ティム・カーマン(Dr)、アダム・スコーン(Org)、ジミー・ジェイムス(Gt)。
※2025年11月に単独公演を開催、詳細は記事末尾にて
米・オハイオ州ラヴランド出身のオルガン・インストゥルメンタル・バンド、Parlor Greens(パーラー・グリーンズ)が7月25日のフジロックフェスティバルに出演!彼らの有機的なサウンドは、多くのオーディエンスを熱狂・魅了させること確実!話題になる前にチェックしよう。@SMASHjpn @fujirock_jp… pic.twitter.com/h5uejjvlYU— Silent Trade (@SilentradeMusic) June 12, 2025パーラー・グリーンズの自己紹介動画(日本語字幕&スタジオ演奏つき)
2024年のデビューアルバム『In Green We Dream』
3人の驚くべきケミストリー
─まずは、この3人がどうやって集ったのか。テリーさんのアイデアだったと聞いてます。
ティム・カーマン:その通り。そもそも、僕とテリー・コール(コールマイン・レコードのオーナー)は、オルガン・トリオのレコードが作りたいなという話をずっとしていたんだ。トリオをやるなら、僕自身が大ファンだったアダム・スコーンとジミー・ジェイムスをこのプロジェクトに招き入れたいと思った。つまり、そのアイデアを実行したんだ。

左からジミー・ジェイムス(Gt)、アダム・スコーン(Org)、ティム・カーマン(Dr)Photo by Whitney Pelfrey
─以前から3人にはつながりはあったんですか?
ティム:僕は、ふたりのことはよく知っていたよ。ジミーとは、僕がGA-20(コールマインの系列レーベル、カーマ・シェフから多くのアルバムをリリースしているバンド)でプレイしていた時期にツアーでよく一緒になったし、会えばいろいろ音楽の話をしていた。アダムとは、実はこのプロジェクトのコンセプトが決まってから初めて直接会ったんだけど、それ以前から彼のオルガンの大ファンだったんだ。彼がオルガンを弾いていたスコーン・キャッシュ・プレイヤーズ(2008年からフロリダを拠点に活動)も彼自身のトリオも最高だし、僕が敬愛するジャズ・ミュージシャンたちとも彼はよく一緒に演奏している実力派だからね。
アダム・スコーン:ティムからのオファーにはすごくワクワクしたよ。ティムのドラムが大好きだし、ジミーともいくつかのプロジェクトで仕事をしたことがあった。この3人で一緒にいると、ただ好きな音楽の話をしてるだけでどんどんアイデアが湧いてくるんだ。僕らは同じページの登場人物って感じがした。ジミー、他に付け加えたいことあるかい?
ジミー・ジェイムス:俺も2人のことは以前からよく知っていたよ。ティムがブルースやジャズも叩けると知っていたし、アダムはスコーン・キャッシュ・プレイヤーズのメンバーとして有名だった。
ティム・カーマン、GA-20でのドラム演奏
アダム・スコーン、スコーン・キャッシュ・プレイヤーズでのオルガン演奏
─確かに、スタジオでセッションを始めて10分で「West Memphis」が完成してしまったんですよね。そのまま3人で曲作りを続けて、3日後にはアルバム全曲も完成してしまったと聞いてます。ある程度予想していたとはいえ、そのケミストリーの強さは自分たちでも驚きだったのでは?
ジミー:俺の記憶では、飛行機で一緒にオハイオまで行って、降りてそのまま演奏を始めたような感じだった。テリーとティムが何か話してて、やがてティムとアダムでジャム・セッションを始めて、それがすぐに「West Memphis」という曲になった。俺自身はその時点ではどんなサウンドになるのかまでは深く考えていなかったな。ただ、みんながどこに行くのか、俺は流れに身を任せてみようと思った。いつもそれが俺のやり方なんだ。
ティム:ミュージシャンとして2人が大好きだったから、「West Memphis」みたいないい曲がすぐにできたこと自体は、それほど驚かなかった。でも、よく考えたら、あのときこの3人で初めて音を合わせたんだから、確かに驚くべき出来事だったんだろうね。1曲ができたら他の曲もどんどんできていった。
ジミー:俺もティムと同じ意見だね。つまり、同じフィーリングを共有しているんだ。最高の音楽は、ただただ楽しんで演奏しているときに生まれる。フロー、ケミストリー、フィーリング、そういうものを引っ張り出す鍵は楽しむことなんだよ。
アダム:付け加えさせてもらうなら、音楽に対する彼らの知識が膨大だから、ということもある。僕らはみんな優れたリスナーでもあり、今この演奏で何が起きているかわかる。ジミーはソウル・ミュージックとギターについては百科事典のような人だし、ティムのドラムにもあらゆる引き出しがある。
─オルガン・トリオとしてパーラー・グリーンズには、ブッカー・T&ザ・MG'sやミーターズのようなアメリカ南部のソウルインストや、1960年代のブルーノートやプレステッジ・レコードからリリースされていたソウルジャズなど、いろんな要素を感じます。とりわけ強く意識して3人で共有したお手本はあるんでしょうか?
アダム:ジミーのギターにはモータウンやスタックスのソウルミュージックからの影響が大きい。僕のオルガンは、確かにブルーノートからよくリリースされていたタイプのソウルジャズに影響を受けている。でも、特に何か下地になったサウンドのタイプがあるというより、僕ら3人がそれぞれ少しずつ異なる音楽から影響を受けていることが素晴らしいものを生んだと言うべきだろうな。
ティム:そこがこのグループの面白いところだよ。スコーンと僕は、60年代のグラント・グリーンやビッグ・ジョン・パットン、ブラザー・ジャック・マクダフといったアーティストが大好きで、自分たちのバンドでその伝統に則ったオルガン・トリオの音楽をやってきた。パーラー・グリーンズでは、そこにジミーのギターがひねりを与えて、ユニークなものにしてくれるんだ。彼はスティーヴ・クロッパーのようなアプローチもするし、ジミ・ヘンドリックスのプレイからもすごく影響を受けている。ギター・プレイに鋭さがあって、燃え盛るエネルギーがある。
アダム:伝統か革新かを選ぶよりも、自分自身の音楽を作ることが重要だといつも考えているんだ。僕らはこれまで本当にいろんなシチュエーションで演奏してきたから、それぞれ自分たちの声を楽器の演奏で表現できているし、それが特別なものになっていると思う。
ティム:まさにその通り。僕たちはそれぞれの個性を持っていて、それを合わせることで他にはないサウンドが生まれているんだ。
パーラー・グリーンズの新旧お気に入り曲をまとめたプレイリスト。ブッカー・T&ザ・MG's、グラント・グリーンから、フジロックに出演するギャラクティック、おとぼけビ~バ~まで
─音楽に詳しい人たち同士だと、誰かが主導権を取ろうとしたり、好みや方向性を押し付けるようなことも起こりがちですよね。
ティム:確かにそういうバンドもいるよね(笑)。でも、ありがたいことに僕らは3人ともすごく気楽な人間なんだ。結構珍しいケースだと思う。人間としても、ミュージシャンとしても、お互いを尊重して、全体の流れに身をまかせることができる。スコーンがさっき言ったように、3人でひとつのグルーヴそのものになれるんだ。

ティム・カーマン(Dr)Photo by Tyler Jordan Soucy
─YouTubeで見ることができるライブ映像だと、まさにその最高のフィーリングが目に見えます。特に、ギターを弾いてるときのジミーさんの表情には引き込まれるし、生でライブを見たくなるんですよ。そういう意味で、自分たちの演奏の見え方にも魔法が宿っていることは予想してました?
ティム:いい質問だね(笑)。何年も音楽をやってきてつくづく思うのは、感情をごまかしたりしちゃいけないってこと。少なくとも僕はそう信じてる。このグループでステージにいるときは、みんなの笑顔も本物なんだ。でも、見た目まで考えてこの3人で組んだわけじゃなかった。ただ僕は、自分が大好きなミュージシャンであり人間的に尊敬できるメンバーといい音楽を作りたかっただけ。だけど、結果的に僕らはステージ上ですごく楽しそうにしていて、オーディエンスもそれを喜んでくれているんだろうね。

ジミー・ジェイムス(Gt)Photo by Tyler Jordan Soucy
アダム:僕自身、演奏しているときは何も考えてない。起きていることに身を任せているし、そういう状態が僕は好きなんだ。ティム、ジミーと一緒に演奏することで、僕はそうなる。オルガンを通じて、彼らをサポートしたいと願っているし、彼らからサポートされているとも感じる。彼らの音でいつも奮い立たせられるし、もっとやりたいと思うんだ。
ジミー:モータウンの偉大なベーシストだったジェームス・ジェマーソンは、息子にこんなことを言ってたそうだ。「(その音楽の良さを)感じてないなら弾くな」ってね。俺はその言葉を肝に銘じてる。それは、感じたままに弾くって意味でもある。そのときは100%の自分を出さなくちゃね。サイコロを振ったら、どんな目が出るかわからないから不安かもしれない。でもサイコロを振るのは楽しいだろう? 音楽はそういう冒険なんだよ。どこに行くか分からない冒険を俺たちは常にしている。だから毎晩同じ曲を演奏していても、毎晩違うものになる。サイコロを振って何が起こるかを試しているからさ。

アダム・スコーン(Org)Photo by Tyler Jordan Soucy
パーラー・グリーンズの必聴曲、影響を受けたプレイヤー
─3人の人間性と音楽観がそのままステージで出ているんですね。では、せっかく3人揃ったインタビューなので、パーラー・グリーンズのレパートリーから思い入れが深い曲をそれぞれ教えてもらえますか?
ティム:「Irish Goodbye」だね。1stアルバムの中では、直球じゃなくて少しカーブするボールを投げたような曲だ。僕のドラム的には、右手にマラカスを持ったままドラムをプレイするのが楽しかった。そのやり方は、古いレコードで聴いたジミー・コブのプレイから学んだんだ。ドラム・パターンのアイデアをスコーンに伝えたら、彼はすごく変わったメロディを思いついて、それが曲になっていった。僕らの作曲プロセスをよく表した曲だとも思う。
アダム:僕は「In Green We Dream」だ。あの曲は僕らのスタジオでの完璧な組み合わせのひとつ。僕とティムのアイデアをひとつにまとめていたら、ジミーが「ヘイ! ちょっと待った。こうしよう」って感じでギターを弾いて、あの最高なイントロを付け加えたんだ。
ジミー:あえて選ぶなら、演奏するのがいつも楽しい「Flowers For Sharon」だな。亡くなったシャロン・ジョーンズへの深いオマージュをカプセルに詰めたような曲で、とてもスローで、とても力強い。もちろん「West Memphis」も重要だし、「The Ripper」や「My Sweet Lord」、「The Jelly Roll」も好きだ。それぞれに言い尽くせない魅力があるんだよ。たとえば「My Sweet Lord」はジョージ・ハリスンの曲をファンキーにカバーしたものだけど、ティムのドラムビートが際立って素晴らしくて、魂に火を灯すような曲になった。「Flowers For Sharon」ではアダムのオルガンがすごい。「West Memphis」には荒削りなグルーヴがあって最高だ。ほらね、どの曲にもいいところがあるんだよ。だから選べない。全部が俺のフェイバリットなんだよ(笑)。
ティム:ちなみに、アルバムのセッションで「My Sweet Lord」をやろうと言い出したのはジミーなんだ。あれをアルバムに加えたのは、僕らはみんなオープンな姿勢でいろんなことに挑戦していくんだと示すいい例だと思う。ジミーの提案に僕らもすぐに反応できた。そして、すごくいいものになった。心をオープンにして、不要な用心深さを投げ捨てて音楽に向かえたからこそできたカバーだよ。

左からアダム・スコーン(Org)、ジミー・ジェイムス(Gt)、ティム・カーマン(Dr)Photo by Tyler Jordan Soucy
─では、もうひとつ。自分の楽器でもっともリスペクトしているプレイヤーや楽曲を教えてください。あなたたちを理解するためにもなるし、みんなすごいミュージシャンだから、ルーツを知ることはリスナーにとっても役立つと思うんです。
ジミー:そりゃ大変だ! すぐには選べないよ(笑)。ティム、君から答えてくれ!
ティム:ソウル・ジャズのフィールドで大好きなドラマーは3人いる。ナンバー・ワンはアイドリス・ムハマッド、次がベン・ディクソン。そしてドナルド・ベイリー。アダムは晩年のベン・ディクソンと一緒に演奏したことがあるんだよね。その経験がどんなものだったのか、彼を通じて学ばせてもらってる。
アイドリス・ムハマッド(1939–2014):ニューオーリンズ出身。ブルーノートやプレステッジの録音に多く参加、アーマッド・ジャマル、ルー・ドナルドソン、ファラオ・サンダースらと共演
アダム:僕はニューヨークで育った。あの街は、オルガン・プレイヤーになるには打ってつけの環境だったよ。いろんなジャズクラブでヒーローたちと接することができたからね。まずはジャック・マクダフ。友人たちがよく彼のバンドで演奏していたから、僕もジャックと知り合いになれたし、何度か一緒に演奏もした。彼がピアノで、僕がオルガンを弾いたこともあった。僕の師と呼べる存在なら、間違いなくロニー・スミスだ。最初に会ったとき、僕はまだ15、16歳だった。ロニーのおかげで、やがて僕はルー・ドナルドソンのバンドに入ることができたんだ。彼が別のスケジュールが入っていたライブの日に、代役として僕を推薦してくれたんだよ。そしてもうひとり挙げるなら、もちろん、偉大なるジミー・スミス。ルーのバンドとジミー・スミスとのツーマンがあった夜、当時25歳の僕の緊張といったらなかったよ(笑)。
ロニー・スミス(1942–2021):60年代にサックス奏者ルー・ドナルドソンのグループで頭角を現したオルガン奏者。ブルーノート時代の代表作『Alligator Bogaloo』などで鮮烈な共演を果たし、独自の地位を築いた
ジミー:オーケー。まずは俺の地元シアトルのヒーロー、ジミ・ヘンドリックス。彼の存在がどれほど大きいかは言葉にできないな。それから、B・B・キング、カーティス・メイフィールド、ジェームス・ブラウンの専属ギタリストだったジミー・ノーラン、モータウンのハウスバンドだったファンク・ブラザーズのロバート・ホワイト、もちろんスティーヴ・クロッパー……多すぎるよね、ごめん(笑)。でも、あと3人だけ付け加えさせてほしい。ギタリストじゃないんだけど、俺に最初に影響を与えた人たち。亡くなった母、そして2人の姉だ。彼女たち自身もピアニスト、ドラマー、シンガーだったし、家族が教えてくれたジミ・ヘンドリックスやモータウン・サウンドのレコードに出会わなかったら、俺はこうなっていなかったかもしれない。
スティーヴ・クロッパー(1941–):ブッカー・T&ザ・MG'sのメンバーとして知られ、オーティス・レディングやウィルソン・ピケットなどソウル/R&B名曲の作曲・演奏にも関わった
─フジロックでの演奏をすごく楽しみにしてます。あなたたちの生の演奏を聴くだけでなく、ジャズやソウルのヒストリーも一緒に浴びられる時間になる気がします。ところで、1stアルバムは全34分ですが、ライブではどのように構成していくんですか?
ジミー:ライブでは、いつも俺たちの曲は拡張されるんだ。みんなで音楽の実験をするようなものだよ。アダムがベースラインやコードを変えてきたら、俺もそれに合わせて変化していく。ティムが最高のドラムソロをプレイしたり、ポリリズムみたいな変化を曲に加えてくることもある。毎晩のように音楽は変化するし、拡大していくんだ。音の翼を広げて、俺らは成層圏まで飛んでいくことができる。そう信じてるよ。
今年7月にリリースされた「West Memphis」エクステンデッド・バージョン

パーラー・グリーンズ
『In Green We Dream』
再生・購入:https://colemine.lnk.to/clmn12062

FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
※パーラー・グリーンズは7月25日(金)出演
https://fujirockfestival.com

パーラー・グリーンズ 単独公演
2025年11月5日(水)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
2025年11月6日(木)大阪・梅田 SHANGRI-LA
開場:19:00/開演:20:00
詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4512