ついに始動したオアシス再結成ツアー「Oasis Live 25」。日本人ファンによる現地からの投稿もSNSを賑わせているなか、こけら落としとなったカーディフ公演(7月4日)と、バンドの地元・マンチェスターでの初日公演(7月11日)を見届けたライター・本人による現地レポートをお届けする。


カーディフの熱狂「オアシス再結成は国民的関心事」

ゴールが決まった瞬間の驚きや喜びがひたすら続くかのような、そんな完璧なライブがあるんだと知った。2024年夏に急きょ発表され、世界中を興奮させたオアシス復活の報。10代のサントラというだけでなく最後の来日公演だったフジロック09が記憶に焼き付き、「オアシス再結成したらお休みを頂戴します」と各就職先に宣言しながら生きてきたような私でなくとも、2025年7月からスタートした「Oasis Live 25」の満足度は破格のものだと信じて疑わない。

こけら落としのカーディフおよび翌週のマンチェスター初日チケットをそれぞれスマホに入れて渡英した初日、まず実感したのは「オアシス再結成は国民的関心事である」ということだった。空港の商店にすら彼らを特集した複数のムック本が並び、テレビをつければ再結成についてトークする様子に出くわす。始まりの地となるカーディフに移動すれば、歩行者天国となったプリンシパリティ・スタジアム近隣はもうバンドTやアディダスを身につける人、象徴的なバケットハットをかぶる人、そしてタンバリンを手にリアム・ギャラガーの歩き方を真似る者までいる始末。老若男女がひしめき、パブは外まで満員。開演までに野外シンガロング大会に何度吸い込まれたかわからないぐらいの狂騒で包まれていた。

【朗報】Oasis再結成!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! pic.twitter.com/3rys4jeEmY— 本人 (@biftech) July 4, 2025UK時間7月4日、カーディフ公演初日の開演前に「Don't Look Back in Anger」を合唱する観衆

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

カーディフ公演初日の開演前(筆者撮影)

世界が注目した7月4日カーディフ公演初日は、すでにSNSや公式配信された「Slide Away」ライブ音源でも伝わる通り、盤石とも言える仕上がりのパフォーマンスと選曲、そして馴染みある面々が並ぶなかでのギャラガー兄弟の掛け合いなど、初めて彼らを観る世代から90年代ブリットポップムーブメントを生きた層まで広いオーディエンスの期待に応えたものだった。その瞬間を目撃したあとも事態を受け入れられず、会場まわりは深夜まで感動と興奮を伝え合う人々の姿があり、その間に何社かの報道クルーがマイクを向け取材する形で通りがひしめいた。
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カーディフ公演初日の翌日、地元紙はオアシス一色に(筆者撮影)

マンチェスター凱旋公演「ライブの前から祝祭は始まっていた」

それから1週間が経過して舞台は2つ目の会場、そして凱旋公演となるマンチェスターへと移る。7月半ばの週末2回プラス追加公演の計5回のライブが行われるホームタウンは、電灯の柱に「Oasis Live 25」の垂れ幕がさがっているわオアシス仕様のバスやトラムが公道を行き交うわという気合いの入れよう。
どの通りにも彼らの曲名や歌詞にちなんだメッセージが店先などに掲げられ、自主開催のプレ・アフターパーティからそっくりさん大会まで企画されていて、ライブの前からオアシスの祝祭が始まっていることがわかる。

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「ギャラガー兄弟そっくりさん大会」フライヤー、リアムのそっくりさん(筆者撮影)※ご本人の許諾を得て掲載

マンチェスターのギャラガーズそっくりさん大会、想像以上にバイブスがREALなMATESがいて超BIBLICALなんだがww pic.twitter.com/7QaMbvOrsH— 本人 (@biftech) July 11, 2025
その歓迎ムードに相乗するのが「本場マンチェでオアシスを観たい」と願い訪れた多数のファンの姿。外見だけでも世界中から人が集まっていることがわかり、そしてみな期待を隠せないでいる。視界に映るものすべてが高まった状態は、かつて訪れたブラジルのカーニバル期間中の都市を思い出す。ライブ物販の出張テントに並びながら、2ndアルバムがプリントされたヴィンテージTシャツを身につけ「1996年にもここに来ていた」とたフランスから来た女性は嬉しそうに話し、中心地のピカデリー・ガーデンズではアメリカ大陸南端パタゴニア地方から訪れたアルゼンチン人の青年がお手製のフラッグを広げライブ前の興奮を共有してくれた。海外旅行に出れば毎回「もっと言葉を覚えて来るべきだった」と反省してみるものだが、今回の渡英時には「oasis」という共通言語で邂逅できている満足感がある。ライブ前の午前中からオアシスファン馴染みのバーにてノエルに扮したSSWと「Half The World Away」を合唱し、近隣の店先で提供されている「Champagne Supernova」という名のリフレッシュウォーターをいただきながら、早くも凱旋公演の成功を確信した。

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アルゼンチン人のファン(筆者撮影)※ご本人の許諾を得て掲載

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

UK時間7月11日、マンチェスター市街(筆者撮影)

マンチェスター中心地から、夏の日差しによって灼熱の二階建てシャトルバスに揺られること約30分。公式SNSアカウントからの「帽子(バケットハット)着用を」という呼びかけにいいねを押したり、リアムの姿勢で横断歩道を歩くイラストの交通広告を横目にしたりしながらヒートンパークに到着した。厳重なボディチェックを経て入場し、人の流れに付いていく形で歩けば徐々にカーディフと同じく形状のスクリーンを背面に設置したステージが視界に入る。が、その雲一つない公園のなかでいきなりデカデカと鎮座するステージの迫力は前週のそれよりも強く、実際報道によればヒートンパークでは幅84メートル・高さ12メートルとプリンシパリティ・スタジアムより大きいものが用意されたそうだ。野外特有の開放感と、何より前方スタンディングから後方に振り返ると「どこまで人が…?!」という底しれぬ奥行きに、スタジアムとは異なるインパクトが刻まれた。


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リアムの姿勢で横断歩道を歩くイラストの交通広告(筆者撮影)

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マンチェスター公演の会場、ヒートンパークに到着(筆者撮影)

当たり前だがカーディフのスタジアムとマンチェスターのヒートンパークでは空気が全然違ってて、インドアだったカーディフは音の跳ね返りやスタンドの形状から一体感が生まれていた。対してマンチェの野外は圧倒的スケール、奥行きの感動がある。どっちもoasis現場しては2千兆点です! #oasislive25 pic.twitter.com/QPy5xkQscb— 本人 (@biftech) July 11, 2025
オアシスの楽曲を使ったオフィシャルスポンサーのCMで早くも大合唱を始めてしまう観衆の前に、スケジュール通り17時ちょうどにオープニングアクトのCASTが登場。90sブリティッシュロックならではとも言うべき軽妙なギターサウンドとジョン・パワーのクリアな声の重なりが心地よい「Sandstorm」からスタートし、30分という短い時間ながら雲一つない青空の下で両手を横に広げ「Walkaway」を伸びやかに歌ってみせたり、ゲストのベテランソウルシンガー・P.P.アーノルドを呼び込んで新曲「Poison Vine」を共演してみたりと幅広い演目で我々を楽しませた。

CAST、雲ひとつない快晴とジョンパワーの透き通りぶり、そして人混みで日陰が生まれて快楽天である pic.twitter.com/E0lXU0YKHT— 本人 (@biftech) July 11, 2025
続いて登場するリチャード・アシュクロフトは、もはや「Oasis Live 25」国内ツアーの物語要素の一端を担うと言っても過言ではない。オアシスが彼のことを歌った「Cast No Shadow」や「Be Here Now」ツアーのオープニングアクトにおけるザ・ヴァーヴの名演など交流以外でも逸話の多いリチャード。同様にオアシス復活に歓喜する側として、カーディフ公演でもMC中にOasisコールを扇動する気の入れようだった。

奇跡ことリチャードアシュクロフト…! pic.twitter.com/bkwMkidkvD— 本人 (@biftech) July 11, 2025
サングラスに降り注ぐ陽光を反射させ、クールな佇まいでステージに現れたリチャードは4ピースバンド編成。1曲目「Sonnet」から当然のようにシンガロングが起こり、以降もザ・ヴァーヴ時代の金字塔「Urban Hymns」を軸に置くセットで楽曲を展開していく。「Space and Time」の歌唱前ではオアシスだけでなくマンチェスターの先輩、ストーン・ローゼズとベーシストのマニにも「彼らがいなければこの曲はなかった」と敬意を述べ、パークも温かな反応で呼応する。鳴きのギターソロなど叙情性に重きを置くプレイで一体感を醸成し続け、ラストの「Bitter Sweat Symphony」には祝祭的なメロディと会場の歓喜の声が早くもこの日のハイライトのひとつとなった。

ついにオアシス登場、再結成ツアー初日を上回る大充実のパフォーマンス

「Manchester in the Area !!」──リチャード達の好演でブーストされた期待感が立ち込める20時過ぎ、焼けるような西陽を浴び、前週同様に繋いだ手を掲げながら現れたギャラガー兄弟の弟・リアムが叫ぶ。
おなじみの登場BGM「Fuckin' In The Bushes」や巨大スクリーンいっぱいに再結成発表の衝撃を伝えるメッセージのコラージュ映像演出も相まって、もともと高かった会場のテンションは一気に爆発する。オーディエンスは楽曲のリズムに合わせてジャンプし、ギターリフをチャントのように叫ぶ。この流れを絶やさぬまま始まったオープニングナンバー「Hello」は、果たしてスタンディングピットの中できちんとリアムの声を聴けた人がいただろうか? と思うほどフロア全員が歌を合わせる。

7/11マンチェスター・ヒートンパークのoasis登場の様子ですMATES!!!ギャラガーズ!!!!#oasislive25 #oasis25 #OasisManchester #オアシス東京ドームまであと106日 pic.twitter.com/z4o8Rdxfgv— 本人 (@biftech) July 11, 2025
続けざまに演奏された「Acquiesce」は歌詞の内容も含め結束の感動を噛みしめるような内容であるが、この日はボーカルがノエルに切り替わったタイミングでリアムが目を閉じ顔を上げて聴き入る姿勢に。その姿から自らも16年のギャップを改めて身に浸しているように感じ、観ているこちらまで万感の思いに浸らされた。

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

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Photo by Harriet Bols

ステージポジションは向かって左側にゲム&アンディの後期メンバー、右に旧友ボーンヘッド、ノエルが立ち、その中央でリアムが存在感を放つ、まさに復活時のティザーメッセージ”星が一列に並んだ”を体現する配置だ。その後ろを初参加メンバーのドラマーであり、アトムス・フォー・ピースやノラ・ジョーンズでも叩くなど実績面から考えると意外なジョーイ・ワロンカーがリズムを取る。洗練されたドラミングにはアラン・ホワイトの重厚感やザック・スターキーの小気味よさ等とは異なる、丁寧にバンドのマスターピースを紡ぐ立役者的な奥ゆかしさを感じた。

「Morning Glory」の始まりでアルバム音源のヘリコプターのSEが入るとか、古い写真をコラージュさせた映像演出で歌詞世界やバンドの世界観を示すなど、本公演ではオリジナルを尊重したスタンスなのかと思わせる要素が折り重なっている。それはトリプルギター編成やドラミングという演奏面も同様で、また肝心の歌唱についても”忠実さ”があった。リアムは連日にわたりボーカリストとして復活どころかキャリア最高と呼ぶべき目覚ましいコンディションでステージに立っており、高音を含めた歌唱を難なく続ける様子は当時ギャンブルのように歌い出しまで喉の調子を案じた日々が嘘のよう。単にもう一度集まっただけでなく、よりクオリティの高いものを築き上げたことが、万と集まったオーディエンスの高い満足に繋がっている。


【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

Photo by Josh Halling

通算3公演目となった11日は、ツアー初日の奇跡の瞬間に驚きを持って立ち会えた感慨にプラスして、パフォーマンスがさらにのびのびと充実したものに仕上がっていた。最初レアリティの高さからいちいち歓声が上がるほどだったメンバー間の交流は増え、同じ赤いギターをアンサンブルしながら笑い合うノエルとボーンヘッドの姿や、リアムがステージ一時退出時に兄を優しく小突く様子などもあって「ああオアシスっぽい」と微笑ましい。それはオーディエンスの雰囲気も同様で、曲前にギャラガーズが敬愛するマンチェスター・シティの監督ペップ・グアルディオラに楽曲を捧げるという発言に対してそこそこ大きめのブーイングを喰らわせリアムにたしなめられたりしていたが、そんな遠慮のないやりとりだってもはや温かく眺めたものだった。

昔はノエルコーナー前ってリアムは特になんも言わず立ち去ること多かったんですが、今日とかはなんか「アニキあとはまかせたやで」みたいな軽いやり取りがあって、それも胸が熱くなりました #oasislive2025 pic.twitter.com/tuM11lVI7I— 本人 (@biftech) July 11, 2025「Roll with It」で大合唱(筆者撮影)

あまりに良好な関係からなる「Oasis Live 25」のフロアの空気は特殊性を帯びたものだ。それは今ツアーでリアムが誘う​​ポズナンダンス以外でも、ステージを凝視するのみにとどまらない人の多さがある点で強く思う。ああイントロから歌ってしまうぐらいの人たちが集結して完璧なパフォーマンスを浴びると、思わず周囲と喜びを分かち合いたくなるものなのだろうか。ときにステージに背を向けてその場にいた人々と輪になって盛り上がったり、歩きざまにすれ違う人たちとハグを続けてしまったりする様子の多さはコンサートとして不思議なものだが、当時その場では妙な納得があった。リアムもノエルも、そんなオーディエンスに対して「Beautiful People」と評すなど、このような完璧な凱旋の舞台を作ったことへの信頼関係に素直な言葉を伝えていた。

世界中で求められる「oasis」像を極めて満足度の高い形で再現したセットリスト、そしてそれを上回り、おそらくこれからも成長を続けていくであろう強力なステージング、そして何よりステージとフロア双方で途切れることのなかった、歓喜に満ちた空気──ヒートンパーク公演の充実感、そして帰路でも歌わずにはいられない人々や深夜でも街で笑い合っているバケットハット民の姿、アフターパーティで嬉しそうに「Dont Look Back In Anger」をスピンするインスパイラル・カーペッツのクリント・ブーンの姿などなどを見て、「Oasis Live 25」は世界中の人々にとって2025年のハイライトとして刻まれる現象になりうる、という確信を持った。

東京ドーム公演までちょうど100日を切った今日、我々にできることはチケットをなんとか手に入れることと気持ちの整理をするぐらいで、「またケンカをするのでは」「コンディションが」というクソリプはもう不要だ。キャリア最高の状態に仕上がったオアシスが織りなすパフォーマンスを、たくさんの人々と分かち合える時間が今でも待ち遠しい。

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

終演後の深夜も興奮冷めやらぬヒートンパーク周辺の様子(筆者撮影)

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公式アフターパーティのフライヤー。
DJとしてベズ(ハッピー・マンデーズ)、クリント・ブーン(インスパイラル・カーペッツ)、マニ(ザ・ストーン・ローゼズ)が出演(筆者撮影)

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

マンチェスター初日公演の翌日、オアシスの凱旋ライブを報じた地元紙『Manchester Evening News』。紙名の「Manchester」を「マッ”ド”チェスター」と表記している点にも注目(筆者撮影)

■本人(ホンニン)
都内在住の40代男性。サラリーマン業と育児に日常をすりつぶされながら、時折ライブやフェスに足を運んでその様子を記録するインターネットユーザーとしても活動している。著書に育児エッセイ本「こうしておれは父になる(のか)」(イースト・プレス)。フジロックには初年度に参加して以来、毎年欠かさず足を運んでいる。
https://x.com/biftech

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

オアシス
『モーニング・グローリー:30周年記念デラックス・エディション』 
2025年10月3日リリース

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

ベストアルバム
『Time Flies...1994-2009』(2CD限定仕様リマスター盤)
発売中
購入:https://sonymusicjapan.lnk.to/Oasistf9409AW

【オアシス】マンチェスター凱旋公演を現地で目撃、世界中のファンとホームグラウンドで彩った復活祭

オアシス来日記念公式サイト
https://oasislive25.jp

日本唯一の公式オンラインストア
「Oasis Live 25 JAPAN Official Online Store」
https://items-store.jp/oasis2025

渋谷・MIYASHITA PARKにて、来日記念ポップアップショップ開催決定!
※詳細な開催日程・内容は、公式サイトおよび公式Xにて随時発表予定
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