【写真を見る】ジョンベネちゃん殺害事件と性的虐待のエプスタイン元被告、陰謀論が生んだ接点
7月7日、当局はエプスタイン被告を特別監視棟(SHU)に勾留した。そこでは職員が30分おきに受刑者の見回りをすることになっていた。同月9日、MCCの精神専門家が受刑者の精神鑑定を公式に行った。被告本人が自殺志向を否定したため、専門家は危険性なしと判断した。7月18日、判事はエプスタイン被告の保釈を棄却し、勾留継続を命じた。
7月23日、エプスタイン被告が監房でオレンジ色の布を首に巻き付けているのを看守が発見。同房者が職員に伝えた話では、被告は首を吊るつもりだったという。被告は翌日まで自殺監視下に置かれた。また同房者に殺されそうだと主張したため、7月30日まで精神科医の観察下に置かれた。
8月8日、エプスタイン被告は弁護士と遺産分割協議書の草稿を作成したが、MCC職員はこの件を被告の死後まで知らなかった。その翌日、当局は同房者を別の施設に移送し、エプスタイン被告は単独で収監された。同じ日、連邦第2巡回控訴裁判所は2000ページに及ぶ資料を公表し、エプスタイン氏の知人ギレーヌ・マックスウェル被告が10年間にわたり、被告と共謀して未成年少女の人身売買に関与していたと発表した(マックスウェル被告は2021年12月に有罪判決を受けた)。
その日MCC職員はBOPの規則に反して、エプスタイン被告に傍受・録音のない通話を認めた。被告本人は母親に電話すると主張していたが、母親はすでに他界していた。のちに当局は、電話の相手が被告と親しい間柄だったことを知った。
午後8時、エプスタイン被告は単独で監房に戻された。MCC職員は監房内部の点検をしなかった。DOJの報告によると、「エプスタイン被告の死後に監房を捜索したところ、受刑者用の毛布、シーツ、衣服が大量に保管され、一部を引き裂かれて首つり縄が作られていたことが発覚した」。またMCCのSHU職員は受刑者の点呼を午後4時以降行っていなかったばかりか、夜10時40分以降は30分おきの見回りも行っていなかった。DOJによると、当直職員は「虚偽の」報告書を作成し、あたかも職務を全うしていたかのように見せかけていたそうだ。
エプスタイン被告の遺体がようやく発見されたのは8月10日の午前6時30分、配給係のマイケル・トーマス氏が朝食を配ろうとしていた時だった。呼びかけても被告が応じなかったため、トーマス氏は助けを呼んだ。「トーマス氏が監房に入ってみると、シーツかシャツでこしらえたと思しきオレンジ色の紐がエプスタイン被告の首に巻き付けられ、二段ベッドの上段に括りつけられていたと(DOJ監視官に)語った」と報告書にはある。「エプスタイン被告は腰を下ろすような姿勢で二段ベッドからぶら下がり、臀部は床から1~1.5センチほど浮いていた」という。
「トーマス氏がすぐさま二段ベッドからオレンジ色の紐を引きちぎると、エプスタイン被告の臀部が床に落下した」と報告書は続く。「トーマス氏は被告の遺体を床に下ろし、心臓マッサージを始めた。約1分後にMCC職員が到着。ほどなく刑務所外部の医師が到着し、蘇生措置を交替した。最終的に被告は地元病院に搬送され、そこで死亡が宣告された」。8月11日、検視官はエプスタイン被告の死因は首吊りによる自殺と断定された。
またDOJの報告書には、MCCのデジタルビデオレコーダーが7月29日に故障したため、限られた監視カメラしか作動していなかったとある。だが、カメラの映像のライブ映像は依然送信されていたため、監視は可能なはずだった。刑務所がようやくカメラを修理したのはエプスタイン被告の死後だった。とはいえDOJの監視官は、8月9日の夜10時40分から8月10日の午前6時30分まで監房を出入りした者はいなかった、と結論づけている。
被告の死を招いた組織的過失を詳しく記載した箇所によると、MCCが8月9日、エプスタイン被告に同房者をつけるよう命じた精神鑑定課の指示に従っていなかったことが分かった。傍受のない通話や受刑者点呼の怠慢も規則違反だった。
またインターネット上の憶測とは裏腹に、報告書はエプスタイン氏の死因が自殺だと強調している。DOJによると、「事情聴取したMCCニューヨークの職員は誰1人、エプスタイン被告の死因が自殺以外であると示唆する情報を入手していなかった」そうだ。「加えて、事情聴取したMCCニューヨークの受刑者も誰1人、自殺以外の死因を示唆するような信用できる情報を持っていなかった。さらに、エプスタイン被告が収監されていた監房の入口が直接視界に入っていたSHU職員と3人の受刑囚にも聴取を行ったが、事件当夜の8月9日、SHU職員がエプスタイン被告を監房に戻した後に出入りした者は1人もいなかったと供述した」。
報告書はBOP職員が再三にわたって当局のポリシーを違反していたと非難し、「DOJとBOPが率先して、職員の定期採用、監視、安全管理、その他BOPに蔓延する問題に取り組む必要性」を強調している。DOJはBOPに8つの勧告を出したが、それに対してBOPは別紙で、「新たなコアバリューとして、責任追及、誠意、敬意、思いやり、更正活動の向上を盛りこむ」としている。これに対してDOJは、それぞれの勧告が解決されたと判断した。
6月上旬、JPモーガンはエプスタイン被告の被害者が起こした集団訴訟で和解した。和解金は、今年ドイツ銀行が被害者に支払った和解金750万ドルを上回るとみられている。ごく最近では、エプスタイン被告が死の直前に、やはり性犯罪者のスポーツ医師ラリー・ナサール被告に連絡を取ろうとしていたことも報じられた。被告の手紙は差出人に返送され、MCCの郵便室の床に残されていた。
自殺を考えている方、または知人が自殺を考えている方は、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)にお電話ください。
関連記事:性犯罪者エプスタインが自殺直前、米体操女子に性的虐待していた医師に手紙を送っていた
from Rolling Stone US