Rolling Stone Japan Webでは久々となる今回のインタビューは、高嶋楓と大上陽奈子という少々珍しい組み合わせでお届けする。メンバー全員が揃ったインタビューでは少々控えめにしていることが多い2人が、現在の胸の内を明かした。
【写真】PassCodeのメンバー
―『INSIGNIA』は4年半ぶりとなるフルアルバムです。前作『STRIVE』のリリース以降、いろいろと状況が変わりましたよね。苦労もたくさんあったと思いますけど、すべてが今につながっているように感じます。
大上 それはめっちゃあると思います。これまでもずっとそうですけど、必死にやってきてよかったなと思うし、ここまでちゃんとつなげてこれたからこそ、今も楽しくやれてるんだなって。
―ライブに関しては今が一番いいと言ってもいいくらい楽しいですよ。
大上 えー、うれしい。
―メンバーがのびのびしているし、バンドのパフォーマンスともいい具合に溶け合っていて、その感じがすごくいいなと。
高嶋 3、4年前は、Zepp、武道館、野音みたいな大きい場所でのライブを1年の間にぽんぽんぽんってやっていくことが多かったり、ライブの本数自体が少なかったこともあって、バンドとの一体感というよりも、ただ4人のパフォーマンスを見せるライブが多かったんです。だけど、去年、全国を細かく回るツアーをやったんですけど、本数が増えて、会場もきゅっとしたライブハウスになってバンドとの距離が近くなったことで掛け合いも増え、そのおかげで全体がより混ざり合っていったんかなって感じはします。
大上 私もバンドと近くなったというのは感じるかも。バンドセットでライブを始めてからけっこう長い間、スタッフさんから「もっとグルーヴ感を」とか「ステージ上が噛み合ってない」みたいなことをめっちゃ言われてたんですけど、「グルーヴ感ってどうやって出したらいいねん……!」ってずっと悩んでて。だから、初期からPassCodeでギターを弾いてくれてるYoichiくんとよく話し合ったりもしたし、全体の決めごとを増やしたらもっとよくなるんかなと思ったりもしたんですけど、なんか……一緒にやっていくうちに勝手にグルーヴ感が出てきた気がします。
―なるほど。
大上 あと、これはグルーヴ感と関係あるのかわからないですけど、私は一昨年のUSツアーが終わってからより一層ライブが楽しくなって、ツアーから帰ってきた秋ぐらいから国内ツアーが始まったんですけど、それもめっちゃ楽しくて。アメリカという戦場へみんなで一緒に行ったことで仲間感ができたんかなって、今ちょっと思いました。
―それはあるかもしれないですね。USツアーは僕も同行しましたけど、ただのツアーじゃなくて、大げさに言うと、生きるか死ぬかみたいなノリがあって。
大上 向こうでの生活の仕方もわからんし、ライブもどんな雰囲気になるのか、お客さんがどんな人たちなのかもわからんし。
―誰が何担当とか関係なく、動ける人が動かないと現場が回っていかないような感じでしたもんね。
高嶋 たしかに、(大上)陽奈子のいうグルーヴ感とか仲間感が、バンドだけじゃなくて、スタッフさんとの間でも高まったと思います。あと、USツアーをきっかけに語学の勉強をしたいと思ったんですけど、結局してなくて(笑)。海外に行ったら毎回そう思うし、日本でのライブにも海外の方がけっこういらっしゃるんで、そのときにちょっとでも話せたら喜んでもらえるとは思ってるんですけど……。
―多分、ここでこういうことを言えたらもっといい感じになるのにっていうことを心底感じたときに初めて、本当に勉強しようって思う気がします。
高嶋 確かに。あと、USツアーではメンバーがけっこう英語をしゃべってくれたから任せっきりにしちゃってましたね。頼りになりました。
―でも逆に、去年行ったアジアツアーの韓国公演では、高嶋さんの韓国語がフル回転してましたね。
大上 あのときはめっちゃ頼りになりました! 余談なんですけど、かえちゃん(高嶋)と2人で韓国旅行に行って、私が電車の切符をなくして改札から出られなくなったときも、かえちゃんが駅員さんとインターホン越しにやりとりしてくれたお陰で出られたんですよ。あれはほんまにすごかった。
―トラブル回避できる語学力はすごい。
大上 しかも、対面じゃなかったから、それってほんまに喋れる人ですよね。
―高嶋さんは、「好き」という気持ちだけで韓国語を身につけたんですよね?
高嶋 そうです。別にPassCodeに活かそうとか一切思ってない(笑)。ただの趣味でやってました。でも、ああやって初めて現地のファンの方と交流できたことでちゃんと言葉が通じるっていう安心感もあったけど、もっと上手くメンバーの言葉を翻訳できたなって思う場面もあったから、もっと頑張ろうって思いました。
USツアー、アジア、そして横浜へ――PassCodeが放つ”再起動”の旗印
―この流れで聞きますが、昨年のアジアツアーはどうでしたか。
大上 挑戦という意味で、中国はUSツアーと近かったです。韓国とかは前に行ったことがあるから「帰ってきた」感がありましたけど。
―中国は確かに未知でしたね。
高嶋 ライブ中に機材トラブルで1時間ぐらい中断したし。でも、中国は初めてだったのにお客さんは一番来てくれた気がして、「なんでこんなにPassCodeの曲知ってんねやろう……?」ってすごい不思議でした。
―ああいう急なハプニングが起こってその場をつなげなきゃいけないというときに、真のライブ力が試されますよね。変な言い方にはなるけど、あれはいいハプニングだったと思います。
大上 確かに。もし日本で同じトラブル起きたら普通にMCをすることになってたと思うし、中国みたいに大合唱することにはならなそう。あれは海外ならではでしたね。
―そういったツアーや様々な経験を経て、個人的に感じる変化はありますか? なんでこの質問をしたかというと、今回のアルバム『INSIGNIA』はかなり強力な作品になっていると思うんですよ。楽曲がバラエティに富んでいて、全体的な完成度も高い。それはサウンドプロデューサーである平地孝次さんの力ももちろん大きいけど、その力を引き出したのはメンバーの4人の進化でもあると思うんです。
大上 今回のアルバムを聴いて、かえちゃんに対してめっちゃ思ったことがあって、声の出し方が全然違うんですよね。前まで平地さんは、かえちゃんに対してかわいらしかったり、お茶目な歌を求めていて、それは今回も変わらないんですけど、それ以外の部分で、ストレートに歌ったり、力強く歌う声がめっちゃカッコいいなって。特に、「MIRAGE WALKER」のかえちゃんには嫉妬しました。あまりによすぎて、完成版が送られてきたときに5回ぐらい連続で聴きました(笑)。
高嶋 そうなんだ(笑)。嬉しい。
―じゃあ、高嶋さんも大上さんにお返しを。
高嶋 陽奈子の歌はもともと強くて、まっすぐ歌うことが大半を占めてると思うんで
すけど、「DESTINEX」でちょっとチャラついた歌い方をしていて、そこがこれまでになかった部分で、新しくていいなって。すごく曲に合ってる。
―そういう自覚はありますか。
大上 確かに、自分でもまっすぐ歌うのが特徴だとは思ってたんですけど、ここ数年で、レコーディングではクセを付けて歌うことも大事だなって思うようになって。ほかのメンバーのボーカルを聴いてると、自分よりも語尾の感じとかがわかりやすいんですよ。だから、最近出したEPのレコーディングでも意識してクセのある歌い方をしていたんですけど、完成版を聴いたらそれほどでもなくて。でもそこで、レコーディングでは自分が思ってるよりも大げさに表現するくらいがちょうどいいんだなって気づいたんで、今回はそれを意識しました。
―高嶋さんは、さっき大上さんから指摘されたカッコよさは意識していたんですか。
高嶋 レコーディングでディレクターの北田さんから、「もうちょっと太い感じにできない?」って言われたので、自分なりに太く、カッコいい歌い方にしようと意識して、今回は何回かやってますね。
―南菜生さんと有馬えみりさんに関してはどうですか?
大上 2人はどっちもパワー系で、えみりに関してはさすがのシャウト力やなと思うし、今回はそれに加えて初めて聞くタイプの、語るようなシャウトがあって、「え、こんなシャウトもあるんや!」って驚きました。
高嶋 ね。
大上 やちい(南)はライブで力強い声を出してるから、レコーディングでもそういう強いパートが得意だと思ってたんですよ。でも、やちいは感情を乗せるのも上手いから、今回は落ちサビの静かなところも任されていて、得意なことが活かされてるなって感じました。
高嶋 やちいはとにかく歌を聴くだけで感情が伝わるからそれはすごいなと思うし、えみりはシャウトだけじゃなくて、クリーンパートもすごく通るんですよ。少年っぽさのある、ほかの3人にはない歌だから、それも強いですよね。今回の新曲だと、特に「Echoes」で感じます。
―『INSIGNIA』は、PassCodeの未来を期待させる作品だと思っていて。すごく力強くてポジティブですよね。特に「DESTINEX」はその象徴というか、今作におけるPassCodeの意志がこの曲に最も強く込められているなと。これまでと何が違うんですかね。
高嶋 最近はもっとこうなりたいとか、もっとグループをこうしたいとか、野心みたいなものが強くなってると思ってて、それが現れてるのかも。ファンの人たちにずっとPassCodeを好きで居続けてもらうことは難しいけど、それでも私たちはもっと先へ行きたいんですよね。
―確かに、アイドルという側面から見ると、おっしゃるような難しさがあるのはわかります。でも、今作を聴いて強く思ったのは、PassCodeはアイドルなのかバンドなのか、みたいなことをずっと言われ続けてきたけど、「PassCodeはPassCodeである」としか言えない次元にまで到達しているんじゃないかと。アイドルにもバンドにもなれるというよりも、もはやアイドルでもバンドでもないんじゃないかって。
高嶋 そうなりたいから、こういう作品になったんだと思います。
―今作は、改めてそういう存在になっていくための第一歩なんですね。
大上 今、ほんまに、「PassCode」になりたい。
高嶋 わかる。世の中の流行りとかもあるけど、そういうのじゃなくて。だから、一時よりも「もっとこうしたい」って思うこと、多いやんな?
大上 たしかに。
高嶋 もっとやりたい。
―今回初収録される新曲についてもいくつか聞かせてください。「A certain Motor-Heart is not working right!」は有馬さんによる作詞作曲だそうですね。
大上 はい。PassCodeの中で一番王道のメタルっぽさを感じるし、えみりの世界観って感じがします。特に、<LaLaLa>のパートとか。歌に関しては、いつもは等身大で歌うことが多いけど、この曲は自然と「誰かを演じながら歌ったほうが合うんじゃないか」と感じたので、それは新鮮でしたね。あと、えみりから「ここはこう発音してね」っていうリクエストがあったりして、メンバーからディレクションを受けたこともめっちゃ新鮮でした。
高嶋 えみりはPassCodeに寄せて歌詞を書いたって言ってたけど、えみりの要素がかなり出てるから、そういう意味では新しい感覚で歌いました。どこがどう違うっていうわけではないんですけど、なんか違うんよな。新しい扉を開いた感じ。
大上 確かに。
―この曲はライブでどうなりますかね。
高嶋 ほかの曲だと、シャウトのパートでお客さんは「イエーイ!」って感じで盛り上がってるけど、これはそういう感じでもないもんな。祈りながら聴くんかな(笑)。楽しみですね。
―「One Time Only」もかなりいい曲です。
大上 ラスサビの<この日々は もう戻れない もう戻れないんだ>が好きすぎて、歌詞を見たときにほんま泣きそうになりました。あと、1番と2番はソロなんですけど、ラスサビだけユニゾンになるところも好きなんですよね。(小声で)戻れないんですよ……。
高嶋 そうだよ、今は今しかないね。
大上 最近、めっちゃいろんなグループが解散していくじゃないですか。そういうタイミングでこの曲の仮歌をもらって、「うわぁ……」って。
高嶋 続けるのは大変。
―ずっと続いていくことはないんだっていう現実を突きつけられますよね。PassCode以上に活動歴が長くて、メンバーチェンジがあまりない少人数の女性アイドルグループって、今やももクロやNegiccoくらいしかいないかもしれないですね。東京女子流やTEAM SHACHIは解散を発表しましたし……。
高嶋 確かに、バンドが10年経ってから売れるというのはよく聞くけど、女性グループだとあんまり聞かないですね。PassCodeみたいに、こんなにめちゃくちゃライブやって、ツアーもやって、リリースもしてってグループはあんまおらんのか……。
―周りで解散の話が続くと、やっぱり思うところはありますか。
高嶋 これはファン的な感情やけど、ずっと続くと思ってたグループが解散すると、やっぱり時代は変わっていくんだなって思います。
大上 PassCodeだって、解散するっていう選択肢は過去にあったわけじゃないですか。それでも、続けることを「選んでる」んですよね。別に、常に話し合いをしてるわけではないけど、ただ単に続いてるんじゃなくて、いろんな選択肢の中から続けるということを自ら選んでるんやなって。だから、この道を選んだからにはもっと上を目指したいんですよ。
―ただ続いてるわけじゃないんですね。続けることをずっと選んでいる。
大上 そうなんですよね。もちろん、気づいたら続いてたっていうところもあるけど、いろんなタイミングで「続ける」を選んできたことはたしかで、今もずっとそうなんですよね。
―そういう話を聞くと、「One Time Only」というタイトルはよりぐっときますね。さて、11月9日には横浜BUNTAI公演が決定しています。
高嶋 楽しみ。3年9カ月ぶりのアリーナ公演。
大上 アルバムが出ることで新しい曲が増えて、武道館とは全然違う雰囲気になると思うし、今やってるツアーを経て、新曲たちがライブでどうなるのかみんなもわかってくれると思うから、まだ未知なところはいっぱいあるけど、楽しみです。多分、ツアーを回って自信がめっちゃついてると思うから、パワーアップしてると思います。そういう意味では、自分たちのパフォーマンスにも期待したいです。ワクワクしますね。
―自分でも自分に期待している。
大上 きっとよくなってると思います。
―高嶋さんはどうですか。
高嶋 武道館のときはコロナ禍で声が出せなかったり、ライブを観に来ること自体できなかった人がすごく多かったんですけど、今回またアリーナ公演をやることでみんなの歌声が聞けるのが楽しみです。武道館に行けなかったからBUNTAIでPassCodeを見れることが嬉しいっていう声もたくさんあるから、みんなの期待に応えたいですね。
―『INSIGNIA』を聴いて改めて思いましたけど、PassCodeはもっともっと大きくなれると僕は思ってます。
高嶋 うん、いける。
―また海外ツアーにも行ってほしいし、ポテンシャルはかなりありますよ。
高嶋 確かに。落ち着いたら行きたいよな。
大上 来年とか!

PassCode:左から、高嶋楓、有馬えみり、大上陽奈、南菜生

『INSIGNIA』
PassCode
発売中
配信リンク:
https://lnk.to/LZC-3045d
<商品形態>
初回限定盤[CD+Blu-ray] ¥8,500円(税抜) ¥9,350円(税込)
https://lnk.to/LAMR-35034
通常盤[CD] ¥3,000円(税抜) ¥3,300円(税込)
https://lnk.to/LAMR-5034
<収録内容>
[CD]
01. DESTINEX
02. MIRAGE WALKER
03. SKILLAWAKE
04. VIRIVIRI
05. Freely
06. One Time Only
07. GROUNDSWELL
08. A certain Motor-Heart is not working right!
09. WILLSHINE
10. FLAVOR OF BLUE
11. Echoes
12. Clouds Across The Moon
[初回限定盤Blu-ray]
PassCode ASIA TOUR 2024 Final at Zepp Osaka Bayside
PassCode ASIA TOUR 2024 Documentary
PassCode DESTINY to the NEXT TOUR 2025
6月21日(土) 北海道 小樽 GOLDSTONE
6月28日(土) 京都 KYOTO MUSE
6月29日(日) 静岡 LIVE ROXY SHIZUOKA
7月5日(土) 福岡 BEAT STATION
7月6日(日) 広島 LIVE VANQUISH
7月11日(金) 宮城 仙台Rensa
7月12日(土) 福島 郡山Hip Shot Japan
7月18日(金) 愛知 THE BOTTOM LINE
7月23日(水) 東京 Spotify O-EAST
PassCode YOKOHAMA BUNTAI 2025 ”DESTINEX”
11月9日(日) 神奈川 横浜BUNTAI