2025年は、マカロニえんぴつにとって、デビュー10周年のメモリアルイヤーにあたる。その記念すべき一年に、彼らは、バンド史上初のスタジアムワンマンライブ「マカロニえんぴつ 10th Anniversary Live 『still al dente in YOKOHAMA STADIUM』」の開催に挑んだ。
開催地は、バンド結成の地である神奈川県の横浜スタジアム。2日間にわたり開催され、6月14日(土)はインディーズ時期、6月15日(日)はメジャー時期の楽曲にスポットを当てたコーナーが設けられた。これまでの長い活動の中で繋がることができた一人ひとりのファンと共に、10年間の歩みを振り返り、祝福し合うメモリアルな2日間。この記事では、2日目、6月15日(日)の公演の模様をレポートしていく。

【画像】マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演(全15枚)

前日にあたる1日目は雨天の中での開催となったが、2日目は見事な晴天。「これまでの活動の中で出会えたマカロッカーと共に、プレイボール!」というアナウンスを受けて、ステージ上のブラス隊が盛大なファンファーレでライブの開幕を告げる。そして、ステージの上手と下手から、2人ずつメンバーを乗せた2台の車が登場し、アリーナの周りをゆっくりと走行していく。手を振ったり、指を指したりしながら、観客と熱く親密なコミュニケーションを重ねていく4人。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

Photo by 後藤壮太郎

彼らがステージに着く頃、お馴染みのSE(ビートルズ「ヘイ・ブルドッグ」)が鳴り渡り始め、観客が大らかなハンズクラップを重ねていく。はっとり(Vo・G)は、まるで、まだまだクラップが足りないと言わんばかりに片手に耳を当て、それに応えるように会場全体からさらに大きなクラップと熱い歓声が飛び交う。そして、はっとりの「ハマスター!」という高らかな呼びかけと共に、「トリコになれ」からライブがスタート。ブラス隊を迎えたゴージャスなアレンジが施されていて、より、晴れ渡る青空を突き抜けるように響く歌声とバンドサウンドが最高に気持ちいい。
「鳴らせ」では、田辺由明(G・Cho)と高野賢也(B・Cho)が、それぞれ上手・下手の端へと繰り出しながら、広大なステージ全体をダイナミックに使ったコミュニケーションを重ねていく。観客も負けておらず、「レモンパイ」ではコールをばっちりきめ、「洗濯機と君とラジオ」では、はっとりから託されたマイクに大合唱で応えてみせる。燦々とした日光と相まって、あまりにも熱烈なオープニングパートだった。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

Photo by 酒井ダイスケ

ここでブラス隊が退場。はっとりは、「昨日は、大雨の中、一生忘れられない最高のライブになりました」と初日の公演を振り返りつつ、「今日はしっかりと晴れました!」と叫び、温かな拍手が会場全体から送られる。続けて、たくさんのファンが一堂に集まった光景を前にして、「この景色、2日目でも慣れないね」「胸がいっぱい」と本音をありのまま伝えた上で、「今日はお祝いの日ということで、おおいにはしゃいでください」「俺たちを祝ってくれ、よろしく!」「愛の『MUSIC』をたくさんやります、最後まで楽しんで」と告げ、「MUSIC」を披露。その後も、「恋人ごっこ」をはじめとした歴代の代表曲を惜しみなく放っていく豪快な展開が続く。長谷川大喜(Key・Cho)によるソロプレイからの流れを受けて披露された「なんでもないよ、」では、はっとりが、1サビのほとんどの歌を観客に委ね、観客はその期待に大きな歌声を重ねてしっかり応えてみせた。「素晴らしい!」「上手!」と叫んだはっとりの、深い感慨に満ちたような晴れやかな表情が忘れられない。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

hoto by 後藤壮太郎

転換の時間を経て、アリーナ中央に設置されたセンターステージに4人が登場。このセンターステージは、1曲ごとに回転する仕様になっており、この上で、メジャー時期の5つの楽曲が披露された。4人の美しいコーラスワークから幕を開けた「ハッピーエンドへの期待は」。
事前に行ったアンケートで大きな人気を集めたという「ルート16」。そして、「はしりがき」、「mother」。どれも、この数年にリリースされた楽曲ではあるが、こうして並べて披露されることで、近年の音楽的な変遷や挑戦が改めて手に取るように感じられた。はっとりは、「昨日はここで懐かしい曲をやったんです」と初日の公演のことを振り返った。(初日は、手売りのCDに収録していた楽曲「日常と君と僕の歌」「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」も披露された。)その上で、「当時、路上ライブで出会ってくれた人、いる?」と呼びかけ、会場から何人かの観客の声が上がる。「ずっーとついてきてくれている人がたくさんいるの」そう感慨深く告げたはっとりは、続けて、「一方、今も負けてないって思いたい」と力強く語る。そして、「音楽を信じた自分を讃えながら、歌います」と宣誓し、バンド結成10年のタイミングでメンバー4人で歌詞を書いて完成させた一曲「僕らは夢の中」を披露する。4人のマイクリレーを通して描き出されていく彼らの歩み。そして、ユニゾンで歌われる〈ロックバンドは最高だ そんなの当然だ〉という輝かしい確信。3年前のリリース時に聴いた時にもグッときたが、あれからさらに歴史を更新してきたこともあり、今回はさらに深く心に沁みた。

まかぴーとまか子たちによるハーフタイムショーが終わる頃にはあたりはすっかり暗くなり、いよいよライブは終盤戦へ。
再びブラス隊を迎え、「前世よ、しっかり」からライブが再開。「そんなもんか、ハマスタ!」「大声で一緒に歌いたいやつ、どれくらいいる?」「いこうか! いこうか! いこうか! いこうか!」容赦なくアジテートしていくはっとりは、続く「ハートロッカー」で、「あなたのことが大好きです!」と歌詞を替えて叫び、そして、観客から返ってきた並々ならぬ大合唱に圧倒されるようにしながら、床に倒れて「愛してるぜー!」とシャウト。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

Photo by 酒井ダイスケ

熱烈な展開は、まだまだ止まらない。はっとりの「3万人で無茶しようぜー!」という熱い呼びかけから突入した「ワンドリンク別」では、この日の一番を再び更新するような大合唱を受け、「大・大・大・大・大・大優勝!」と観客を讃え、その後も、ロックバンドとしてのデビュー後の10年分の進化を堂々と見せつけるような渾身の歌と演奏をもってして、「愛の波」「STAY with ME」「星が泳ぐ」を立て続けて披露してみせる。広大なスタジアム全体を力強く巻き込み、優しく包み込んでいく4人の勇姿が、とっても頼もしかった。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

Photo by 酒井ダイスケ

夜空に花火がドカンと打ち上げられた後に披露された「ミスターブルースカイ」では、会場全体が眩く照らし出され、これにて万感のクライマックスかと思いきや、はっとりが、再び、胸の内の想いを語り始める。

「長くやって、お互い年を重ねたね」「お互いすり減ったねってことを、つら合わせて、なんとなく確認し合いたかった」「やっぱ、すり減っていってるよな。生きてるってことは、すり減るってことだ」「削られて削られて、でもそれで丸くなる部分が出てくる」「足りないものが増えるけれど、補ってくれる人がどんどん周りに増えてくんだなって、そういうことを感じました」「同じ若さのまま、一緒にこれから年をとりたいと、強く今日は思いました」「あなたが見つけた、あなたが一緒に歩くと決めた、マカロニえんぴつという音楽でした」「その若さを握りしめたまま、一緒に年をとりましょう」「あなたのことが心から大好きです」「手放さないでください」「勝手に死なないでください」。

マカロニえんぴつ、横浜スタジアム公演でファンと共に振り返った10年の歩み

Photo by 酒井ダイスケ

バンドの誠実な姿勢が滲む一つひとつの言葉を丁寧に届けた後に披露されたのは、「ヤングアダルト」。これまで何度も繰り返して聴いてきた楽曲だが、先のMCの言葉が相まって、かつてないほどに深い感動が押し寄せてきた。今回のライブを締め括ったのは、前日の初日公演で初披露された新曲「静かな海」だった。「あなたが受け取って、完成させてください」というはっとりの言葉と共に披露された同曲がライブのフィナーレを飾ったことが何よりも象徴的なように、総じて、今回の公演は、10年間を振り返る意味合いの強いライブでありながら、この先の未来が今まで以上に楽しみになるようなものだった。
これからも引き続き、彼らと一緒に年を重ねていきたい。その想いを新たにした人は、きっと少なくなかったと思う。本当に素晴らしいライブだった。

セットリスト
1. トリコになれ
2. 鳴らせ
3. レモンパイ
4. 洗濯機と君とラヂオ
5. MUSIC
6. たましいの居場所
7. 恋人ごっこ
8. ブルーベリー・ナイツ
9. なんでもないよ、
10. ハッピーエンドへの期待は
11. ルート16
12. はしりがき
13. mother
14. 僕らは夢の中
15. 前世よ、しっかり
16. ハートロッカー
17. ワンドリンク別
18. 愛の波
19. STAY with ME
20. 星が泳ぐ
21. ミスターブルースカイ
22. ヤングアダルト
23. 静かな海
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