看板ドラマーだったロブ・ターナーの脱退を乗り越え、ムラトゥ・アスタトゥケなどと共演経験があるジョン・スコットが加入。2023年に『Everything Is Going To Be OK』で再出発した、マンチェスター出身の人気トリオ、ゴーゴー・ペンギン(GoGo Penguin)。
同作リリース後のツアーを経てバンドの結束力が増してきたタイミングで、新作『Necessary Fictions』が完成した。続くインタビューは今年3月の来日時に、対面で行なったものだ。

加入当初はやや遠慮がちに見える場面もあったジョン・スコットだったが、3月にビルボードライブで観た時は力みがすっかり消えて、アブストラクト・ヒップホップ育ちのビート感を存分に発揮。ジョンのフィーリングが、『Necessary Fictions』の方向性にも影響を及ぼしたことは間違いないだろう。メンバー個人の悲しい体験が影を落としていた『Everything Is Going To Be OK』とは空気がガラッと変わり、ダンサブルなゴーゴー・ペンギンが戻ってきた!と喧伝したくなる開放的なムードがアルバムに横溢。初めて”歌もの”にチャレンジしていることにも驚かされる。

前作のリリース後、彼らは何を考え、どこへ向かおうとしたのか。アルバムのキートラックに関する質問を中心に、3人にたっぷり語ってもらった。

ゴーゴー・ペンギンが語る開放的な新章「バンドの結びつきは、今が一番強固だと思う」

左から時計回り:ジョン・スコット(Dr) 、クリス・イリングワース(P)、ニック・ブラッカ(Ba)Photo by Mark Gregson

互いに「共感」しながら踊れるアルバムに

─『Necessary Fictions』(必要なフィクション)というアルバムのタイトルからして興味深いです。事前にニックからもらったコメントによると、「幼少期に身につけた仮面を外して、自分たちが何者であるかに向き合う」という意図で、このタイトルを思いついたそうですが。そういう心境に達するきっかけが、何かあったんでしょうか?

ニック・ブラッカ(Ba):実のところ、僕らが年を取ってきたせいだと思う。若い頃は特定のグループに属したり、何かの一部になりたいと期待することがたくさんあると思う。
でも年を取るにつれて、そういったことを再検証し始め、何が役に立ち、何が役に立たないのかを考え始める。自分がずっと抱いてきた特定の信念のようなものを再検証し、人生を別のレンズを通して見るようになる時期が、誰でも来ると思うんだ。自分が社会や親からの期待を課せられていた頃の古いレンズを持っていたところで、あまり役に立たなかったりする。つまりこのタイトル──必要なフィクション、というのは、自分自身に正直になろうとすること、より独自性を持った人間になることへの恐れを表しているんだ。

「What We Are and What We Are Meant To Be」という曲があるけど、これはまさにそんな感じ。4枚前のアルバムだったら、こんな曲を書くのは少し怖かったと思う。変なジャズ・バンドだと思われるのが心配だったから(笑)。即興演奏のない、ただのエレクトロニックな音楽を僕らが演奏してもいいだろうか、と躊躇したと思うんだ。今は自分たちの意見やアイデンティティを強く持って、「人がどう思おうと、僕らはこうしたいんだ」って思えるようになったけど、それも僕らが年齢を重ねてきた結果じゃないかな。

─アルバムは1曲目の「Umbra」が始まった瞬間から、今の3人の呼吸がピッタリ合っていて、まるでひとつの生命体のように躍動しているのが伝わってきます。ジョンが加入してからずっとライブを重ねてきたことで、3人が完璧にシンクロナイズする方法を会得したのでは?

クリス・イリングワース(P):うん、それはとても高い目標で、僕らにとってのゴールだね(笑)。パフォーマンスでも作曲でも、過去に達成しようとしてきたことにかなり近づいてきたと思う。
今はグループとして曲を書いて、お互いの細かい要素がうまく溶け合う方法をすごく意識しているんだ。

「Umbra」の頭のベースラインはStregaというシンセサイザーを通していて、それは最初に思い描いた曲のスケッチにあった。最終的には、どの楽器がどの音を鳴らしているのか全く分からず、音の組み合わせ次第で新しい音が生まれるような、そういうものを目指したよ。

僕らは皆エレクトロニック・ミュージックに興味を持っているけれど、僕にはクラシック音楽のバックグラウンドがある。僕らはしばしば、クラシックの作曲家がオーケストラを使って、伝統的な音を重ねることで新しい音を作ろうとすることについて話してきた。そうやって、あらゆるピースを組み合わせ、完璧なサウンドを作り上げることができるんじゃないか、とね。今の僕らは、お互いの考え方を取り入れ、お互いの演奏を聴き合う……「共感」という言葉がしっくりきそうな状態なんだ。互いに共感しながら演奏したり、相手の演奏を聴いたりしている。支配的になったりすることなく、お互いを支え合い、それぞれの居場所を見つけようとしているんだ。バンドとしての結びつきは、今が一番強固だと思う。

─前作『Everything Is Going To Be OK』はパーソナルな要素が強いアルバムでしたけど、新作はもっとオープンマインドで、思わず体を動かしたくなるようなリズムとビートに満ちていますね。中でも「Fallowfield Loops」は、あなたたちがマンチェスターのバンドであることを思い出させてくれます。


ニック:前作はちょっと異例な感じで、僕らが大きな転換期を迎えた頃の作品だからね。個人的な喪失や苦悩を体験したのと同時に、コロナ禍があったし、ドラマーのロブ・ターナーが脱退してバンドとしても大きな変化を経験した。僕らにとって、とても難しい時期だったよ。でもジョンが加入してから、すべてが新しい道を歩み始めた。新作にはたくさんのポジティブさと温かさがあるね。前作は個人的にも本当にきつい時期だったので、音楽に没頭せずにはいられなかった。基本的に、パーソナルな面を作品に出したいタイプではないんだけど、あのときはそれが避けられない感じだったよ。ああいうアルバムを作ることは、多分もう二度とないと思う。

クリス:僕らがそのときに経験していることを音楽で表現しようとしているという意味では、新作も例外ではなく、毎回同じとも言えるけど。前作はスタジオに入る時間が、まるで避難所や隠れ場所に入るような気持ちでレコ―ディングに臨んでいた。でも今回は、もっと演奏する時間を楽しむ感じだったね。スタジオに行って楽しもう、今日もいろいろ試してみよう……そんな前向きな気分が表れていると思うよ。


ジョン・スコット(Dr):結構前から、「次のアルバムはもっと踊れる感じにしよう」って話していたんだ。曲作りを始める前の時点から、そのアイディアはどんどん膨らんでいた。

バンド史上初の「歌もの」、坂本龍一への共感

─初めてボーカリストを迎えた曲「Forgive The Damages」に、ダウディ・マツィコが起用されたのはうれしい驚きでした。去年あなたたちが公開したプレイリスト「Stockport to Shanghai」でも彼の曲を選んでいましたよね。彼とはどんな風に交流が始まって、今回のコラボに到ったのですか?

ニック:僕らのマネージャーが手がけているもうひとつのバンド、ポルティコ・カルテットのツアーでダウディがサポートアクトを務めていて、たちまち魅了された。彼は人としてとても良いエナジーの持ち主で、本当に素敵な人物なんだ。一度知り合ったら彼を好きにならないなんて無理な話だよ。彼の音楽はとても内省的で、かなりダークなところがあるけれど、実際に会うと、いつも笑顔で幸せそうなんだ(笑)。

クリス:ダウディとは知り合った頃から「コラボレーションして何か作りたいね」って何年も話していたんだけど、なかなかそのチャンスがなかった。この曲はもともとニックが持っていたアイディアから始めたんだ。フィールドレコーディングを試したいと思って友達や家族の声、バックグラウンドノイズとかを録音して、それはそれで面白かったけど何かが違うなと思った。次にスポークンワードのアイディアを試したけど、これもうまくいかなかった。
そしてダウディが参加する頃には、もうトラックが出来上がっていたので、非常に迅速に進んだよ。彼はこの曲のコンセプトも、アルバム全体の背後にあるコンセプトも、本当によく理解してくれていた。彼はとても繊細な性格でエモーショナルな人だから、そういうところでも僕らと波長が合ったよ。

─本当に歌詞も素晴らしいし、後半で盛り上げていくダウディのボーカルも素晴らしいですね。スタジオで彼の歌声を聴いていて鳥肌が立ちませんでしたか?

クリス:うん、何度か(笑)。

ニック: 僕は「ああ、何か引き立つものが必要だな。舞い上がるような感じのボーカルはできるかな?」と思って、そういう要望を彼に伝えたんだけど。それで結局、彼はあれを持って帰ってきたってわけ。美しかったね。

─「Background Hiss Reminds Me Of Rain」は、生楽器と電子音の間を自由に行き来し、電子音で人間らしさを、生楽器でエレクトロニックな感じを表現できてしまうあなた方の特徴がよく表れた小曲でした。生楽器と電子音の違いを曖昧にしたり、両者の役割を入れ替えたりできるところは、最近のゴーゴー・ペンギンならではの個性ですよね。

クリス:多分、徐々に成熟してきた結果、こういう表現にも自信が持てるようになってきているんだと思う。
今回みんなで坂本龍一の展覧会に行って、感銘を受けた。彼がキャリアを通して音楽的にどのように進化していったのかがわかったし、彼が『async』で取り組んだような作品に、僕らも自信を持って取り組みたいと思ったよ。そして、それを実行するためのスキルを持つことも大事だと思う。今はまだ新しいことを学び、実験して、いろいろ試している段階だけど、自信を持ってやれていることを願うよ。あの曲は、最初にシンセをスマホで録ったんだ。「こんなので大丈夫? 使えるかな?」なんて心配することもなくね。

ニック:そこがあの曲の好きなところなんだ。スマホだから良い音質じゃないし、指の音とか雑音も入っちゃってるけど、シンセサイザーであんな音は作れない。意図的にそうしようと思って録音したわけじゃないけれど、オーガニックな響きがあるよね。

クリス:あの曲では雨の音みたいなヒスノイズを入れようと、エンジニアのジョー・ライザーとブレンダン・ウィリアムスが知恵を絞ってくれた。ジョーは僕のモジュラーシンセから出るバックグラウンドノイズみたいな音に着目して、それをマイクで拾って、うんとブーストしてから、こういうエフェクトを作ったんだ。つまり、エレクトロニックがアコースティックになり、さらにエレクトロニックになって……境界線が曖昧になる。すごく美しいタッチだった。君がそれに気づいてくれたみたいでうれしいよ。

ゴーゴー・ペンギンによるMixtapeプレイリストにも、坂本龍一『async』の曲がセレクトされている

─今回は曲と曲の間に挟まれた短い曲も印象に残ります。「Living Bricks In Dead Mortar」はシンセベースの生み出す空気が徐々に陰影を増していく感じで、スリリングですね。

ニック:ジョンは当時ロンドンにいたので、最初は僕とクリスの2人でジャムってこの曲を作り始めた。ベースのフレーズが先にあって、ジャズっぽいジェントルな空間が出来上がっていった感じだね。そこにジョンのドラムが入って、期待した通りインパクトのあるサウンドになったよ。

─もうひとつの短い曲、「Float (Loi Krathong, 2003)」は、ニックがタイのバンコクで見た、灯篭を流すお祭りのイメージから生まれたそうですね。

ニック:僕はずっと前にタイに住んでいたから、そのときの情景が頭の中にあったんだ。あまり深く考えてないというか、そんなにノスタルジックな心境ではないけどね。あのお祭りはいつも、僕に大きな影響を与えてきたよ。

─タイにはどれくらい滞在して、何をしていたんですか?

ニック:1年間いた。大学を卒業後にあちこち旅をしていて、タイの学校では数カ月間、英語を教えていたよ。ダブルベースも持って行ったから、たくさん練習して、友達と一緒にジャズをプレイしたりしていた。まだひよっこの頃で、今の僕とはまったく違う時代だ(笑)。そんな時期を経てイギリスに戻ってから、ミュージシャンになる道へ進んだんだよ。

─なるほど、そんな時期があったんですね。「The Turn Within」という曲は、それまで必要だったペルソナを取り去って大人へと成長していく過程を示した、アルバムの主題を扱っている曲なのかな、と感じました。中間部から構成がガラッと変わる感じも、そういうテーマと寄り添っているように聞こえます。

ニック:そうだね、途中でアルバムのテーマとすごく合致する感じがある。強い子供ができたね(笑)。3つの異なる段階を経る感じでさ。

クリス:曲をたくさん書いて、アルバムもたくさん出してきた中で、僕はフィリップ・グラスやジョン・ケージ、ジョン・アダムズといったミニマリストたちからインスピレーションを得てきた。自分にとって書きやすい書き方というのもあるけれど、この曲で僕はそこから一歩踏み出したいと考えたんだと思うな。ポップスのA-B-A構成とかと違って、クラシックは必ずしも最後に同じところに戻るとは限らず、好きな方向へ行ける。ある曲から別の曲へと、どんどんと進行していく感じというか……最初から意識的にそうしようと決めていたわけじゃないけれど、この曲は常に変化し、進化し続けるのが正しいと感じたんだ。

こういう判断は多くの場合、なかなか難しい(笑)。最初のセクションのサウンドがとてもうまくいっても、「じゃあ次のセクションはどうするんだ?」と考え込んでしまって、そこでやたらと時間がかかることもあるし。いろいろアイディアを試してみても何かしっくりこず、あれこれやり続けているうちに、あるとき突然正解が見えたりすることもあるし。

ジョン:あれこれ違うアイディアを試しまくって、結局最初の案に戻っちゃったりもするしね(笑)。

─構成の妙で言うと、「Naga Ghost」には圧倒されました。人力ヒップホップのような感じでビートが始まり、後半の大きな盛り上がりへと至るドラマティックな流れは、どのようにして出来上がったのでしょうか。

クリス:かなり早い段階から、最後にビッグなシンセが出てくる、ああいう曲をやりたいと思ってたんだ。アコースティックとエレクトロニックの要素を混ぜて遊ぶというアイディアをいろいろ試して、どこまでできるか見てみたかった。アコースティックな要素がエレクトロニックな要素にだんだんと埋もれて、かき消されていくような曲があったら、すごく面白いだろうなと思ってね。ジョンはアコースティックドラムを叩いているけれど、それを加工して、ザラザラとしたクランチーな音にしてる。

ジョン:クランチーなアコースティックの音から始めて、さらにカリカリ感を加えていったんだ。

クリス:こういう曲にベースソロがあるのも、意外性があっていいかなと思った。僕らの音楽にはジャズも少し含まれているけれど、ここではジャズのインプロヴィゼーションではない即興性を曲に加えたかったんだ。

ニック:実際、それは君のアイディアだったけど、かなり効いたと思う。あまり伝統的なタイプの曲には見えないから、敢えて真ん中にベースソロを持ってきたんでしょ?

クリス:うん。それにコントラストも必要だった。曲の中にいろいろなチェンジを入れるのは、物語を語るためのナラティブとしての役割を狙ってるんだ。この曲はヒップホップっぽいダンシーな感じで始まり、最後には歪みまくって完全にクレイジーになる。その2つを対比させる意味でも、間にベースソロを挟むのは名案だと思ったんだよ。

ストリングスの導入、飽くなき音楽的実験

─「Luminous Giants」ではラキー・シンのヴァイオリンをフィーチャーしているし、「State Of Flux」にはラキーも関わっているマンチェスター・コレクティヴが参加していますね。それぞれ、弦楽器のどんな要素を楽曲に持ち込みたいとイメージしたのでしょう。

クリス:「State Of Flux」のスケッチを作ったときに、90年代のマンチェスターのダンスミュージック……808ステイトみたいなコードを思いついた。いつも使っているReasonというプログラムを操作しながら、この曲に合いそうなシンセの音を探していたときに、とてもクールなストリングスの音を見つけたんだ。それにいい雰囲気を感じたので、「そうだ、ストリングスで何かやってみようかな」って話になった。

マンチェスターの音楽大学で活躍した腕のいいミュージシャンを何人か知ってるけど、僕はラキーの妹のシミー・シン(ヴァイオリニスト)と先に知り合った。マンチェスター・コレクティヴはクラークとも共演しているけれど、本当に優秀な音楽家集団だね。ラキーはディレクターとしても優れている。マンチェスター・コレクティヴはクラシックのカテゴリーのグループだけど、考えていることが僕らとそれほど遠くないと感じているよ。

ニック:ラキーは「Luminous Giants」で良いプレイをしてくれたね。最初はあの曲にストリングスを入れるつもりはなかったんだ。スタジオに小さなホワイトボードがあって、そこに「ボーカルを入れるか、ストリングスを入れるか、どちらにする?」と書いてあったんで、ラキーを誘って、結局両方やることになった(笑)。

クリス:「Forgive The Damages」もストリングスこそ入ってないけど、ラキーが曲を聴いていくつかアドバイスをくれたんだよ。僕らだけでやってもなかなかうまくまとまらなかった曲が、ある瞬間、完璧にフィットするようになった。彼女のオペレーションのおかげだね。

この投稿をInstagramで見るGoGo Penguin(@gogo_penguin)がシェアした投稿ラキー・シン、マンチェスター・コレクティヴとのコラボの様子

─「Silence Speaks」は、クリスがお子さんと家で弾いていた曲が元になったそうですね。エレクトロニックな導入部からアコースティックへとグラデーションしていく色彩の変化がとても美しかったです。

ニック:とても自然に生まれた曲だよ。あれは前のアルバムの曲を書いていたときにクリスがアイディアを思いついた。

クリス:でも、結局実現しなかった。ソロピアノの曲として作り始めたんだけど、それはいつもと違う何かを試してみたかったんだ。「この曲はバンド用に」とか考えて曲を作ろうとしがちだから。「ベースとドラムはこういう風に」とか一切考えずに、リアル・ワールド・スタジオで一回録音してみた。でも前のアルバムには合わなかったし、ソロプロジェクトで使う気にもならなかったので、そのままにしておいたんだ。

今回はあの曲がどんな感じになるか見てみたくて、ただ楽しむためにエレクトロニックな要素をいろいろ試してみた。ソロピアノではなく、最初から全部シンセで始めて、それからシンセベース、そしてドラムとね。ジョンはここでも、アコースティックドラムを演奏しながら、エレクトロニックなアプローチを試みてる。僕が持っている、Roland TR-6Sというドラムマシンも使ったよ。

スケッチするにはいい曲だったね。普段は静かな場所でひとりで曲を書いたり、スタジオでメンバーと一緒に書いたりするんだけど、小さな息子との曲作りは騒々しくて混沌としていた(笑)。そんな心理状態で曲を書いて刺激を受ける面白さもあったかな。実は「Forgive The Damage」もそうやって書いたんだよ。

─日本盤に入るボーナストラック「Tracing The Roots」も、実に強力な曲でした。

ニック:あの曲は本当に気に入ってるんだ。すごく強いアイディアだった。アルバムに入れるかどうかで議論になったよ。

クリス:ニックのベースラインから始まった曲だね。そこからジャムセッションを通してアプローチしていくうちに、ある程度ストラクチャーが整っていくことが昔は多かった。でも、今回はもっと『とにかく演奏して、楽しんで、どうまとまっていくか様子を見てみよう』という感じだった。録音を聴き返したときに、突っかかって手探りしながらやっている感じがすごくクールだったので、今回ボーナストラックに選んだんだ。

ジョン:あの曲に取り組んでいたとき、僕はクリスのフレーズに合わせて叩こうとしたけれど、途中で方向転換したのを覚えてる? クリスは「いや、ぶつかるからいいんだ」と言っていたよね。

クリス:そうそう。で、途中にシタールのようなドローンの響き……あれはモジュラーシンセで先に作ってあったものだけど、それを入れてみたり。自分たちが既に持っているもので、何ができるか見てみよう、という感じだった。そのプロセスが本当に楽しかったよ。単に新しい何かを加えるのではなく、制限された中で、どう創造性を見つけるか、というアプローチがね。

─ちなみに、ライブではまだ新曲を演ってないようですね。日本にいる間に聴けそう?

クリス:演らない(笑)。

ニック:それは……ちょっと技術的な調整が必要だ(笑)。

クリス:アルバムのリリースに合わせてライブがいくつか控えているし、その時のお楽しみだね。また日本に戻ってきたいし、もっとアジアや、可能ならオーストラリアとニュージーランドにも行きたいと思ってるんだ。そうやってこの新しいアルバムを各地に届けられたらと思っているよ。

ゴーゴー・ペンギンが語る開放的な新章「バンドの結びつきは、今が一番強固だと思う」

ゴーゴー・ペンギン
『Necessary Fictions』
2025年6月20日世界同時発売
*日本盤のみボーナス・トラック収録
再生・購入:https://SonyMusicJapan.lnk.to/GoGoPenguin_NecessaryFictions
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