日本4thシングル DIFFERENTのタイトル曲「DIFFERENT」や星野源が楽曲プロデュースを手掛けた「Kawaii (Prod. Gen Hoshino)」もリリースされるなど、大きな話題となっている。韓国や日本などでの活動以外にも、CoachellaやMTV VMA、MTV EMAなどのグローバル規模での音楽フェスティバルやアワードでのパフォーマンスなど、様々な経験を積んできた2024年から2025年にかけてのLE SSERAFIMは、ガールズグループ的な分かりやすいキャッチーな魅力だけではない、まさに”噛めば噛むほど味が出る”グループとして進化している。
その背景には、絶え間ない努力とともに、”ありのまま”でいることを肯定する強さがあった。現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.31」のインタビューの発言とともに、彼女たちの魅力の秘密を探った。
【画像】LE SSERAFIMの表紙写真
◎覚悟を決めた5人の、現実主義的な前進
この2年間ほど、LE SSERAFIMの5人に定期的にインタビューをしたり、ライブやファンミーティングを拝見したりすることが多く、その中でメンバーが共通して持つ哲学があることに気がついた。それはぶち当たった壁に対して、あくまで冷静に問題解決に向けて一つずつ淡々と対処していくという、非常に現実主義的な考え方だ。
メンバーのHONG EUNCHAEは、LE SSERAFIMの中でもっとも若くしてデビューし、その成長が注目され続けているメンバーのひとり。デビュー当初はメンバーにもかなり人見知りしていたそうで、自分が韓国の音楽番組にてMCを務めることにも強い不安を抱えていたという。
「周りの方々がたくさん手助けしてくださったり、私自身もうまくやりたいという気持ちが大きくなってきて、徐々に性格的にも大きく変わっていきました」(HONG EUNCHAE/「Rolling Stone Japan vol.31」より抜粋)
最も若くしてデビューした彼女であるからこそ、経歴も個性も豊かなメンバーにあって、悩んだことがあるだろう。その中でこの自然な心境の変化があったのは、単なる経験の積み重ねだけではない。
「私も感傷的になることがあるんですが、そういうときこそ冷静に、自分に今何が足りないのか、それを補うために何をすべきかを考えて、行動に移すようにしています。」(KAZUHA/「Rolling Stone Japan vol.31」より抜粋)
人気グループは世間の反応が大きい分、その反応を見て一喜一憂してしまいそうなものだが、感情に取り憑かれずに着々と取り組む姿勢に一貫していると、筆者がメンバーと話す中で大きく感じた。自分にできることを見極め、どうしようもないことは「時が解決してくれる」と受け入れる素直さ。それは強さでもある。LE SSERAFIMの中でも特に作詞・作曲に多く関わってきたメンバーのHUH YUNJINもこのような哲学を持つメンバーたちと関わる中で、
「LE SSERAFIMの活動を通じて、自分は”素直な人間”だと思っていたけれど、実はそうではなかったと気付かされたんです(笑)。メンバーと過ごすうちに、あらためて本当の意味での素直さとは何かを考えるようになりました。」(HUH YUNJIN/「Rolling Stone Japan vol.31」より抜粋)
と自身の心境の変化を語った。性格も経歴も年齢も違うメンバーが集まった中で、全員が納得できる一つの考え方があるということは、LE SSERAFIMが逆境も乗り越えて来られた一つの理由ではないだろうか。KIM CHAEWONもまた、リーダーとしてグループを支える中で、
「各自の空席は誰も埋められない。それぞれの魅力があって、それぞれの特性がある」(KIM CHAEWON/「Rolling Stone Japan vol.31」より抜粋)
と語る。メンバーに対する大きな愛を持っているかどうか、客観的に自分たちの状況やこれからどうすればいいかを的確に導いていける哲学を持っているリーダーがいるかどうかは、グループの安定感を左右する。その点、メンバー以外に、LE SSERAFIMの楽曲プロデュースに携わっているプロデューサーの13(SCORE, Megatone)の存在も大きい。
「『DIFFERENT』のレコーディングのとき、『今までで一番良かった』と言ってもらえたのがすごく嬉しかったです。
ぶつかった壁を一つずつ着実に乗り越えていくことを指針にしている中で、並走しながら静かに導いてくれるチームがあることは必要不可欠だと気付かされる。無理して憧れの存在を演じるのではなく、今ある自分たちのベストでパフォーマンスを作り上げるという彼女たちならではの哲学。「HOT」の歌詞が思い浮かぶような、静かに燃える炎。そんな淡々とした現実主義的な情熱が彼女たちの姿勢ではないだろうか。
◎あえて”固定させない”音楽ジャンルとコンセプト
K-POPにおける「コンセプト」は、ファンがグループを理解するためのキーワードでもある。Y2K、ガールクラッシュ、清楚系…。だがLE SSERAFIMはそのような「LE SSERAFIMらしさ」というジャンルの枠組みに捉われずに活動し続けてきたように思える。それはビジュアルやリリースされる音楽ジャンル、テーマが有機的に変化していっていることからも分かる。デビュー曲の「FEARLESS」はオルタナティブポップ、人気曲「Perfect Night」は流行りのイージーリスニングを感じさせる聴きやすくロマンチックなガラージ、「CRAZY」は強烈なキックが癖になるハウス、新しく日本音盤としてリリースされた「DIFFERENT」はディスコファンク…など、ジャンルがバラバラ。人によって”好きなLE SSERAFIM像”がまったく異なるのは、この多様性ゆえだ。
そのうえでグループの核には常に「FEARLESS(=恐れない)」の精神がある。
LE SSERAFIMの楽曲は、リリース直後の第一印象でリスナーによって見方が分かれることが多いように感じる。「EASY」も「HOT」もそう。初見では「これまでに比べてインパクトに欠ける」と言われることがある一方で、時間が経つにつれ再評価されやすい。これは「長く聴ける楽曲」であることの証左でもある。LE SSERAFIMは、いわゆる”バズ”だけを狙うだけではなく、原曲リリース後に発表される数多くのRemixシリーズも含め、繰り返し聴くことでハマっていく中毒性を武器にしている。だからこそクラブで活動するDJたちの間でも含めて使いやすく、クラブ映えする楽曲も多い。
◎楽曲の多様さとライブ経験によって生まれたメリハリのあるステージ
「2025 LE SSERAFIM TOUR EASY CRAZY HOT」は、彼女たちのライブ演出力の高さを改めて示したステージでもあった。セットリストの組み方はまるでDJ MIXのようにスムーズで、楽曲のテンポやキーが自然につながる構成。
ジャンルが幅広い彼女たちならではのメリハリのあるステージ構成で、「HOT」や「Come Over」をメインとした情熱的な前半部分、「Swan Song」や「Star Signs」をメインとした聴き心地が良くガーリーな中盤、「Eve, Psyche & The Bluebeards wife」や「CRAZY」「1-800-hot-n-fun」などクラブのように盛り上がる後半。それらが豊富なライブ用のアレンジを加えながら、激しいダンスパフォーマンスとともに展開されていく。
◎LE SSERAFIMという”進化するグループ”の魅力を楽しむ
LE SSERAFIMは、定まらないグループだ。それこそが最大の強みでもある。曲調も、衣装も、コンセプトも、そしてステージ上の振る舞いも、常に更新されていく。
時に新しいことに挑戦することは、批判を受けることもあるだろう。けれど、だからこそ、その根っこにある”恐れずに進む”という信念は、より際立つ。メンバーたちはそれぞれの個性と方法で、その信念を表現しているのだ。そしてファンは、その信念とひたむきな姿に自分の感情を重ね合わせることができる。
固定化されないグループ。
2025 LE SSERAFIM TOUR 'EASY CRAZY HOT' ENCORE IN TOKYO DOME
東京・東京ドーム
2025年11月18日(火) 開場 16:00/開演 18:00
2025年11月19日(水) 開場 15:00/開演 17:00
https://www.le-sserafim.jp/

LE SSERAFIM 「Rolling Stone Japan vol.31」より(Photo by Maciej Kucia)