セックス・ピストルズがそうであったように、パンクは反体制的な音楽でありながら、もっと曖昧な「ああすべき」「こうすべき」と迫るすべての抑圧的な声に対する抵抗の音楽でもある。つまり、そこにはある種の未熟さ、幼稚さ、向こう見ずなフィーリングが宿っていると言ってもいい(おそらくトランプ大統領の支持者の多くは彼に近しい魅力を感じているだろう)。
そして、ほとんど何もかもが記号化したこの時代、多くのパンクバンドがその若さ(ここではあえてそう呼ぼう)を自らデザインしているように思える。

そんな時代にあって、トロントのPUPというパンクバンドは、10年以上激しいポップパンクサウンドに、パンクバンドらしからぬ頭でっかちさでもって綴られた──自らを笑い飛ばすような皮肉や風刺の効いた歌詞を乗せてきた。その異端児っぷりはバンドを企業に喩えた前作『THE UNRAVELING OF PUPTHEBAND』を聴いても明らかだろう。

PUPはそういったスタイルを貫き、同じくカナダの世界的バンドであるSum 41のラストツアーに出演するなど着実にキャリアを重ね、5作目となる新作『Who Will Look After The Dogs?』をリリース。この新作でも、彼らはパンクの持つ若さゆえの魅力に甘えていない。いや、むしろ年齢を重ねることの美しさを表現しているようですらある。それも、これまでで最も洗練されたサウンドを聴かせた前作とは大きく異なる、まるでバンドの初期を思わせるローファイな、ときに不完全にも感じるサウンドと共に、である。彼らはどのようにしてそんなアンビバレントな魅力を手にできたのか、フロントマンでありソングライターでもあるステファン・バブコックにその裏側をたっぷりと語ってもらった。

孤独に曲を書き続けた

ー前作『THE UNRAVELING OF PUPTHEBAND』を発表した数日後に「Hallways」の歌詞を書いたと伺いました。つまり前作発表の直後から新作のビジョンが見えていたということでしょうか?

ステファン:いや、まったく(笑)。『THE UNRAVELING OF PUPTHEBAND』がリリースされた週は、僕の人生で大きな変化があった週でもあったんだ。10年付き合った人と別れてしまってね。
たくさんのことが変わったんだ。「Hallways」の歌詞を書いた時は次作のことなんて考えもしていなかった。ただ何とか自分の感情を整理しようとしていたんだよね。頭がぶっ壊れて、次のアルバムを作る能力すら失ってしまったような気がしたんだ。それから3年も掛かったけど、アルバムの曲を書くプロセスが長かったのは自分にとって良かったと思う。曲を書いているうちに十分に時間が経って”失恋アルバム”にならずに済んだ。そのことに今は感謝しているよ。全体像を見る目ができたし、ユーモアを交えた曲を書くことができたんだ。

ーたしかに”失恋アルバム”ではありませんね。では心が折れてしまった状態からどのように新作へと向かう心境になっていったのでしょう?

ステファン:実は曲を書くことそのものが克服のメカニズムだったんだ。何とかベストな形で説明したいんだけど......。

まず、PUPの4人は大親友同士で、お互い強い愛情を持っている。
でも一緒に曲を作るときは、友人でいることがストップしてしまう(苦笑)。愛とリスペクトがなくなるからじゃないよ? 終日密なスペースで顔を合わせているから、お互いキーッとなって喧嘩してしまうんだ。終わった後で飲みやディナーに行ったりなんてあり得ない。

で、さっきも言ったように今回は初めて僕にパートナーがいない状態で曲を書いていて。通常僕が曲を書くときは大親友の3人はどこかに行って彼女に全力投球するんだけど、今回はその相手がいなかったからほとんど隔離された状態だった。それによって孤独になり、気持ちを整理するためのスペースができたからこそ、ソングライティングに安らぎを見いだせるようになった。安らぎだけじゃなく、喜びやユーモア、笑うこともね。曲を書きながら自分を笑い飛ばしたりしてさ。そんなワケで、その1年は友だちにもほとんど会わなかったしパートナーもいなかったから、ソングライティングにフォーカスできたんだ。その1年でそれまでの人生で書いたよりもたくさんの曲を書いたよ。最終的にはとてもポジティブな結果になったってことだね。

ーたくさん曲を書くことができたのは、何か別の要因もありましたか?

ステファン:長い時間を孤独に過ごしたこと以外だと、他人と曲を書くようになったことも大きい。
別のポッププロジェクトで、自分が歌わないものだね。それがきっかけでソングライターのコミュニティと関係ができて、他の人たちの仕事のやり方が見えるようになった。プロフェッショナルなソングライターたちは、僕なんかよりずっと仕事が速い。それに僕ほど曲の良し悪しを断定しない。普段僕が曲を書くときは「この曲はクソだ」なんて思いながらやっているんだけど(笑)、彼らから学んだんだ。「クソかもしれないけど、それは大したことじゃない。とにかく書き続けろ」ってね。

そういった経験から今回は30曲書くことができて、その中から12曲を選ぶ形になった。以前は10~12曲書いたら全部アルバムに入れていたからすべてパーフェクトに仕上げなければいけないというプレッシャーがあったけど、その曲が「アルバムに入らなくてもいい」とわかっている状態だと、より自由に、良い曲が作れると知ったんだ。他のメンバーも、もっと自由に実験したり、境界線を押し広げたりできるようになったと言っていたよ。今回は新しいことを試したり、うまくいかなかったら曲を手放したりしながら、自分たちにとって心からベストに思えるものにフォーカスできたんだ。

ー他のメンバーも私生活で変化があったと伺いました。
ギタリストのスティーヴ・スラドコウスキーは結婚し、ベーシストのネスター・チュマックは父親に、ドラマーのザック・ミクラは新たな住まいへと移り、自宅スタジオを拡張したそうですね。何か影響はありましたか?

ステファン:特にベースのネスターは、父親になったことによって、物事を大局的な視点で見ることができるようになったんじゃないかな。バンドメンバーなんて取るに足らない存在だってね(笑)。そりゃあ僕らは音楽を大切に思っているけど......アイツの気持ちになって言うと、やっぱり子どもができたら何よりも大切な存在になるワケで。そのことが、実は曲にすごくポジティブな影響をもたらしているんだ。というのも、僕たち4人はすごく神経質で、クリエイティブ面での違いが生じるたびに、「もうこの世の終わりなんじゃないか」って気になってしまっていて。でもそこに大局的な視点を持ってくると、もしかしたら自分たちが思っているほど深刻な問題じゃないのかもと思えるし、すべての曲に全部詰め込まなくたっていいんだと思えるようになる。とにかく試してみようってね。おかげで全員以前よりずっとハッピーになれたし、一緒にやりやすくなって、プロセスもずっと楽しいものになったよ。

音楽にマジックを宿す方法

ーメンバー間の関係性も良好だったんですね。新曲をバンドで作り上げていくスタジオセッションで印象的だった出来事などはありますか?

ステファン:たくさんあるな。例えば新作に収録した「Hunger For Death」という曲は、2年くらい取り組んでいたんだけど、全然良くならなくて。
過去に何度も揉めて、もうアルバムに入れるのはやめようとなった曲でね。他にも曲はあったから、「捨てちまえ」ってね。ところがアルバム作りの最後の日、というかアルバムはもう完成していたんだけど、1日だけスタジオを押さえていた日が余っていて。それで「他にどんな曲があったっけ?」と、この曲を引っ張り出したんだ。もうアルバムはできていたから、アルバムに入れるか入れないかは関係なかったし、もう諦めた後だったから、1日でレコーディングした。すごく自由な気持ちで、全面的に手を入れたんだ。そうしたら、僕たちの曲の中でも特にスペシャルな部類に入るものになった。2年間もかかってできないものもあれば、1日でできてしまうものもあるんだね。その1日が大きな変化をもたらしたんだ。

ラストの曲「Shut Up」でも似たようなことが起こってね。あの曲の大半は僕が歌ってプレイしているんだけど、アウトロではバンド全員でプレイしたいと考えた。でもあれこれやってみても、どうにもしっくりこなかったんだよね。
そんなときにプロデューサーのジョン・コングルトンが「今までやってきたものを一旦全部忘れて、とにかく何かプレイしてごらん」と言ってくれて。その場でアウトロを全員一緒にプレイしてみたら......うまく説明できないけど、とにかくうまくいったんだ。メンバーが何をやろうとしているか誰もわかっていなかったから、お互いの音に耳を傾けて、集中してね。この曲のアウトロは終盤20~30秒くらいあるんだけど、そこに残っているテイクが唯一その部分をプレイした際のものだよ。1回プレイしてみて手応えが良かったから僕は「じゃあもう一度やってみようよ!」なんて言ったんだけど、ジョン・コングルトンが「ノーだ」って。

ーえ?

ステファン:今のでオーケーということだったんだ。「今のマジックはもう二度と得られない。初めて何かをプレイするときのマジックだ。2回やったら2回目の方が上手にできるかもしれないけど、マジックが失われてしまう」ってね。今振り返っても、そうして良かったと思うよ。おかげでアルバムのラストはすごくスペシャルなものになった。

ージョン・コングルトンはセイント・ヴィンセントやマネキン・プッシーなど、様々なスタイルのアーティストを手掛けてきたプロデューサーですよね。

ステファン:ジョンはスピーディーに仕事するのが好きなんだよね。彼の価値観は僕たちにすごく訴えかけるものがあった。さっきも話に出てきたけど、「良いバイブスなら、それで決まりだ」というね。彼は何に対してもそうで、例えば僕のギターのトーンに関しても、ちょっと弾いてみて「どう?」と訊くと、「いいね。録音しよう」と即決なんだ。「別のアンプを試さなくてもいいの?」と訊くと、「ノー。なんでだ?いい音じゃないか」って。わざわざ粗探しをしないんだよ。以前の作品で、僕たちはいつも間違いを探してばかりいたけど、「何が間違っているかだって?良い感じなら、そもそもどうしてそんな疑問を抱くんだ?」と言われたよ。彼はそういう考え方を僕たちにもたらしてくれたんだ。

それから、プロデューサーの一番大事な仕事の一つは、プロセスを楽しくすること。ジョンは僕たちとユーモアのセンスがまったく同じでね。すごくダークで、寒くて、虚無的なんだ(笑)。初めて会ったときから、すごく深いところでコネクトできたよ。おかげでお互い一緒にいて心から楽しめたから、今回のアルバムは、僕たちが笑ったり楽しんだりしているのが伝わってくる曲が多いと思う。それは彼がその要素をもたらしてくれたからなんだ。10年も4人でバンドをやっていると苦しいときもあるというか、緊迫した雰囲気にもなる。そこに5人目として彼がいることで空気が新鮮になって、お互いのありがたみも、より感じられるようになったんだ。

パンクに若さは必要か? Sum 41のラストツアーにも出演したPUPが最新作で見せつける、美しき成熟

Photo by Vanessa Heins

ー新作のサウンドにはローファイさと、ある種の魅力的な不完全さ、それに伴ったスリリングな感覚が宿っているように感じました。ジョンを起用した意図とも繋がっているかもしれませんが、どうしてこのようなサウンドを選んだのでしょう?

ステファン:さっきも話したけど、僕たちは全員すごく神経質なんだ。そのせいで僕たちは過去にマジックを失ってきたような気がしていたんだ。

初めて曲をプレイするとき、良い曲だったらマジックを感じる。でもそこから洗練された曲にしようと少しずつ削っていくと、マジックが消え始めてしまう。僕たちはあまりに多くの作品でそれをやってしまった。元のものから削って削って削りまくって、スタジオに着いた頃には、そのマジックを再発見するにはどうしたらいいか、そこから考えないといけない。でも今回はそうしたくなかったから、マジックを感じたら即録音しようって決めていたんだ。オーバーダブしたくなかったし、以前みたいにギターだけで20~30トラック録るようなマネもしたくなかった。自分たち4人が1つの部屋でプレイしているような音にしたかったのさ。

つまり、僕たちがこの作品で全体的にフォーカスしたのは、パーフェクトなプレイではなく、正しいバイブスを手に入れること。しくじったやつがいても問題ない。全員でプレイして気分の良いテイクを収めていったんだよ。

ーこのような魅力的な不完全さの宿ったサウンドに影響を与えたレコードはありますか?

ステファン:ぱっと思いつくのが、今はもうないけど、カナダのザ・ウィーカーザンズ(The Weakerthans)という素晴らしいバンド。タイタス・アンドロニカス(Titus Andronicus)もそうだね。彼らを特にレファレンスにしてはいないけど、素晴らしい曲を作ったりいいライブをすることによりフォーカスしていたバンドの前例としてね。ビルト・トゥ・スピルもそうだよ。僕の好きなバンドの一つなんだ。彼らの初期の数作はクソみたいな音なんだけど(笑)、でもすごく僕好みなクソなんだ。魅力的というか、キャラクターがある。パーフェクトにやることばかり気にしていたら作れない音だと思うよ。

パンクバンドの理想的な成熟

ー歌詞についても訊かせてください。あなたの書く歌詞はこれまでも皮肉や風刺の効いたもので、新作の「Hallways」にも別れの悲しみに暮れながらもアルバムタイトルにもなっている現実的な、そして少し笑えるフレーズがあったりします。成熟を感じるポイントでもあるのですが、まずは作詞において意識している点について教えてください。

ステファン:興味深い質問だね。曲と歌詞については哲学があるんだ。僕はかなりダークな人間でメンタルヘルスの問題も抱えている。ダークでリアルなノンフィクションの歌詞を書くのが好きだ。でも、悲しいことやひどいことを歌っていても、音楽には何らかの喜びがあるべきだと思うんだよね。で、僕は本当にダークな状態で歌詞を書いていたけれど、書いたところで僕自身が気が楽になったり、良い気持ちになれなければ、書く意味がない。

エモーショナルでダークでありながら見返りの要素がある曲を書くためには、離れたところからその事柄を俯瞰して書く必要がある。その状態から自分が立ち直った状態をシミュレーションして書くんだ。そうするとユーモアのセンスを使いながらその状態を見ることができるし、笑い飛ばすこともできる。ここに収録されている曲の多くは、「僕ってなんて馬鹿なんだろう」って自分を笑い飛ばしているんだ。どん底まで落ちているときはそうすることが難しいし、ユーモアを使って自分を笑い飛ばす余裕なんかない。でもその状態から脱した後で振り返ってみると「あれってイカレてたのか」と気づいたりする。

言ってくれたように、タイトルの『Who Will Look After The Dogs?』(誰が犬の面倒を見るんだ?)は「Hallways」の歌詞からきていて、「まだ死ぬわけにはいかない。誰が犬の面倒を見るんだ?」と歌っている。すごくダークで苦しんでいて悲しいけど、そんな思いをしなくなった状態の視点からも書いているんだ。「何てばかげた考えなんだろう。自殺するのを踏みとどまる唯一の理由が犬だって?」みたいにね。そうやって僕は「人生最悪の時期を振り返る」視点から、何て馬鹿げたことを考えていたんだろう、と笑い飛ばす歌詞を書くのが好きなんだ。

ーなるほど。歌詞を書きながら、自分が悲しみを乗り越えた状態を思い描いていたんですね。特にアルバムの後半には希望も感じます。曲順も意識していましたか?

ステファン:全員に向いているやり方じゃないかもしれないけど、僕は曲を書いているとき、それぞれの曲を個別に考えていて、他のことを一切考えない。アルバムとしてどう作用するかもね。だから、全部の曲が出来上がって聴いてみたときに一定の流れがあることに気がついたんだ。最初はすごく未熟で些細で馬鹿なものから始まって......。

ー「No Hope」ですもんね。

ステファン:その通り(笑)。「No Hope」は、18歳の僕の視点から書いているんだ。曲を追うごとに…中盤の曲は26歳の僕の視点から書いていて、最後の数曲は(曲を書き終える)1、2ヶ月前の自分の視点から書いている。線的なアーク(物語の横糸)があるのは間違いないよ。

ーまさにその辺りを訊こうと思っていました。というのも、この新作にはパンクスが成熟していくことの美しさがあるように感じたんですよね。

ステファン:最高の褒め言葉をありがとう。すごく嬉しいよ。僕は今までたくさんのパンクバンドを見てきたけど、歳を重ねていても22歳でいることについて書いているバンドって多いんだよね(笑)。そういうバンドも素晴らしいけれど、過去にしがみついているようにも見える。僕はそうはなりたくない。37歳なのに22歳のフリをするのは嫌なんだ。きっとグリーン・デイくらい成功したらそんなの関係ないだろうけどね。

ーただ一方で、歴史的にパンクは若さに一定の価値を置いたジャンルの一つでもあるという......。

ステファン:そうかもしれない。でも僕にはかねてから感じていることがあって。例えばジョニー・キャッシュがキャリアをリスタートさせたとき、彼は20歳や30歳のときに書いたカントリー・ソングを踏襲しようとはしなかった。年老いた男でいることについての曲を書こうとしたんだ。それがすごくしっくりきたんだよね。大半の人はそんな曲は書かないから。大抵の人は若者であることの曲を書いた後は別のことを書く。でも彼は歳を重ねて苦しむことや、それをどう思うかについて書いていて、すごく説得力があったんだ。僕は50歳になったパンクバンドが、50歳になったらどう感じるかを歌っているのを聴きたい。その人生すべてを、若いやつらに見せつけてほしいんだ。そうなったら興味深いよね。僕は曲を書き続ける限りそうしていこうと思うよ。クレイジーな18歳に戻るつもりはないんだ(笑)。今の僕はどう感じているのか、それについてずっと書いていきたい。

ーあなた方はSum 41の最後のツアーにGobと共に出演しました。同じカナダ出身の世界的な2つのパンクバンドの先達から学ぶことはありましたか? 今話してくださったこととは関係があるんでしょうか?

ステファン:ほら、Sum 41はすごく長期にわたって成功してきたキャリアがあるから、あのレベルになるとまた状況が違ってくると思うよ。彼らはパンクをやって、成功して、それから悪い意味じゃなく、むしろ素晴らしい意味でパンクよりずっと幅広いオーディエンスに受け入れられている。だから僕たちとは違う音楽的空間に存在しているんだと思う。それもあって、彼らのキャリアの締めくくりを目の当たりにできたのはとても興味深い出来事だった。30年間にどれほど多くのことを成し遂げてきたかも見られたからね。様々な面で大成功を収めてきた姿を見て、とても大きなインスピレーションになったよ。

と言いつつ、僕はそういう状態を目指しているワケじゃない。僕は今のバンドの状態で十分幸せなんだ。僕らは超成功しているバンドではないけど、ここまでやってこられたことがひたすら幸せだし、これ以上を求めることはない。このバンドを12年間フルタイムでやれて、全員音楽で食っていけている。それはとてもラッキーなことだと思っているし、心から感謝しているよ。僕の夢は、この先12年間もこうやっていることなんだ。もちろん新しい経験は求めている。例えば日本に行ってみたいとかね。

ーあなた方はカナダのパンクシーンで実りあるキャリアを築き、すでにベテランに近い存在かと思います。最後に、あなたの目から見て、現在のトロントのパンクシーンはどのように映っているのか教えてください。

ステファン:トロントはパンクバンドにとてもいい場所なんだ。でもカナダにあるからか、見過ごされてしまうことが多い。カナダのパンクバンドは例えばアメリカをツアーしてどんどん大きくなっていくような大きな機会が与えられることがないというかね。でもトロントにはいつだって素晴らしいバンドがたくさんいる。今だったら、The OBGMsはファンタスティックなバンドだね。あとChastityという、もっとエモに近いんだけど、パンクっぽいエッジも利いた素晴らしいバンドもいる。Wine Lipsというバンドも大好きだし、ニューメタルのバンドでClockwise(スウェーデンにも同名のバンドがいるので注意)というすごいのもいる。トロントではいろんなことが起こっているよ。このコミュニティの誰かが国境を飛び越えて、カナダ以外のところで、僕たちのコミュニティの素晴らしさを広めていけるといいなと思っているんだ。ちなみに、僕らはカナダ以外でもブレイクスルーできたバンドの一つとして誇りを持っている。僕たちが駆け出しの頃尊敬していたファックト・アップ(Fucked Up)やメッツ(Metz)、あとSum 41も、トロントのパンク・コミュニティからもっと広いところにブレイクスルーしていったバンドなんだ。

パンクに若さは必要か? Sum 41のラストツアーにも出演したPUPが最新作で見せつける、美しき成熟

PUP
『Who Will Look After The Dogs?』
発売中

再生:
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購入:https://store.puptheband.com/
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