快進撃を続けるアルゼンチン発のデュオ、カトリエル&パコ・アモロソ(CA7RIEL & Paco Amoroso)。フジロックでの初来日直前に独占インタビューが実現した。


昨年10月のTiny Desk Concerts出演で一躍注目を集めると、コーチェラやグラストンベリーなど大型フェスでも快演を披露し、この秋にはケンドリック・ラマーの南米ツアーにも参加決定。世界的ブレイクのさなか、絶好のタイミングでフジロック出演を果たす。それに伴い、最新EP『PAPOTA』の日本盤も本日7月16日にリリースされた(世界初CD化)。

挑発的なラッパー、型破りなロックスター、そして最先端のポップアイコンとして躍動するふたり。タトゥーに刻まれた決意、二人三脚で勝ち上がってきた友情の原点とは? 恐るべき新星「カトパコ」の素顔に迫る。

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

左からカトリエル、パコ・アモロソ(Photo by Rafael Avcioglu)

ふたりが交わらせる「唯一無二」の声

ーマドリードのMovistar Arenaで、15000人動員のライブを成功させたばかりですよね。私も現地で観ましたが、歴史的公演と呼ぶにふさわしい盛り上がりでした。あの大きなステージに立って、どんな達成感がありましたか?

パコ:個人的には、ライブが始まった瞬間かな。僕らが登場して、あのプラットフォームの上に立ったとき、会場中が満員なのが見えて。しかもステージから火柱が上がってて、すごく熱くてさ。あの炎で肌が焼けそうになって(笑)、目から涙が滲んできて。でも、それがまた感動的だった。
つまり、感動と熱と混乱が全部一気に押し寄せてきたんだよね。だから、もう最初の一瞬から「全部最高だな」って心から思えたんだ。

カト:僕は最後のほうが印象的だったな。すべてが終わったあと、お客さんが拍手してくれたときに、やっと疑問が消えたんだ。僕らがやってることを、みんなが僕らと同じぐらい楽しんでくれているってようやく確信できた。僕自身はものすごく楽しんでたけど、ああいう大きな会場で炎とか照明とか、演出も全部ド派手だと、観客との距離をあんまり感じられなくなる。みんなが近くで叫んでくれたら、うまくいったのがすぐわかるけど。

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

2025年5月28日、15000人を動員したマドリード・Movistar Arena公演(Photo by Manu Pasik)

―会場では、Tiny Desk出演時のパコさんを象徴する、水色のファーハットをかぶったファンを何人も見かけました。あのアイコニックな帽子をどうやって見つけたんですか?

パコ:あの頃、僕は髪を伸ばしていて、あまり気に入っていなくて。Tiny Deskのときに、髪型をどうしたらいいか悩んでいたんだ。それで、「じゃあ帽子をかぶるのがいいんじゃない?」っていうアイデアが出てきた。そういう事情があって、スタイリストが帽子を探しに古着市に行って、あれを見つけたんだ。
それで僕に送ってくれたんだけど、最初は「ちょっと派手すぎない?」って思った。でも彼女に「とにかくかぶってみて」って言われて。

それからあの帽子には、もう自分自身の命が宿っちゃって、独自のストーリーが始まったんだよね。だから最初は、Tiny Deskで髪型が決まらないからだったんだけど、最終的には「あの帽子が似合う」と信じることにしたのさ。

カトパコの「Tiny Desk Concerts」は現時点で約3900万回再生を記録

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

パコの帽子は公式マーチで販売中

ーライブを見ながら驚いたのは、おふたりのパフォーマンス能力の高さ。「IMPOSTOR」に〈Tiny Deskのせいでめちゃくちゃだ / 僕ら歌もラップもまともにできないのに〉というラインがありますが「どこがだよ!」と思いました(笑)。お互いの声の魅力をどのように捉えていますか? 

パコ:カトはうまく歌えるし、エフェクトに頼らなくても成立する声だよね。クラシックな楽曲だって歌えるし、何でもこなせる。歌える表現の範囲が本当に広いんだ。そこが一番すごいと思う。

カト:パキート(パコ)にはとんでもない武器があるんだ。僕が本当にうらやましいのは、アーバンな曲とか、アルゼンチンらしい語り口が必要な曲で、彼の声が完璧にハマるところ。
彼はすごくユニークな声を持ってる。僕はいろいろなスタイルに対応できるタイプだけど、彼の声は唯一無二なんだよ。腐れ縁の”陰と陽”だね。

ーシンガー/ラッパーとしてのルーツには、どんなアーティストたちがいて、どのような影響を受けてきたのでしょうか?

カト:僕が好きなのは、まずパンテラ。(フィル・アンセルモの)あのシャウトがたまらない。ジャック・ブラックの話し方や演技も大好き。あと、アンダーソン・パークは何でもできるし、しかもfacha(スペイン語のスラングで”カッコよさ”)がある。スタイリッシュで、スウィングもあるんだよね。

パコ:ここ数年で一番影響を受けてきたのはドナルド・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)。脚本を書いたり、俳優をやったり、音楽も作ってる。彼のやってることって、どれもすごく共感できるし、全部が笑えるのも最高なんだよね。ここ最近では、一番シャープで刺激的な存在だと思ってるよ。


カトパコは過去にパンテラ「Walk」をカバーしている

ー「OUKE」「Cono Hielo」といった初期の音源を聞き返すと、パコさんの歌い方やラップのスタイルが今と昔で大きく変化しているように感じました。現在のハスキーで魅力的な声を、どのように発見したのでしょうか?

パコ:意識的な変化ではなかったね。たとえば(2019年リリースの)「OUKE」は僕らが作った3つ目の曲で、まさに僕が歌い始めたばかりの頃に作ったものなんだ。だから、当時はまだ歌声もあまり磨かれてなかったし、粗削りだったと思う。でも、そこから時間が経つにつれて、曲を重ねていくうちに、少しずつ「自分らしい表現」が見えてきたのさ。

パコのハスキーな歌声が大活躍、ライブ定番曲「BABY GANGSTA」

人生の転機とプログレッシブなルーツ

ー次はカトリエルさん。昔のインタビューで「どうして顔に”7”のタトゥーを入れたんですか?」という質問に対し、「一生残る傷が欲しかったんだ。その傷が、昔の自分のようには二度となりたくないって思い出させてくれるように」と答えていました。自分がアーティストとして生まれ変わろうとした瞬間を、どのように記憶していますか?

カト:あれはすごく決定的な時期だった。あの頃、僕はアルゼンチンの電車で働いていて……つまり、電車に乗って、芸をして、帽子を回して、お客さんから投げ銭をもらうっていうことをしていた。人それぞれが「これくらいかな」って思う額を入れてくれるんだ。その頃の僕は、自由ではあったけど、経済的な余裕はなかった。
デザート付きのまともな食事を食べられるような手段がなかったんだ。

顔にタトゥーを入れたのは、さっき君が言ってくれた理由に加えて、もう一つ理由があってさ。顔にタトゥーがあると、ファストフードのチェーンとか、そういう企業ってまず雇ってくれないでしょ? だから僕は、自分の未来からそういう選択肢を消しておきたかったんだ。それよりも、今の自分がやってること、つまり「表現すること」に関わる道に進みたかった。

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

Photo by @faraci

-おふたりは当初、ロックバンドとして活動していたそうですが、ラップやアーバンミュージックに転向して現在に至るわけですよね。そのことも今の話と関係してそうですか?

カト:少し関係あるね。一番の要因は、パコといると(方向性が)常に変わっていくから。僕らは飽き性なんだよね。だから、創作のプロセスも変えるし、サウンドも変えるし、意見も変えるし、服も変える。ものの見方も、中身も外見も全部変わり続けるんだ。

今は、もっとポピュラーなものを作ることに力を入れている。踊れないプログレッシブ・ロックから転向したんだ。
プログレは踊れないから、ポップにシフトした。そこで僕らは、ある意味で”稼げる道”を見つけたのさ。だからこそ、いろんな面で結果を出せているんだ。つまり回答をまとめると……まず第一に、僕らは何にでもすぐ飽きるってこと。第二に、今はお金が稼げてるってこと。イージーな道を選んだとは言ってないよ。今、僕らはポップを作ることを学んでる最中なんだ。

Astor時代の映像、パコはドラムを担当していた

-おふたりが以前に組んでいたAstorは、欧米のプログレや、ルイス・アルベルト・スピネッタなどアルゼンチン・ロックに通じる音楽性を掲げていたように思います。そういった前衛的なロックからの影響は、現在の音楽性にも反映されていると思いますか?

カト:その質問に答える前に言っておきたいことがあるんだ。君(筆者)の後ろにあるレコード棚についてなんだけど……そこにフランク・ザッパのレコードがあるよね。彼って僕が生まれた日に亡くなったんだ。生まれ変わりなんじゃないかって言う人もいるんだよ。

―お好きだと聞いたので飾ってみました(笑)。

カト:いいね、(ザッパは)マジでイカれてる。それで、うん。少しは残ってると思うよ。今はパコと一緒にスタジオに入ると、彼は主にリリックに集中する。彼は歌詞に対してすごく神経質で、僕はサウンドに対して神経質になる。

で、僕の担当は、スタジオでギターを弾いたり、いろんな楽器を演奏したりするんだけど、魂と手に染みついてるものって、やっぱりプログレなんだよね。だって、それが僕の人生でずっと身に着けてきたものだから。だから、プログレからは逃れられないんだ。ああいう音楽がまたいつか戻ってきてくれたらって思ってる。音楽には周期があるからね。僕としては、ポップの中にちょっとだけでもプログレの種を残していきたい。どうにかしてね。プログレのガチなファンたちからは怒られるかもしれないけど、本当にそう思うんだ。

プリンス×プログレ的な「BAD BITCH」はカトの見せ場、後半ではギターソロも披露

ルイス・アルベルト・スピネッタが率いたプログレ・バンド、インヴィシブレの曲「El Anillo del Capitán Beto」をカバーするカト

ーおふたりの音楽を、ローリングストーン誌US版は「プログレッシブ・トラップ」と表現していました。でも、トラップだけでは到底説明できない、もっと自由でフリーキーな音楽性を持っていると思います。

カト:「プログレッシブ・トラップ」って言葉、初めて聞いたけど、めっちゃ気に入ったよ。褒め言葉みたいだ。僕たちはトラップ枠に押し込められてるんだけど、なんでだろう。僕が顔にタトゥーを入れてるからとか? ステージで叫んだり、群衆を煽ったりするからかな。でも、「プログレッシブ」っていうことは、常に変化してる音楽ってことでしょ? たしかに僕らの音楽は、時間の取り方もキー(調)もどんどん変わっていくし、(ジャンル的にも)すごく幅が広いよね。エクレクティック(折衷的)という意味でね。

ーパコさんは2019年のインタビューで「”未来のパンク”になりたい」と語ってましたよね。

パコ:そのインタビューのこと、今言われて思い出したよ(笑)。あの頃の僕らは、完全にトラップ全開だった時期でさ。「Jala Jala」が出たばっかりの頃だったと思う。僕らの音や曲に、いちばんトラップが色濃く出てた時期だった。最近はもう、トラップとか”未来のパンク”は他の誰かに任せた方がいいかな、って気分だね。まあ、今でも時々……たとえば「LA QUE PUEDE, PUEDE」のヴァースとかには、そういう「攻撃的で荒々しいもの」がちょっと戻ってくることもあるけど。

カトパコことCA7RIEL & Paco Amorosoをついに生で目撃!

今見るべきアーティストNo.1と確信していたけど、まさかここまで凄いとは。世界的ブレイクスルーの真っ只中だけあり勢いが桁違い。15000人の大合唱でアリーナが揺れてた。フジロックに来るのは奇跡だね。#カトパコ

↓見ればわかる。凄すぎ pic.twitter.com/Sehn8RhNBe— 小熊俊哉 (@kitikuma3) May 29, 2025カトパコのラップが限界までせめぎ合う「LA QUE PUEDE, PUEDE」もライブ人気曲(動画は筆者撮影)

ーカトリエルさんはメタルも好きなんですよね?

カト:うん、僕は今でも(Barroという)メタルバンドをやってるよ。自分としては、アルゼンチンで最高のメタルバンドだと思ってる。

ーライブを観て、カトリエルさんのギターにも驚きました。影響を受けたギタリストは?

カト:一番はスティーヴ・ヴァイだね。それから僕の父さん。料理しながらスティーヴィー・レイ・ヴォーンの曲とか、ペンタトニック・スケールを弾いたりしてたんだ。他には誰かいたかな……ヌーノ・ベッテンコート! エクストリームのね。ほんとに愛してる。そしてもう一人、パンテラのダイムバッグ・ダレルも!

カトが参加するメタルバンド、Barro

『PAPOTA』のユーモア、6歳から続く永遠の友情

ーTiny Deskでの成功を経て、最新作『PAPOTA』ではラテン、ジャズ、ソウル、ファンクなど生演奏的なアプローチに取り組んでいますよね。現在のオーガニックなサウンドの影響源を挙げるとしたら?

カト:結局のところ、僕らに一番インスピレーションを与えてくれるのは、僕らの友達(バンドメンバー)なんだ。だって、その友達たちが、すごくジャジーな音楽を聴いていたり、アレンジャーだったり作曲家だったりするんだよ。じゃあ、僕らの友達や僕ら自身が何を聴いてたかっていうと……なんでもありさ。アンダーソン・パーク、マイルス・デイヴィス……名前を挙げればキリがないほど、無数のバンドやアーティストを聴いてきた。

Tiny Deskのとき中心にあったのは、やっぱり演奏していた仲間たち。彼らにもある程度自由にやってもらっているんだよ。そこから生まれたのが、今のこの新しいフェーズ。僕らが本当に得意としてること、つまり「演奏すること」や「素顔をさらすこと」に取り組んでいる。メイクもしてないし、オートチューンも使ってない。

ーバンドメンバーについても質問しようと思ってました。ライブでの演奏も圧巻ですが、出会いや魅力を教えてください。

カト:ベーシストのフェリペ・ブランディは、Astor時代からの付き合いでね。もう何年も前から知ってる仲間だよ。僕(とパコ)は今31歳だけど、ハビエル・ブリンはまだ23歳の若者で、以前は僕のライブを観に来てたんだ。何年か前に「クラシック音楽に強い僕の母校で、今一番のピアニストは誰なのか?」を調べる必要があった。だから学校に行って、「誰が一番上手いんだ? 」と聞いて回ったんだ。当時の僕はもう卒業していて、そこそこ名前も売れてたし、それなりに学校での知名度もあった。そこで浮上してきたのがハビエル・ブリン。ちっちゃい子で、まるで胎児みたいなサイズ(笑)。でも、その子がピアノを弾く姿は衝撃的だった。

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

写真左上がフェリペ・ブランディ(Ba)、三連サングラスがトレードマーク。中央奥がマクシ・サジェス(Perc)、右上がエドゥアルド・ジャルディーナ(Dr)(Photo by Va Nelsen)

ハビエル・ブリンが鍵盤を弾くジャズバンドの演奏

カト:ドラマーのエドゥアルド・ジャルディーナの場合は逆で、彼のライブも観に行ってたし、ずっと僕のアイドルだったんだ。そのエドゥアルドと今、同じステージで演奏してるなんて信じられないよ。だから(バンドに)3世代のミュージシャンがいて、お互いに繋がっていて、大好きな家族みたいだ。父親、母親、何でも壊すクソガキたちがいるんだよ(笑)。それから、PAI(マクシ・サジェスの愛称)っていうパーカッショニストがいてね。彼のスウィング感はもう別格だよ。あれ以上はないね。

4人とも、お金の余裕がなかった頃から大好きだ。みんな各々パワーを持っていて、それらが集まると特別な何かが生まれる。大きな敵を倒さなきゃいけないときは力を合わせて、ひとつの巨大なメガゾード(『パワーレンジャー』に登場する合体ロボ)にならなきゃね。

エドゥアルド・ジャルディーナのドラムソロ

この投稿をInstagramで見るPAI(@maxisayes)がシェアした投稿マクシ・サジェスのパーカッション演奏をフィーチャーした映像

ー『PAPOTA』では「マッチョな男らしさ」をユーモラスにおちょくってますよね。

パコ:僕らのプロジェクトには、いつもユーモアが根底にあるんだよね。それと今起きてること(Tiny Desk以降の急激な変化に伴う戸惑いや葛藤)を作品に反映させているんだ。今って、SNSには”自称・成功の伝道師”みたいな人たちがいて、有料の講座をやっていたりするよね。 「俺みたいになりたければ、成功したければ金を払え」とかさ。ああいう現象をちょっと茶化してみたかったんだよね。それにChatGPTだったり、そういう”今っぽさ”を反映させて、ビジュアル面でも取り入れようと思ったんだ。

ー「#TETAS」の後半、Y2Kボーイズグループみたいなノリで歌う展開には笑ってしまいました。あのパートはどうやって思いついたんですか?

パコ:あれはスタジオで作ってた時点で、最初からちょっとふざけた曲だったんだよね。あまり意味のない英語の単語を使わなきゃいけなくて……(MVの冒頭に)”ジンバランド”というプロデューサーが登場するんだけど、彼が「こういう言葉を使って、こんな感じの曲を作ってくれ」ってオーダーを出す、っていう設定なんだ。だから、意味がない早口言葉みたいな感じになってる(笑)。で、「ここには、あの時代のバックストリート・ボーイズっぽいサビが必要だ!」ってなったんだ。ぶっ飛んでいて、なおかつ引き込まれるようなサビが要るって。どこまで笑いのボリュームを上げられるかの挑戦だった。この曲を聴いてる人たちに「何これ?」って思わせつつ、気づいたら一緒に口ずさんでいるような、みんなが好きにならずにいられないような曲にしたかったんだ。

ー個人的には「EL DÍA DEL AMIGO」が大好きです。この曲ではおふたりの友情にフォーカスしていますよね。

カト:友情って誰もが持ってるものじゃない? 少なくとも一人は親友って呼べる人がいるはずだし、それって本当に大切なことだと思う。それに、あの曲はライブで演奏するのがまた最高でさ。そこに友情が生まれるんだ。1万人を相手にあの曲を歌うと、家族と一緒にいるみたいな感じがする。もちろん(観客が)少なかったとしても、3人しかいなくても、叫びながら歌うよ。だからこれは、まさしく友情の賛歌だ。僕は友情って、人間にとっていちばん素敵なものだと思う。

ーその「EL DÍA DEL AMIGO」は、〈君と出会った日のこと、覚えてる? / あの日、僕は「君のためなら命だって懸けられる」って思ったんだ〉という一節から始まりますが、おふたりが初めて出会った日のことは覚えてますか?

カト:僕らが出会ったのは6歳のときだった。6歳になると、こっち(アルゼンチン)では小学校に上がるんだ。”プリマリア”って言うんだけど、5歳まで幼稚園に通ってて、6歳で新しいクラスメイトと出会う。6歳の子どもにとっては、もうまったく新しい世界なわけさ。

それでね、どうなったかっていうと……僕ら、たまたま隣同士の席に座ったんだ。ほんとに偶然、同じ机の横に。で、先生が出席を取り始めるんだけど、「カトリエル・ゲレイロ」って呼ばれて、僕が「はい!」って手を挙げた。次に「ウリセス・ゲリエーロ(パコの本名)」って呼ばれて、彼も「はい!」って手を挙げた。僕たち名字がすごく似てたから、先生が聞いてきたんだよね。「あなたたち兄弟なの?」って。で、僕らは顔を見合わせて「うん」って答えた(笑)。それが僕らの出会いの日。僕らは最初から”兄弟”ってことになってたんだ。本当にクレイジーな出会いだったよ。

フレッド・アゲインとの関係、日本は「世界一行きたかった場所」

Instagramの「Close Friend Only」というインタビュー企画で、「未来についてワクワクしていることは何?」というカトリエルさんの質問に対して、パコさんは「日本に行くこと」と即答してましたね。

カト:僕らにとっては「別の惑星に行く」のに一番近いことだから。ほんとに、そんな感覚。文字の書き方も逆だし、いろんなことが僕らの国とはまるで反対。聞いた話だと、すごいとこらしいね。全然知らないんだけどさ(笑)。でも、「未知のものに惹かれないわけがない」って感じなんだよね。

パコ:日本にはずっと前から物凄く行ってみたかったんだよね。地下鉄か電車に乗って、全然知らないところで降りて、ふらっと入った店でラーメンを食べてみたいな。ちょっとブラブラしたり。他愛のないことをやってみたいね。

ー最近、Twitchでフレッド・アゲインとのセッションの様子を配信していましたよね。そこでは未発表のコラボ曲も披露されてました。彼はフジロック初日のヘッドライナーで、カトパコの前日に登場するわけですが、どんなふうに知り合ったんですか?

パコ:彼とは去年11月、僕たちがロンドンでライブをしたときに出会ったんだ。どうやってコンタクトが取れたのか、正直あんまり覚えてないんだけど(笑)。運良く数時間だけスタジオで会うことができた。それでウマが合って、「何かやれたらいいね」ってなってさ。その日、一緒に作ったトラックのバウンス(仮ミックス音源)を、WhatsAppのグループチャットでやりとりしながら磨いていったんだ。そこから今年2月にまたロンドンへ行って、何日かスタジオで再び一緒に作業した。次はギリシャでまた合流する予定だよ。彼はもう新しい友達って感じ。本当にすごいプロデューサーで、素晴らしい人物でもある。彼が僕たちの人生にいてくれることを、心から嬉しく思ってるよ。

カト:フレッド、大好きだよ!

ーそこまでの仲だったとは! フジロックでの共演も期待できそうでしょうか?

カト:彼って「パンドラの箱」みたいな人なんだよね。次に何をするのか、誰にもわからない。だから、彼といると何が起こるか全部サプライズなんだ。実際のところ、彼と一緒にいるときって、すべてが驚きの連続だから。

Twitchで披露された2つの未発表コラボ曲

ー7月のフジロックでは、どんなライブが期待できそうでしょう?

パコ:日本では、スペイン公演と同じくフルバンド編成で臨むよ。もし許されるなら、炎の演出も入れたいんだけど……日本って花火とか火の演出に寛容かどうかがわからないから。火が使えなかったら、僕らのやり方で自分たちの歌を歌うよ。

それから、日本はファッションが本当に特別な場所だと思ってるから、僕たちも特別なルックで登場するつもり。僕らにとってもすごく大切なショーになると思うし、めちゃくちゃ楽しみにしてるよ。何度でも言うけど、日本は世界中で一番行きたかった場所だから。今回の来日は、本当に夢みたいなんだ。

ー何かサプライズもありそうですか?

カト:もちろんあるよ。僕らはいつだって、ちょっとしたサプライズとかギフトを用意するのが好きなんだよね。だから……「予想外のことを、楽しみにしてて」って感じかな。

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由


「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

Photo by Rafael Avcioglu

ー『PAPOTA』の日本盤には、ボーナストラックとして「DUMBAI」が収録されます。ライブのオープニングを飾る人気曲ですが、制作時はどんな意図を込めたのでしょうか?

パコ:あの曲には、特別なメッセージなんてないんだ(笑)。みんなで盛り上がって、気持ちよくなるための曲だよ。ポップな感じで、「みんながクラブで聴ける曲」「パーティーでかかる曲」を作りたかったんだ。そして今や「DUMBAI」は、僕らの楽曲の中で一番ヒットしている。ちょうど今(取材時)、僕たちはスタジオにこもっていて、すごくディープで、いろんなことを語ろうとしている楽曲を作ってる真っ最中なんだけど……「DUMBAI」はその真逆。楽しむための曲だから。

カト:頭を空っぽにして、踊ってほしいね。

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「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

『PAPOTA』
カトリエル&パコ・アモロソ
国内盤CD:発売中
対訳/ライナー/ボーナストラック付き/(初回仕様限定)オリジナル・ステッカー封入
購入:https://ca7rielpaco.lnk.to/Papota_JPAW

【収録曲】
1.インポストール
2.#テータス
3.レ・フォロ
4.エル・ディア・デル・アミーゴ
5.ドゥンバイ(ライヴ・アットNPR MUSICタイニーデスク)
6.エル・ウニコ(ライヴ・アットNPR MUSICタイニーデスク)
7.ミ・デセオXバッド・ビッチ(ライヴ・アットNPR MUSICタイニーデスク)
8.ベイビー・ギャングスタ(ライヴ・アットNPR MUSICタイニーデスク)
9.ラ・ケ・プエデ・プエデ(ライヴ・アットNPR MUSICタイニーデスク)
10.ドゥンバイ *ボーナス・トラック

「カトパコ」大いに語る──6歳から育んだ友情、プログレッシブな音楽観、日本に憧れる理由

FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
※カトリエル&パコ・アモロソは7月26日(土)出演
https://fujirockfestival.com
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