INABA/SALASが2月26日に3rdアルバム『ATOMIC CHIHUAHUA』をリリースし、3月から「INABA/SALAS TOUR 2025 -Never Goodbye Only Hello-」をスタートさせる。2020年に前作『Maximum Huavo』をリリースしたものの、パンデミックの影響でツアーは全公演が中止に。
あれから5年の月日を経て、本人たちも想定外だったというアルバムを引っ提げて、2人は見事にカムバックをしてくれた。

今回、そんな彼らが3月25日発売の「Rolling Stone Japan vol.30」特別版で撮り下ろしのW表紙を飾る。ここでは2人のインタビューを特別に先行公開する。

【画像】INABA/SALASのW表紙

◎2020年のツアー中止を経て

ーアルバムから完成前の音源を6曲聴かせていただきましたが、今まさにレコーディングの途中なんですよね。

稲葉 そうですね。昨日一昨日と作業をしていて、今は最後の仕上げの段階に入ってるんですけど、聴いていただいた音源からはもう少し変わるかなと思います。

ースティーヴィーさんはいつから日本に?

サラス 2日前から。その前はトロントでルー・ポマンティとレコーディングをしてて、その前はテキサスでギターを弾いてた。

稲葉 この人めちゃくちゃなんですよ、本当に。去年の暮れに仕事をしたときは一回日本に来て、その後にロンドンに行って、そこからまたこっちに戻ってきて。山手線みたいな感じで国際線に乗ってるんで(笑)。

サラス お金がかかるからマネージャーには嫌がられるんだけど(笑)。


ーまずはツアーが中止になってしまった2020年の状況を振り返っていただけますか?

サラス 当時は仕事の関係で頻繁に日本を訪れていたんだけど、数か月前から空港に着くと中国やその他の国から到着した人たちは別な列に並ばされるようになって、不思議に思ってたんだ。まだアメリカではコロナについて誰も知らない時期だったから。で、KOSHIから「ローリングストーンの表紙の撮影(※Rolling Stone Japan vol.10)があるから来週来てくれない?」と電話がかかってきたので、「ローリングストーンのためならもちろん行くよ!」って、飛行機に飛び乗って、表紙を撮って……そうしたら、突然周囲がおかしなことになってた。アメリカに戻るための飛行機に乗ったら、ガラガラだったんだ。

稲葉 ミュージックビデオを撮影した直後だったね。

サラス そうそう、撮影を終えて飛行機に乗ったらガラガラで、思わず写真を撮ったよ。それからもう戻って来れなくなって、日本にギターも衣装も置きっぱなしのまま。世界が一変したんだ。

稲葉 ツアーはギリギリまでやる予定で、メンバーをいろいろやりくりして。ビザが下りなくなったりして、「この人がダメになったから、じゃあこの人どうかな?」って、いろんな人にオファーをし続けて、発表したメンバーでやりますっていうふうになったんだけど、それでも最後の最後に結局全部なしになったっていうことですね。それはうちに限らず、世界的にもそういう状況になっていて、できないことはもうしょうがないので、そのときは「次いつやろうか?」という話にもならずに、しばらくは日常的な連絡のやり取りをしてました。そこから世の中が少しずつ戻ってきて、みなさんコンサートをやるようになって、「お互いに歳を取りすぎる前に何とかツアーをやりたいよね」っていう話をことあるごとにしてたんですけど、彼は映画の仕事とかでいろいろ忙しくて、僕もBzをやってたりして、なかなかスケジュールが合わなくて。
で、去年くらいにやっとスケジュールが合いそうだってなって、まずは中止になったツアーをもう一度やろうという話からスタートして、それに合わせて1曲ぐらい、何か新しい曲を作ったらどうかなって言ってたんです。でも一回曲作りを始めたら、いろいろアイデアを出してくれるから、「これもやってみようか、あれもやってみようか」って言ってたら、6~7曲に増えて、いま大変な状況になってます(笑)。

サラス 俺がこの5年で何をやってたかというと、映画やテレビの仕事以外はウェイン・クレイマーとMC5の新作の制作に入ってたんだ。MC5のツアーにも同行して、スティーヴィー・サラス・カラーコードのオリジナル・ドラマーのウィンストン(・ワトソン)を起用した。ウェイン・クレイマーとの仕事は最高だったけど、でもウェイン・クレイマーっぽくない曲も同時に書いてたんだよね。ここのところ曲を書くと「これはKOSHIが好きそうな曲だな」って思ったりするんだよ。それでツアーの目処が立って、新曲のアイデアを送り始めたんだけど、問題は1曲のはずがどの曲を渡しても「これは最高だね」って、メモ帳を片手に部屋に引っ込んで歌詞を書き始めるんだ。で、「じゃあ、これは?」って他の曲を聴かせると、「これもいいね」ってなって、気づくとマネージャーたちに「これ以上はもうダメだよ!」って止められるような状態になっていて。

稲葉 じゃあ、曲が増えたのは僕のせいですね(笑)。

サラス そう、全部KOSHIのせいだ(笑)。でもね、それは彼が非常にクリエイティブだからなんだ。彼好みの曲ができるとあっという間に歌詞を書き上げる。
あんな素晴らしい歌詞をあんな短時間で書ける人は見たことがない。あと1カ月あれば、もしくは9月か10月ぐらいに制作を始めていれば、曲数ももっと増えていたはず。でも7曲という少ない数でよかったと思う。その方が次回もそんなに曲数を増やさなくてもいいし。『Maximum Huavo』は14曲だったっけ?

稲葉 覚えてない。

サラス そんなもんだったよな(※正確には12曲)。イカれてるよ(笑)。

ーINABA/SALASが一旦お休みになった後、稲葉さんはBzの活動もあったし、ひさびさのソロアルバム(『只者』)のリリースもありました。INABA/SALASを経たことによって、ソロをもう1回やったときに、何かフィードバックみたいなものはありましたか?

稲葉 ソロに限らず、Bzもそうなんですけど、INABA/SALASでアルバムを2枚作って、一番自分の中になかったなと思ったのが、リズムの感覚なんですよね。グルーヴみたいな部分に関してはちょっと次元が違うので、レコーディングやステージでそれを体験したことによって、歌ってる中で体が動く感じを自分も強く求めるようになっていきました。

ー近年の稲葉さんの活動を見ていると、凛として時雨のTKさんとコラボレーションがあったり、ソロアルバムに蔦谷好位置さんが参加したり、新しい出会いを楽しんでいる印象があります。INABA/SALASをやって、一つ手応えがあったからこそ、いろんな人とやってみようというモードになった部分もあったりするのかなと。


稲葉 INABA/SALASももちろん影響はあったんですけど、やっぱり大きかったのはコロナ禍の時期を挟んだことで、みなさんそうだと思うんですけど、あの時期に自分を見つめ直すというか、「あんまり時間なさそう」みたいな感覚があったんです。今までの自分のやってきたスタイルとして、コラボレーションみたいなことはあんまりしてこなかったので、もう少し自分をオープンにしていきたいと思ったっていうのが正直なところですね。

ー山手線のように国際線を使うスティーヴィーさんからすると、パンデミックの影響で家から出られない時期は相当フラストレーションが溜まっていたのでは?

サラス 本当にそうだね。俺は普段バリバリ仕事をこなしてるから、あの状況にはとにかくフラストレーションが溜まってた。俺だって歳を取ってきているけど、まだまだできることはある。だけど何もできなかった。俺は過去の成功に満足して大人しくなんてしていられない。過去の成功なんてないものとして毎日を過ごしてる。だから毎朝起きると「よし、何かやらなきゃ」って気持ちになるんだよ。2020年のツアーも楽しみにしていたのにそれもできず、本当に残念だった。INABA/SALASを愛しているのは曲を愛しているからなんだ。自分たちが本当に好きな曲を作れるのがうれしい。
今まで一緒に仕事をしてきた人たちと作った全ての作品を愛しているとは言い切れない。でもINABA/SALASの曲は心から好きなんだ。俺たちの演奏を聴いて、観客はものすごく熱狂する。コンサート終わりには観客もぐったりだと思うよ。「彼らはどうやって会場から帰るんだろう?」なんて思ってしまうほど、クレイジーな盛り上がり方なんだ。

Translation by Kyoko Matsuda
Styling by Ryoichi Ishiguro
Hair and Make-up by Tadashi Kikuchi (LUCK HAIR)

※続きは「Rolling Stone Japan vol.30」誌面で!

INABA/SALASライブ会場販売のご案内
販売公演会場:3月29日(土)30日(日)横浜BUNTAI
会場販売特典:本人絵柄のポストカード3枚セット
※特典の絵柄、販売に関する詳細は後日お知らせいたします。

Rolling Stone Japan vol.30(2025年5月号)特別版
発行:CCCミュージックラボ株式会社
発売:株式会社CCCメディアハウス
2025年3月25日発売
価格:1320円(税込)
※Amazonにて予約受付中
編集部おすすめ