今年のサマーソニックで最注目の新人は、間違いなくソンバー(Sombr)だ。「back to friends」と「undressed」は、どちらもSpotifyで数億回再生規模の大ヒット。
2025年の台風の目として世界を席巻しつつある。もしかしたらSONIC STAGEのような規模感で彼を観られるのは、今年が最初で最後かもしれない。そんな伝説のライブとなること必至の初来日を前に、本誌は本邦初取材に成功。彼の貴重な発言を交えながら、その軌跡と魅力の正体に迫る。

「back to friends」で迎えた覚醒

いまもっとも勢いに乗っている新人であり、2025年の一大センセーションとなり得るポテンシャルを秘めた存在──ニューヨークはロウアーイーストサイド出身の20歳、ソンバーことシェイン・ブースをそのように紹介しても大袈裟ではないだろう。彼が2024年末にリリースしたシングル「back to friends」は、すでにSpotifyで約4億再生を記録(7月9日時点)。同プラットフォームの「トップ50 – グローバル」では1位を奪取し、イギリスやオーストラリアのシングルチャートではトップ10入りを果たした。今年3月に送り出された「undressed」の勢いもすさまじく、Spotifyでの再生回数は早くも3億回に迫ろうとしている。どちらの曲も母国アメリカのチャートではグングンと順位を上げている最中で、現在トップ40に食い込んだところだ。まさにいまソンバーは強烈な上昇気流に乗っており、本格的な大ブレイクが視界に入ってきている。

「とんでもなくクレイジーだけど、最高の時間を過ごしてるよ」と、本邦初インタビューにメールにて応じてくれたソンバーは、いま自分が置かれている状況について綴る。「すごく感謝してるし、この魔法のような瞬間を思いきり楽しもうとしてるんだ」。


Sombr本邦初インタビュー 時代を揺るがす大型新人の素顔に迫る


ソンバーにとって最初の大きな転機となった曲は、まだ高校生だった2022年に発表した「caroline」。これはボン・イヴェールの『For Emma, Forever Ago』に触発されて書いたというメロウでドリーミーなフォークソングで、TikTokに投稿するとすぐにバズが起きた。そしてこれを機にソンバーは、当時通っていたアート系の名門、ラガーディア高校を中退。プロの音楽家として本格的に歩み始めることになる。

「高校生で、ニューヨークの公立芸術学校に通っていた頃、『caroline』のスニペットをTikTokに投稿して、そのまま寝たんだ。そしたら、次の日に目が覚めたときには、もうバズってて。曲をリリースしたら反応がすごく良くて、そこからレコード契約に繋がり、さらに曲を作ってリリースして……フルタイムで音楽をやっていけるって気づいたんだよね。(学校を辞めたのは、)学校で学んできたことを実際に”生きる”という幸運に恵まれたし、リアルな生活で得られる教育のほうがもっと価値があると感じたからだよ」。

「caroline」はすぐにSpotifyで1000万回再生を超えるスマッシュヒットとなったものの(現在5000万回再生)、その後はしばらく地道な活動を続けてきた。ソンバーにとっては研鑽の季節だったと言っていい。しかし、「back to friends」の大ヒットによって、すべてが一変した。いまや彼は2025年最注目の新人のひとりである。


聴いてもらえばわかるように、この「back to friends」は、「caroline」をはじめとした既発曲とはかなり印象が異なる。それまではアコースティック主体のフォーキーな楽曲が大半を占めていたが、「back to friends」は見違えるほどパワフルでアップビート。ドラマティックなピアノと高揚感に溢れるコーラス、そして過去作よりもロック的なアタック感を増したギターサウンドが一体となった、どこまでもアンセミックなトラックだ。ソンバーの音楽家としての”覚醒”が刻まれた曲だと言っていいだろう。 

そして「back to friends」が偶然の一発ではなかったことは、続いて発表された「undressed」を聴けば明らかだ。ややミュートが効いたギターのリフと、全体のグルーヴを牽引するベースラインが印象的な曲だが、これもまた「back to friends」に負けず劣らずアンセミック。もうソンバーは完全に独自の”声”を獲得した。この2曲を聴くと、誰もがそう確信できるはずだ。

「それまではバラードを作っていたんだけど、もっとアップビート/テンポの速い曲にも挑戦してみたいと思ったんだ」と、ソンバーは自分の運命を変えた曲が生まれたときのことを振り返る。「自分の別の一面を世界に見せる準備ができた気がしてね。新しいことに挑戦するのはワクワクしたし、この曲がこんな反響を得られるなんて、まったく予想してなかった。『back to friends』は作詞もプロデュースも自分ひとりで手がけたから、あれだけの反応があったときは、本当に報われた気持ちだったよ」。


新世代ならではの音楽的パレット

すでにメインストリームで話題沸騰のソンバーだが、自分はあくまでインディーやオルタナティブの系譜にいると語っている。その志向は、影響を受けたアーティストについて言及した、こんな言葉にも表れている。

「フィービー・ブリジャーズ、レディオヘッド、ジェフ・バックリィ。この3組は、妥協なく音楽を作っている/作っていたアーティストたちだと思う。彼らはまるで詩人のようで、宇宙の叡智をそのまま歌やパフォーマンスに宿すことができる。真の、混じり気のないソングライターたちだよ」。

だがその一方、ソンバーがインディーの枠組みに留まる才能ではないことは言うまでもない。確かに彼の書く曲にはインディーロックからの影響が息づいているが、それと同時に一発で耳にこびりつくポップな訴求力も有しているのが最大の強み。今回のインタビューで名前を挙げてくれたアーティスト以外に、ソンバーがフェイバリットとしてよく名前を挙げるのが、インディーとポップを股にかけるThe 1975だというのは示唆的だろう。また、最近公開されたBBCレディオ1でのスタジオセッションでは、ロードの「Ribs」もカバーしている。インディーやオルタナティブに自身の音楽的アイデンティティを見出しながらも、ポップへの愛情も屈託なく表明するところは、いかにも新世代的。そのような彼の現代的感性が宿っているからこそ、「back to friends」や「undressed」は2025年にこれほどまでの求心力を発揮しているのだろう。


Sombr本邦初インタビュー 時代を揺るがす大型新人の素顔に迫る


もちろん、彼の本当のポテンシャルは現在大ヒットしている2曲だけでは計り知れない。「caroline」から「back to friends」で目を見張る飛躍を見せたように、今後もさらなる変化と進化を遂げていく可能性は十分にある。ソンバーも自分の音楽的パレットをいっそう広げていくことには意欲的だ。

「いろんな音で実験するのが好きだし、その曲にとって自然に感じられる方向なら、どんなスタイルでも挑戦していいと思ってる。ジャンルに縛られたくないんだ。自分はいろんなタイプの音楽が好きだし、これからもいろんなサウンドを探っていきたいと思ってる。いつも音楽を聴いてるし、本当にたくさんのアーティストやジャンルから影響を受けているからね。何より、自分の好きなことをこれからも続けていけるなら、それがいちばん大事なことだと思ってるよ」。

まさにいまソンバーは世界的なブレイクスルーの真っ只中にあり、音楽家としても飛躍的な成長期にある。そんなタイミングで彼の初来日ライブをサマーソニックで観られるというのは、幸運というほかない。テレビ出演映像やライブのオーディエンスショットを見る限り、長身で甘いマスクを持ち、ロックスター然としたセクシーなファッションでステージに立つソンバーは存在感抜群。ラガーディア高校ではボーカルを専攻していただけあって、シンガーとしての地力も感じる。
そして何より重要なのは、彼をサマーソニックのSONIC STAGEのような規模感で観られるのは、今後ほぼ間違いなくありえないということ。だからこそ、もう二度と訪れないだろう貴重な機会を絶対に逃さないでほしい。

ソンバーは6月20日、新曲「we never dated」をリリース

Sombr本邦初インタビュー 時代を揺るがす大型新人の素顔に迫る

ソンバー
『back to friends / undressed』
2025年8月13日リリース
大ヒットシングルを両A面として収録した日本企画8cmCDシングルが緊急発売
詳細:https://wmg.jp/sombr/discography/31619/

Sombr本邦初インタビュー 時代を揺るがす大型新人の素顔に迫る

「we never dated」
配信リンク:https://warnermusicjapan.lnk.to/sombr_weneverdated

Sombr本邦初インタビュー 時代を揺るがす大型新人の素顔に迫る

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SUMMER SONIC 2025
2025年8月16日(土)・17日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
※ソンバーは8月16日(土)大阪会場、8月17日(日)東京会場に出演
https://www.summersonic.com/
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