場所は『tiny desk concerts JAPAN』としては初めてNHKのオフィスの一角に作られたスペースを飛び出し、東京大学大学院情報学環・学際情報学府内にある学生向けのラウンジ、学環コモンズ。
※以下、ネタバレあり

◎収録レポート
6月後半の真夏日。「学環コモンズ」の本棚や机が置かれたスペースの前に約40人の幸運な東大生たちが集まり、時代を席巻する表現者、ちゃんみなが現れるのを今か今かと待ち侘びている。バンドメンバーとコーラスチームに続いて、ちゃんみなが登場。椅子に座った後、目の前に立つ東大生の姿を見て「生きていてこういうことがあるなんて」と嬉しそう。まずは、「No No Girls」のテーマソング「NG」からスペシャルなライブをスタートさせた。完全に生音でモニターのない環境でのライブ。いつもよりウィスパーなちゃんみなのヴォーカルは、近距離ということもあり、息遣いまで聞こえてくるようだ。巧みに緩急を付けて、ミニマムながらドラマ性を宿していく。
「Thank you so much。生きていて東大に来る日が来るとは思いませんでした。東大生の皆さんですよね? 皆さん受験を通ってるわけですよね?」と話しかけて場を和ませたちゃんみな。バンドメンバーとコーラスチームを紹介した後、「tiny desk」について話した。「イヤモニもなく返しもなく歌うのはどういう感じなんだろう?と思っていたんですが楽しいですね。おうちで歌っている感じがします。私の机の上にいろんなものが置いてあるので、このいろんなものを使いながらASMR的なものもやっていきたいと思います。皆さん音楽は好きですか?」。そう呼びかけた後、ドラマ『ハヤブサ消防団』の主題歌として書き下ろした「命日」へ。哀愁漂う昭和歌謡テイストが色濃いサウンドはちゃんみなにとっての新機軸だ。ときに拳を効かせながら曲を進め、〈命日もバースデーもないんだから〉と力強く歌い放った。

いずれ消えてしまう「若さ」と花火を重ねた「花火」。繊細なグラデーションを抱いた歌と演奏によって、みるみるうちに花火が「君」と「私」を照らす儚い情景を映し出していく。一旦歌と演奏が止まり、静寂の中で、いたずらっ子のような表情を浮かべたちゃんみなはたっぷりと間を取り、再び「私 花火」と歌い始め、その情景を永遠のものにしようとする。
「お気づきの方もいるかもしませんが鼻が詰まってます。体調管理を頑張ってるんですが、子供が初めて風邪を引いて。子供の風邪の強さは不可抗力だなって感じてます」と話し、オーディエンスを笑わせた。
「ハレンチ」では机に置いてあったハサミやペンが刺さったセロハンテープを振って打楽器にしたり、ハサミをジャキジャキと鳴らしたり、セロハンテープを伸ばして音を立てたりと「tiny desk」ならではの遊び心を発揮。その後、東大生とのQ&Aコーナーが行われた。
ファッションを学んでいるという学生が、「ゼミや大学でNoと言われる機会がある。No No Girlsでのちゃんみなはエンパシーに溢れた言葉をかけていたが、どういう経験や考えのもと、ああいった姿勢が生まれたのか?」と質問すると、「どういう姿勢を取ろうかは決めてはおらず、ありのままでした。いろいろな経験をする中で何度も人格が変わってきていて、私は自分がされて嫌だったことが良くも悪くも残るタイプです。それが経験として良かったと思います。
ちゃんみなに直接質問ができるとあって、学生たちからはいくつも熱量の高い質問が投げかけられ、ちゃんみなは時にユーモアを交えながら真摯に応えた。
後半戦は、はじめギターの旋律とちゃんみなの歌声だけが響いた「I hate this love song」からスタートした。映画『か「」く「」し「」ご「」と「』の主題歌であり、ちゃんみなの最新曲。ちゃんみなとコーラスチームの歌が重なり、たまらなく美しいハーモニーによって甘く切ない情感が創出された。
「文房具があるとやっぱり楽しいですね。『tiny desk』ってこんなラフな感じなんですか(笑)? 私が勝手にやっちゃってるだけなんですかね」と言って、「SAD SONG」へ。2021年に自身初の日本武道館公演を開催するにあたって仲間と切磋琢磨していた日々が永遠に続いてほしいという、幸せすぎるからこその寂しさを込めた楽曲だが、今年5月に「No No Gilrs」のファイナリスト10人と共にTHE FIRST TAKEで歌ったことで新たな意味を持った。〈願うならこんな私が 死んでもこの愛だけは せめて 残って咲いてますように〉。〈永遠って事にしておこうよ このままずっと笑いあってよう〉。
「次で最後の曲です。居心地よくてだらだらしちゃってすいません。すごく楽しかったです。こんな機会めったにないのでありがとうございます」と言った後、東大生たちに向けて「この国をよろしくお願いします。荷が重すぎる(笑)? 私もその一員として音楽で頑張らせていただくのでこれからもよろしくお願いします。たまには大丈夫じゃない時もあると思うんですが、そういう時は自分のためにも『大丈夫じゃない』って言ってあげてください」と言って、ラストソングである「I'm Not OK」へ。オーディエンスに心を開いたことで素直に「私は大丈夫じゃない」と言えるようになった。ちゃんみなにとってとても力強いメッセージを内包した楽曲は、後半は東大生たちの歌声も加わり、極上の一体感を生んだ。

◎収録後インタビュー
―収録を終えて、いかがでしたか?
ちゃんみな:すっごい楽しかったです。アンプもイヤモニもない環境でライブをやったのは初めてなのでとても新鮮でしたし、自分の声が聞けるのがすごく楽しかったです。また、直接みんなの声や音が聞けるのも新鮮でした。
―今回の収録にあたり、どのように楽曲のアレンジを変えたのでしょうか?
ちゃんみな:言葉のメッセージが強い曲を中心にセットリストを組んで、アレンジはいつも私のバックについてくれている堀(正輝)さんと仙人がほとんどやってくれました。「tiny deskってどんな感じなんだろう?」って考えながら、私の曲はうるさい楽曲が多いので、できるだけ歌うまで何の曲かわからないようなアレンジをしました。
―普段のアレンジと一番変化が大きかった曲というと?
ちゃんみな:「NG」ですね。ちょっとメロディを付けて歌ってみたりしたんですが、すごく楽しかったです。

―東大生に聞きたいことがたくさんあるとおっしゃっていました。
ちゃんみな:私は大学に行っていないのですが、東大生の方たちが思う努力がどういうものなのかが知りたいです。ミュージシャンもライブに向けてだったりいろいろな努力をしますが、もちろん興味があって夢中になってやっている部分もあるんでしょうが、勉強をする努力がどういうものなのかが気になります。場所や業種は違えど、通じるものはあると思っています。
―東大生に「親御さんから入学を反対された人はいますか?」と聞いてらっしゃいました。また、ご自分の娘さんが「東大に入りたい」と言ったら「行け行け!」って思うとおっしゃっていました。
ちゃんみな:私は音楽をやることを親に反対されていました。私の夫もミュージシャンで反対されてきたんですよね。親御さんからしたら、ラップミュージックやロックミュージックといった私がやっているような音楽を全面的に応援するケースは少ないかもしれません。それを置いておいても、「音楽で生活できるの?」っていう不安もあると思います。でも、東大に入ることを反対する親御さんはそういないと思ったので、反対された方がいるのかどうかが気になって質問しました。
―今からでも何か勉強したいことはありますか?
ちゃんみな:一時期弁護士を目指そうと思ったことがあるんです。私は口喧嘩が強いので(笑)、法律の知識を持っていたらどれだけ口喧嘩が強くなるのかが気になります。あと経営学や著作権についても気になります。

<放送予定>
2025年6月30日(月)NHK総合0:25-0:54(※日曜深夜)
※NHKプラスでの同時・見逃し配信あり
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2025063021330
tiny desk concerts JAPAN
https://www.nhk.jp/p/ts/KXVP6WG6VM/