6月6日に最新アルバム『Lotus』をリリースしたリトル・シムズ(Little Simz)。アルバムごとにその創作能力とペンのキレ味はさらに増し、今回も自らの経験をバネにした濃密な内容に仕上がっている。


今作は、これまで制作を共にしてきたインフローとは袖を分かち、新たにメイン・プロデューサーとしてマイルズ・クリントン・ジェームズが参加。本人も「コンフォート・ゾーンを抜けた」と語る通り、新たなスタイルにチャレンジしている。しかし、プロデューサーが変わっても、シムズの音楽制作に対する情熱と真摯さは変わらない。アルバム発表の直後には、お膝元、UKで開催されたMeltdown Festivalの最年少キュレーターとして出演するという快挙もあった。デイヴィッド・ボウイやパティ・スミス、チャカ・カーンといった有名アーティストがキュレーターになって開催されるこのフェス、今年はリトル・シムズが、ヨーロッパ初の黒人そして多様な民族背景(Black and ethnically diverse)を持つオーケストラ集団、チネケ!オーケストラ(Chineke! Orchestra)を率いて、圧巻のパフォーマンスを行なった。

そしてフジロック25ではバンド・メンバーを引き連れてGREEN STAGEでパフォーマンスすることも決定している。そんなシムズが語る今作のメッセージ、そして制作における信念とは。貴重なインタビューとして語ってもらった。

「新しい場所」へと踏み出すために

―ニューアルバム『Lotus』のリリース、それからMeltdown Festivalの成功もおめでとうございます。ネット上の動画で観ましたが、あなたがオーケストラと一緒に歌っている姿がとても印象的でした。

LS:ありがとうございます。とっても最高の経験だった!

―あれだけの楽器隊やミュージシャンたちをまとめるのは大変だったんじゃないですか?

LS:以前とは違う要素を取り入れて、自分のライブパフォーマンスを新たに探求できたのはとても新鮮でした。
これまでもDJやバンドと一緒にやってきたけれど、フルオーケストラを迎えられたのは初めてのことだったの。自分の楽曲にはストリングスが多く使われているから、それを実際に生演奏で再現できたのは感慨深い気持ちもありましたね。

✷ Little Simz

最新アルバム『Lotus』は世界中で大絶賛https://t.co/rFXmfe9zm6

リトル・シムズがキュレーターを務めた、今年で第30回を迎えた現代音楽フェスティバル「Meltdown」のライブ映像が公開!

チネケ!オーケストラとの共演で「Venom」を披露 pic.twitter.com/jDn3ZIUJBb— BEATINK (@beatink_jp) June 27, 2025Meltdown Festivalにて、チネケ!オーケストラとの共演で「Venom」を披露

―ニューアルバム『Lotus』もリリースされたばかりですが、反響やレヴューをどのように受け止めています?

LS:すごくポジティブな反応をもらっています。みんなが音楽とちゃんと繋がってくれているんだなあ、ということが伝わってくるし。『Lotus』は自分の人生で起きてきたことをシェアする、いわば”今の私”の近況報告のような作品なんだけど、それを形にできてよかった。あとは、ずっと心の中で抱えてきたものをようやく手放すことができた、という意味でもよかったですね。

―『Lotus』が完成するまでの過程についても聞かせてください。他のメディアでは、制作がかなり困難だったとも話していましたが……。

LS:そう、本当に大変だったの。これまで、アルバム制作中に感じたことのない種類の疑念や不安に直面したし、自分を信じられなくなる瞬間もあった。でも、このプロジェクトではマイルズ・クリントン・ジェームズという素晴らしいプロデューサーがいて、彼が強力に支えてくれたんです。彼はこのアルバムに深くコミットしてくれて、生命力と彩りを吹き込んでくれた存在で、私のやりたいことを尊重してくれて、どこまでも自由に導いてくれたんです。
たとえば、パンクっぽい方向に振ってみたい時も、ソウルフルでジャジーなテイストを試してみたい時も、彼は決してためらわずに受け入れてくれた。とても開かれた姿勢でいてくれたから、アルバムそのものが自由で豊かなものになったし、制作の過程自体がすごく楽しいものになったと思います。

―マイルズとの出会いは? 彼は過去のアルバムにもソングライティングなどで参加していましたよね?

LS:マイルズは、もともとセッション・ミュージシャンだったんです。ギターでもドラムでもピアノでも、その時々で必要なパートを演奏してくれていて、彼のことはかなり前から知っている存在。『Grey Area』にも参加してくれていたし、『Sometimes I Might Be Introvert』では演奏だけじゃなく作曲にも関わってくれた。だから、今回も一緒にやるのはすごく自然な流れでした。才能のある人だし、これからももっと一緒に音楽を作っていきたいなと思っています。

―マイルズはアルバムの全曲のプロデュースを手掛けています。こうした采配も、最初から決まっていた?

LS:はい、制作の最初から決めていましたね。私は、限界を設けない人と一緒にやりたいと思っていたし、マイルズはまさにそういう人。音楽への造詣がとても深くて、さまざまな時代の音楽をよく理解している。自分としては、型にはまらずに挑戦し続けられる人、私自身のコンフォート・ゾーンを超えるよう背中を押してくれるような人と組みたかった。
マイルズはその条件にぴったりだったんですよね。本当に理想的なパートナーだった。

―コンフォート・ゾーンから抜け出すのは、やっぱり怖かったですか?

LS:まあ、ちょっとは。というのも、今回のアルバムで扱ったテーマやジャンルのいくつかは、これまで公の場ではあまり深く掘り下げてこなかったものだったから。実は、プライベートではそういう音楽もずっと作ってはいたんです。でも、それを表に出す勇気がこれまでなかった。だから今回こそ、それを世に出すチャンスだと思って。このタイミングで、自分をさらけ出して、新しい場所に踏み出してみようと思えることができました。

泥の中でも美しく咲く花

―先ほども少し触れましたけど、『Lotus』は本当に多様な音楽スタイルが詰まっていますよね。「Young」はロック的な衝動が感じられるし、「Only」にはボサノヴァのアプローチもある。制作中、実際にはどんなチャレンジや実験があったのでしょうか。

LS:制作期間中は毎日のようにスタジオに入って、まずマイルズに「今日はこういう気分」って伝えることから始めていたんです。
たとえば、「今日はボサノヴァっぽい何かを作りたい」みたいな。例えばボサノヴァは、私が普段から本当に聴いているジャンルでもあるの。リラックスしたい時間にはボサノヴァを流してるし、大好きなスタイルでもある。だから、今回はそこに自分らしい解釈を加えて、自分の表現として形にしたかった。

だから日によって(制作スタイルが)全然違っていて、「今日はドラムはいらない、ギターとキーボードだけでミニマルに行こう」とか、「今日は思いっきりパンクでいこう」「サイケロックをやってみよう」とか、本当にその日の気分を大事にしていた。マイルズはそういう私の感覚をまるごと受け止めてくれて、その都度一緒に「行けるところまで行こう」という姿勢で向き合ってくれた。だから、すごく自由でオーガニックな制作プロセスだったと思います。

―アルバム『Lotus』のテーマ自体はどのようにして築かれていったんでしょうか?

LS:”ロータス(蓮)”という名前を思いついて、それが象徴するものを調べたときに、「泥の中でも美しく咲く花」だと知ったんです。同時に、そのイメージが、今の自分の状態や人生のフェーズを表現するのにぴったりだと思って。このアルバムの制作を始めたとき、”Lotus”は一応の仮タイトルとしてつけたんだけど、制作が進むうちにどんどんしっくりくるようになって、結局そのまま変えずに使うことにしよう、と。結果的に、本当にふさわしいタイトルになったと思います。制作初期にはすでにタイトルを決めていたから、あとはもうそのまま突き進みながら仕上げていったという感じかな。


Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

Photo by Thibaut Grevet

―リリックについてもぜひ聞かせてください。あなたの歌詞はいつも勇敢で、大胆で、政治的であり、何より誠実さがあると感じるんです。一方、時にとても繊細で、脆さを隠さない。過去の作品においてもリリックの素晴らしさは際立っていましたが、『Lotus』ではさらに深いレベルでの正直さ、というかより赤裸々で大胆な魅力が感じられるように思いました。今回はどうやって歌詞を書いていったのでしょう?

LS:今回は”今の自分”をできる限り正直に描きたいと思ったんです。制作プロセス自体はすごくチャレンジングだったけど、その中で語るべきことはたくさんあった。だから、ちゃんと向き合わなきゃ、と思って。そして、ちゃんとそれが出来た時に、不思議なくらい気持ちが軽くなったの。ずっと抱えていたものを手放せたような感覚があって。あとは、できるだけリアルタイムで自分の思考や感情を記録するようにしていました。私は日頃からよく日記を書くタイプだから、過去に書いたノートを読み返して、そこからテーマを抽出したり、経験したことを改めて言葉にしたり、みたいな。

―1曲目の「Thief」からして衝撃的ですよね。
特定の人物に対するフラストレーションのような衝動も感じましたし、初めて聴いた時、まるで一発の銃声のようなインパクトを持つ曲だな、と感じました。

LS:このアルバムは”何か大きな音で始める”というよりも、あえて”避けて通れない問題に向き合うこと”から始める必要があると思っていたんです。私は普段、ネットで感情をぶつけたり、延々と語ったりするタイプじゃない。そういう気持ちは、音楽の中で表現するのが自分のスタイル。だから「Thief」では、「みんな色々と憶測してるけど、実際のところは誰も知らない。だったらここで、自分の真実を語ろう」という気持ちで臨みました。この曲に詰め込んだのは、本当に自分が感じていたこと。痛み、怒り、フラストレーション…とにかく叫びたくなるような衝動。それを全部さらけ出すための許可を、自分自身に与えるような曲になったと思います。

―『Lotus』には素晴らしいミュージシャンたちが参加していますよね。サンファやマイケル・キワヌーカ、Yukimi(リトル・ドラゴン)、レッチ32、そして共演歴も多いオボンジェイヤーなど。ゲスト・アーティストとはどんなやり取りを?

LS:ただ、”音楽に正直でありたい”という気持ちを大事にして、その曲にとって本当に必要なことをしたかったんです。彼らは全員、私が心からリスペクトしている人たちで、純粋にいちリスナーとしても大好きなアーティストたち。なので、「この曲にはこの人の声が必要だ」って自然に感じられたんです。だから、思い立ったらすぐみんなに連絡していった。「今こういう曲を作っているから、ぜひ一緒にやりたい」って。みんな、本当に快く引き受けてくれて、制作にも全力で参加してくれた。おかげで、私が伝えたかった物語を一緒に紡いでくれるような、素晴らしいコラボレーションになったと思っています。

―個人的にはタイトル曲「Lotus」が大好きなんです。美しさと強さが端的に感じられるし、現実社会や音楽業界におけるあなたの葛藤もありのままに語られている。マイケル・キワヌーカとユセフ・デイズも参加して、音楽的にもとてもシンフォニックでアクロバティックな美しさがある。この楽曲が映し出すストーリーについて教えてもらえますか?

LS:この曲で描きたかったのは、たとえば”何かについて語らなければいけない”というプレッシャーを感じる瞬間のこと。けれど、自分自身ではまだその問題についてちゃんと整理ができていない――そんな時に直面する違和感や戸惑いを表現しているんです。世の中ではよく、「アーティストだから/プラットフォームを持っているんだから、こう言うべき」「こう発信すべき」と言われるんですけど、現実はそんなに単純じゃない。私自身もまだ色んなことを学んでいる途中で、何かについて”語ること”よりもまず”自分の内面と向き合うこと”が必要だって感じているんです。だからこの曲では、そうした葛藤を正直に表現したかった。

私にとって自分の真実を語る方法って、いつもSNSを通じてとは限らない。むしろアートや音楽を通して語る方が自然なんだと思います。自分が伝えたいことは、そこに全部込めている。だからこそ、自分のスタイルを大切にして、誠実であり続けようとしているし、自分の信じることにしっかりと立っていたいと思っているんです。それに、マイケルやユセフ・デイズのような素晴らしい仲間たちがいたからこそ、この曲がさらに命を持つことができた。彼らの存在には本当に感謝しています。

―「Blue」のリリックも大好きです。希望が持てない感覚や自分の身体が縮こまっていくような自己否定、そうした状況に陥ることをまるで”恐ろしいウイルス”のようだと描いていて。そうした何もかもが苦しくてどうしようもないような時、あなたはどうやってそれを乗り越えているんですか?

LS:まず大切なのは、「今、自分はこう感じているんだ」ってちゃんと認識すること。否定せずに、ありのまま受け止めることが第一歩だと思っています。これはもう、人生そのものですよね。時には波に飲まれるような日もあるけど、それも人生の一部。無理に抜け出そうとしなくてもいい。ただ、その気持ちの中に「座る」ことも大事。しっかり感じ切るってことね。

そして、忘れちゃいけないことは「今感じていることは永遠には続かない」ってこと。どんなに暗くても、トンネルの先には光があるということを信じるようにしています。あと、何より大事なのは、自分のことを本当に大切に思ってくれる人たちと一緒にいること。閉じこもらずに、孤立しないようにすること。可能なら、誰かと話すこと。誰かに気持ちを伝えること。それだけでも違うと思うから。

―先ほども「よく日記を書く」と話していましたが、いつもどうやって思考やアイデアをまとめているのでしょうか? 日常的に、ランダムな言葉やフレーズをノートに書き留めている?

LS:そう。感情とか、テーマとか、いろんな思いつきを書き留めているんですけど、時には”今日起きた面白かったこと”だったり、誰かとの会話の断片だったりすることもある。でもできるだけ、”何を感じたか”を記憶に残そうとしています。で、その気持ちを言葉に落とし込むようにしているの。

もちろん、忘れてしまったこともたくさんあると思うけど(笑)、私はできる限り”今、自分が感じていること”に対して誠実でいようとしています。その感情に正面から向き合うことが、自分にとって一番自然な表現の仕方なんだと思う。

―デビュー以来、『A Curious Tale of Trials + Persons』、『Stillness in Wonderland』、『Grey Area』、それに『Sometimes I Might Be Introvert』と、コンスタントにアルバムをリリースし続けています。それぞれ独自のスタイルやテーマ性がある。今はプレイリストの方が好まれる時代でもあると思うのですが、あなたにとって”アルバムを作る”という行為はどういう意味を持っているのか、ぜひ聞かせてください。

LS:まずはありがとう。作品を気に入ってもらえてとても嬉しいです。アルバムって、私にとって本当に大切なもの。というのも、私自身が音楽を聴いて育ってきた中で、ある作品に触れたときに「アーティストの旅に同行しているんだ」みたいな感覚を覚えたことがたくさんあったの。それが、私がそのアーティストや音楽を好きになった理由だったと思うんです。彼らの音楽の中に、自分自身を見出すことができたから。

だから私も、自分の作品を通して”共感”や”つながり”を届けたい。文化や場所が違っても、人間として共有できる感情ってあると思うんです。私はロンドンに住んでいるけど、東京でもアメリカでもフランスでも、人はそれぞれ違う環境で生きている。でも、それでもどこか似たような体験や感情を抱えていると思う。だから私は、その”共通する何か”を音楽にして、みんなとつながれたらいいな、って。

ところで、あなたが着てるそのTシャツ、とってもいいね!

―気づいてくれて嬉しいです。私の最近のお気に入りアルバム、『Lotus』っていうんだけど知っているかしら(笑)。

Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

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LS:嬉しい! ちょっと見せてもらっていい? スクリーンショット撮りたいから……うん、とってもシック(sick)。で、さっきの話の続きなんですけど……私がアルバムを作るうえで常に意識しているのは、クラシックで、時代を超えて残る作品を目指すことなんです。15年後、20年後に誰かが聴いたときに、「ああ、この作品が出た時、自分はこういう時期だったな」って思い出してくれたら、それってすごく素敵なことだと思う。音楽って、人生のある瞬間に自分を連れ戻してくれるような力があると思うんですよね。だからこそ、私はそういう記憶に寄り添う音楽を作りたいと思っているんです。

―アルバムを作り続けている、という点においてもすごいなと思っていて。常にアルバム・セッション・モードでいるような感覚なんでしょうか?

LS:いやいや(笑)。スイッチを切る時は完全にオフにしているつもりです。でも、アルバムの制作期間に入るときは、とにかく本当に集中してる。「これはやるべきミッションなんだ」って気持ちで、そこにちゃんと目的があって、自分のやるべきことが明確にあるから、ひたすら真剣に取り組むという感じ。

だから、アルバムを作るときはしっかりコミットしているんですよね。自分の中でもきちんとした精神状態にならないと取り組めないし。でも、だからこそ意味があるし、やる価値があると思っています。

Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

Photo by Thibaut Grevet

―そして今月末、フジロックでいよいよ日本に戻ってきますね。私たちも待ちきれません。

LS:やっと日本に行けると思うと楽しみで仕方ないです! 前回の来日から結構長くなってしまったから。

―日本のファンに向けて、ぜひメッセージをお願いします。

LS:(日本語で)ありがとう。日本のみんなが長年にわたって私を応援してくれていることに、心から感謝しています。私のようにロンドンの小さな場所から出てきた人間の音楽が、日本の人たちと繋がれるなんて、今でも信じられない気持ち。本当にありがとうございます。この旅路を一緒に歩んでくれたみんなに、大きな感謝を伝えたいです。

日本が大好きだから、フジロックでパフォーマンスできるのが本当に楽しみ。お寿司も食べたいし、ショッピングにも行きたいし、全部楽しむつもり! みんなも一緒にエンジョイしましょう!

―今回のステージではどんなパフォーマンスが期待できそうですか?

LS:とにかくエネルギー全開のステージになると思います。長時間のフライト明けでちょっと疲れているかもしれないけど、完全燃焼って感じで、全部ステージに置いていくつもり。それに、今回は私のバンドと一緒に演奏できるのも楽しみなんです。彼らは、これまで出会った中でも本当に素晴らしいミュージシャンたちだから、日本のオーディエンスにこの音楽がライブでどう響くかを体感してもらえるのが、とても楽しみ。

「言葉には大きな力があると信じている」

―フジロック出演の後は、ヨーロッパ、そしてアメリカを廻る大きなツアーも控えていますよね。今の気分を言葉にすると、どんな感じでしょうか?

LS:「もう、行く準備はできてる」って感じですね。この音楽は長いあいだ温めてきたものだから、それをやっと解き放てるのが嬉しいんです。ライブ・パフォーマンスは、私にとって生まれてきた理由のひとつだと思ってるくらい、ステージに立つことが、本当に心から大好き。だから、この『Lotus』という作品を引っさげて、ステージで観客と一緒に盛り上がれるのは本当に楽しみ。新しい思い出を作って、人と繋がって……そういう瞬間のために私は音楽をやってるんだと思います。今は、もうその時が来るのを待ちきれない!

―いま、世界は本当に混乱しています。戦争やジェノサイド、経済危機など、どうしようもないくらいに色んな問題が渦巻いてる。そんな世界の中で音楽を作ることは、あなたにとってどういう意味を持っていますか?

LS:私は、できるかぎりの方法で貢献したいと思っているんです。少しでも世界に愛や光をもたらすこと、それが自分の役割だと思っています。人と人とをつなげることも含めてね。

イギリスでは「gift of the gab」という言い回しがあって、これは”言葉を操る才能”という意味。私はその才能を授かったと思っているし、それが自分の力なんだ、と自覚しています。だから、そのギフトを決して無駄にしたくないし、濫用もしない。ただ、自分が与えられたものを使って、できる限りベストを尽くしていきたいと思う。ほんの少しでも世界に光を届けたい。それが私の願いです。

それにみんな、きっと自分なりに最善を尽くしてると思うの。誰も完璧じゃないし、すべての答えを持っている人なんていない。だからこそ、答えを探しながら生きている人たちに対しても、もう少し優しくあれたらいいなって思うんです。特にアーティストって、本当に大変な状況の中で、それでも何かを届けようとしてる。だからこそ、私は信じています。みんなそれぞれのやり方で、それぞれができることをやっている、と。

―その言葉、「Lotus」のリリックにある、〈I pray we heal with words(言葉で癒されることを祈る)〉というラインにも通じるものを感じました。

LS:それはただ私が感じたことをそのまま言葉にしたんです。私は、言葉にはものすごく大きな力があると信じている。口に出すことで、その言葉は世界に放たれて、周波数を持つようになると思っている。

だからこそ、自分が発する言葉には気をつけたいとも思う。必要以上に考えすぎる必要はないけど、それでも自分が何を世界に投げかけているか”という意識は持っていたい。いい言葉を放てば、それが巡って、また良いものが返ってくるはずだから。だから私は、せめて自分の分だけでも、良いものをこの世界に差し出していけたらと思っています。

―素晴らしいお話をありがとうございました。最後にもうひとつだけ。『Lotus』がリリースされたばかりですが、すでに次のプロジェクトのことを考えている?

LS:はい。クリエイティブであることが自分の性分だから、アルバムがリリースされたのは先月(6月)だけど、私にとってはもう「しばらく前に作った作品」なんですよね。だから私の中では、すでに”新しいもの”じゃないという感じ。だから、次にやりたいこととか、新しい表現のことはいつも頭にあります。でも今は、とにかく”この瞬間”を味わいたいって気持ちもある。これから始まるライブやパフォーマンスの時間を大切にして、そこからまた何かが生まれればいいなと思っています。とにかく、クリエイティブであり続けたいですね。

Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

Photo by Thibaut Grevet

Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

リトル・シムズ
『Lotus』
発売中
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配信リンク:https://littlesimz.ffm.to/lotus

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Little Simzが語る、世界と日本へのメッセージ「言葉には大きな力があると信じている」

FUJI ROCK FESTIVAL '25
2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
新潟県・湯沢町 苗場スキー場
※リトル・シムズは7月27日(日)出演
https://fujirockfestival.com
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