13歳のシンガーソングライター・野元ノアが2025年7月26日に新曲「つなぐよ」を配信リリースする。小学生の頃から見事な歌声によるカバー動画をYouTubeで発表しており、なんとラウドネスのステージにも出演、高崎晃が手掛けた楽曲でデビューを果たすなど、注目を集めているアーティストだ。


そんな野元ノアは、広島生まれでアメリカ人の父親を持つ人物でもある。今回リリースする「つなぐよ」は、終戦・被爆80年への思いを込めたメッセージソングだ。これまでの歩みから、新曲の制作について、アーティストとしての思いまで話を訊いた。

―ノアさんは現在13歳の中学2年生だそうですが、何歳ぐらいから歌ったり、楽器を演奏したりしていたんですか?

ノア:歌うようになったのは、6歳、7歳くらいです。僕は昔からずっと音楽や歌が好きで、「歌手になりたい」っていう思いがあったんです。それで小学校1年生から、歌やダンスのスクールに通い始めてレッスンを受けて歌っていました。楽器を始めたのは結構最近で、ギターを3年前から始めて、ピアノはちょっと前にやり始めました。

―「歌手になりたい」という思いは、憧れたアーティストや好きな歌があったから?

ノア:昔からすごく憧れを持っているのが、ONE OK ROCKさんなんです。楽曲やボーカルのTakaさんの歌を聴いてから、音楽に興味を持っていました。

―それで自分も歌いたいと思うようになったわけですね。スクールでは、歌以外のレッスンもあるんですよね。

ノア:そうです。
音楽に関するいろんなことが学べるスクールなので、歌とダンスを同時に学べましたし、通っているうちに、「将来も音楽をやりたい、歌手になりたい」っていう気持ちが定まっていきました。

―世の中に知られるきっかけとなったYouTubeのカバー動画はどうやって始まったのでしょう。

ノア:レッスンを受けながら、9歳の頃に歌を集中して特訓するボイトレジムで、ONE OK ROCKさんのカバーをさせてもらおうということで、「Renegades」という曲を歌ってYouTubeに上げさせてもらったのが最初です。Takaさんは歌唱力もすごいですし、歌うのはすごく難しかったんですけど、ただ歌うだけじゃなく、ちゃんと表現もしたかったので、何回も試行錯誤して動画をアップさせていただきました。

―まわりの反響はどうでした? 友だちとかご家族とか。

ノア:友だちも兄弟もみんな、「カッコイイ!」って言ってくれることが多くて、「歌手になりたい」という夢を応援してくれましたね。

―デビューのきっかけになったのは、ラウドネスの曲をYouTubeで歌ったことがきっかけなんですよね。ラウドネスはもちろん現役で精力的に活動しているバンドですけど、世代は全然違いますし、どうしてラウドネスの曲だったんですか?

ノア:ラウドネスさんは、人に教えていただいたり、レッスンの曲として使われたりしたことがあったんです。その中で、「INFLAME」という曲を、ONE OK ROCKさんの「Renegades」を歌ったときみたいに、YouTubeにあげたらどうかという話になってやらせていただきました。

―ちなみにお父さまはアメリカ出身の方ということですが、音楽についてはお父さんからの影響もあるんですか?

ノア:そうですね。昔から父の影響で洋楽も聴いていたので、周りの友だちに比べると、いろんな種類の音楽を聴いていました。父は歌ったり楽器を演奏する経験はなかったと思うんですけど、音楽がすごく好きで、昔から好きなアーティストとかの話を僕にしてくれたことも多かったので、洋楽にも憧れが強かったです。
ラウドネスのことも知っていて、僕が歌ったときは「ラウドネス歌ってるの!?」って驚かれました(笑)。

―ラウドネスのみなさんが「INFLAME」を歌っているのを知って、10歳のときにZepp Haneda公演のステージに招かれて共演したそうですね。たくさんのお客さんを前に歌った気持ちはどうでした?

ノア:会場がかなり大きかったので、ものすごく緊張しましたし、不安もあったんですけど、昔からすごく人気があって活動し続けているラウドネスさんがリードしてくださって、一緒に歌ったりしてすごく楽しめたし、会場のみなさんともすごく盛り上がることができたので、すごく楽しかった思いが強いです。

―その後、デビュー曲としてラウドネスのギタリスト・高崎晃さんが作曲、ノアさんご自身が作詞をして「キャラクター」というデビューシングルが生まれたんですね(2024年3月27日リリース)。この曲はどうやって制作して行きましたか。

ノア:「キャラクター」という構想みたいなものを結構前から僕が持っていて、そこからライブ後に高崎さんが曲を作ってくださったんです。高崎さんがすごくロックな曲調ですごく良いサウンドを作ってくださったので、それを盛り上がるような曲にしようっていうことで制作していきました。

―初めてプロのシンガーとしてレコーディングした楽曲になるわけですよね。歌う上で大変なこともあったのでは?

ノア:変声期の始まりにちょうど、タイミングが被ってしまったんです。高音がすごく出にくくなったんですけど、そのままレコーディングの本番に臨んだので、結構そこがむずかしかったなっていう思い出があります。高崎さんはすごく明るくて、僕の歌詞とか歌をすごく良いって言ってくださったし、リラックスして楽しく取り組めるようにしてくれました。

―「キャラクター」は、ラウドネスの高崎さんのイメージとちょっと違うというか、ハードロックだけどダンサブルな曲調で、「高崎さんって、こういう曲を書くんだ!?」って、ちょっと驚きました。


ノア:そうですよね。完成するまでにいろんな構想があって、ものすごくロックな曲調だったり、完成形のようにポップな感じに近づいたりと、いろんな工程であの曲になったので、結構独特な雰囲気を持った曲になったかなって思います。

―ところで、作詞作曲って、どういうふうに身につけていったんですか?

ノア:ある程度は独学で、ネットにある情報とか曲の作り方とかを見て、スマホアプリ「GarageBand」を使ってコードを弾いたり、メロディーを書いたりして作っていました。今はMacに入れた「Logic Pro」(DAW)で作っています。

―変声期やそうしたスキルアップを経て、どんどん変化していますね。新曲「つなぐよ」は、デビューシングルやYouTubeで歌っていたときの印象とはまた違った歌声を聴くことができますし、歌のメッセージも明確です。どんなきっかけで、こういう曲を世に出そうということになったんでしょうか。

ノア:僕が広島に住んでいることもあって、「平和」をテーマに原爆についての話を含めた曲を書きました。そして、今年が終戦と被爆80周年になるので、この曲を世に出そうということになりました。

―原爆ということになると、アメリカとの戦争でそういうことが起こったわけですけど、ノアさんは広島生まれで、お父さまはアメリカのご出身ですよね。曲を書くにあたって、複雑な思いもあったのではないですか。

ノア:僕はハーフとして両方の血を持っているので、すごく簡単ではないというか、複雑な話なんですけど……。
戦争というものが二度と起こらないようにっていう気持ちもありつつ、もっとその先のこと、本当にみんなが笑い合って生きている平和っていうものに対しての希望を伝えたくて制作していきました。歌詞は、いろんな学校で被爆者の伝承をしてくださる方からお話を聞いたり、資料などを見ていたりして書いたんです。いろんな話を聞いていく中で、すごく悲しくて涙が出ることもありました。その思いをそのまま曲にすることで、聴いてくださるみなさんにも、この思いが伝わればいいなって思って書きました。

―歌詞の中にある象徴的なワードについて訊かせてください。〈風に揺られるアオギリの 緑がただ、美しい〉という歌詞が出てきますが、これは原爆投下以降、75年は草木も生えないと言われたところに芽吹いたという、希望の象徴として広島の方々には知られている樹木なんですよね。

ノア:そうなんです。今も平和公園に「被爆アオギリ」が展示されていて、被爆直後の広島にとって希望を与えて支えになったものなので、その要素としてこの歌詞を入れさせていただきました。

―〈何もかもが消えてなくなった この大地にカンナが咲いたんだ〉にも、カンナという花の名前が出てきます。

ノア:カンナもアオギリと同じように、75年は草木が生えないって言われた広島に咲いた花で、終戦で暗くなっていた人の心に希望を取り戻したものだったので、希望の象徴としてアオギリと一緒に歌詞に入れさせていただきました。そういうことも、資料を読んだりして歌詞にしていったんです。

13歳のシンガー野元ノアが語る、終戦と被爆80周年のいま歌う希望のメッセージ


―もう1つ、〈時を超え響く ピアノにのせ〉というのは、河本明子さんという原爆で亡くなられた方の遺品のアップライトピアノ「被爆ピアノ」のことだということですね。
このピアノは実際にこの曲の中で使われてるんですか?

ノア:いや、曲の中では使われていないんですけど、歌詞の中にピアノのことを入れたかったんです。被爆者の思いとして河本明子さんについて聞く機会もたくさんあったので、ピアノの思いが時代を超えて、今も伝わっていたらいいなっていうことで歌詞に書きました。

―そうした歌詞を乗せるメロディ、歌はどのように作って歌ったのか教えてください。

ノア:この曲は、歌詞だけじゃなくてメロディでも結構試行錯誤をしました。声変わりをした直後だったので、かなり低い音程で歌うことも考えて迷っていたんですけど、歌詞の内容も含めてしっかりこの曲を届けるには、やっぱり高音の方が自分の感情を出せると思ったんです。それで、裏声を使って高い音を出すことに決めました。声変わりは落ち着いてきたんですけど、まだ少し残っているので、何回も歌っていると声が掠れて出にくくなってしまうことがありました。ただ、歌っている感情に乗せてちゃんと声が届いてほしいので、裏声を通してしっかり響かせて歌うことを意識しました。

―今もまだ、変声期の途中みたいな感じなんですかね?

ノア:声変わりの終盤というか、落ち着きかけみたいな感じになっています(笑)。

―じゃあ、ちょうどノアさんの子どもから大人になる過程が入った曲ですね。

ノア:そうですよね。「キャラクター」と比べて聴いても、声質にも違いがあると思うので。
大人に成長している最中の声として、自分でも印象深い声になっています。

―広島生まれのノアさんが、シンガーとして平和をテーマに歌う気持ちについて改めて訊かせてください。以前、長崎生まれのある30代のシンガーソングライターの方にインタビューしたことがあって、その方もその時たまたま平和に関するイベントに出て、原爆のことや平和をイメージして作った曲を歌っていたんです。その方は、平和について歌う使命感みたいなものもあるんだけれども、でも実際は毎年8月が近づくと、「ああ、またこの季節が来たな」って暗い気持ちになるのが正直な思いですって言っていたんですよね。ノアさんとは世代が違うんですけど、そういう葛藤みたいなものはノアさんにもありますか?

ノア:そうですね。学校やいろんなところで原子爆弾についての昔の話をいろいろ聞かせていただくことが多くて。すごく学びというか、やっぱりいけないんだなっていう気づきにもなるんですけど、それと同時に暗い気持ちにもなりますし、その悲惨さをずっとこう伝えていくのも辛いなあっていうことも思います。

―なるほど、ありがとうございます。そういう葛藤もありながら、以前YouTubeで歌っていた「Voice」(Pay money To my Pain ×Taka from ONE OK ROCK)や、「What a Wonderful World」(ルイ・アームストロング)を聴くと、今回の「つなぐよ」と同じように、ノアさんの中に平和へのメッセージを歌って行こうという気持ちがあるんだなと思います。一方で、若者らしく楽しくポップな曲でダンスしたりもあると思いますし、今はアーティストとしてどんなことを考えていますか?

ノア:将来、どんなジャンルの歌を歌っていくのかっていうことは、よく考えています。やっぱり、広島出身だからとかそういうところだけでなく、アーティストとして歌で人にメッセージを届けられるシンガーとして、自分の思うことや伝えたいことがあったら、それをちゃんと届けなきゃと思います。明るい曲調も、考えさせるような曲も、これからもどんどん、聞き手のみなさんに届けられるように、アーティストとしての使命みたいなものを、全うできたらなって思っています。

―そういえば、「What a Wonderful World」を歌っている映像で、メタリカのTシャツを着てますよね? 『メタル・ジャスティス』のTシャツでこの曲を歌う人を初めて観ました。

ノア:ははははは(笑)。あれはなんでだったかな? Tシャツは、メタリカとかグリーン・デイとか、ONE OK ROCKさんのライブTシャツとか、いろんなものを持っているので、たぶん、そのときはその中からなんとなく選ばれたんだと思います。

―なるほど(笑)。いろんな音楽を聴いているようですが、最近好きなアーティストや曲はどんなものがありますか?

ノア:ONE OK ROCKさんも変わらず聴いていますけど、最近だとヨルシカさんをよく聴いています。メッセージ性を明確に持っている曲が多かったりして、それを音楽に乗せてしっかり表現できているところが好きです。僕も将来自分の思いや感じたものを音楽にして共有したいと思っているので、すごく憧れを持っています。

―8月3日に開催されるイベント〈Pray for Peace Collection 2025 in 広島〉に出演されますが、自らオーディションを受けて合格したそうですね。

ノア:そうなんです。以前、一度出演させていただいたことがあって、そこでもいろんな体験をさせていただいたんですけど、今年は被爆80年ということで、もう一度自分も出演して、また平和について考える機会っていうのができたらいいなと思って、オーディションに応募させていただきました。この日は、モデルとしての出演でウォーキングをさせていただきます。

―当日はSUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN / THE LAST ROCKSTARS)さんも出演しますが、一度お会いになったことがあるんですか?

ノア:はい、一度会ったことがあります。ただ、ものすごく小さい頃だったので鮮明には覚えていないんですけど。でもまたお会いできそうなのですごくうれしいです。

―きっと、「大きくなったね!」っておっしゃるでしょうね。では最後に、ノアさんはこれからどんな夢や目標を持ってアーティスト活動をしていきたいのか教えてください。

ノア:これからも歌手として活動していく中で、ジャンルにとらわれずに、「キャラクター」のような楽しい雰囲気の曲も、「つなぐよ」のようなメッセージ性の強い曲も、どちらもこれからも作っていきたいと思っています。曲を出していって、広島だけじゃなく全国いろんなところでライブをして、聴いてくださるみなさんとたくさん関わっていきたいっていう思いが強くあります。それと、自分はアメリカにも関わりがあるので、海外にもいつか行けたらいいなって思っています。


<リリース情報>

13歳のシンガー野元ノアが語る、終戦と被爆80周年のいま歌う希望のメッセージ


野元ノア
「つなぐよ」
2025年7月26日リリース
配信リンク:https://orcd.co/noahnomoto_tsunaguyo
配信元 つばさレコーズ

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