュアライザー（「https://youtu.be/oTufzUTX4zY」）も、私が海外の人に直接DMして、この曲で作ってほしいんですって言ったらオッケーしてくれたんですよ。

—セルフプロデュースというか、自分でいろいろできるからいいですよね。

甲田：ありがたいことに、今は割と好きにやらせてもらってますね。

ライブをやるのが、夢の一つ

—あとは「CHERRY PIE」も含めて、ライブができるといいですね。

甲田：やりたいです。

—ダンスのレッスンはまだやってるんですか？

甲田：はい。今は「CHERRY PIE」のフルの振り付けを練習してます。ミュージックビデオで踊ったので。今回初めて友達に振りを付けてもらって、すごく楽しかったです。

—今はシンガー・ソングライターですが、ミュージシャンでもあり、ラップもできるボーカリストでもあり、女優の経験もある。以前はピアノを人前で演奏していたわけだから、この状態でライブをやったらまた新しいエンターテインメントの扉が開きそうですね。

甲田：そうですね。どういう風にやるのか、まだ全然わからないですけど。

—この間、KANDYTOWNのビルボードライブ東京でのショーケースを観に行って。バンドセットのライブ、最高でした。

甲田：行ったんですね！　見たかった……！　キャンディ（KANDYTOWN）、バンドセット絶対ハマりますよね。元々トラックが生っぽいから。

—甲田さんもバンド編成でやると絶対いいと思います。

甲田：やりたいですね。バンド、ヤバそうですよね。楽譜、私書きたいですもん。ライブ用にアレンジして、弦楽器の譜面も全部書いて。それくらいやりたいです（笑）。

—しかも甲田さんの人脈ですごいミュージシャンたちが集まりそう。

甲田：たくさんいすぎて逆に誰を呼べばいいのかわからない（笑）。

—甲田さんのダンスポップな曲とヒップホップテイストな曲、バンドアレンジだとまた印象が全然変わりそうですね。

甲田：はい。それをライブでやるのが、今の夢の一つですね。

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