【画像を観る】Facebook本社前に掲げられた「乳首の写真」
ヌードは仕事ではやりたくない。
それから15年後、気づけば独り身だ(双子は大きく成長したが、結婚生活は終わった)。自分でもびっくりだが、代役を雇った経験がオンラインデートで知っておくべきことをすべて教えてくれた――誰もが出会い系サイトで楽しい思いをするとは限らないので、私にとっては大収穫だった。同時に私の顔はそれなりに知られているので、私のプロフィールを見ていいなと思った人が、今日Rayaアプリで女優さんを見つけたと友人に話すケースも出てくる。そしてその友人は元ダンナだったりする。本当の話だ。あるいは、Hingeアプリの私のプロフィールを写真に撮って、Instagramのストーリーにタグ付きであげたりする。これまた悲しいかな、本当の話だ。
さらに最悪なことに(実はまだ続きがある)、そういう人たちが私の仕事にいちいち口出す場合もある。
その中でもとくに私のお気に入りは、
「TVであなたの乳首を見たことがあるけど、吸ってみたいもんだね」
あらそう、でも私の乳首じゃないんですよね。あれは代役なんですの。私も最初に目にした時、自分のだったらいいなと思いましたから、気持ちは分かります。事の次第はこうだ。
私がトレーラーに1人でいると、大きな封筒がドアの下から滑り込まれた。中を開けてみると、女性の裸体の写真が入っていた。正確には顔の部分が見切れた、首から下だけが映ったA4サイズの写真だ。うっかり『The Idol』の養成所に紛れ込んだかと思っても不思議ではない。だがすぐに、写真を依頼したのが自分だと思い出した。ここから私のふりをしてくれる身体を選ぶのだ。さあ、どうぞ。

CBSのドラマシリーズ『Fire Country』でシャロン・レオニを演じるダイアン・ファール(SERGEI BACHLAKOV/CBS VIA GETTY IMAGES)
他の女性の裸体を見るのはなんとも奇妙だった。だがもっと奇妙だったのは、自分がすぐに慣れてしまったことだ。女性たちの筋肉のラインや脱毛した肌はとても勉強になった。だが驚いたのは、顔や服装で差別化しなくても個性が光り輝いていることだった。みな美しい身体をしていた――唯一違う点は足首から下の部分だった。1人はハイヒールを履いていて、もう1人は裸足。別の1人も裸足だったが、ハイヒールを履いているかのようにつま先立ちしていた。
だが私が選んだ女性は、これぞ裸の戦士という感じだった。彼女も素足でつま先立ちも厭わない様子だったが、片方の脚がやや外側に向いていて、ヌードのオーディションにも動じず、むしろうんざりしているような印象だった。とくに私の気を惹いたのが背中のカーブだ。実に見事な曲線美だった。あばらを前に突き出し、直感に忠実。
その女性が撮影セットに到着すると、私は一目散に駆けて行った。とてもきれいな女性だと今更ながらに気づいた(ここまでだと思っていただろうか?)。すると彼女が口を開いて話し始めた。出てきたのは蚊が泣くような細い声――近づかないと聞こえないほど小声。しかも手ときたら繊細で、こんにちはと握手しただけでへし折ってしまいそうだった。
「戦士」とはまるで正反対だ。
私は逃げ出したくなった。だが契約があったので、そうもいかなかった。ハイヒールの女性とチェンジしようかとも思ったが、それも無理だった――彼女の方も契約があったからだ。こんなか弱い人間がTVの撮影セットで食い物にされるなんて、それも私のせいで。

ダイアン・ファール(PAUL ARCHULETA/GETTY IMAGES)
出会い系サイトで最初の頃にマッチングした人からも、同じような反応をされた。あのTVの役は良くなかったとか、あの役柄は合ってなかったから引き受けるべきじゃなかったとか。ええっ?! デートの相手として言ってるんですか? それとも役を演じる女優としてですか?
答えは両方。みな典型的なイメージにはめていたのだ――私たちはみな、もっとも原始的かつ直感的な型に自分自身や他人を当てはめる。私が顔の見切れた裸の女性の写真を見た時もそうだ。「戦士」だと思った女性は、いざ撮影セットに現れてみると「ミューズ」だった。そこではたと気が付いた。これは自分の問題なのだ。
少なくとも、私は自分の判断を胸にしまっておいた。その方が私にとっても、その日雇った囁き声の代役にとっても好都合だった。撮影セットの彼女は、服を着ても脱いでも輝いていた。彼女に自分自身(私)を投影していない人たちは、真のミューズ(彼女)に魅了されていた。この時の経験は、次に出会い系アプリをやるときの役に立ちそうだ。投稿する写真を選ぶときも、自我を振り回すのは辞めにして、次の恋愛でどんな役回りを演じたいかをベースに――すなわち典型的な型にはめて選ぶことにしよう。
悪女。誘う女。美魔女。(セクシー、でも私らしくない)
読書好き。
看護婦。妻。弁護士。(すでに経験済み、もう結構)
戦士。女王。賢女。(実生活はありだけど……出会い系で?)
実際のところ、1枚の写真でどの役にもハマりそうだ。ただ役によって、デート/経験/性生活/ライフスタイルが極端に違ってくるというだけの話。つまり、出会い系アプリの写真がイケてるか、スリムか、賢そうかと悩むのは自分を貶めるだけでなく、時間の無駄だったということだ。
※この記事は、現在行われている俳優組合のストライキ以前に執筆されました。
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