Da-iCEのリーダーとして活動し続け、昨年末には念願の『紅白歌合戦』初出場を果たすまでの存在となった工藤大輝。それまでの長き道程で負ったダメージを癒すように年始に膝の手術で入院するも、このタイミングで精力的なソロ活動をスタートさせた。
【画像】工藤大輝、撮り下ろし写真
―2024年末にDa-iCEにとっての念願の夢だった『紅白歌合戦』初出場を果たしました。実際に出場してどんな気持ちになりましたか?
工藤大輝:出れたのはもちろん嬉しかったですし、いろんなコラボとかもありましたし……本当に激動でしたね。年末っぽい時間割りというか。普通のテレビ出演と違って、本当に朝から晩までずっと現場にいて、ずっと忙しくバタバタしていて。そういうので「あ、本当に紅白決まったんだな」って実感しました。リハーサルも何回も、何日にも分けてやっていたから「これが噂の紅白ですか」という感じになりましたね。ただ、まわりからは「まだ出てなかったんだね」と言われることが多くて(笑)。でも、そういう風に見られていたのは、むしろ嬉しかったです。
―紅白という目標を達成したあとのDa-iCEは、今どんなモードになっているんですかね?
工藤大輝:僕個人的には、1月末に右膝の関節鏡視下半月板縫合術の手術を受けたんですけど、紅白のあとのDa-iCE結成記念日とメジャーデビュー記念日を祝うライブイベント「Da-iCE DAY 2025」までガチガチ全開で駆け抜けて。
―そういう意味でも、このタイミングでのソロ活動は重要ですね。
工藤大輝:そうですね。膝の手術の件もあったからソロ活動をこのタイミングで始めたと思われているかもしれないんですけど、実は1年半ぐらい前から企画は立てていて。本当に偶然手術と重なった感じだったんですよ。で、ソロの企画を立てた理由は、僕には双子の兄的な存在の(笑)アーティストがいるんですけど。
―存じてます。claquepotですよね。
工藤大輝:最近僕に興味を持っていただいた方々はそっちの活動含めて情報と人物が一致していないところもあって、それを一致させる作業をしてもいいのかなと思っていたんです。Da-iCEが「CITRUS」「スターマイン」「I wonder」のおかげでそれこそ特番も含めて出るところが増えてきて、それに伴ってライトな方がガッ!と増えたんですよ。
―そして、初のセルフカバーアルバム『Otowonous』をリリースするに至ったわけですね。こうした作品をつくるうえで、Da-iCEで制作してきた楽曲や、様々なアーティストに提供してきた楽曲を振り返ったと思うんですけど、改めて自分の楽曲群に対してどんな印象を持たれましたか?
工藤大輝:大前提として各アーティストさんに向けて書いているので、楽曲の種類はバラバラだなとは思いましたけど、歌詞とかやり方に関しては、自分の中ではわりと一貫性があるなと感じました。だから、自分でセルフカバーしてもとっ散らからなさそうだなって思ったんです。例えば「キャッチーな曲がほしいです」とオーダーを受けたとしても、自分なりにいろんな人に刺さるように比喩表現を使ったりとか。あとは、アーティスト側に立って「普段はこういう曲をやっているから、敢えてこういう曲を歌ってもらいたい」というプロデューサー的な目線で制作することが多かったんですよね。ちなみに、Da-iCEの曲をつくるときも同じような考え方なんですよ。プロの作家さんはそのアーティストのイメージにビタッとハマった曲をつくられる方が多いんですけど、僕はそうじゃなかったので、それが結果的に自分っぽさになっていたんだなと。今回、曲を集めてみて気付きました。
―自分では、いわゆる作家としての工藤大輝をどう評価していますか?
工藤大輝:音楽の学校を出ているわけでもないので、音楽的な理論に詳しいとかそういうことじゃないんですけど、プレイヤー半分、制作半分なので、僕のクセとしては「ライブでどう使われるか」を想定して歌詞を書いたりとか、メロをつくったりとか、音のキメを考えたりするんですよ。僕はどちらかと言うとライブの為に音楽をつくっている。そういう部分を考えられるところが強みなのかなとは思いますね。
―実際、今作『Otowonous』収録曲のオリジナルを歌っている方々は、Da-iCEはもちろんのこと、Nissy、フィロソフィーのダンス、kolme、GENIC、FAKYと歌って踊っている人たちがほとんどで、ライブパフォーマンスありきで音楽を完成させている人たち。なので、今話してくれた工藤さんの属性と相性が良かったんでしょうね。必然性を感じる。
工藤大輝:そうですね。自分がダンス&ボーカルグループで活動しているからこそ、例えば、2サビのあとに空白をつくっておいて、そこをダンスパートにするのか。或いは煽るのか。最初は振りを付けてパフォーマンスするだろうけど、最終的には夏フェスで盛り上がってみんなでタオルをまわす曲になりそうだなとか。ここをセリフっぽくしたら客席から歓声が沸き起こるだろうな、ファンが喜ぶだろうなとか。そういう目線でプラスオンのところを考えながらつくることが多いんですよね。
―あと、こうして工藤大輝の楽曲群をまとめて聴かせてもらうと、ヒップホップとかファンクとかソウルとか根っこにクラブミュージックがしっかり流れている人なんだなと、改めて感じました。あんまりそこの文脈で語られることってないかもしれないですけど。
工藤大輝:そうなんですよ。
―それも工藤さんならではのアイデンティティですよね。どのトラックも玄人リスナーが例えばクラブで聴いたら「おぉー!」って反応するような内容になっていると思いますし、仮にボーカルレスでも成立する音楽をつくっているなって。
工藤大輝:そう感じていただけたら嬉しいですね。ウチの大野雄大と花村想太は完全にボーカリストで、=アスリートみたいな領域なんですけど、僕は楽曲全体のグルーヴを見るのが好きな人だから、本来はミックスのときに「これはボーカルが前に出ていなくてもいいな」とか思っちゃうタイプなんですよ。あくまでもボーカルは楽器のひとつとして捉えているし、曲によってはボーカルレスでも構わないと思っちゃう。なので、実はインストゥルメンタル側を結構大事にしているところはあるんですよね。
―そんな中で今回のアルバム『Otowonous』は、全編自分のボーカルで表現する作品として制作されたわけですが、実際に挑戦してみていかがでしたか?
工藤大輝:そんなに気負ってはいなかったですね。どなたかに楽曲を提供するときのデモは自分の声なので。そのデモバージョンをバーっと並べて聴いたときに「いけるな」と思ったので、わりとすらすらと進行できました。あとは自分の年齢に合ったアレンジにすることで、高校生のバンド(恋ステバンド「Lilac」)に提供している曲とかもあったんで、そっちに寄せなくても成立するようにしようと。なので、自分の等身大のまま歌えた感じはあります。無理をしていない感じというか。
―大野雄大と花村想太がリードボーカルとして歌ってきたDa-iCEの楽曲たち(「Revolver」「Found it」「スターマイン」)を自分ひとりで歌うという取り組みは、実際にやってみてどんなことを感じたりしましたか?
工藤大輝:自分でつくっておいてなんですけど、あのふたりがクロスオーバーする前提でメロディをつくっているので、ひとりで歌えないんですよ。レコーディングしてみて「これは無理だ」と。なので、ある箇所をコーラス扱いにしたりとか、そういう差し引きみたいなことをしなきゃいかなかったのは、結構大変でしたね。グループにつくっている曲って基本的に歌割りありきでつくっているので、それをひとりで賄うのは大変だなと、実際に歌ってみて思いました(笑)。
―なので、完全に別モノの曲に仕上がっていますよね。どの曲も再構築されているというか。
工藤大輝:完全にそうなるように再構築しました。BPMと楽曲の長さだけは変えていないんですよ。それを変えちゃうとリミックスみたいになっちゃうんで。そのルールを守りつつ、他をどうイジるかみたいな。その中で明らかにムードが変わったDa-iCEのセルフカバーは「スターマイン」。「スターマイン」を作るにあたってアイデアの参考にさせていただいたのが本間さんの手掛けた「サウダージ」や「アゲハ蝶」などのラテン要素のある楽曲だったのでアレンジを本間昭光さんにお願いしたんですけど、結果、Da-iCEのオリジナルとは全然違う曲になりましたね。大人の、自分の年齢に合ったアレンジになったので、この曲のセルフカバーは物凄く面白かったですね。
―リスナーの反応も楽しみですよね。まずDa-iCEファンがどう思うのか。そして、ライト層がどう感じるのか。
工藤大輝:「別もんやん!」ってなると思うんですけど、賛否あって然るべきというか。カバーをやる時点でその覚悟はあったというか。ボーカルに関してもそうだし。でも、気にする領域じゃないなと思っていて。
―この試み自体が面白いですからね。
工藤大輝:そう思っていただけたらいいなって思います。ダンス&ボーカルグループの人が提供曲のセルフカバーアルバムを制作すること自体、あんまり聞かないじゃないですか(笑)。なので、面白がってもらえたらいいなって感じです。
―Da-iCE以外のセルフカバーについても話を伺っていきたいのですが、Nissyさんの「ハプニング」は元々どんな流れで制作することになったのか。そして、セルフカバーしてみてどうだったのか。聞かせて下さい。
工藤大輝:Nissyは仲良くさせていただいている先輩で。これはだいぶ前の曲なんですけど、その当時は、Nissyがまだソロ活動をやり始めた頃で「ソロなんて無理に決まってるじゃん」という風潮があったんですよ。あの方でさえ。それで「曲はどうしたらいいんだろう?」って困っていたから、僕が超ライトなA&R(=レコード会社の音楽制作担当)的なことをして「こういう曲だったら、この人にお願いしたらいい。俺の友達を紹介します」みたいな感じで動いていたんです。その中で「80年代から90年代のシティポップ要素のある楽曲が欲しい」となって、それなら僕が好きなジャンルなので一回作ってみていいいですかって。その曲が「ハプニング」なんです。
―そんな背景と経緯があったんですね。
工藤大輝:で、今回、セルフカバーしてみて感じたのは、やっぱり時代感はあるなと。全部の歌詞が違うとか、あと単純に長いですね(笑)。今のセオリーとしては、Aメロを半分にしたりするのに、そういうことを一切やってない。で、転調もするし、落ちサビもあるし、全部乗せみたいな。でも、1曲の中で起承転結がしっかりあって、歌詞の内容的にもストーリー性があって。そういう曲はつくっていても楽しいんですよね
―続いて、フィロソフィーのダンスに提供した「Love&Loud」についても話を聞かせて下さい。個人的には彼女たちの曲の中でTOP3に入るぐらい好きなんですけど……。
工藤大輝:えっ、嬉しい。ありがとうございます。フィロのス(フィロソフィーのダンスの略称)はインディーズの頃から応援していて、ラジオに来てもらったり、対バンもしたりしていたんですけど、それをもちろんメンバーも知っていたから依頼していただいたんです。で、フィロのスがメジャーデビューするにあたって制作陣の座組も変わったりして、曲のニュアンスが変わったりした時期があって。でも、僕が知った頃は、宮野弦士さんがサウンドプロデュースをされていて、他のアイドルがやらなそうなシティポップやファンクをやる、そのコンセプトが好きだったから、たぶんそのファンはいるだろうなと思って。今のフィロのスも良いけど、昔のあの感じもやってくれないかなっていう、僕と同じ気持ちの人たち。だから、わざとあの頃の「ダンス・ファウンダー」みたいな曲を今つくろうと思って、それで提供した曲が「Love&Loud」なんです。
―フィロのスの状況を完全把握したうえで狙い撃ちしたと。
工藤大輝:そうです(笑)。ちょうどポップな曲とかキャッチーな曲を出しているタイミングだったので、そろそろフィロのスのファンはこういう音楽に飢えているんじゃないかと思って。アレンジも宮野さんの系統の方で、大御所であるCHOKKAKUさんにお願いしたほうが「絶対にみんな納得するだろ!」と思ってお願いしたら、皆さんに良い反応をいただいて「よかったなぁ」って。で、この曲も、ハルちゃん(日向ハル)とかまりりちゃん(奥津まりり)とか歌が巧い子たちがいるから「ちょっと難しいフレーズ入れても大丈夫だろう」みたいなフレーズを詰め込んでいたので、今回、自分の首を絞めた感じはあります(笑)。なので、自分のスキルアップにもなりましたね。
―他にも、kolme、GENIC、FAKYとダンス&ボーカルグループへの提供曲のセルフカバーが本作には多数収録されていますが、自分の好きな音楽をやっている人たちに提供したい想いが強いんでしょうか?
工藤大輝:そうですね。もしくは、僕に委ねていただける人たち。皆さん、僕っぽいニュアンスになるのを欲して頼んでくれていると思っているので。めちゃめちゃポップな曲を頼むんだったら僕じゃないでしょうし。だから、どの提供楽曲に対しても気を遣わずに制作するようにしています。
―工藤さんが楽曲提供して、今回セルフカバーしているラインナップが集結した「工藤大輝フェス」的なライブイベントもやれたら面白いですよね。皆さん、親和性の高いアーティストだと思いますし。
工藤大輝:やりたいんですよ。やりたい気持ちはあります。
―また、本作には、通称:恋ステ。AbemaTV恋愛リアリティーショー『恋する■週末ホームステイ』(■=ハート)から生まれた高校生バンド・Lilacのセルフカバーも3曲ほど収録されています。
工藤大輝:恋ステに関しては、もう8年前ぐらいなんですけど、最初はただMCとして番組に呼ばれたんですよ。で、ひらすらずっと続けていた中で「バンドとかやらせたら面白いんじゃないか」という企画が立ち上がったらしくて、そのときに「工藤さん、曲つくれますか?」と提案されたんです。で、Lilacが結成されたんですけど、一瞬一瞬を切り取る曲をつくったほうが、その子たちが何年後かに聴いてエモーショナルな気持ちになれるんじゃないかと思って。なので、もろにその年代感に合わせてつくりましたし、楽器をやったことがない子たちだったので、アレンジもめちゃめちゃ簡単にしたんです。
―今回、そこから大変身を遂げさせたわけですね。
工藤大輝:そうですね。シンプルなアレンジから今の年代に合ったものへつくり変えました。あとは、今の年齢の僕が思い出を語るみたいな質感で歌わないと情緒が出ないなと思って。なので、僕が若返ってフレッシュに歌うんじゃなくて「そういうこともありましたよね」みたいなニュアンスにしようと。だから、音質でもちょっとノスタルジックな雰囲気をつくったりしました。
―そして、本作『Otowonous』はセルフカバーアルバムでありながら、オリジナルの新曲「SFST」も収録されています。歌詞からして攻撃的な内容になっていますけど、どんなイメージや想いから生み出した曲なんでしょう?
工藤大輝:僕がひとりで歌って踊る映像をつくる為の曲をつくろうと。対外的には「グループのパフォーマー」と見えていた人が急に歌ってセンターで踊って、クリエイティヴもほぼほぼすべて自分でやっているという構図。それを思いっきり出そうと思ったんです。今まではちょっと引いていたというか「知りたい人が見つければいいよね。知ってくれた人が理解してくれればいい」みたいな感じだったんですけど……「どうやらそういう時代じゃないかも」と思って。声高らかに自分で1回発信してみて、全部を受け止めようと。そういう想いで生み出した新曲が「SFST」ですね。なので、歌詞の内容的にも工藤大輝の主張になっていて「俺はこうして生きてきたんだよ」っていうヒップホップ的なアプローチ。結構強めのメッセージを乗せて、それで自分のケツを叩こうかなって。
―ここまで激しく自己主張している楽曲って、もしかしたら初めてなんじゃないですか?
工藤大輝:初かもしれないですね。Da-iCEの5人曲でラップとかチャレンジするときに、それぞれのメンバーに割り振ってそういうアプローチをしたことはあったんですけど、全編通して自分の主張っていうのは、claquepotのほうでもしていないアプローチですね。なので「これぐらい分かりやすく書いたら、どういう反応が来るのかな?」という楽しみ半分でやっているところはあります。僕の背景も見えてくる曲だと思うので、すごく新鮮に感じてくれるんじゃないかな。
―そんな新曲を含むアルバム『Otowonous』へのリアクションも楽しみだと思うんですが、最後に今後ソロでやってみたいことがあったら聞かせて下さい。
工藤大輝:やりたいことは……もう結構やれちゃっているんですよ(笑)。でも、完全にひとりだけでやる弾き語りのツアーとか、将来的にはやってみたいですね。「やれたほうがいいしな」がまだいっぱいあるんで、それをひとつひとつ埋めていきながら歳を取れたらいいなと思ってますね。
<リリース情報>
工藤大輝
Self Cover Album『Otowonous』
2025年6月25日(水)リリース
https://taiki.lnk.to/Otowonous
<ライブ情報>
「Taiki Kudo VS claquepot Two Man Live Tour 2025 Twin Ship」
https://da-ice.jp/schedule/tour.php?id=1002763&fdate=2025-07-09&ldate=2025-07-28
2025年7月9日(水)【大阪】Zepp Namba (OSAKA) 18:00/19:00
2025年7月14日(月)【愛知】Zepp Nagoya 18:00/19:00
2025年7月17日(木)【北海道】Zepp Sapporo 18:00/19:00
2025年7月24日(木)【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
2025年7月28日(月)【東京】Zepp DiverCity (TOKYO) 18:00/19:00
Da-iCE Official HP:https://da-ice.jp
1年半前から構想していたという初のセルフカバーアルバム『Otowonous』では、Da-iCEの楽曲やこれまで数多のアーティストに提供してきた楽曲を再構築し、そのうえで自身の生き様とも言えるメッセージを主張した新曲「SFST」までも誕生させている。そんな今の工藤大輝のモード。ぜひこのインタビュー記事から感じ取ってもらいたい。
【画像】工藤大輝、撮り下ろし写真
―2024年末にDa-iCEにとっての念願の夢だった『紅白歌合戦』初出場を果たしました。実際に出場してどんな気持ちになりましたか?
工藤大輝:出れたのはもちろん嬉しかったですし、いろんなコラボとかもありましたし……本当に激動でしたね。年末っぽい時間割りというか。普通のテレビ出演と違って、本当に朝から晩までずっと現場にいて、ずっと忙しくバタバタしていて。そういうので「あ、本当に紅白決まったんだな」って実感しました。リハーサルも何回も、何日にも分けてやっていたから「これが噂の紅白ですか」という感じになりましたね。ただ、まわりからは「まだ出てなかったんだね」と言われることが多くて(笑)。でも、そういう風に見られていたのは、むしろ嬉しかったです。
―紅白という目標を達成したあとのDa-iCEは、今どんなモードになっているんですかね?
工藤大輝:僕個人的には、1月末に右膝の関節鏡視下半月板縫合術の手術を受けたんですけど、紅白のあとのDa-iCE結成記念日とメジャーデビュー記念日を祝うライブイベント「Da-iCE DAY 2025」までガチガチ全開で駆け抜けて。
そのときにはもうおおよその今後の目処は立っていて、夏フェスの時期ぐらいには戻って来れるだろうと。それまではメンバー各々、僕もそうですけど、いろんなインプットをしてパワーを溜めておきましょう。みたいな雰囲気のムーヴはしていました。
―そういう意味でも、このタイミングでのソロ活動は重要ですね。
工藤大輝:そうですね。膝の手術の件もあったからソロ活動をこのタイミングで始めたと思われているかもしれないんですけど、実は1年半ぐらい前から企画は立てていて。本当に偶然手術と重なった感じだったんですよ。で、ソロの企画を立てた理由は、僕には双子の兄的な存在の(笑)アーティストがいるんですけど。
―存じてます。claquepotですよね。
工藤大輝:最近僕に興味を持っていただいた方々はそっちの活動含めて情報と人物が一致していないところもあって、それを一致させる作業をしてもいいのかなと思っていたんです。Da-iCEが「CITRUS」「スターマイン」「I wonder」のおかげでそれこそ特番も含めて出るところが増えてきて、それに伴ってライトな方がガッ!と増えたんですよ。
昔はほぼコアなファンの方々ばかりだったんですけど、今は曲しか知らなかったり、Da-iCEが5人でやっていることぐらいしか知らない人がめっちゃ増えたから、その方々に一度丁寧に知っていただく作業をここらで1回やってみようと思ったんですよね。
―そして、初のセルフカバーアルバム『Otowonous』をリリースするに至ったわけですね。こうした作品をつくるうえで、Da-iCEで制作してきた楽曲や、様々なアーティストに提供してきた楽曲を振り返ったと思うんですけど、改めて自分の楽曲群に対してどんな印象を持たれましたか?
工藤大輝:大前提として各アーティストさんに向けて書いているので、楽曲の種類はバラバラだなとは思いましたけど、歌詞とかやり方に関しては、自分の中ではわりと一貫性があるなと感じました。だから、自分でセルフカバーしてもとっ散らからなさそうだなって思ったんです。例えば「キャッチーな曲がほしいです」とオーダーを受けたとしても、自分なりにいろんな人に刺さるように比喩表現を使ったりとか。あとは、アーティスト側に立って「普段はこういう曲をやっているから、敢えてこういう曲を歌ってもらいたい」というプロデューサー的な目線で制作することが多かったんですよね。ちなみに、Da-iCEの曲をつくるときも同じような考え方なんですよ。プロの作家さんはそのアーティストのイメージにビタッとハマった曲をつくられる方が多いんですけど、僕はそうじゃなかったので、それが結果的に自分っぽさになっていたんだなと。今回、曲を集めてみて気付きました。
―自分では、いわゆる作家としての工藤大輝をどう評価していますか?
工藤大輝:音楽の学校を出ているわけでもないので、音楽的な理論に詳しいとかそういうことじゃないんですけど、プレイヤー半分、制作半分なので、僕のクセとしては「ライブでどう使われるか」を想定して歌詞を書いたりとか、メロをつくったりとか、音のキメを考えたりするんですよ。僕はどちらかと言うとライブの為に音楽をつくっている。そういう部分を考えられるところが強みなのかなとは思いますね。
―実際、今作『Otowonous』収録曲のオリジナルを歌っている方々は、Da-iCEはもちろんのこと、Nissy、フィロソフィーのダンス、kolme、GENIC、FAKYと歌って踊っている人たちがほとんどで、ライブパフォーマンスありきで音楽を完成させている人たち。なので、今話してくれた工藤さんの属性と相性が良かったんでしょうね。必然性を感じる。
工藤大輝:そうですね。自分がダンス&ボーカルグループで活動しているからこそ、例えば、2サビのあとに空白をつくっておいて、そこをダンスパートにするのか。或いは煽るのか。最初は振りを付けてパフォーマンスするだろうけど、最終的には夏フェスで盛り上がってみんなでタオルをまわす曲になりそうだなとか。ここをセリフっぽくしたら客席から歓声が沸き起こるだろうな、ファンが喜ぶだろうなとか。そういう目線でプラスオンのところを考えながらつくることが多いんですよね。
―あと、こうして工藤大輝の楽曲群をまとめて聴かせてもらうと、ヒップホップとかファンクとかソウルとか根っこにクラブミュージックがしっかり流れている人なんだなと、改めて感じました。あんまりそこの文脈で語られることってないかもしれないですけど。
工藤大輝:そうなんですよ。
クラブで踊っていた時期はめちゃくちゃヒップホップ系でしたし、そもそも学生時代からヒップホップが好きで聴いていたし、自分でやっていた時期もあるんですけど。でも、見た目的にそういう文脈にいなさそうだなと思われるんです(笑)。自分で言うのもアレですけど、最近ヒップホップを知った人よりは、俺はめちゃくちゃ詳しいぞっていう自負もありつつ、年代も年代だから今の子たちよりも「このサンプリング元はコレだぞ」ってすぐに言えるようなディグはしていたから。そういう強みを根っこに持ちながら、それをそのままやるとヒップホップの人になっちゃうんですけど、自分の場合は「J-POPに落とし込めるかどうか」が大事だなと思っていて。だから、僕はラッパーじゃないけど、例えば韻を踏むというカルチャー。それをあまり普段意識していないポップスのリスナーのみなさんに分かってもらえるかを意識しながら書くっていう。

―それも工藤さんならではのアイデンティティですよね。どのトラックも玄人リスナーが例えばクラブで聴いたら「おぉー!」って反応するような内容になっていると思いますし、仮にボーカルレスでも成立する音楽をつくっているなって。
工藤大輝:そう感じていただけたら嬉しいですね。ウチの大野雄大と花村想太は完全にボーカリストで、=アスリートみたいな領域なんですけど、僕は楽曲全体のグルーヴを見るのが好きな人だから、本来はミックスのときに「これはボーカルが前に出ていなくてもいいな」とか思っちゃうタイプなんですよ。あくまでもボーカルは楽器のひとつとして捉えているし、曲によってはボーカルレスでも構わないと思っちゃう。なので、実はインストゥルメンタル側を結構大事にしているところはあるんですよね。
―そんな中で今回のアルバム『Otowonous』は、全編自分のボーカルで表現する作品として制作されたわけですが、実際に挑戦してみていかがでしたか?
工藤大輝:そんなに気負ってはいなかったですね。どなたかに楽曲を提供するときのデモは自分の声なので。そのデモバージョンをバーっと並べて聴いたときに「いけるな」と思ったので、わりとすらすらと進行できました。あとは自分の年齢に合ったアレンジにすることで、高校生のバンド(恋ステバンド「Lilac」)に提供している曲とかもあったんで、そっちに寄せなくても成立するようにしようと。なので、自分の等身大のまま歌えた感じはあります。無理をしていない感じというか。
―大野雄大と花村想太がリードボーカルとして歌ってきたDa-iCEの楽曲たち(「Revolver」「Found it」「スターマイン」)を自分ひとりで歌うという取り組みは、実際にやってみてどんなことを感じたりしましたか?
工藤大輝:自分でつくっておいてなんですけど、あのふたりがクロスオーバーする前提でメロディをつくっているので、ひとりで歌えないんですよ。レコーディングしてみて「これは無理だ」と。なので、ある箇所をコーラス扱いにしたりとか、そういう差し引きみたいなことをしなきゃいかなかったのは、結構大変でしたね。グループにつくっている曲って基本的に歌割りありきでつくっているので、それをひとりで賄うのは大変だなと、実際に歌ってみて思いました(笑)。
―なので、完全に別モノの曲に仕上がっていますよね。どの曲も再構築されているというか。
工藤大輝:完全にそうなるように再構築しました。BPMと楽曲の長さだけは変えていないんですよ。それを変えちゃうとリミックスみたいになっちゃうんで。そのルールを守りつつ、他をどうイジるかみたいな。その中で明らかにムードが変わったDa-iCEのセルフカバーは「スターマイン」。「スターマイン」を作るにあたってアイデアの参考にさせていただいたのが本間さんの手掛けた「サウダージ」や「アゲハ蝶」などのラテン要素のある楽曲だったのでアレンジを本間昭光さんにお願いしたんですけど、結果、Da-iCEのオリジナルとは全然違う曲になりましたね。大人の、自分の年齢に合ったアレンジになったので、この曲のセルフカバーは物凄く面白かったですね。

―リスナーの反応も楽しみですよね。まずDa-iCEファンがどう思うのか。そして、ライト層がどう感じるのか。
工藤大輝:「別もんやん!」ってなると思うんですけど、賛否あって然るべきというか。カバーをやる時点でその覚悟はあったというか。ボーカルに関してもそうだし。でも、気にする領域じゃないなと思っていて。
―この試み自体が面白いですからね。
工藤大輝:そう思っていただけたらいいなって思います。ダンス&ボーカルグループの人が提供曲のセルフカバーアルバムを制作すること自体、あんまり聞かないじゃないですか(笑)。なので、面白がってもらえたらいいなって感じです。
―Da-iCE以外のセルフカバーについても話を伺っていきたいのですが、Nissyさんの「ハプニング」は元々どんな流れで制作することになったのか。そして、セルフカバーしてみてどうだったのか。聞かせて下さい。
工藤大輝:Nissyは仲良くさせていただいている先輩で。これはだいぶ前の曲なんですけど、その当時は、Nissyがまだソロ活動をやり始めた頃で「ソロなんて無理に決まってるじゃん」という風潮があったんですよ。あの方でさえ。それで「曲はどうしたらいいんだろう?」って困っていたから、僕が超ライトなA&R(=レコード会社の音楽制作担当)的なことをして「こういう曲だったら、この人にお願いしたらいい。俺の友達を紹介します」みたいな感じで動いていたんです。その中で「80年代から90年代のシティポップ要素のある楽曲が欲しい」となって、それなら僕が好きなジャンルなので一回作ってみていいいですかって。その曲が「ハプニング」なんです。
―そんな背景と経緯があったんですね。
工藤大輝:で、今回、セルフカバーしてみて感じたのは、やっぱり時代感はあるなと。全部の歌詞が違うとか、あと単純に長いですね(笑)。今のセオリーとしては、Aメロを半分にしたりするのに、そういうことを一切やってない。で、転調もするし、落ちサビもあるし、全部乗せみたいな。でも、1曲の中で起承転結がしっかりあって、歌詞の内容的にもストーリー性があって。そういう曲はつくっていても楽しいんですよね
―続いて、フィロソフィーのダンスに提供した「Love&Loud」についても話を聞かせて下さい。個人的には彼女たちの曲の中でTOP3に入るぐらい好きなんですけど……。
工藤大輝:えっ、嬉しい。ありがとうございます。フィロのス(フィロソフィーのダンスの略称)はインディーズの頃から応援していて、ラジオに来てもらったり、対バンもしたりしていたんですけど、それをもちろんメンバーも知っていたから依頼していただいたんです。で、フィロのスがメジャーデビューするにあたって制作陣の座組も変わったりして、曲のニュアンスが変わったりした時期があって。でも、僕が知った頃は、宮野弦士さんがサウンドプロデュースをされていて、他のアイドルがやらなそうなシティポップやファンクをやる、そのコンセプトが好きだったから、たぶんそのファンはいるだろうなと思って。今のフィロのスも良いけど、昔のあの感じもやってくれないかなっていう、僕と同じ気持ちの人たち。だから、わざとあの頃の「ダンス・ファウンダー」みたいな曲を今つくろうと思って、それで提供した曲が「Love&Loud」なんです。
―フィロのスの状況を完全把握したうえで狙い撃ちしたと。
工藤大輝:そうです(笑)。ちょうどポップな曲とかキャッチーな曲を出しているタイミングだったので、そろそろフィロのスのファンはこういう音楽に飢えているんじゃないかと思って。アレンジも宮野さんの系統の方で、大御所であるCHOKKAKUさんにお願いしたほうが「絶対にみんな納得するだろ!」と思ってお願いしたら、皆さんに良い反応をいただいて「よかったなぁ」って。で、この曲も、ハルちゃん(日向ハル)とかまりりちゃん(奥津まりり)とか歌が巧い子たちがいるから「ちょっと難しいフレーズ入れても大丈夫だろう」みたいなフレーズを詰め込んでいたので、今回、自分の首を絞めた感じはあります(笑)。なので、自分のスキルアップにもなりましたね。
―他にも、kolme、GENIC、FAKYとダンス&ボーカルグループへの提供曲のセルフカバーが本作には多数収録されていますが、自分の好きな音楽をやっている人たちに提供したい想いが強いんでしょうか?
工藤大輝:そうですね。もしくは、僕に委ねていただける人たち。皆さん、僕っぽいニュアンスになるのを欲して頼んでくれていると思っているので。めちゃめちゃポップな曲を頼むんだったら僕じゃないでしょうし。だから、どの提供楽曲に対しても気を遣わずに制作するようにしています。
―工藤さんが楽曲提供して、今回セルフカバーしているラインナップが集結した「工藤大輝フェス」的なライブイベントもやれたら面白いですよね。皆さん、親和性の高いアーティストだと思いますし。
工藤大輝:やりたいんですよ。やりたい気持ちはあります。
―また、本作には、通称:恋ステ。AbemaTV恋愛リアリティーショー『恋する■週末ホームステイ』(■=ハート)から生まれた高校生バンド・Lilacのセルフカバーも3曲ほど収録されています。
工藤大輝:恋ステに関しては、もう8年前ぐらいなんですけど、最初はただMCとして番組に呼ばれたんですよ。で、ひらすらずっと続けていた中で「バンドとかやらせたら面白いんじゃないか」という企画が立ち上がったらしくて、そのときに「工藤さん、曲つくれますか?」と提案されたんです。で、Lilacが結成されたんですけど、一瞬一瞬を切り取る曲をつくったほうが、その子たちが何年後かに聴いてエモーショナルな気持ちになれるんじゃないかと思って。なので、もろにその年代感に合わせてつくりましたし、楽器をやったことがない子たちだったので、アレンジもめちゃめちゃ簡単にしたんです。
―今回、そこから大変身を遂げさせたわけですね。
工藤大輝:そうですね。シンプルなアレンジから今の年代に合ったものへつくり変えました。あとは、今の年齢の僕が思い出を語るみたいな質感で歌わないと情緒が出ないなと思って。なので、僕が若返ってフレッシュに歌うんじゃなくて「そういうこともありましたよね」みたいなニュアンスにしようと。だから、音質でもちょっとノスタルジックな雰囲気をつくったりしました。

―そして、本作『Otowonous』はセルフカバーアルバムでありながら、オリジナルの新曲「SFST」も収録されています。歌詞からして攻撃的な内容になっていますけど、どんなイメージや想いから生み出した曲なんでしょう?
工藤大輝:僕がひとりで歌って踊る映像をつくる為の曲をつくろうと。対外的には「グループのパフォーマー」と見えていた人が急に歌ってセンターで踊って、クリエイティヴもほぼほぼすべて自分でやっているという構図。それを思いっきり出そうと思ったんです。今まではちょっと引いていたというか「知りたい人が見つければいいよね。知ってくれた人が理解してくれればいい」みたいな感じだったんですけど……「どうやらそういう時代じゃないかも」と思って。声高らかに自分で1回発信してみて、全部を受け止めようと。そういう想いで生み出した新曲が「SFST」ですね。なので、歌詞の内容的にも工藤大輝の主張になっていて「俺はこうして生きてきたんだよ」っていうヒップホップ的なアプローチ。結構強めのメッセージを乗せて、それで自分のケツを叩こうかなって。
―ここまで激しく自己主張している楽曲って、もしかしたら初めてなんじゃないですか?
工藤大輝:初かもしれないですね。Da-iCEの5人曲でラップとかチャレンジするときに、それぞれのメンバーに割り振ってそういうアプローチをしたことはあったんですけど、全編通して自分の主張っていうのは、claquepotのほうでもしていないアプローチですね。なので「これぐらい分かりやすく書いたら、どういう反応が来るのかな?」という楽しみ半分でやっているところはあります。僕の背景も見えてくる曲だと思うので、すごく新鮮に感じてくれるんじゃないかな。
―そんな新曲を含むアルバム『Otowonous』へのリアクションも楽しみだと思うんですが、最後に今後ソロでやってみたいことがあったら聞かせて下さい。
工藤大輝:やりたいことは……もう結構やれちゃっているんですよ(笑)。でも、完全にひとりだけでやる弾き語りのツアーとか、将来的にはやってみたいですね。「やれたほうがいいしな」がまだいっぱいあるんで、それをひとつひとつ埋めていきながら歳を取れたらいいなと思ってますね。
<リリース情報>
工藤大輝
Self Cover Album『Otowonous』
2025年6月25日(水)リリース
https://taiki.lnk.to/Otowonous
<ライブ情報>
「Taiki Kudo VS claquepot Two Man Live Tour 2025 Twin Ship」
https://da-ice.jp/schedule/tour.php?id=1002763&fdate=2025-07-09&ldate=2025-07-28
2025年7月9日(水)【大阪】Zepp Namba (OSAKA) 18:00/19:00
2025年7月14日(月)【愛知】Zepp Nagoya 18:00/19:00
2025年7月17日(木)【北海道】Zepp Sapporo 18:00/19:00
2025年7月24日(木)【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
2025年7月28日(月)【東京】Zepp DiverCity (TOKYO) 18:00/19:00
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