―気づけば今年も半分が終わりました。皆さんの活動を振り返ると1月は「"FOCUS" ASIA TOUR」で北京・成都・武漢・上海・深圳・広州で公演をして、帰国後は2月までファン投票型ツアー「3rd SELECTION TOUR」を開催。3月には「JOINT GIG 2025」でOmoinotakeとの対バンに加えて「Billboard Live Tour 2025」も行いました。4月は「ARABAKI ROCK FEST.25」、5月には中国最大級のフェス「Super Strawberry Music Festival」の2箇所で初出演を果たすなど、目覚ましい活動です。改めてどんな上半期でしたか?
YU:1月に中国でツアーをしたのが、はるか昔に感じるよね(笑)。
KENJI:うん、それだけ色々と活動できた上半期に感じますね。
CHOJI:最近やれていないけど、前半はライブをすごいやったね。
YU:ほぼ毎週ライブがあった。
KENJI:今は制作期間中で落ち着いているんですけど、この状態が例年の普通だったからね。
SHUKI:制作に関しては、自分たちのことを振り返って「ここからどうする?」と話し合いを重ねてきました。
─憧れのままではダメ?
SHUKI:どこまで行っても僕らの憧れているアーティストを超えられないな、と思った瞬間があって。だったら自分たちにしかできないこと・自分たちの強みを再確認して、それを強化することが、このバンドにとって一番のオリジナリティに繋がると思ったんです。だからこそ、自分たちの中でアイドラ像が固まっていたとしても「人から見たらどうなんだろう?」と立ち止まって考えてみた。「意外とこういうところも、僕らの強みなんだ」と俯瞰しつつ、それを踏まえてどういう曲を作っていくべきかを模索した半年間でしたね。
─結成10周年を経て、改めてバンドを見つめ直したと。
SHUKI:はい。楽曲制作をする度に「今、ファンの人たちが気に入ってくれている曲って、どの辺なんだろう?」「この曲はどこが好かれているんだろう?」という話し合いもしました。とはいえ、昔に作った僕らの人気1位の曲をそのままやるかって言うと、それは面白くない。去年までバンド力を強めて地盤を固めたからこそ、昔の僕らじゃできなかったスキルや心の持ちようも含めて、さらにパワープした作品を作ろうと励んでいます。
─今、アイドラは海外でも精力的にライブをされています。
SHUKI:初めて中国でライブをしたのが2年前なんですけど、驚いたのは日本と中国で好かれている曲が違っていて。チルな曲を演奏すると、向こうでお祭り騒ぎの状況になることが多々あったんです。日本とは全然違う思考で、ライブのセットリストを組み立てるのはすごく面白いです。
―冒頭で触れた「”FOCUS” ASIA TOUR」は、日本だけでなく中国でもチケットが即完しました。海外ライブのキャパも広がり続ける状況について、どのように感じていますか?
KENJI:初めて中国でツアーした時もチケットを即完できて、「自分のところにも来てほしい」って声をたくさんいただいたんです。その結果、今年開催した2回目の中国ツアーもちゃんと即完したことは純粋に嬉しいですし、「もっと大きいところでやってよ!」という声も上がっているので。その期待に応えて、回を重ねる度にスケールアップしていきたいです。
CHOJI:全力でライブをしたら、全力のリアクションが返ってくるんですよ。それだけ待ち望んでくれたことも、すごくありがたいです。日本では10年活動してますけど、中国では新人バンドの気持ちでいられるから、より自由なチャレンジができる。日本で身につけている鎧を脱いで、ライブに臨めている感覚ですね。
─YouTubeに公開されているVlogを拝見すると、現地のお客さんが日本語でアイドラの曲を熱唱していましたね。
YU:嬉しかったですね。心の繋がりを得て「あぁ、人間ってこれを幸せと感じるんだ」「”平和の輪”ってこういうことなんだ」と改めて感じました。離れた国で生まれて違うカルチャーで育った人たちと、音楽を通して繋がれることは貴重な体験だし、バンドをやっていなかったら味わえなかった。ありがたい経験をさせてもらっていますね。4人で作った音楽を届ける母数が広がったという意味では、音楽の可能性はもちろん「もっとこういうことができるんじゃないか?」とバンド単位の可能性も広がっていて。可能性の扉が開いたからこそ、スキルやバンド力も求められてくると思うので、しっかり応えていきたいですね。
─「PAINT」に込めた「道を切り開いていく」というメッセージが、今海を渡り現実のモノとなっている気がしていて。
YU:確かに!「PAINT」は今の状況を予言してる感じはありますよね。おっしゃる通り、この曲によって僕らは新たな可能性を見出せて、それでまた自分らを高められる燃料になってるなって思います。
SHUKI:僕らも割とチャレンジして作った曲ではあって。それこそ海外で挑戦するきっかけを与えてくれた大事な1曲になっているよね。
─CHOJIさんもかなり試行錯誤をして、音作りやアレンジを考えたそうですね。
CHOJI:ギターがサウンドの核となる曲だったので、そこは妥協なく責任を持って作りました。僕たちがやってもいいJロックであり、ロックサウンドになっていて。イントロから最後までクリアできてるし、いろんな奇跡が起きた1曲ですね。歌詞も『ONE PIECE』の世界にハマっていて、普通に聴いていても背中を押してもらえる内容になっているので、本当にいいタイミングで出せたなって思います。
─YUさんは歌っていく中で、歌詞を書いた当時の心境と違う感覚はありますか?
YU:ありますね! 我ながらよく書いたなと思いますし、当時は自分が言われたいこととか、自分を投影した歌詞を『ONE PIECE』の世界とリンクさせて作ることができた。CHOJIが言ったように、この歌詞が自分たちの背中を押してくれて、もっと高みを目指していきたい気持ちにさせてくれます。いわば、自分にエールを送る曲でもありますね。
KENJI:僕たちの中にあるロックサウンドを、『ONE PIECE』という大きい作品の主題歌として綺麗に落とし込めた楽曲だなと思います。それがバランス良くできたからこそ、今もライブでやれているし、演奏するたびにいい曲が作れたなと感じますね。
─新曲についてもお聞きします。7月30日にリリースされる「kiriがないですわ」はアーバンで大人な夏を感じました。どのような流れで楽曲が生まれたのでしょう?
SHUKI:曲を出す時期は決まっていたので、夏の曲になるのは間違いないと。
―と言いますと?
SHUKI:例えばリバーブがかかっていたのが急にドライになるとか、図面上は一緒の音符だけどその中で全然違うアプローチができた。今の自分たちだからこそ、力の抜き方を一番上手く表現できた曲になりました。
─歌詞に込めた想いは?
YU:夏特有のちょっとしたエモさを、歌詞に落とし込めたらいいなと思いました。実は3回くらい書き直していて。ヘビーでエッヂの効いたのとか、女性目線の歌詞も書いてみたんですけど、どれもしっくりこなくて。書き溜めたアイデアをゼロにして、新たに考え直していたらサビの「kiriがないですわ」が思い浮かびました。
―「キリがない」ってネガティブな意味合いで使うことが多いですけど、この曲では「kiriがないですわ 全てが魅惑的なんですわ」とポジティブな意味で使われているのが新しかったです。
YU:そのフレーズをサビ頭で使うことを前提として、どういう世界観にしたら夏に抱く恋心のエモさを表現できるかな、と考えました。逆算的に作りつつも”ゆるさ”がこの曲全体のテーマにあったので、あまり考えすぎずに口ずさんだ時の気持ちよさとか、瞬発的なひらめきを大事にしました。いわば、虫食いゲームのように言葉をはめていった感じですね。そうじゃないと韻も気持ちよくならないので、言葉を積み上げて生まれた歌詞です。
―サビでファルセットのみの歌唱も珍しいですよね。
YU:そうですね。音色的にもこういうキーのレンジなら強いファルセットで歌うことはあっても、今回のようにブレッシーに歌うことは、去年だったらできなかったです。地味なテクニックではあるんですけど、今だからできる歌唱でしたね。レコーディングの時もハイレンジのファルセットだけど、力が入ってない鳴りで浮遊感を出すのは結構なチャレンジでした。
―演奏する上で意識されたことはなんでしょう?
CHOJI:この曲はフォークっぽい昔の時代感もあるので、デジタルじゃない音色を大事にしていて。先ほど「シンセはローズぐらいしかない」と言っていましたけど、その分ギターでパーンと鳴っている音や可愛い音色が入っていたりして。いい感じにギターでもドラマ性が出せたので、ライブで演奏するのが楽しみですね。あと、イントロもギターのリフだったので、ちゃんと自分の納得いく音を出せたかなと思います。
―ギターが楽曲の持つ明るさやメロウな雰囲気を担っているように感じました。
CHOJI:うん、そうですね。「kiriがないですわ」のフレーズがポジティブに響いたのは、演奏の影響も大きいのかなと思っていて。そう感じてもらえたのは嬉しいです。
KENJI:ベースに関しては、軽さと疾走感を出すためにサビで細かく音を刻むフレーズを試しました。楽器の数も少ない分、ベースが音を埋めてる。だからこそ重くならないように、キックに合わせて音が沈んでいくようなサイドチェーンのエフェクトをかけていて。ベースにちょっとリバーブをかけて、ちょっとサラッとさせたいのもありました。やっぱり、ずっとエイトビートで刻んでいると重厚感が出てくるので、そこを重くしすぎないのはこだわりましたね。
SHUKI:”頑張りすぎない”と言ったらアレですけど、ゆるさを残したかったんですよね。今までだったら、生バンドで録った音にミックスで打ち込みの機械の音を重ねる作業をやっていたんですけど、今回は極力それをしたくなくて。一応何かあった時のために、ミックス用の打ち込みの音も作っていたんですけど、結果ほぼ使わずに行けた。それこそレコーディングの時に音作りを手伝ってくださる和田さんという方がいて、その人とも長年やっているので、コミュニケーションも取れるようになって。同じ方向を向けてるのもあって、うまくいって満足してます。僕は今回、最低限のドラムプレイしかしていないんです。とは言いつつ、ゆるいだけだと刺激が足りないから、AメロとBメロは逆に打ち込みだけのドラムで行く工夫はしました。
─まだ制作中の曲があるとか?
KENJI:そうです。そっちは「kiriがないですわ」とはアプローチが全然違う曲で。
―ほお!
SHUKI:YUの歌声がよく聴こえるような曲であり、YUが歌ってて気持ちいい曲を作ることだけが最初に決まっていて。楽曲のアレンジとか方向性は無限に選択肢があったんです。今回、完成したのとは全然違うアプローチの曲も作りましたけど、最終的には原点に戻って「YUの歌声を伸ばすぞ」というイメージで作りつつも、今までの僕らでやるとちょっとやり過ぎちゃうところを、我慢して我慢して、曲の最初から最後まですごい振り幅がある曲調になりました。
KENJI:一番の初めだけ聴くとバラードっぽい感じではあるんですけど、曲が進んでいくにつれて、どんどん展開していく感じですね。
CHOJI:そうだね。僕は音数の少ないバラードだけど、ギターの奥行きとか広がりを出したいのがあって。サビって本来は同じフレーズを弾くのがベターだと思うんですけど、あえて違う感じで弾いてもいいのかなと思いました。音が少ない分、それが曲のいい変化になっていています。
―歌詞はどんな内容になっているんですか?
YU:それこそ去年だったら、歌いこなせなかったような歌映えする曲です。自分の声の鳴りとか、楽器としての歌という意味でもスキルが問われていて。その上でピュアなラブソングでありつつ、僕らの年代に合った内容に落とし込めたと思います。ぜひ、こちらも皆さんに聴いていただきたいですね。
─10月からは初のZEPPツアーが決まっています。日本のバンドでもZeppツアーを回れるバンドは多くないですし、よりアイドラがスケールアップするための重要なツアーとなるかと思います。
CHOJI:東京では何度かZepp公演をやらせてもらっているんですけど、地方はライブハウスのみだったんですよね。僕もそうですけど、やっぱり好きなアーティストでもライブハウスに行きづらいと思うことがあったりして。そういう意味でZeppはライブハウスでもあり、たくさんの方に観てもらえる大きさもある。まだアイドラのライブを見たことがない人にも、足を運んでもらいやすいと思います。会場の音もいいし、照明に関してもこだわれるので大事なツアーですね。
KENJI:今年リリースするのがアルバムじゃなくて、単発で配信していくから曲数もいっぱい出すわけではない。新曲もやるんですけど、これまでの曲をやるのが大多数を占めるツアーになると思います。やっぱりアルバムを出してツアーをやると、アルバムの楽曲中心のツアーになるじゃないですか? そういう意味では、普通のツアーとは違った内容になると思います。それとCHOJIが言った通り、前に開催したZepp DiverCityのワンマンでは照明だったり演出だったりをこだわることができたんです。それが、いろんな地域でも見てもらえるのはすごく嬉しいですし、気合の入ったライブにしたいと思っています。
YU:これまでのZepp公演で空気感や世界観など、音楽だけじゃない魅力も感じてもらえるステージを作れたので、さらにパワープしたものを全国で届けられるのは、非常にありがたいですね。今まで以上に解像度が高いI Don't Like Mondays.を感じていただけると思いますし、中国ツアーを含めてパワーアップできた僕らを見せて、Zeppが小さく感じるようなステージを届けたいと思います。みんなで騒ぎ倒したい、それに尽きますね。
SHUKI:こうしてRolling Stone Japanさんとか、いろんな方に協力していただいるので、今までライブに来てくれたお客さん、応援してくれたみんなの元気玉みたいなツアーにしたい。まだ時間はあるので、それまでやれることは全部やりたい。それぐらいめちゃめちゃ気合いが入ってるツアーです。
KENJI:セットリストとかライブの全体像はこれから詰めていくんですけど、これまでの10年間も踏まえて、今のアイドラがどういうことをやった方がいいのかを4人ですごく考えながら作っていくので、めちゃくちゃ楽しみです。
YU:僕らはバンド結成から”非日常”を作ることを大事にしていて。ライブに来たら現実を一旦忘れて、明日とか次の日の活力になるような空間を作ることがバンドの目標なので、トリップできるような非日常を味わせたい。僕らの曲をたくさん知っている方はより楽しめるし、1曲しか知らなくてもスペシャルな体験を味合わせる自信があるので、ぜひ足を運んでいただきたいと思います。
──この先、アイドラが見据えている展開は?
YU:なんか、あんまり先のことを考えても意味ないなと思って(笑)。最近はあえて考えないようになりました。
KENJI:途中で変わっちゃうから意味がないんだよね。
YU:そうそう。ただ、本来は考えるタイプの4人なんです。この10年間考えてきた結果、その瞬間その瞬間で最高なモノを届けていく方がいいんじゃないかな、ってフェーズに入りましたね。
KENJI:考えてはいるんだけど、結局思い通りにはいかない部分もあるし。
SHUKI:だからこそ飽きずにやり続けられているのもある。本当に毎年挑戦しているからね。
YU:そうだね。「去年よりも良いモノを作る」が毎年の目標というか、それに尽きる。この先もそれをやっていくんだろうなって思います。
―ちなみに、上半期を振り返って思い出に残ってることはなんでしょう?
YU:北京で開催された「Super Strawberry Music Festival」で、CHOJIのギターが事故りました(笑)。
―えー!
一同:あはははは。
YU:機材トラブルだったんですよ。場数を踏んでいたからなんとかできたんですけど、これで結成2、3年目だったら絶対に無理だった。
KENJI:ギターの音が何曲か出なかったんですけど、何が原因か分からなくて。演奏中、イヤモニの中でスタッフの声が飛び交ってました。
YU:僕は焦っているスタッフさんの声を聞きながら歌うっていう(笑)。それで自分たちも成長できたなと思うので、人間力が上がりましたね。
CHOJI:2回やったんですよ。1回目まあよまあよかった。2回目の1曲目もすごいよくて、これ行けるなと思っていたら3曲目で音が出なくなったので、その瞬間は焦ったんですけど「あ、出ないな」と思って。だからアレですよね、逆に1番余裕みたいな(笑)。
SHUKI:諦めの境地に入ってね。
CHOJI:とりあえず、とある曲のギターソロまでにはトラブルを解決したいっていうので、みんな頑張ってくれて。僕もステージ上の姿じゃない感じで、裏方のように頑張りましたね。終わった後は落ち込んだんですけど、今になってみたら別にそうでもないなって。
KENJI:仕方がないもんね。バンドのミスじゃないから。
YU:それに結果としては良いライブができたのでよかったです。
CHOJI:あとは、中国でやった「”FOCUS” ASIA TOUR」の最終日に一番パーフェクトな演奏をできて。その感じを次もやりたいんですよね。
─完璧な演奏ができた時って、何が一番大きな要因なんですか?
KENJI:そこが面白いところで。ぐるぐる考えては見るんですけど、結局分からないよね?
CHOJI:演奏する自分も楽しくて、バンドのグルーヴも良くて、お客さんのノリも良い。それが重なると相乗効果が生まれていいライブに繋がる気がします。そのためには自分がとにかくいい演奏をして、みんなに合わせていくのが大事なのかな。
YU:ライブって同じ演奏は一生できないので、そのスパイラルみたいなものは、その日のその瞬間にしか起こらない。だからこそライブは儚いし、面白いんですよね。それこそ音楽が持つすごく大きな力だと思うので、ライブにまだ行ったことがない人は生演奏の面白さを知ってもらいたいですね。あ、あと今回の『kiriがないですわ』とは別に、Zeppツアーまでにもう数曲新曲出したいと思っていますので、そちらも楽しみにしていただきたいです。
SHUKI:ライブで初披露の曲があるかもしれないしね。
KENJI:まだ分からないですけどね(笑)。
―その感じはありそうですよ。
一同:あははは! がんばります。
<リリース情報>

I Dont Like Mondays.
『kiriがないですわ』
2025年7月30日(水)リリース
https://idlms.lnk.to/kiriganaidesuwa
<ライブ情報>
I Dont Like Mondays. ”TOXIC TOUR 2025”
https://l-tike.com/idlm/
札幌公演
2025年10月5日(日)Zepp Sapporo
大阪公演
2025年10月11日(土)Zepp Osaka Bayside
福岡公演
2025年10月13日(月•祝)Zepp Fukuoka
名古屋公演
2025年10月18日(土)Zepp Nagoya
東京公演 ※全自由席
2025年10月26日(日)Zepp DiverCity
【チケット】7,800円(税込)
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。
※入場時別途ドリンク代必要
※東京公演のみ全自由席、その他の公演は全席指定となります。1Fスタンディング・2F指定席の種類を選択することはできませんので、予めご了承ください。