アマゾン創業者ジェフ・ベゾスによる宇宙開発企業ブルーオリジンは、「何百万人もの人が宇宙で暮らし、働く未来」を目指している――という触れ込みだが、現実的には今のところ、セレブをちょっと宇宙に打ち上げる技術だけは確立しているようだ。
4月14日、女性6人による宇宙飛行が実施された。これは1963年にソ連が女性宇宙飛行士を単独で宇宙へ送り出して以来、初となる”女性だけの宇宙ミッション”。今回の乗組員には、元NASAのロケット科学者アイーシャ・ボウ、映画プロデューサーでドキュメンタリー作家のケリアン・フリン、性暴力被害者支援活動家でノーベル賞候補にもなったアマンダ・グエン、ニュースキャスターのゲイル・キング、ジャーナリストでベゾスの婚約者でもあるローレン・サンチェス。そしてさらに、なぜかケイティ・ペリーも搭乗していた。彼女の参加理由としては、女性のエンパワーメントをテーマにした楽曲や、「Firework」「E.T.」といった”ロケット”や”宇宙人”を連想させる歌詞が挙げられているらしい。
過去には、2021年に『スタートレック』で知られる俳優ウィリアム・シャトナーがブルーオリジンのフライトに参加。当時90歳という年齢で宇宙へ到達したことで、同社にとっても好意的な報道が集まった。今回も、ペリーの知名度は多くのメディアでローンチ(打ち上げ)の顔として大きく取り上げられた。場所はテキサス西部、使用されたのはNew Shepardロケットで、今回が有人飛行11回目となる。だが、スタン(熱狂的ファン)文化における”ポップディーヴァの偉業”に対する審査基準はとにかく厳しい。
容赦ない「酷評大喜利」バズった投稿は?
まず何より、ネット民が最も驚いたのは、「打ち上げから着陸までがわずか11分」だったことだ。ブースターロケットが乗客を乗せたカプセルを準軌道(suborbital)空間へと運び、無重力状態を体験できるのは3~4分程度。その後はカプセルが放物線を描きながら落下し、パラシュートによって地球に着地するという仕組みだ。あるX(旧Twitter)ユーザーは、「”ケイティ・ペリー、宇宙へ!”という見出し」と、「実際の飛行ルートを示す図」の落差をネタにして、『スポンジ・ボブ』で主人公とパトリックが”子供向けのジェットコースターに乗って、ちっちゃなコブをひとつ越えるだけ”のシーンになぞらえて笑いを誘った。
"katy perry going to space!!"
The actual trip: pic.twitter.com/JK4mOyuiKY— solcito (@_valkyriecroft) April 14, 2025
why did i think katy perry would stay in space for a few days/weeks pic.twitter.com/IVcjVtZ4rL— arianators wildin (@arianatorswildt) April 14, 2025
また、アリアナ・グランデに関する投稿を専門にしているアカウントはこうつぶやいた。「なんで私は”ケイティ・ペリーが何日か宇宙に滞在する”って思い込んでたんだろう?」――これはブルーオリジンのフライトの内容や制限について、一般にはまだあまり知られていないことを物語っている。他のコメントもなかなか手厳しい。「テイラー・スウィフト『All Too Well』のショートフィルムのほうが長かった」「何あれ? スーパーで買い物してる方がよっぽど事件だったんだけど」――そして極めつけは、「宇宙に行ったのに”物足りない”と思わせられるのって、ケイティ・ペリーくらいじゃない?」
着陸後、地面にキスするケイティ・ペリーの写真がネット上に出回ると、彼女自身もさっそくネタにされる対象となった。あるXユーザーは、泣き笑いの絵文字を連発しながらこうコメントした。「ガールは雲を見ただけじゃん。宇宙なんて行ってないでしょ、座ってな?」。
oh dramatic u were there for 20 seconds miss girl— jack (@da3neryys) April 14, 2025
SNSのジョークは止まらない「伝説級のプロモかも」
さらに火に油を注いだのは、「機内で歌うらしい」という報道だった。ゲイル・キングが、無重力状態を体験した後、ペリーが「What a Wonderful World」を歌ったと明かす動画に対して、あるユーザーはこう返した。「それでみんなすぐ地球に帰ってきたんだね。納得。」――この投稿は14万以上の”いいね”を獲得。BBCの放送を観ていた別の視聴者は、ある”タイミングの悪い瞬間”に気づく。「ケイティ・ペリーが宇宙で歌うと言っていました」とアナウンサーが言った直後、通信音声で「1分前警告(One minute warning.)」というフレーズが流れるという展開。これに対し、あるBBC関係者はクリップを共有しつつこうコメントした。「ちょっとそれ、ケイティ・ペリーに厳しすぎでは?」(※ペリー本人は後に記者団にこう語っている。「自分の曲じゃなくて『What a Wonderful World』を選んだのは、私のためじゃないから。”この素晴らしい世界”を、目の前に広がる景色を、心から称えたかったんです」)
no wonder they came back so quickly https://t.co/MNTSyTZhyy— fkajack (@fkajack) April 14, 2025
Seems a bit harsh on Katy Perry. https://t.co/e05GqMI03u pic.twitter.com/TGFzA1m2Ba— Scott Bryan (@scottygb) April 14, 2025
一方で、無重力状態での映像が公開されると、視聴者の間では別の気づきが。ペリーはカメラに娘・デイジーちゃんにちなんだマーガレットの花を見せるだけでなく、蝶の形に切り抜かれたプレートで、今月スタートするツアー『Lifetimes Tour』のセットリストをチラ見せしていたのだ。
Goes to space and spends all her time looking at the camera pic.twitter.com/Fi9weCi8BL— TJ (@bigtiamnot) April 14, 2025
ヘイター達はケイティ・ペリーの宇宙冒険を揶揄し、昨年酷評されたアルバム『143』の話まで引っ張り出しては叩いているが、そんなペリーにも大きな”勝利”がひとつあった――ブルーオリジンのロケットは爆発しなかったのだ。日曜には、あるXユーザーの辛辣な投稿が拡散された。その内容はというと——「もしケイティ・ペリーが宇宙で死んだら、世界中で『Firework』が流れるんだよ。それってマジでやばいでしょ」。だが、無事に帰還を果たしたあとでさえ、SNS上のジョークや皮肉は止まらなかった。別のユーザーはこう宣言する。「宇宙から戻ってきたケイティ・ペリー、打ち上げられた彼女とは別人説―――今からその陰謀論、始めます」。
声を上げても(「roar」)、宇宙に舞い上がっても(「soar」)、今のケイティ・ペリーは報われないようだ。
From Rolling Stone US.