【動画を見る】元海兵隊員の男に首を圧迫されるジョーダンさん
報道によると、5月1日にホームレスだったニーリーさん(精神疾患を患っていたとみられる)がニューヨークの地下鉄で叫び声をあげながら突飛な行動をとっていたところ、ペニー容疑者が地下鉄車両内でニーリーさんの首を絞め、死亡させたとみられる。事件の一部はフリージャーナリストのフアン・アルベエルト・ヴァスケスさんが動画で撮影していた。ヴァスケスさんがニューヨークタイムズ紙に語った話では、ニーリーさんは15分近くも首を絞められるまで誰にも危害を加えていなかったという。
4分近い動画には、停車した地下鉄車両の床の上で白人男性(ニューヨークタイムズ紙はペニー容疑者と特定)が黒人(ニーリーさん)の首を絞め、別の2人も加勢してニーリーさんの腕を押さえつけている様子が映っている。ニーリーさんが動かなくなるとペニー容疑者は立ち上がり、複数の人々がニーリーさんの身体を横向きにした。警察はペニー容疑者を拘束し、尋問した後、釈放したと報道陣に語った。
検視の結果、ニーリーさんの死因は首を絞められたことによる圧迫死で、故殺と断定された。
ペニー容疑者はニーリーさん殺害でいまだ起訴されていないが、刑事弁護人のトーマス・ケニフ氏を代理人につけたと伝えらえている。裁判になれば、ケニフ弁護士とマンハッタン地方検事局アルヴィン・ブラッグ検事の往年の対決になる見込み。ケニフ弁護士がニューヨークタイムズ紙に語ったところでは、同氏の経営する法律事務所レイザー&ケニフはネリーさん殺害事件に関し、地方検事局および警察署と連絡を取り続けているそうだ。
「ニーリー氏がダニエル・ペニーさんや乗客を激しく威嚇してきた際、ダニエルさんは周りの人々の手を借りて、助けがくるまで自分たちの身を守ろうとしました」と被告弁護団はローリングストーン誌に宛てた声明の中でこう述べた。「ダニエルさんは決してニーリー氏に危害を加えるつもりはなく、まさか死亡するとは予想できませんでした」。
ジョーダン・ニーリーさんの遺族は法律事務所ミルズ&エドワーズと代理人契約を結んだ。「今回の裁判を引き受けたのは、助けも介入もなく、息もできない状態での15分はあまりも長すぎるからです。乗客が地下鉄の床で死亡するなどあってはなりません」と、エドワーズ弁護士は声明を出した。
パフォーマーだったニーリーさんは、ニューヨークではマイケル・ジャクソンの物まねで知られ、マイケル風の格好をして乗客の前でムーンウォークを披露していた。「彼のダンスを見ると、いつも圧倒されていました」と、ニーリーさんを知るブレンナ・クロウリーさんはFacebookに投稿した。父親のアンドレ・ザッカリーさんがニューヨーク・デイリーニュース紙に語ったところでは、ニーリーさんは自閉症で、2007年に母親が殺されてからは精神疾患も患っていたという。2012年には、母親クリスティ・ニーリーさんを殺害して「遺体をスーツケースに詰め、ブロンクスに遺棄した」ニュージャージー出身の男性が、懲役30年を言い渡されたとジャージージャーナル紙が報じている。
甥のためにGoFundMeページを立ち上げた叔母のキャロリン・ニーリーさんは、「甥は心に傷を負いました。あんな風に、母親が無残に命を奪われるなんて予想もしていなかったんです」と述べた。「甥には大きな衝撃でした。事件のむごたらしさゆえです」。
ニーリーさんの死は全米で賛否両論を巻き起こしている。
ニューヨーク市のエリック・アダムス市長は3日付の声明で、ニーリーさんを死に至らしめた要因の矛先を精神疾患に向けたようだ。「実際の状況について不明な点が多いため、これ以上の言及は控えさせていただきます」と市長。「ですが、精神疾患が深刻な問題になっていることは確かです。だからこそニューヨーク市は、ケアを必要な人々への治療提供や、街角や地下鉄の治安と危険な状況からの保護に向け、過去最多の予算を投じました」。
アダムス市長は今後も精神疾患に予算を投じていく計画を並べ立てたが、ニューヨーク市では精神患者向けサービスの予算は削られる一方だ。
連邦下院議会のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員は4日、ニーリーさんの事件は「殺人」だとツイートし、事件に対して対処を怠った当局を非難した。「いまだに当局職員からはまともな説明がありません。ジョーダン・ニーリーさん殺害の糾弾をためらうあまり、今回の暴力事件はさらにややこしくなっています」と議員は投稿した。「殺人は間違っている。貧者を殺すのは間違っている。
ペニー容疑者は2017年にウエストアイスリップ高校を卒業し、同じ年に海兵隊に入隊。海兵隊広報担当者によると、ライフル銃兵として第22海兵隊海外派遣部隊に所属した後、2021年に除隊した。
退役軍人のペニー容疑者はいまだ訴追されていないものの、検察はペニー容疑者への起訴を検討していると伝えられている。マンハッタン地方検事局は「訴追の是非を判断するために大陪審にかけるかどうか検討している」という。
NPO団体「ブロンクス・ディフェンダーズ」で刑事裁判弁護を担当する政策ディレクターのエリ・ノースラップ氏は、今回の事件で訴追までにこれほど検討に時間がかかっているのは尋常ではないとニューヨークタイムズ紙に語っている。「まずは逮捕・起訴、その後尋問が行われるのが通常です。逮捕射が黒人や有色人種、貧困層の場合はなおさらです」
※編集部追記:現地時間5月13日にペニー容疑者は現地にて逮捕された。
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